作者:カッツォ
「にいさま、ちょっと手伝ってほしいことがあるんですの」
「ん? 荷物もちでもやんのか?」
「さっすがにいさま! よくわかってるんですの!」
「まぁな。お前の誕生日の準備か?」
「またまた大当たりですの。誕生日スペシャルディナーにするんですの」
「お前の誕生日ぐらい、俺のスペシャルディナーもいいんじゃないか?」
「う〜ん、それも魅力的ですけど……やっぱり誕生日だからこそ、にいさまに姫のスペシャルディナーを食べてほしいんですの」
「そういうもんか?」
「そういうもんですの」
「ふ〜ん……ま、いいけどな。荷物持ちぐらいいくらでもやってやるよ」
「ありがとうございますの!」
な〜んて会話を交わしたのが3日程前。
「甘かった……俺が甘かった……」
「(静かに! 獲物が逃げちゃいますの!)」
まさかアフリカにまで材料調達に来るとは……
せいぜい隣町程度だと思ってたのに……
「(ふふ……いい感じのが来ましたの……)」
白雪の視線の先を追ってみる。
ふっさりとしたタテガミを持った、立派なライオンさんが大きなあくびをしていた。
オスのライオンって、動物園でも野生でものんびりしてるよなぁ……
……っていうか、あれ食うの?
まぁ、今更白雪の使う材料をとやかく言うつもりはないが……
「(なぁ、どうやってあいつを捕まえ……白雪? 白雪さ〜ん?)」
ダメだ。反応がない。
完全にハンターの目になってる……
とりあえず邪魔にならないよう、俺は静かに伏せておくことにした。
直後、
「……ですのっ!」
白雪の掛け声(?)に驚き、再びライオンの方に顔を向ける。
いつの間にやら倒れているライオンには、何やら見慣れている物体が刺さっているような気がする。
恐る恐る隣を見てみると、白雪の頭には見慣れた物体が無かった。
「え、リボ……うそぉ!?」
「さ、にいさま。回収ですの」
「ですのってお前、あれ凶器!? 刺さんの!?」
「大量ですの。これだけあれば、2人じゃ多いくらいですの」
疑問は多々あったが、とりあえずライオンの回収を最優先することにした。
下手に遅れると、「鮮度が損なわれましたの」とか言って、もう1匹仕留めかねん。
そう思ってライオンに近づくうち、大変なことに気づいた。
「……リボン無くなってる!?」
そして
「頭に戻ってる!? お前、さっきから触ってなかったよな!?」
「このぐらい誰にでもできますの」
「できねぇよ!」
「じゃ、行きますの」
俺の最大級の疑問をさらっと流し、白雪は先を歩いて行く。
後頭部に、明らかに不自然な動きをしている物体をつけながら。
「動いてる! 動いてるって!」
「そりゃ動きますの」
「動かねぇって!」
妹の見せた新たなスキルに驚きながらも、とりあえず後につく。
そんなこんなで、俺たちの材料調達珍道中は終わりを迎える……わけがなかった。
「……おい、聞いてないぞ」
「にいさま、そんな格好で寒くないんですの?」
「アフリカ行くとしか聞いてなかったから半袖しか持ってないんだよ!」
そんな俺たちが立っているのは、地球上で最も寒い土地、南極。
半袖で生きてる俺も、ある意味どうかと思う。
白雪は、いつのまにやら完全防寒装備だが……
「で、ここには何を獲りに来たんだ? ペンギンか? 意表をついてクリオネとかか?」
「ううん。ツチノコですの」
「ツチノ……………………ツチノコは、南極にはいないと思うなぁ……」
「そんなことないですの」
「お前、何を根拠に……」
「……!」
会話の途中で、白雪がいきなりハンターの目になった。
その視線は一点に注がれている。
「まさか……」
「……ですのっ!」
再び妙な掛け声と共に、今度はちゃんと(?)包丁を投げつける。
直後、「キュエェェェェェ」という聞いたこともないような音が聞こえた。
隣の白雪は、もう料理人の目に戻っている。
「……仕留めたのか?」
「手ごたえはありましたの」
包丁の刺さっている地点に行ってみた。
確かに、何かが刺さっている。
「………………意外と小さいんだな」
マジで、ツチノコだった。
体長は、だいたい15cmぐらいだろうか。
昔見たツチノコの絵、そのままだ。
「そりゃ日本中捜しても見つからんわな……」
なぜ白雪が居場所を知っていたのかは謎でしかないが。
っていうか、マジで食えるのか……?
「にいさま、行きますの」
「あ、あぁ……」
ともあれ、俺たちの材料調達珍道中は……まだ終わらなかった。
「さ、酸素が……薄い……」
チョモランマの頂上にも行った
もちろん半袖、登山グッズ無し。
白雪はちゃっかり完全装備。
「ありましたの! 冬虫夏草!」
「こんな所に!? っていうか、そりゃ日本でも手に入れられるだろうが!」
「ご、ごぼびっべぶうば、ばんぼばばび……(う、薄いっていうか、酸素が無い……)」
マリアナ海溝にも潜った。
もちろん半袖、酸素ボンベ無し。
白雪はちゃっかり完全装備。
「づがばべばびばぼ! ばんぼう!(捕まえましたの! あんこう!)」
「ばばばばぼぶばんべぼびびばぼうば!(わざわざ潜らんでもいいだろうが!)」
「またしても酸素が……そして重力も……」
月にも行った。
さすがに宇宙服は来たが、もちろん訓練なんてしてないので動きづらいことこの上ない。
白雪は、ちゃっかり凄いなめらかな動き。
「いましたの! ウサギですの!」
「ホントにいたの!?」
ようやく、俺たちの材料調達珍道中は終わりを迎えた。
なぜ俺が生きてるのか不思議で仕方ないが。
それ以前に、どういうコネで月まで行けたのかが不思議で仕方ない。
まぁとにかく、無事に白雪の誕生日を迎えることができた。
「はい、にいさま。できましたの」
キッチンから白雪が料理を運んでくる。
いつも通りの、いい香りが鼻につく。
「さ、召し上がれ」
「……うわぁ、美味しそう……」
目の前に置かれたのはシチューだった。
冬虫夏草の『虫』の部分が見えているシチュー。
アンコウやツチノコ以外にも、なんか色々生物っぽいのが入っているシチュー。
なぜか紫色をしたシチュー。
そんなに熱そうでもないのに、ブクブク泡だっているシチュー。
「ケケケケ……」という声まで聞こえてくるシチュー。
ツチノコと目が合ってしまった。
「はは……」
「にいさま、食べないんですの?」
「いや、いただきます」
とても美味しいシチューでした。
見た目さえ気にしなければ、大変美味しいシチューでした。
なぜアレが美味しいのかはわかりませんが、本当に美味しいシチューでした。
「さすが白雪……最強の料理人……」
「にいさまのために、世界一の料理人になりますの!」
「いや、もうある意味世界一だと思います……」
あとがき
どうも、カッツォです。
今回は短くまとめることができました。
このぐらいの方が、私らしさが出せる気がします。
ただ、やはりちょっと焦りが見えてしまうかな、という気はしますね……
まだまだ精進が足りません。
次回でちょうど半分ですし、ますます頑張りたいと思います!
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。
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