それは、生まれた時からの絆
それは、永遠に続く絆
だがそれは、時に高い高い壁となる
少女は思う
何故こんな絆を持ってしまったのか、と
しかしそれは、決して切れることの無い絆
やがて少女は思うだろう
この絆を持ててよかったと…
作者:カッツォ
「ねぇねぇ、おにいたま! これからどこ行くの?」
「ん〜……とってもいい所だよ」
これじゃ、人さらいのセリフか。
そう思い、心の中で少し苦笑いをした。
実際、かなり歳の離れたこの組み合わせ。
そういう関係であってもおかしくはないかもしれない。
だがまぁ、この2人を見てそう思う人はいないだろう。
2人は、本当に楽しそうに笑っているのだから。
(さて、どうするかな……)
『とってもいい所だよ』なんて言ったものの、実は彼自身まだ行き先を決めていなかった。
最終的な目的地は決まっているのだが、あまり早く着くわけにはいかない。
時間を潰す必要があるのだ。
今日は雛子の誕生日ということで、連れて行ってやりたい所があった。
しかし雛子が急かすのと、彼自身多少浮かれていたこともあって、少々家を早く出すぎてしまった、というわけだ。
「雛子、どっか行きたい所はある?」
「う〜ん……おにいたまが連れてってくれる所!」
「あはは……そう」
それじゃ困るんだけどな……
もう1度、心の中で苦笑いした。
(こうやってずっと歩いてるわけにも……待てよ?)
時間を潰すと言っても、そう何時間も潰す必要はない。
2時間も潰れれば、むしろ少し遅れるぐらい。
最終目的地には電車で行くつもりだった。
電車ならそうかからない距離も、歩いていけば……
「雛子。しばらく歩くけど、いい?」
「うん、いいよ!」
電車代も浮いて、一石二鳥。
我ながらナイスアイディ〜ア! などと、少し自画自賛する兄であった。
「……やっぱ、やめといた方がよかったかな?」
十数分後、彼は既に後悔しはじめていた。
もう夕方と呼べる時間帯ではあるものの、8月中旬の暑さは健在だ。
加えて言うなら、彼は目的地まで歩いて行く道を知らない。
最寄の駅の位置を推測し、方向の感覚のみで歩いているのだ。
終わりのわからない歩みが、さらに暑さを感じさせていた。
「雛子、大丈夫?」
「え? なにが?」
さすがお子様パワーというべきか、雛子はほとんど疲れた様子を見せていない。
あるいは、兄と歩くと疲れを感じないのかもしれない。
何にせよ、雛子はまだまだ大丈夫のようだ。
「はは、僕も頑張らなきゃね……」
本日3度目の苦笑いを心の中にしまい、彼は再び歩みを進め始めた。
「ん……?」
さらに数十分。
進んでいくにつれ、だんだん周りに木が多くなってきた。
そしてここに至って、両側は森、足元は石となっていた。
強い日差しもその木に遮られ、心地よい涼しさが漂う。
どこか神秘的な雰囲気だ。
「うわぁ……」
「へぇ……」
兄自身、こんな場所があるなど知るはずもない。
なにせ、この道を通ること自体が初めてなのだから。
だが、道に迷ったか? などの疑問はなかった。
方向感覚には自信があったし、ここまでは一本道に近かったからだ。
距離的に考えて、目的地はすぐそこだろう。
「ねぇねぇ、いい所って、ここ?」
「え? あぁ……うん、まぁ、そうかな」
偶然辿り着いたとはいえ、たぶんここが『いい場所』であることは間違いないだろう。
少し罪悪感はあったが、別に否定する理由もなかった。
「しかし……こういうのもいいね……」
本当に、別の世界に来てしまったようだ。
もしそこの木陰から妖精が出てきたとしても、今ならすんなり受け入れられそうな気がする。
そんな印象を受けた。
ただ、セミの鳴き声が少し場違いな感じはしたが。
「おにいたま。妖精さん、いるかな?」
「ん? そうだな……いるかもしれないね」
雛子も、同じように感じたらしい。
兄の返答に、さらに顔を輝かせ、辺りをキョロキョロと見回す。
「はは、妖精さんは恥ずかしがりだから。そう簡単には見つからないんじゃないかな?」
「むぅ……そうなの?」
「たぶん、ね」
少し残念そうな顔をするが、顔の輝きは消えていない。
ここに妖精がいる。
それだけで嬉しいのだろう。
雛子ならもしかすると、本当に妖精に会えるかもしれないな……
雛子の顔を見て、何となくそんなことを考えた。
自分の顔が、自然と笑顔になるのを感じた。
「………………」
「………………」
2人とも無言だったが、顔は笑顔。
いつもはうるさい程はしゃいでいる雛子も、この時は静かだった。
こんな場所、こんな時を兄と共有しているのが、妙に嬉しい。
「……っと、そろそろか」
「?」
「雛子。これから、僕の魔法を見せてあげるよ」
「えっ!?」
「雛子の誕生日だから、特別に……ね」
驚く雛子の顔を見て、兄はニッと笑った。
先程の道を抜けたすぐの所に、その公園はあった。
公園といっても、ベンチが数個あるぐらい。
そこそこの広さはあるが、時間のためか、時期のためか、誰もいない。
その公園の中央に、2人は立っていた。
「いいかい? いくよ?」
「う、うん」
少し緊張したような雛子に微笑むと、兄は軽く手を上げた。
「スリー……トゥー……ワン……」
パチン
「わぁ……」
兄の指の音と同時に、兄の後ろにやわらかな光景が広がった。
なんてことはない。
ただの噴水に、少し色のついた光が当たっているだけ。
そう大きくもない公園、設備が立派なはずもない。
だが、先の森のこともあってか、それはとても幻想的に見えた。
「すごい……すごぉい!」
止まることなく噴き出す水は、光の化粧で美しく輝いた。
まるで妖精が飛び回るように……キラキラ、キラキラと。
そして雛子の瞳には、その前に立つ兄が本物の魔法使いように映っていた。
絵本に出てきた魔法使いは、怖そうなお婆さんだったけど。
今目の前にいるのは、優しい優しい笑顔のおにいたま。
「おにいたま! ホントに魔法使いさんだったんだね!」
「そう、僕は魔法使い。でもね……雛子にだって、ちゃんと魔法は使えるんだよ?」
「えっ!? ヒナにも!?」
「あぁ、そうさ。例えば……雛子が笑っているとね、僕はそれだけで元気になれるんだ。それは、雛子の魔法だよ」
「でもでも、ヒナも、おにいたまが笑ってくれたら元気いっぱいになるよ!」
「そっか……じゃあ、それも僕の魔法だ。僕は雛子の魔法で、雛子は僕の魔法で、元気になれるんだ。僕らにしか使えない魔法さ」
「……うん!」
眩しい笑顔で、雛子は大きく頷いた。
それは本当に魔法のように、兄の心に元気を満たしてくれた。
そして兄が笑い返すと、雛子もまた。
こうして2人は、これからもずっと……
「おにいたま! ヒナのマホウで、いっぱいいっぱい元気にしてあげるからね!」
「ありがとう……僕も、雛子をいっぱいいっぱい元気にしてあげるよ。誕生日おめでとう、雛子」
あとがき
どうも、カッツォです。
今回のBDSSは、何気に時間がなかったです。
いえ、時間自体はたくさんあったんですが、全然アイディアが出なかったんですよね。
結局これを書いたのは、合宿前日の今日です。
合宿が終わる日はもう2日前になっちゃうので、今日のうちにじゃないといけないので……
なんか、こんなのばっか(汗)
でもまぁ、それにしては、それなりにまとまってくれたかとは思います。
ただ、妙に兄のウェイトが高かった気もしますが……
あと、展開が少し早すぎたかもしれません。
このBDSSシリーズも、残すところあと1作で完成!
いやぁ、早いもんですねぇ……
ラスト1本、最後に相応しい作品になるよう頑張りたいと思います!
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。
カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp
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