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鞠絵、病院に行く

作者:カッツォ


 鞠絵は、月に一度定期検診を受けることになっている。
 自分では気づかなくとも、何か異常があるかもしれないからだ。
 まぁ、そりゃ人間全部に当てはまることなんだが、鞠絵の場合はその可能性が他人より大分高いわけだ。
 いつもは鞠絵一人で行くのだが、今回は俺も同伴することにした。
 特に大きな理由も無いんだが、妹の体のことも知っとかなくちゃいけないと思って。
 あとは……今日が、鞠絵の誕生日だということもある。
 こんな日に病院とは可哀想だが、先生の都合もあるので、今日にせざるをえなかったらしい。
 まぁ、せめて俺がついて行ってやるってことだ。
 ……こりゃ、大きな理由か。
「おぉ、いつ見てもデカイ病院だな」
「そうですね。日本でもトップクラスだ、って聞いたことがあります」
「そりゃスゲェな」
「はい。先生方も、皆さん優秀な方ばかりなんですよ」
「そうか。なら安心だな」
「えぇ。わたくしも、全面的に信頼しています」
 とりあえず、受け付けを済ます。
 学生にとっては春休みとはいえ、多くの人には平日だ。
 そのため、すぐに先生の所へ通された。
「こんにちは」
「やぁ、鞠絵くん。最近どうだい?」
「はい。特に病気にもなっていませんし、すこぶる健康ですよ」
「そうか、それはよかった。……そちらは、例の『兄上様』かな?」
「えぇ」
「どうもこんにちは。鞠絵がいつもお世話になってます」
 鞠絵の主治医……というか、いつも検査をしてもらっている先生だ。
 メガネをかけた中年男性で、人の良さそうな顔をしている。
 実際に会うのは初めてだが、鞠絵に何度か話は聞いていた。
「いえいえ、こちらこそ。鞠絵くんが定期的に検査を受けてくれるおかげで、その料金の何パーセントかは私の懐に入ってくるわけだからね。気にしなくていいよ」
 こういう話を、笑顔でさらっと話す先生らしい。
「今日も検査だよね?」
「はい、よろしくおねがいします」
「あの……」
「何かな? 兄上様くん」
 『兄上様くん』て……まぁ、いいけど。
「俺は、ここにいてもいいんですか?」
「別に構わないよ。簡単な検査だけだしね」
「そうですか」
「じゃあ、始めよう」
「はい」



「まずは、血液検査からだね」
「はい、わかりました」
 血液検査か。
 まぁ、定番だな。
「ちょっと待っててね」
 と、先生は一旦席をはずす。
 注射器でも持ってくるんだろう……と思いきや、帰って来た時に持っていたのはビールジョッキ(大)だった。
 非常に嫌な予感が……
「あの……何ですか、それ?」
「ビールジョッキ(大)」
「いや、それは見ればわかるんですけど……」
「じゃ、鞠絵くん。どうぞ」
「はい」
 大きく息を吸い込み……吐いた。
 予想通り、血液と一緒に。
 ビールジョッキが、みるみる赤い液体で満たされていく。
「って、それ出しすぎだろ!」
「はい、ご苦労さん」
「あんたも! 何普通に対応してるんですか! これ自体が異常でしょうが!」
「いや、いつものことだから」
「いつもやってんの!?」
 血液検査する前に、まず吐血を何とかしろよ。
「あ……」
 ビールジョッキ一杯血を吐ききった鞠絵が、ふらっと揺れる。
 こりゃ貧血じゃねぇか。
 ……って、あんだけ血を出せば当たり前だ。
「大丈夫かい? 向こうに輸血の準備してあるから」
「はい……」
「輸血!? 輸血するんですか!?」
「当たり前だろう。あれだけ血を出したんだから」
「じゃあ最初から注射器でやればいいでしょうが! 凄い無駄な構造ですよ!」
「いや、この方が血の代金もとれるから」
「しかも有料かよ! っていうか、そんな事堂々と言わないでくだい!」
 ……なんつう医者だ。



 鞠絵の輸血も終わり、部屋を移動する。
 今度はレントゲン……らしい。
「簡単な検査じゃなかったんですか?」
「レントゲンなんて簡単なもんさ。それに、この方が料金とれるし」
「またそれですか!?」
 まぁ、精密な検査するのに越したことはないかもしれないけど……
「じゃあ、撮るよ。ハイ、チーズ」
「撮り方間違ってると思います!」
「いいんだって。こんなん、撮り方はどうでも。ハイ、もう一ま〜い」
 マジで、こんなのに医者やらせといていいのだろうか……
 まぁ、その世界じゃかなり有名な腕利きらしいけど。
「じゃ、早速見てみようか」
「はい、お願いします」
 鞠絵は、いたって慣れた対応だ。
 やっぱり、いつもこんな感じらしい。
「……ところで、レントゲンってそんなすぐ見れるモンでしたっけ?」
「あぁ、ポラロイドだから」
「レントゲンなのに!?」
 さすが最新の医療技術と言うべきか……
 ……言うべきか?
「じゃ、向こうの部屋に戻ろうか」
「はい」
「はい……」
 なんか、もう疲れてきたんですけど……



「……………………」
 何と言うか……俺が見ても、異常があるのは明らかだった。
 なぜなら、そのレントゲンには魚の骨が写っていたから。
 鞠絵の体の中に、はっきりと。
 しかも、写真ごとに位置が違ってるんですけど……
 動いてる?
「うん、異常無しと」
「うそぉ!?」
「兄上様、どうかしましたか?」
「いや、だって、魚! 魚の骨写ってる!」
「あぁ、それですか」
「それですか、ってお前! 丸々だぞ!? 魚の骨、丸々写ってるんだぞ!?」
「あれは、金魚なんですよ」
「金魚? 金魚がなんで?」
「昔、失敗してしまったんですよ」
「何に?」
「人間ポンプです」
「にんげ……」
 き・金魚とかを飲み込んで、もっかい吐き出すアレですか?
 失敗って、まさか……
「出てこなくなった……のか?」
「はい、そうです」
「いつの話だ?」
「う〜ん……3年ぐらい前ですかね」
「3年も体の中で生きてんの!?」
「あれを最初に見た時は、さすがの僕もビックリしちゃったよ。はっはっは」
「いや、そんな爽やかな笑いで流していい場面じゃないでしょ! 異常! 明らかに異常!」
「大丈夫だって。体に悪影響は無いから」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「兄上様、大丈夫です。ほら、この通り何ともないでしょう?」
「え、いや、まぁ……お前がいいのならいいけどさ……」
 人間の体って、ホント神秘に満ちてるよな……



 その後も、検査は滞りなく……だが、異常だらけで進んだ。
 体温は34度以下だったし(つーか、最初に測れよ)
 心音は36000Hzだったし(人間の可聴域は20〜20000Hz)
 ツベルクリン反応では、なぜかそこが緑色になったし(そもそも、2日後じゃないと結果出ないはずじゃ……)
 握力は130Kgだったし(測定する意味無いし)
 そして、それに対しての医者の判断。
「うん、特に問題ないね」
 むしろ、問題ない箇所を探す方が困難だと思うのですが?
 まぁ、何はともあれ定期検診は無事終了。
 異常無しという判断をもらって、俺達は帰路についた。 



「兄上様、今日はどうもありがとうございました」
「ん? 何が?」
「わざわざ一緒に来てくださって、です」
「別に礼を言われる程のことじゃない。……お前の体のことも再認識できたしな」
 再認識……というか、認識しきれてないのだが。
「それにな、礼を言われるのはこれからだ」
「え?」
「ほれ」
 ずっと、カバンの中に入れてあった包みを取り出す。
 病院帰りに渡すのもどうかと思うが……俺、そういう雰囲気作りとか苦手だし。
「これ……」
「プレゼント」
 たぶん読者は忘れてると思うが、今日は鞠絵の誕生日という設定だからな。
「あの、開けてみてもいいですか?」
「いいけど、落とさないように気をつけろよ?」
「はい……」
 ゆっくりと、丁寧に包みを開けていく。
 中に入っているのは、ガラスのコップ。
 俺がガラス工房まで行って作った手作りだ。
 ちょっと歪んでるのはご愛嬌。
「兄上様……」
「ん?」
「ありがとうございます!」
「いいってことよ」
 本当にいい笑顔で、深々と頭を下げる。
 ここまで喜んでもらえると、こっちもわざわざ作った甲斐があるってもんだ。
「わたくし、大切にします……」
「おぅ」
「今度から、吐いた血はここに入れることにしますね」
「……え゛?」





あとがき
どうも、カッツォです。
これを書いている今、既に4月4日当日です(死)
今回は、かなりのスピードで書き上げました(時間が無かったから)
もしかすると、今まででも最速じゃないでしょうか。
下書きもほとんど無しですし。
『鞠絵が病院に行く』という思いつきだけで書き始めたのが、もう既に今日になった頃……
よく書き上げたもんだ(汗)
でも、荒さが異様に目立つ作品になってしまいましたね(滝汗)
うわ、テンポもメチャクチャだ……(今読み返した)
次こそは! 次こそはちゃんと書きますので!
真に申し訳ないです……
あ、でも手抜きしたわけではないですよ?
もちろん、全力で書きました。
急いで書いたとはいえ、普段だってこれの2倍の時間はかかりませんからね。
……なんて、言い訳はもうやめときましょう(殴)
え〜っと、とりあえず(その他、いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。




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