作者:カッツォ
「あ゛ぅ……寒い……死ぬ……」
「兄君さま、ワタクシが人肌で温めて差し上げますわ!」
「やめれ……つーかお前、なんでそんなに元気なんだ……」
「修行の成果です」
「そういう問題なんだろうか……」
あぁ、思い出されるのは2日前。
あれが全ての始まりだった……
「兄君さま、お願いがございます」
「ん? 何だ? 改まって」
「ワタクシの誕生日のことなのですが……」
「あぁ、何だよ。別に、言ってくれりゃあ何でもしてやるって。俺にできることなら、だけど」
「ワタクシ、実は……熊と闘いたいのです!」
「よしよし、任せ……ろ?」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「いや、ちょっと待て。熊? 闘う?」
「はい」
「誰が?」
「ワタクシが、です」
「なんで?」
「自分の力を試したいのです」
「いや、別に熊と闘わんでも……」
「力試しといえば、熊と闘うのが常識ですから」
「どこの世界の常識だ!」
「では、早速北海道へ参りましょう」
「なぜ!?」
「熊といえば北海道ですわ」
「あながち間違いでもないかもしれんが……」
で、結局やって来ました北海道。
早速遭難しました、山の中。
5月とはいえ、北海道は寒い。
っていうかヤバい。
むしろ死ぬ。
「うぅ……俺はこのまま、名も無き山の中で死ぬのか……」
まぁ、俺がこの山の名前知らないだけだけど。
作者が北海道の山の名前を調べるのがめんどかっただけ、という説もあり。
「あ゛ぁ……せめて冬服着てくるんだった……春服じゃ寒すぎ……」
「北海道を甘く見てはいけませんわ」
「そういうお前なんて、それ夏用の着物じゃねぇか……」
「修行の成果です」
「どんな修行してきたんだよ……」
しかし、見た感じホントに寒くはなさそうだ。
唇も頬も健康的な色だし。
自分じゃわからんが、俺の方はたぶん真っ青だろう。
「寒……」
「ですから兄君さま、ワタクシが……!?」
いきなり、春歌の目が鋭くなった。
吹雪で視界は遮られていたが、その向こうを睨みつけるように見つめる。
もう少し経つと、俺も少し妙なものを感じてきた。
「何か……近づいてくる?」
「殺気、ですね……」
「殺気?」
おいおい、マジかよこんな時に……
って、春歌笑ってるし。
何か嬉しそうだなぁ……
「来ました……」
「………………!」
吹雪の向こう側に、影が見え始めた。
やがて姿がはっきりとしてくる。
四つんばいになって尚、俺よりも高いその体。
全体を覆う毛は、白銀の雪の中で黒々とよく映える。
よくは見えないが、角のようなものも見えるようだ。
その双眸は赤く輝き、凶悪なことこの上ない。
大きく裂けた口から出る息は、また白い世界に溶け込んでいった。
「熊ですか……」
「いやいやいやいや! 絶対違うって!」
「フフ……ここに来てようやく会えましたね……」
「だから違う! こんな熊いねぇよ! お前、本物の熊見たことないのか!?」
「いざ!」
「人の話聞け!」
春歌は、熊(とりあえずそう呼ぶことにする)に突っ込んでいった。
雪の上にも関わらず、一切迷いのない足捌き。
二者の距離は一気に詰められる。
「せぁ!」
春歌の、先制の一撃。
いつの間にやら持っていた薙刀が舞い……
「!?」
熊の肌を傷つけることなく、刃は砕けた。
おいおい……あいつ、前あれでウチの門(鉄製)真っ二つにしてなかったか……?
「フッ!」
距離を置くことなく、春歌は第二撃を加える。
「って、素手かよ!」
しかし春歌の手は、先ほどの攻撃をも全く問題にしなかった熊の肌(たぶん鉄以上の硬さ)を軽々と切り裂いた。
白の中に、鮮やかな赤がコントラストを作る。
鼓膜に響く熊の咆哮は、痛みと怒りのためか。
同時に、無作為にブンブン腕を振り回す熊。
その間を軽やかに舞い、春歌が俺の隣まで戻ってくる。
「今の一撃で決めようと思っていたんですが……さすがは熊ですね」
「いや、熊なら間違いなく死んでるっての」
俺に話し掛けながらも、目はしっかりと熊を見据えている。
その瞳は、明らかに嬉しそうな色を宿していた。
「……!? 兄君さま! 避けてください!」
「へ?」
鋭い声と共に、春歌が横に跳ぶ。
が、俺は何のことかわからずに立ち尽くしていた。
直後、炎が俺を襲撃。
「あっつ!?」
雪の上を転げ回り、何とか事なきをえたが……
「な、な、な……?」
熊を見る。
嫌な予感は大当たり。はっきり見えた。
その、大きく裂けた口から炎が吐き出されるところを。
「うおっつ!」
今度は避けることができた。
雪を溶かしながら、炎が通過していく。
舌打ちでもするように、熊はほんの小さな炎を吐いた。
「……火! 火吐いたぞオイ!」
「そうですね……まさかここまでとは……」
「もっと驚け!」
「相手にとって不足なしですわ!」
「むしろ足りすぎだ!」
春歌は、黙って熊を見つめる。
熊もまた、同じように。
1人と1匹の間の空気が極度に張り詰める。
「っ!」
鋭く息を吐き、先に動いたのは春歌。
素早く反応し、熊もそれを迎え撃つ。
両者が交差した瞬間、数メートル離れた俺にまで伝わる程大きな衝撃が生まれた。
足下の雪が舞い上がり、春歌達の姿は確認できない。
「なんだ? どうなった?」
俺一人、吹雪の中でバカみたいに立ち尽くしていた
今頃になって、忘れていた寒さを思い出してきた。
やがて、雪煙が晴れていく。
「春……歌?」
春歌が立っていた。
熊も立っていた。
双方、動かない。
「春歌?」
春歌が笑った。
熊も笑った……ような気がした。
「なかなかやるね、お嬢ちゃん」
「いえ、あなたこそ」
「うそぉ!? 喋んの!?」
しかも、声は福山雅治に似ていた。
春歌と熊は、固い握手を交わす。
……友情の芽生え?
「もう一度、闘いたかった……ぜ」
「ワタクシも、残念です」
熊が倒れた。
ズゥンと大きな音が鳴り響いた。
そして、吹雪の音だけが残った。
ポソリと春歌が呟く。
「彼女は、立派な武人でした」
もっと違う出会い方をしていれば、きっと心友になれたのに……とでも言いそうな顔だった。
………………あれ?
「って、彼女!? 雌だったの!?」
「さ、帰りましょう」
「え? あ、あぁ」
「今夜は熊鍋ですわ」
「喰うのかよ!」
あとがき
どうも、カッツォです。
前にパソコンを開いたのって、確か一ヶ月前だった気がします。
ついに、月に一度しか使わなくなってしまった今日この頃。
まぁ、今が一番忙しい時期ですしね。
部活引退すれば、もう少しヒマになるかと(勉強しろよ)
さて今回のSS、久々にとても余裕を持って書けました。
……下書きは。
パソコンに入力している今は、もうそろそろ15日になろうとしています。
まぁ、それはそれということで(爆)
しかし今回、テンポが速すぎな感が否めませんね……
つーか、だんだんギャグじゃなくなってきたような……(汗)
え〜っと、とりあえず(その他、いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。
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