トップへ  SSの部屋へ 


雛子、海へ行く

作者:カッツォ


「夏!」
「なつ!」
「暑い!」
「あつい!」
「快晴!」
「かいせー!」
「ジメジメ!」
「じめじめ!」
「不快指数70%!」
「ふかいしすー70ぱーせんと!」
「と、くれば!」
「くれば!」
「海!」
「うみ〜!」
 と、いうわけで。海に来た俺達。
 ハタから見たらたぶんバカみたいな俺達。
 無意味にハイテンションな俺達。
 だがそのヒートアップしたテンションは、雛子の一言で270ケルビン(セ氏−3℃)まで低下する。
「おにいたま、だ〜れもいないね」
 そう、なぜならここは寂れた漁港だから。
 海水浴客はもちろん、漁師さんだっていない。
「はははは、おにいたま達の貸切だからな」
「ワ〜イ! かしきり! かしきり!」
 うん、決して迷ったわけじゃないんだよ?
 最初からここが目的地だったんだって。
 神様がそう決めたんだ。
 ほら、よく見ればここもいい所だ。
 暗くて底の見えない海。
 フジツボが所狭しと並んだ堤防。
 江戸時代から使ってんじゃねぇの? ってぐらい使い古された船たち。
 ………………。
 雛子は喜んでるから、それでOKだ。
「おにいたま、早く泳ごうよ!」
「ま、待て!」
 ここは泳げるような海じゃない。
 決して泳げるような海じゃない。
 間違っても泳げるような海じゃない。
「どうしたの? ヒナ、早く海でプカプカしたいよ〜」
「えっと……うん、そう、はははは……雛子、海に来てただ泳ぐなんてーのは、お子チャマのする遊びだぞ?」
「お子ちゃま?」
「そう。やっぱりここは、大人の遊びをしないとな」
「大人の遊び!? うん、する!」
 ぱっと雛子の表情がはじける。
 ワクワク、とかいう音まで聞こえてきそうだ。
「おにいたま、大人の遊びって?」
「あ〜……え〜と……」
 目を泳がせながら、必死に考える。
 周りに見えるのは、船、船、船、船ばかり。
 この状況で……いや、待て。船?
「舟遊び! 大人は、海に来たら船に乗るんだ!」
「おフネ!? わ〜い!」
「……あ」
 言ってから気付いた。
 人の船に勝手に乗るのって、犯罪だったような……
 ま、いっか。バレなきゃ。
「よし、レッツゴーだ!」
「うん!」



「……しっかしまた、えらく古い船ばっかりだなオイ」
 確かに寂れた漁港ではあるが、いくら何でも古すぎる船が多い気がする。
 エンジン積んでない船とかあるし。
「おにいたま! ほらほら、アレ!」
「うぉ……」
 それは、中でも格別だった。
 なにせそれは、絵本で見る海賊船のような船だったのだから。
 というかそもそも、こんな船が漁港にあること自体間違ってるだろ……
「これ、博物館とかに持ってくべきなんじゃねぇのか……?」
「うわ〜、おっき〜! おにいたま、乗ってみていい?」
 ……あ。
 もしかしてこれって、観光用なのか?
 なるほど、それなら辛うじて納得できるかもしれない。
 ……客、全然いないけど。
「よし、とりあえず乗ってみるか」
「うん!」
 ここで考えてても仕方あるまい。
 虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってことで。



「すご〜い!」
「こりゃ……ホントにでけぇな……」
 乗ってみて、改めて実感。
 しかし、こんな広い船なのに人の気配が全然ないっていうのは……?
 ていうか、人のいた気配すらないというか……
「おにいたま、おっきなクサリがあるよ!」
「危ないから、あんまりあちこちに触んなよ」
「ハ〜イ!」
 しかしこの船、意外としかっりしてるな。
 古いけど壊れてる所は少ないし、今でも十分航海できるんじゃないのか?
「おにいたま、ロープもあるよ!」
「ウロチョロして、海に落ちないようにな」
「うん!」
 とりあえず、中の方も見てみるか。
 何かあるとも思えんが……
「……ん?」
 なんか今、変な揺れ方したような……
「おにいたま! おフネ、動きそうだよ!」
「ぬな!?」
 顔を上げてみる。
 帆が全開に広げられていた。
 さっき雛子が言ってたロープってもしかして……
「いやいや、大丈夫。錨が下ろされてる以上、どっかへ行っちまうことはないはず……」
「おにいたま、動いた!」
「ほわ!?」
 ……ちょっと待て。
 『おっきなクサリがあるよ』?
 錨だったの? 持ち上げたの?
「のわ〜! どうすんだよコレ!」
「ワ〜イ! おフネ、おフネ〜」
「まぁ雛子が喜んでるし、いっか……いやよくねぇよ!」
 目を閉じ、どうすべきかを考える。
 このまま漂流なんてシャレにならん……
「おにいたま、おっきなお魚!」
 魚? まさか、今時サメなんてオチじゃ……
「どうも、こんにちは」
「………………」
 目を開けた。
 『そいつ』と目が合った。
 ヌラヌラしていた。目がまん丸だった。ウロコだった。ヒレだった。
「魚!?」
「魚じゃないです。フナです」
「魚じゃねぇか!」
 俺と同じくらいにでかい魚(少なくともフナの大きさではない)が、服を着て立っていた。
 ……というか、縦になっていた。
 恐……いや、恐いのかどうか微妙なところだった。
 少なくとも不気味ではあったが。
「どうも、船幽霊です」
「船幽霊!? いや、鮒幽霊!? 絶対字ぃ間違ってるよね!? っていうか何者!?」
「だから、船幽霊ですってば」
「いや、そういうことじゃなくて!」
「海で死んだ者たちの無念が集まって、私という形で具現化したのです」
「何もフナの形で具現化せんでも……」
「おにいたま、おっきいお魚だね!」
 なんてこった、幽霊船だったのかよ……いや、幽霊船なのか?
 確かに、よく考えりゃまともな船であるはずがない気もするが……
 まぁ雛子は喜んでるし、いい……のか?
「………………」
「………………」
 無言で見つめ合う雛子とフナ。
 片や嬉しそうに、片や無表情に(というか表情なんて無い)。
 なかなかにシュールな光景だった。
 ふと、思い出したように雛子がこちらを向いた。
「あ、おにいたま、さっきこんなの拾……あれ?」
「それのことか?」
 フナの足(?)下を指差す。
 なんか、手榴弾みたいなモンが……!?
「うわっち!」
 爆発。
 そして急激に炎上。
 幸い規模自体は小さかったが、真上にいたフナは炎に包まれた。
「しょ、焼痍手榴弾!?」
「向こうにいっぱい落ちてたよ?」
「危なすぎだろこの船!」
「そうです、子供の火遊びはいけません。おねしょしちゃいます」
「いやアンタ、もっと言うべきことがあんだろ!」
「フナは焼いてもあまり美味しくありません。どちらかと言えば蒸すのをお勧めします」
「それも違う!」
 燃えながらも淡々と話す姿は、さすがに恐い。
 それを嬉しそうに見る雛子もかなりだが……
「……あ」
「あ?」
「なんか私、成仏できそうです」
「うそぉ!? これで!?」
「きっと私たちは、きちんと火葬されることを望んでたんだと思います」
「……きちんと? いや、成仏できるってぇなら別にいいけどさ……」
 一応、これっていい事したんだろうか……?
 まぁ、結果オーライってことで。
「どうもありがとうございました。さようなら」
「お魚さん、どっか行っちゃうの?」
「はい。お別れです」
「せっかくおいしそうなにおいなのに……」
「食うつもりかよ!」
「それではお二人さん、お元気で」
「うん。バイバ〜イ」
「結局何なんだ、この一連のドタバタは……」
 フナの姿は薄くなっていき、やがて消えた。
 後に残ったのは少しの生臭さと、船についた炎だけ。
 ………………。
 ……炎?
「うお! 燃えてる!?」
「キャンプファイアーみたいだね!」
「そんなのん気なもんじゃねぇよ!」
 消火道具を探そうと周りを見て、ふと気付く。
「ってか、どこだよここ!」
 周りには、もう陸地は見えなかった。
「ヒナ、もっとおっきなキャンプファイアーがいいな」
「無邪気な顔で手榴弾放り込むな!」
「なんか、いっぱいグラグラしてるね」
「沈んとる!?」
「あ、イルカさん?」
「今度こそホントにサメ!?」
 なんかもう、無茶苦茶だった。
「おにいたま、舟遊びって楽しいね!」
「……あぁ、もう雛子が楽しいんならそれでいいや……」







あとがき
どうも、カッツォです。
雛子は苦手です。
どちらかといえば亞里亞よりも苦手です。
いい加減、2年近くやってんのに未だにこれとは……(汗)
まぁ、それは置いといて(殴)
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。
 




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

トップへ  SSの部屋へ