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四葉、宝を捜す

作者:カッツォ


「兄チャマ兄チャマ! バースデープレゼントのリクエストデス!」
「あ〜……別にいいけど、俺が手に入れられるものだぞ? っていうか、この世に存在するものだぞ?」
「モチロンデス!」
「タモリのメガネとか、オオサンショウウオのマユゲとかは無しだぞ?」
「モチロンデス!」
「……とりあえず、言ってみ?」
「四葉、『トクカワのウマクラカネ』が欲しいデス!」
「……特革の馬熊亀?」
「『トクカワのウマクラカネ』デス! ほら!」
 と、四葉は持っていた新聞を広げる。
 『徳川埋蔵金、またも発見ならず』という記事だ。
 あぁ、トクカワのウマクラカネ、ね……読めんこともないか。
「……うん、無理」
「ホワイ!?」
「こんなもん、俺が発見できるようならとっくに発見されとるわ!」
「そんなことないデス。ほら、ちゃんと地図もありマス」
 今度広げたのは、ちょっとボロボロにになった紙。
 なるほど、確かに地図らしいものが描かれている。
 ただ、やたら下手で、わかりづらく、線も曲がってて……
「なぁ……これって、俺かお前がちっちゃい頃に書いたやつじゃないのか?」
「宝の地図デス!」
「いや、だから……」
「さぁ、レッツゴーデス!」
「って、ちょっと待て。なぜにヘッドホンとアイマスク?」
「Yプロデューサーを呼んでくだサイ」
「もはや懐かしき電○少年!?」
「向こうに車も容姿してありマス」
「また、ずいぶんと用意のいい……」
「四葉のドライビングテクニックをご披露デス!」
「お前が運転すんのかよ!」
「オフコース!」
「……一応聞いておくが、免許は?」
「ほら、ボイラー技師2級の免許デス」
「関係ないし! その資格自体よくわかんないし!」
 「イギリスでは、10歳から免許が取れるのデス」とかの答えを、万に一つぐらい期待してたんだけど……
 まぁ何はともあれ、俺には最初から選択肢など用意されていない。
 当然、俺達は出発した。
 俺にできることはただ1つ、祈ることだけ。
 ……せめて、命だけは残ってますように。



「……四葉、質問が3つある」
「どうぞ?」
「1つ目、ここはどこだ?」
「ロシア、デス」
 うん、何となくそんな気はしてたよ。
 メチャ寒いし、周りの建物とか人とかもロシアって感じ? だし。
「2つ目、どうやってここに来た?」
「車で、デス」
「車で海が越えられるか!」
「四葉のスーパーテクが為せる業デス」
 いや、テクニックとかの問題じゃないし。
 でも、確かにずっと車に乗ってたはずなんだよな……
 いったい、何があったんだ……
「3つ目。これが最重要だ……俺達は、なぜロシアにいる?」
「宝捜しのためデス」
「だから、なぜ徳川の埋蔵金を探すのにロシアへ来る必要がある?」
「地図に書いてあるからデス」
「……ちょっと見せてみ」
 あ〜……確かに、幼稚な字で『ろしあ』って書いてあるわ。
 ……なんて事かましてくれたんだ、昔の四葉(もしくは俺)
「あのな、四葉。よく聞けよ? 徳川の埋蔵金ってのは、当たり前だが徳川が埋めたモンだ。つまり日本人。しかも、よくて明治時代。そんなモンが、なんでロシアなんかに……」
「チェキチェキチェキ〜」
「あるわけが……って、よく聞けって言っただろうが!」
 いつの間にやら10m程先で走っていた四葉を追いかける。
 まぁ、なんつーか……寒。



 それは極寒の地ロシアにおいて、さらに寒々とした景色の中に佇んでいた。
 まるで何百年もそのままであったかのような、静かな威厳のようなものを漂わせている。
 人が踏み入ったような気配は全く感じられない。
 あるいは、俺達が最初の客なのかもしれない。
 そんな考えを抱かせる、かなり大きな遺跡。
 地図には、この場所が示されていた(らしい)。
 なんか、ホントに財宝とかありそうだなオイ……徳川の埋蔵金ではありえないけど。
「クフフフ……トレジャーハンターの血が騒ぎマス」
「いつ探偵から転職したんだよ」
 一度大きく深呼吸し、2人一緒に踏み出した。
 一歩入った、その瞬間。
    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
「なに!? 何が起こってんの!? 崩れるのか!? 爆発するのか!?」
「トラップ……デスカ?」
「はっや! まだ一歩目だぞ!?」
 そうこう言ってる間にも、揺れは大きくなり……
「おわっつ!」
 天井から、人の頭くらいの大きさの石が落ちてきた。
 同時に、振動もピッタリと止んだ。
「な、何だったんだ……?」
「あ! 兄チャマ!」
「ん?」
「この石、何か書いてありマス!」
「ん〜?」
「ロシア語……? みたいデス」
「まぁ、そうだろうな。ここ、ロシアだし」
「兄チャマ、読める?」
「おぅ、任せろ」
 実は中学時代、「俺、シーボルト嫌いだから」という理由で、勝手に英語の代わりにロシア語の勉強をしてたことがあったのだ。
 ちなみに、シーボルトがドイツ人だと知ったのはその1年半後の話である。
 いやぁ、あれは受験の時苦労したよなぁ……
 しかしそれがこんな形で役に立つたぁ、人生わからんもんだな。
「え〜っとだな、訳すと……………………」
「……………………」
「……………………」
「……? わかんないんデスカ?」
「いや……訳すとだな……『バ〜カ。ビビってやんの』だ……」
 ちょっとムカついた。



 気を取り直し、二歩目を踏み出した時だった。
    ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
「何だよ、またかよ……お? なんか、さっきよりも揺れが大きいような…………へ?」
 一瞬、視界が大きく揺らぐ。
 続いて、三半規管がおかしくなったような感覚。
 さらに続いて、心臓が押し上げられるような落下感が生まれた。
 有り体に言うと……足下の床が崩れ落ちた。
「なにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「兄チャマ兄チャマ」
「あぁ!?」
「四葉達、落ちてマス」
「見りゃわかるわぁぁぁぁぁぁぁ……」
   ドスン
「だふっ!」
   ドスッ
「ぐべっ!?」
 落ちた。
 ちなみに二度目のは、四葉が俺の上に落ちてきた音である。
 落下時間は7、・8秒ってところだろうか。
 ってことは……ワ〜オ、300m近く落ちたわけですかい。
 よくこんな深い穴掘ったな……いやそれより、俺達なんで生きてんだろ……
   ド ド ド ド ド ド ド ド……
「……………………」
 またしても不穏な音が。
「えっと……こういうパターン通りでいくと、次は何だろうな?」
「ウ〜ン……水責め?」
「……やっぱり?」
   ド ド ド ド ド ド ド ド……
 だんだんと音が大きくなってきた。
 そして見えてくる、大量の……
「ヒツジーーーーーーーーー!?」
 羊だった。 
 通路一杯の、モコモコした物体群が近づいてくる。
 あの中で寝たら気持ちいいのかな〜、なんて考えが一瞬頭をかすめた。
 予想ははずれ。
 しかし、ピンチであることに変わりなし。
「兄チャマ兄チャマ。紙、食べるかな?」
「そりゃヤギだ!」
 本気で紙をあげようとしている四葉を抱え、全力ダッシュ。
「おわわわわわわわ……」
「メェ〜」
「メェ〜」
「メェ〜」
 何とも緊張感無さげな声を出す集団から、必死で逃げる。
 あいつら、メェメェ言ってるくせに異様に速いぞ……
「ぬおぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「メェ〜」
「メェ〜」
「メェ〜」
 傍から見るとマヌケっぽい鬼ごっこは、まだまだ続く。
 迷路のような道を、右に曲がり左に曲がり。
 行き止まりじゃないだけマシだが、どっちに行けばいいのか全然わからん……
「だぁ! どこ行きゃいいんだよ!」
「メェ〜」
「兄チャマ、いきマス!」
「メェ〜」
「あぁ? いくって何……」
「メェ〜」
「……をぉ!?」
 抱えてる四葉を見て、おもわず立ち止まりそうになった。
 さっきから何かゴソゴソやってると思ったら……
「お前、ダイナマイト!? こんな所で使ったら……」
「チェキ!」
「チェキ、じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 妙な掛け声と共にダイナマイトが投げられた瞬間、さらに1.1倍程スピードを上げる。
 1秒くらい後、背後で大爆音が轟いた。
 同時にを襲ってきた爆風により、大きく前にふっ飛ばされる。
 頭はちっと打ったが……一応、無事らしい。
「しかしお前、なんであんなモン持ってんだよ……」
「探偵7つ道具の1つデス」
「……残りの6つは?」
「プラスチック爆弾と〜、手榴弾と〜、対人地雷と〜、花火と〜、魚雷と〜、あと、キャベツデス」
「爆弾ばっかかよ! 魚雷とか明らかに使い所無いし! つーか最後のキャベツって何だ!」
「結果オーライデス」
「ダイナマイト以外結果出してないし! 特にキャベツ!」
「あ、さっきの爆発で何か穴開いたみたいデス」
「話題変えすぎ!」



 穴の向こうは、部屋に繋がっていた。
 よく考えれば、この遺跡に入って初めての部屋だ。
 今までの通路とは明らかに違い、何と言うか……清廉されている。
 それに、地下なのに妙に明るい。
 今までの通路にも(なぜか)松明などの照明はあったのだが、ここはもっと明るい。
 曇りの日の室内ぐらいの明るさはあるのではないだろうか。
 照明らしきものは見当たらない、不思議な部屋。
 その中心に、部屋の雰囲気にそぐわない、ちゃちな箱が置かれていた。
「あれ?」
 四葉が、ゆっくりそれに近づいていく。
 俺もそれに続く。
「やっぱり……これ、四葉のデス」
「は?」
 懐かしそうに、静かに箱を開ける。
 オルゴールだったらしく、同時に音楽が流れ出した。
 聞いたことはあるが、曲名は思い出せない。
 なんか、クラシック系の有名な曲だと思う。
 そして中には、古ぼけた鍵が1つ。
「これ、兄チャマが四葉にくれたんデスヨ?」
「……俺?」
「四葉がまだちっちゃかった頃……」
 あぁ……これは僕の宝物だよ、とか言ってあげたやつか?
 そんなモンをよく……
「これが僕の部屋の合鍵だよ。勝手に入っていいから、って」
「なんかすっごい大人な関係!? っていうかちょっと待て!」
 危ねぇ……場の雰囲気に流されるところだった。
 よく考えりゃ、鍵あげた思い出なんて無いっての。
 もちろん、部屋の合鍵でもない。
 そもそも、その頃四葉イギリスじゃねぇか。
「強引にほのぼので纏められかけたが、よく考えりゃおかしいだろ! ここ、ロシアだぞ!? ロシア! しかもこんな遺跡の中! なんで四葉のオルゴールなんかがあるんだ!」
「う〜ん……残念ながら、トクカワのウマクラカネではなかったみたいデスネ……」
「当たり前だ! つーか、微妙に会話が成立してねぇ!」
「でも、新たな地図を発見デス! えじぷと、って書いてありマス!」
「なんですと!?」







あとがき
どうも、カッツォです。
部活も引退し、何もかもがやる気ナッシングモードです。
あ、でもこのSSはちゃんとやる気出して書きましたので。
相変わらず、変にテンポが悪いですね……
1年半ほど前から、ずっとそんなこと言ってる気もしますが(汗)
何はともあれ、このシリーズ、そして(たぶん)私が受験前に書くSSもあと3本で終了です。
最後まで頑張りたいと思いますので、皆さん、よろしければ読んでやってください。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。



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