トップへ  SSの部屋へ


「昇神彗! 覚悟!」
「あぁ? 唐突な奴だな、おい……」
「死ねぇい!」
「千風閃……っと」
   ズババババ……
「ぐぁっ……」
「嘘? 今ので終わり?」

「岡井政樹だな?」
「エクスプロージョン!」
「えっ!? いきなり!?」
   ボン!
「ゴメン、弱すぎて話にならんわ」

   ドスッ
「なっ……?」
「ダメだよ、こんな簡単にバックとられちゃ……」
「安田圭……速い……」
「いや、君が遅すぎるんだと思うな……」



「ククク……データ収集完了、と……」


Wild  Wind

第6話 頭脳

作者:カッツォ


「ねぇ……最近多いよね、ディファー」
「あぁ。さすがに、いい加減ムカついてきたな」
「ベスタも結構いんのに、めっさ弱いもんなぁ……」
 昇神家、彗の部屋。
 彗、圭、政樹の3人が会議(雑談)をしていた。
 ここ2週間、少なくとも1日に1回はディファーに襲われている。
 いくら風紀委員がターゲットになりやすいとはいえ、確かにこの数はかなり多い。
「何かの前兆かな?」
「今月は強化月間とかなんちゃう?」
「何のだよ……」
「その通りよ!」
「「「はい?」」」
 突然入ってきた咲耶に、3人の視線が集中する。
 当然、何の前フリも無しでの登場である。
「今月は、『お兄様ラブ強化月間』なのよ! というわけで、レッツショッピング!」
「いや、意味がわから……」
「レッツゴー!」
「うお〜い!……」
 結局、咲耶に引きずられて家を後にした彗。
 そこに、兄の威厳など一欠片も感じられない。
「行ってもーたな」
「うん」
「どうしよか?」
「いいんじゃない? このままで」
「ま、そーやね」
 昔からよくこの家を訪れている2人にとって、ここは自宅同然と言っても差し支えない。
 また、このように誰かが来ているにも関わらず、妹達が彗を連れ出すことはよくあった。
 今ではすっかり慣れっこなのである。
 そんなわけで、2人はそのまま彗の帰りを待つことにした。

「ククク……分かれましたね……」
 そんな昇神家を見つめる影が1つ。



 3時間経過。
「なぁ、圭ちゃん。彗、帰ってけぇへんな」
「もうちょっとかかるでしょ」
「先、片付けとこか?」
「そうだね……でも、この家でやるわけにもいかないよね」
「いや……もう遅いな」
   ドゴォォォン!
 爆音と同時に、2人は外に飛び出した。
 見ると、地面に大穴が開いている。
「初めまして、風紀委員のお二人さん」
 その上空に、1匹のディファ―が浮いていた。
 人間の体格をしているが、鷹のような頭部、そして翼を持っていた。
 鳥人、と呼ぶのが相応しいだろうか。
「お前か? 最近オレらの周りチョロチョロしてたんは」
 愛用の斧を構えながら、政樹が問う。
 あまりいい趣味じゃないよね、と言いながら、圭も槍を具現化した。
「ククク……そうですよ。おかげで、たくさんのデータが集まりました」
「はっ、そりゃよかったな。オレらの前に現れたってことは、もうデータは完璧ってことか?」
「いえいえ、めっそうもない。ただ、あなた方を倒すには十分ってことです……よ!」
 最後の言葉と同時に、鳥人が急降下した。
 なかなかに早い。
 だが、2人にとっては十分ザコと呼べるスピードだ。
「んなもんかい! エクスプロージョン!」
「!!」
 鳥人を中心に、大きな爆発が起こった。
 ちょっと家の壁がふっとんだりしたが、その程度を気にする政樹ではない。
「いよっしゃ!」
「……とはいきませんよ」
「え……?」
 爆煙からいきなり鳥人が飛び出し、その爪を政樹の腹に深く突き刺した。
 ゆっくりと政樹が倒れていくのを確認すると、今度は圭の方に顔を向ける。
「クク……彼の弱点は、遠くになるほど爆発の威力が下がるってことですね。煙で何も見えなくなるというのも具合が悪い」
「………………」
 鳥人が動こうとした瞬間、圭は自らの前方に壁を作る。
 だが次の瞬間、圭の背中には大きな傷ができていた。
「な……」
「あなたの防御能力は、確かに非常に高い。でも、防御していない所を狙えば……脆いものです」
 圭が倒れる横で、クク……ともう1度笑った。



 さて、場面は少し変わる。
 戦いの場から少し離れた建物の陰に、4人の少女がいた。
「どどどどうしよう!? 2人ともやられちゃったよ!」
 と、花穂。
「これって、かなりヤバイんじゃない?」
 花穂ほどではないものの、かなり焦っている様子の鈴凛。
「やっぱ、ボク達がどうにかしなきゃいけないのかな……」
 同じく衛。
「そうですね……何とかするしかないでしょう」
 やけに冷静なのは鞠絵である。
「あぁ、もう! なんでこんな時に限って……アニキと咲耶アネキは買い物行っちゃったし……」
「春歌あねぇは剣道だっけ……」
「千影ちゃんはいつの間にかどっか行っちゃってるし……」
「……わたくしに作戦があります。みなさん、ちょっと……」
 4人の少女は頭を寄せ合い、何やらごにょごにょと話し合った。



 話は戻って戦いの場。
 鳥人は政樹に向かって歩き始めていた。
「さて、今のうちにとどめといきますか……」
「まぁ、そう焦ることもないんじゃないですか?」
「ん?」
 足を止め、声のした方に振り返る。
 そこには、メガネの少女が立っていた。
 臆する風もなく、微笑すらも浮かべている。
「わたくし達を倒してからでも、遅くはないでしょう」
「ほぅ……お嬢さん、あなたが私の相手を? 風紀委員の隊長が、2人もやられているのですよ?」
「えぇ、そうですね。しかしながら、あなたの実力はそう大したものではありません」
 はっきりと言う。
 それを聞く鳥人の目が少し動いた。
「クク……言ってくれますね。なぜそう思うのです?」
「政樹さんに関して言えば、最初の爆発の威力は半分以下に抑えられていましたし、爆煙だって意思1つで拡散ぐらいできたはずです。圭さんにしても、あの速さは決して反応できないものではありませんし、そもそも最初からもっと広範囲に『壁』を作っておけばよかった話です」
「ほぅ……」
「最近やけに多かった敵も、あなたの差し金ですね? あえて弱い者と戦わせることで、次……つまり、あなたも弱いと錯覚させる……という所でしょうか?」
「正解正解、お見事です。よくわかりましたね。クク……どんなに強い敵であろうと、油断している限りは別に怖くないのですよ」
「ここを戦いの場に選んだのも、最低限の力しか使わせないための作戦でしょうか?」
「まぁね。ついでに言うと、昇神彗・咲耶・千影・春歌の不在を狙ったのも作戦ですよ。敵の戦力を分散させることは、戦術の基本ですからね」
 ちなみにこの時、可憐はピアノ、白雪は買出し、四葉は彗の尾行でそれぞれ不在であった。
 こちらはまったくの偶然らしいが。
 雛子・亞里亞にいたっては、これだけの騒ぎにも関わらずお昼寝中。
 さすが大物である。
「この間兄上様が戦ったという狼男さんも、あなたの指示ですか?」
「狼……? あぁ。いえいえ、違いますよ。彼は私の同僚です。もっとも、あんなのと一緒にされるこっちはいい迷惑ですけどね。ククク……」
「同僚……?」
「さて、おしゃべりはここまでです。出かけている人たちに帰って来られても困るんでね。お望みどおり、先に殺してあげますよ」
「できますか? わたくしは油断したりしませんよ?」
「クク……ご冗談を。あなたごときに、そんなこと必要ありま……せん!」
 言い終わると同時に、鳥人が飛び出した。
 だがその爪は、紙一重で鞠絵の服を切り裂くだけに終わる。
 あらかじめ予想されていた攻撃を避けるのは、鞠絵といえどできないことではない。
「花穂ちゃん!」
 倒れこんだ体勢のまま、その名を叫ぶ。
 鳥人のすぐそば、建物の陰から花穂が飛び出した。
 手には薬ビンらしきものを持っている。
「……あっ!」
 が、あまりにもお約束。
 何もない所で転んだ。
 手に持っていたものは、ガシャンと音をたてて地面に落ちた。
 ちなみに、事前に伝えられていた作戦はこうである。
 花穂の持つ薬品を敵の目にかけ、怯んでいる隙にありったけの攻撃をぶつける。
 つまり、花穂が失敗すれば攻撃の全てが失敗に終わる……と、少なくとも花穂は思っていた。
「うそ!? ご・ごめんなぁぁぁぁい!」
「……クク。作戦は失敗ですか? 残念でし……」
「衛ちゃん!」
 鞠絵は、動じることなく空を仰ぐ。
 まるで、これも作戦のうちだと言わんばかりに……
 つられて上を向いた鳥人は、近づいてくる靴の底を見た。
「衛キィィィィック!」
「ぬっ……!?」
 顔面にクリーンヒットした衝撃に、少しよろめく。
 衛が跳び退き、鞠絵も鳥人から2・3歩離れた。
「今です! 鈴凛ちゃん!」
「がってん! いくよ〜……鈴ちゃんキャノン!」
 やや後方から、鈴凛が姿を見せる。
 同時に、肩に担いでいたものから何かが発射された。
「っ……なめないで……いただきたい!」
 体勢を立て直し、飛んできた弾を爪で引き裂く。
 だが鈴凛は、ニッと笑って指を2本立てた。
「二段構造!」
「なっ……」
 言った頃には、既に鳥人はネバネバしたものに捕らわれていた。
 必死にもがいている所に、鞠絵が近づいていく。
「どんなに強い敵でも、油断している限りは怖くない……でしたよね?」
「……ククク……いいデータが、とれましたよ」
「今さら、ですね」
 鞠絵は軽く笑うと、懐から2本の試験管を取り出した。
 それを放り投げ、背を向けて歩き出す。
 2つの液体が混ざり合った瞬間、大きな爆発が起こった。
 その爆音が大きかったので、「そうでもないですよ……」という最後の言葉は、誰も聞き取ることができなかった。

「結局、鞠絵ちゃんがいいトコ取りじゃない……?」
「花穂なんて、転んだだけだよ……」
「っていうか、あんな薬いつ作ったんだろう……」
 爆風にたなびく髪を押さえながら歩いてくる鞠絵。
 それを見て、なんとなく世の中の不平等さを感じる3人であった。






あとがき

  作:作者 政:政樹
(作)「どうも、カッツォです」
(政)「政樹で〜す」
(作)「というわけで、今回の話……」
(政)「待てや」
(作)「ん?」
(政)「読者半年近く待たしといて、さらっと流すなや」
(作)「あう……すみませんでした。いや、マジで」
(政)「ホンマ、すんませんでした」
(作)「ほら、こいつもこう言ってることですし、許してやってくださいな」
(政)「ベタな事すんなや!」
(作)「本当にすみませんでした!」
(政)「ってか、何でこんなに時間かかったんや?」
(作)「う〜ん……話はずっと前からできてたんだよね。実際、この話の3分の1ぐらいは4月にできてたし」
(政)「でも、その続き書き始めたんって8月入ってからやんな?」
(作)「どうも書く気が起こらなかったというか何と言うか……ちょっと説明しづらい感情ですな」
(政)「結局、これで復活するんか?」
(作)「そりゃあモチロン! ……たぶん」
(政)「胡散臭いな〜……」
(作)「まぁそれはそうとですね。長い間置いていたのもあながち無駄だったわけではありません」
(政)「何や?」
(作)「この物語の方向性が決まりました!」
(政)「何や、まだ決まってなかったんかい」
(作)「いや、本当はラストまで話(だけ)はできてました。どんどんシリアス路線になっていきますが」
(政)「そういや、この第6話は最初、そのシリアスの導入やってんな? 彗メインで」
(作)「そうそう、結局変えたけどね」
(政)「ってことは?」
(作)「この話は、ギャグ路線でいきます!」
(政)「まぁ、その方が無難かもな。ぶっちゃけ、シリアス望んでる奴なんておらんやろ」
(作)「基本的には、前回のようなバカギャグや、今回のような戦闘メインな話が多くなると思います」
(政)「今回って戦闘メインか……?」
(作)「基本的な流れは、私が以前から考えていた話です。ただ、それがギャグになるというだけで」
(政)「オレが死にかけたりとか、いろんな話作っとったよなぁ」
(作)「うむ。しかしギャグになったことで、お前の見せ場はなくなったと言っても過言ではないだろう」
(政)「なにぃ!? なんでやねん!」
(作)「普段とぼけたキャラが、いざという時にメチャかっこいい事をすると余計にかっこいい……これは基本だな?」
(政)「まぁ、よくあるパターンやな」
(作)「最初は、そんな話を考えてた。が、ギャグになった以上、お前の役割はお笑い担当のみだ」
(政)「マジかい……」
(作)「ま、その分あとがきにも出番作ってやったじゃん」
(政)「そう、それや。何で唐突にオレになったんや?」
(作)「うむ、一番の理由はだな……四葉じゃツッコミがやりにくい!」
(政)「んな理由かい!」
(作)「彼女の喋り方は未だにマスターしきれてない部分があるからな……会話しにくいんだよ」
(政)「オレは作中でもあとがきでもツッコミかい……」
(作)「ま、リニューアルに際して模様替え、って意味もあるけどね」
(政)「模様って言うな」
(作)「む、まずいぞ……」
(政)「なんや?」
(作)「スペース使いすぎた。明らかに長すぎだ」
(政)「アホな話ばっかりしとるからやろうが!」
(作)「よし、四葉!」
(四)「はいデス! 感想はモチロン、ふざけんじゃないデス! っていうものまで何でもいいので送って欲しいデス!」
(政)「そこは同じなんや……」
(作)「それでは皆様!」
(全員)「「「次回もよろしく!」」」






カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

トップへ  SSの部屋へ