作者:カッツォ
「お兄様、12月の一大イベントといえば?」
「ん? クリスマスか?」
「はぁ? あんな、どこの馬の骨ともわかんないヤツの誕生祝いなんてどうでもいいわよ」
「どこの馬の骨って……一応、神の子とか言われてんだぞ……」
「ならば神とも闘うまでよ」
「どっかで聞いたセリフだな……ってか、微妙に会話が成立してねぇ」
「で、お兄様。12月の……いえ、1年で一番の大イベントといえば?」
「へいへい。12月20日、お前の誕生日だろ」
「さっすがお兄様! ちゃんと覚えててくれたのね!」
「忘れるなんて恐ろしすぎるマネできるか……」
「というわけで、当日は東京ドームを借り切ってパーティーを開きましょう!」
「無茶言い過ぎだろ!」
「じゃあ、国会議事堂とか?」
「もっと無理! しかもパーティーやる所じゃねぇ!」
「ベ……」
「ベルサイユ宮殿もダメ!」
「最後まで言わなくてもわかるなんて、愛の力ね!」
「論点はそこじゃねぇだろ!」
「もぅ、2人っきりで過ごしたいなんて……当然よね。気付かなくてごめんなさい」
「どっからそういう話になった! 言葉のキャッチボールをしろ! キャッチボールを!」
「お兄様のエスコート、楽しみにしてるわ」
「暴投しすぎ! だからキャッチボールだってば!」
「ホテルまでとっちゃってもOKよ」
「とるか!」
軽くウインクして、咲耶は部屋を出て行った。
まぁ、俺に拒否権が無いというのは、いつものことか……
自分で言うのも何だが、俺も結構妹想いらしい。
咲耶の誕生日に向け、色々とかなり頑張った。
いい店を調べたり、友達にデートスポットを聞いてみたり。
そのせいで、友達にはかなり冷やかされたが……
しかしまぁ、おかげで当日はまぁまぁの出来だったと思う。
映画を見て、買い物をして、景色のいい所に行って……なんか俺が言うと適当っぽく聞えるが、とにかく咲耶は楽しんでくれたようだし、俺も……まぁ、楽しかった。
が、問題はここから。
俺にエスコートを頼む(強制する)にあたり、咲耶から1つだけ条件があった。
それは、「夕食の場所だけは私に選ばせてね」ということ。
で、俺は今咲耶に連れられてここにいる。
目の前にある看板には、『サバイバルレストラン〜生と死の狭間〜』の文字。
「あ〜……なんだ。心の底から入りたくなくなるような文字が見えるんだが?」
「あら、幻覚でも見えるの?」
「そうであってほしいな……」
残念ながらというか幸いにというか、俺の目はいたって正常だ。
もちろん隣にいる我が妹の目も正常なはずだが、何のためらいもなく中に入っていく。
当然、俺の腕をがっちり掴んだまま。
「こんばんは。準備はできてるかしら?」
「これはこれは、よくいらっしゃいました。もちろん、できておりますよ」
「準備?」
「そ。今日のためにわざわざ特別メニューを用意してもらったの」
「当店でも、このメニューを用意するのは20年ぶりなんですよ」
「20年……いったいどんな?」
「それは後ほど説明いたします。どうぞ、こちらへ」
責任者らしい男性に導かれ、店の奥へ入っていく。
歩いている途中で、耳に入るいくつかの話し声。
「(出たぜ、今日の主役だ)」
「(へぇ〜、あれが『破壊のプリンセス』か。俺、初めて見たよ)」
「(ってことは、隣にいるのが噂の『お兄様?』)」
「(実際見るのは初めてだな)」
「(今日はアレ、やるんだってな。さすがプリンセス、やることが違うね)」
「(ホッホ……20年ぶりか……若い頃を思い出すのぉ……)」
「(あの歳でアレとはねぇ……)」
他、もろもろ。
「……プリンセス?」
「あぁ。私、ここではそう呼ばれてるの。プリンセスなんて、私に相応しいでしょ?」
「何か、『破壊の』とか言ってた気もするが……?」
「私、結構有名なのよ?」
「いや、だから『破壊の』って……」
「お兄様も有名なのよ?」
「は? なんで?」
「さ、着きました。こちらでお待ちください」
「え? あ、はぁ」
いつの間にか、ほぼ店の中央にまで来ていた。
皆が注目している気がする中、引かれた椅子に座る。
瞬間、周りの明かりが消え、一点だけにスポットライトが当てられた。
そこにいる、やたらキラキラした服を着た男がマイクで喋り始める。
「ようこそいらっしゃいました! 命知らずな戦士達!」
「ちょっと待て! 俺は命知らずでもなければ戦士でもないぞ!」
「本来ならここでルールを説明する所ですが……ここにいる皆様には、そんなものは煩わしいだけでしょう! 早速始めたいと思います!」
「早速始めるな! せめて説明しろ!」
「ははは、さすがに元気ですね、お兄様。健闘を祈りますよ」
「何で俺のこと知ってんだよ! ってか、やっぱり健闘を祈られるようなことするわけ!?」
「せめて安らかな死のあらんことを……グッドラック!」
司会者が指を鳴らすのと同時に、俺の真下の床が開いた。
椅子ごと、俺は滑り台のような所を滑り落ちていく。
「何だその合図! 不吉すぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「どふっ……」
しばらく滑った後、やたらと広い空間に放り出された。
椅子ごと着地したので、尻からすごい衝撃が走る。
「いってぇ……」
「あ、お兄様」
「うご!?」
さらに、後頭部にも大きな衝撃。
それが咲耶だと知ったのは、さらに数秒後の話である。
「いだい……」
「ごめんなさい、お兄様。さすがの私も、着地場所までは変えられなくて」
「ってか、どこだよここ……」
改めて周りを見回す。
……ジュラ紀のような風景だった。
とにかく周りは樹ばっかりで、遠くはでっかい爬虫類が歩いているのも見える。
認めたくはないが……いわゆる、恐竜ってやつだろう。
「……ホントにどこだよ」
「あぁ、そういえばお兄様にはまだ言ってなかったわね。これから、私の誕生日パーティーが開かれるの」
「誕生日パーティー……って雰囲気じゃないと思うが?」
もう一度周りを見て言う。
遠くで、でっかい恐竜の鳴く声がした。
「ウフフ……生と死の狭間Sランク特別メニュー、『チキチキサバイバルレース・生者に乾杯』よ」
「……ツッコミ所が多すぎて、何からツッコんでいいのかわからん」
「ルールは……とにかく、私達はあそこに行けば勝ち。他は何でもありよ」
そう言って、この空間の中心(っぽい所)を指差す。
『歓迎』と書かれた、やたらでっかい門があった。
「私達は……って、他にも誰かいるのか?」
「えぇ、いっぱいいるわよ。彼らは、私達があそこに行くのを阻止できれば勝ち。もちろん、何でもありでね」
「勝ったらどうなるんだ?」
「勝者には、最高級フルコースが無料で振舞われるの。そして、最高の栄誉が与えられる」
「負ければ?」
「参加費10万円。ま、運が良ければの話だけど」
「……運が悪ければ?」
「死ぬわ」
「さらっと恐ろしいことぬかすな! なんでそんなもんに参加してんだよ!」
「いやね、お兄様。参加じゃなくて、私達は主賓よ?」
「そういう問題じゃない!」
「ま、いいじゃない。早く行きましょう」
「何一つとしてよくねぇよ!」
……とはいえ、この状況からの脱出が最優先か。
それには、ゴールにたどり着くのが一番有効と見た。
参加費10万も払うわけにはいかないし……
……結局、参加するハメになるのか。
「よう、プリンセス。久しぶりだな」
歩き始めた直後、声が聞えた。
姿は見えず、やたら反響して、声からの方向も特定できない。
「あんたを倒すのは、この俺だぜ」
「その声……あなた、ゴルゴね?」
「ゴルゴ!? って、あの有名な……」
「そのとーり!」
直後、上からの気配。
とっさに横に跳ぶと、その位置に人が降り立った。
俺と咲耶を交互に見、その後
「あ、命!」
テレビでおなじみの、あの人文字。
「……って、松本の方かよ!」
思わず、鳩尾にツッコミを入れてしまった。
「ふぐぉ……」
が、意外にもその攻撃がクリーンヒット。
ゴルゴ(松本)は膝から崩れ落ちる。
「フッ……さすがだぜ、お兄様……」
最後にすごくいい笑顔を残し、目を閉じた。
「……なんで俺のこと知ってんの?」
「だって、お兄様は有名ですもの」
「だから、なんで?」
「私がいつも言ってるからよ。私のお兄様は宇宙一かっこよくて、強くて、優しくて、etc……って」
「……とりあえず、誇張しすぎ」
「そんなことないわ。現に、今だって敵を一瞬で倒しちゃったじゃない」
「そりゃこいつが弱いからだろ」
「いえ。この人、結構強いので有名なのよ? ま、私ほどじゃないけど」
「そうなの?」
「そうなの」
いやいや、だからって……待てよ?
俺は、咲耶のおかげで様々な体験をした。
咲耶がラーメンを食べたいと言ったから、一緒に札幌まで行ったこともあった。
ちなみに、金が無いので歩いてだ。
中国まで行ったこともある。
この時はチャイナドレスを買いに行ったんだが、やっぱり金が無いので泳いで海を渡った。
サハラを横断したこともあるし、南極でペンギンを捕獲したこともある。
時にはライオンと闘うこともあった。
まさか、その過程で俺が鍛えられたとでもいうのだろうか?
「いやいや、そんな……」
「あ、お兄様」
「あん?」
「そこ、地雷」
チュドォォォォォォォォン!
「言い忘れたけど、トラップもいっぱい仕掛けられてるから」
「……忘れすぎ」
それでも生きてるあたり、やっぱり俺は常人じゃなくなっているようだ。
そこからも、かなり色々大変だった。
まずやっかいなのがトラップ、そして恐竜。
古代の遺伝子を再現するとかいう、どっかの映画みたいな方法で現代に蘇えったらしい。
そんな世界最高クラスの大発見を、こんな所で使うのもどうかと思う。
まぁとにかく、恐竜が襲ってくるというのはかなりの恐怖だった。
だが、それにも増してやっかいなのはむしろ人間の方。
恐竜よりも強い奴らを、果たして人間と呼べるのかどうかは甚だ疑問だが。
しかも、その全員がゴルゴ(松本)のような奴だった。
シリアスにもなれない命がけの戦いってのも、珍しいのではないだろうか。
それでも、圧倒的な咲耶の力と、やっぱりパワーアップしてたらしい俺の力で、何とか切り抜けることができた。
そして俺達は今、ゴールの目の前にいる。
「はぁ……やっとかよ」
「あ、お兄様」
「あん?」
「そこ、地雷」
チュドォォォォォォォォォォン!
「……本日、8度目です」
なんてトラブルがあったものの、とにかくゴールだ。
「これで、やっと帰れる……」
安堵の息を漏らし、『歓迎』の門をくぐる。
眩しい程の照明と、大音量のクラッカーが俺たちを迎えてくれた。
なぜかいる大量の観客の中、さっきの司会者が俺たちに駆け寄ってくる。
「おめでとうございます! やはり、あなた達の勝ちでしたか」
「はぁ、どうも……」
「ありがと、当然よ」
「それでは、お二人に大きな拍手を!」
観客の拍手の中、特設ステージと書かれた所に案内される。
そこには、とにかく豪華ですって感じの料理が並べられていた。
「なんか、見せ物みたいで嫌だな……」
「そう? 私は好きよ、こういうの」
「まぁ、お前がいいならいいけど……
苦笑いを浮かべながら、引かれた椅子に腰掛ける。
しかし、今日は疲れたなぁ……
「あ、お兄様」
「あん?」
「その椅子、地雷が……」
チュドォォォォォォォォォォン!
「もぅ、最後まで油断は禁物よ、お兄様☆」
「……結局このオチかよ!」
あとがき
どうも、カッツォです。
妙なテンションとテンポでしたねぇ……(汗)
やはり、少し焦りすぎましたかね。
今回はかなり時間があったにも関わらず、なかなかできませんでしたから。
メチャクチャ長くなりそうなのを、何とかこの程度で押さえました。
そのせいで凄いことになってる所もありますが……(滝汗)
何はともあれ、今回も終了です。
こんなSSですが、この先もよろしければ読んでやってくださいね。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです……
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