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 その建物の中では、ピンポン球の弾む音、靴のすれる音がよく響き渡っている。
 ここは、新学小体育館。
 通称『卓球室』と呼ばれる所である。
 彗、圭、政樹は卓球部に所属している。
 あくまでも趣味の範囲なので、それほど強いわけではない。
 が、それでも新学のトップクラスはこの3人だろう。
 今現在、新学卓球部では、半年に一度の校内ランキング戦の真っ最中だ。
 そのため、卓球室内部はいつも以上の熱気と緊張につつまれている。
 そして今日は注目の一番、圭VS政樹の試合。
 既に周りには、自分の試合を無視したギャラリー達が集まっている。
 一応試合のスケジュールは決まっているのだが、そう過密しているわけではない。
 よって、こういう試合でギャラリーが集まることは結構多い。まあ、それが良い事なのかは別として。
 ついでに、そのギャラリーの中には彗と花穂の姿もあったりした。
「花穂、チアの練習は大丈夫なのか?」
「うん、今日はお休みなんだ。でも、せっかくお兄ちゃまの応援ができると思ったのになぁ…」
「う〜ん、俺は今日、試合無さそうだしなぁ…」
「残念…」
「また今度、応援してくれよな」
「うん!」
 そんな、和やかな会話が交わされていた。


Wild Wind 

第4話 精神の力

作者:カッツォ


「よっしゃ! やるか圭ちゃん!」
「そうだね」
 試合前の練習が終わったらしい2人は、互いに礼をし、構えをとった。
 さっきまでざわめいていたギャラリーも静まり、建物の中には2人の動く音だけが響き渡る。



 先行サーブは政樹。
 己の得意とする、無回転のサーブだ。
 下回転を出すような振りで無回転を出すため、浮いた球が返ってくることが多い。
 結構熟練した人でも見分けるの難しい球だが、圭もその特徴はよく知っている。
 タイミングとラケットの角度を調節し、スマッシュに近い速さで返球。
 政樹は少し下がりながら返球するも、やや浮いた球が圭のコートへと返っていく。
 ここまで絶好の球を圭が見逃すはずもなく、今度は全力でスマッシュを放つ。
 しかし政樹も、さらに下がって何とか防ぎ、圭のスマッシュを返した。
 そのまましばらくは、圭のスマッシュを政樹が後方で返球、という動作が続いたが、圭の巧みなスマッシュコントロールで政樹は左右に振られ続け、ついにボールは政樹の横を抜けていった。
 0−1、圭リード。
「おぉ〜!」
 今まで静まっていたギャラリーから、一斉に感嘆の声があがる。
 これほどの試合は、公式試合でも結構上の方じゃないと見れないので、当然といえば当然の反応かもしれない。

 そんなギャラリーの声を気にした風もなく、再び政樹がサーブを放つ。
 今度は純粋な下回転だ…が、何故かそのボールはネット上方、何もない所で不自然に跳ね返ってきた。
   コンコンコン…
 ピンポン球の弾む音が、やけに虚しく響き渡る。
「???」
「何が起こったんだ?」
 次第に、ギャラリーがざわめきだしてきた。
 当然、本人達にも何が起こったのかはわからない。
「おい、どうしたんだ?」
 堪りかねて、彗が2人に近寄っていく。
 本来なら試合中に声をかけるなど言語道断だが、この場合は非常事態なのでOKと判断したのだろう。
「いや、オレにもわからんけど…」
「僕にも何が何だか…でも、確かこの辺で跳ね返ったよね?」
   コンコン
 圭が何もないはずの所をノックすると、確かに音が聞こえた。
「お兄ちゃま、これって…」
「ああ…どうやら『壁』のようだな。よく見りゃあ薄く何かが見える」
 『壁』というのは、平たく言えば結界とかバリアのことである。
 結界にも色々種類があるが、このように平らなものを『壁』と呼んでいる。まあ、A○フィールドのようなものだ。
 他にも球状のものは『玉』、何かを封印するためのものは『鍵』などと呼ばれている。
「しかし、なんでこんな所に…」
「フハハハハ! 驚いたか人間共! これが我の力だ!」
 突然聞こえた声の方に、皆の注目が集まる。
 そこには、人間ぐらいの大きさで、2歩足で立っている亀がいた。
「うわっ! お兄ちゃま、大っきい亀だよ…しかも喋ってる…気持ち悪〜い!」
「くぉら小娘! 気持ち悪いって言うな!」
「ふむ…ベスタか…」
 2人(?)が漫才もどきをしている横で、彗が呟く。
 ベスタというのは、ディファーの中でも特に知能の高いやつらのことを言う。
「っていうか、何でこんな所に『壁』張ったんや?」
「…………」
「…………」
「フハハハ! 覚悟しろ人間共!」
「考えて無かったんかい!」
 …このようにバカそうなやつから、人間以上の知能を持ったやつまでいるわけだが、ベスタは基本的に身体能力が高く、特殊な能力をもっている者も少なくない。
 おそらくこの『壁』の能力もそうなのだろう。
 ちなみに風紀委員の任務は、だいたいこのベスタの相手である。
 よっぽど近い時など(前回の場合とか)は別だが、普通のディファーの相手は基本的に自衛隊・街の警護団などなのである。
 ついでに言うと何故かベスタには、『強いやつを殺すのが趣味』というやつが多いので、何もしなくても自然に風紀委員に寄ってくることが多い。 
 そういうやつらを返り討ちにするのが、風紀委員の主な役割なのだ。 
「いよっしゃ! 圭、任せた!」
 何の脈絡もなく、彗が叫ぶ。
「はい? 何で?」
 当然、圭の頭には『?』が浮かんでいる。
「お前も『壁』作るの得意だろ? こういう時は能力のかぶってるやつ同士がやるもんだ!」
「いや、こういう時はその能力に対し最も有効な能力を…」
「おもしろければそれでよし!」
「まあええやん。誰が行ってもいっしょやし」
「…はぁ…了解」
 溜息をつきつつも、圭は槍を取り出す。
 今までは、確かにそこにに存在しなかったはずの槍だ。 

 風紀委員2番隊隊長、安田圭。
 その能力は『精神の具現化』。主に壁を作るのに使用する。
 また、今のように槍などの物質を作り出すことも可能である。
「精神の具現化っていうのは、自分の精神力を消費して、思い浮かべたことを形にするっていうことだ」
「お兄ちゃま、精神力って何?」
「う〜ん…簡単に言えばだな、これを消費すると気疲れする」
「ふ〜ん」
 本当にかなり簡単な説明である。
 実際は結構違う所もあるのだが、まあそう理解しておいても間違いではない。

「解説は終わった?」
「おお、もういいぞ」
「グハハハハ! では始めるか、人間よ!」
 何だかんだ言って、解説が終わるまで待っている亀も結構律儀である。

「くたばれ人間よ!」
   ゴォォォォォォ…
 突然、亀が口から火を吐いた。
 その炎は、圭を目掛けて一直線に進んでいく。
「ゴ○ラとちゃうねんからさぁ…亀が火吹くなよ…」
「政樹さん、それを言うならガ○ラだよ」
「お、よくそんなこと知ってたな、花穂」
 ちょっと離れた所で、彗達は雑談をかわしている。
 当然、圭の勝利を確信した上でのことだが。
「はぁ…何かこのギャラリー、やる気が失せるんだよね…」
 ブツブツ言いながらも、圭は槍を持っていない方の手を自分の前にかざす。
 すると突如薄い膜のようなものが現れ、炎を全て遮断した。
「ほう、貴様も『壁』を作れるのか。やるな! 人間よ!」
「…君は全然ダメだね」
「ぐぬぬ…なめるな!」
   ゴォ! ゴォ! ゴォ!
 今度は球状の炎を吐き出す。
 力を圧縮している分、さっきよりも格段に威力が上がっているのだろう。
 が、圭の『壁』は自分に向かってくる炎を全て防ぎきる。
「フレー! フレー! 圭さん!」
 卓球の応援では、普通『フレーフレー』などとは言わない。
 さっきから応援をしたくて堪らなかったのであろう、花穂が突然ポンポンを両手に応援を始めた。
 その横では、火を吹く亀と槍を持った人間とが戦っている。結構妙な光景である。
「圭、試合の続きやりたいから早く終わらしてくれ」
「はいはい…」
 彗に言われ、圭は槍を構える。
「フハハハハ! そんなもので我の『壁』は壊せんぞ!」
「ふぅ…ま、行きますか」
 突然圭は亀に向かって突進、そのまま槍を突き出す。
 それはパリンという音と共に『壁』を突き破り、そのまま亀を貫いた。
「ぐあ…バカな…」
「…やっぱり全然ダメだったね」
 圭が槍を引き抜くと同時に、亀は倒れる。その目に生気は感じられない。
 そしてその死体はみるみる白くなり、灰となり消えていった。
 ディファーとは、隕石が何らかの形で(恐らく魔力が)影響し、遺伝子が変化した動物である。
 本来なら何代もかけて変化するところを1代で変化させるわけである。当然、体にかかる負担は大きい。
 そのため、大抵のディファ―は死後、このように灰となって消えていく。
 恐らく体に溜まった魔力が一気に放出するからだろう。

  

「さて、邪魔は無くなったし、続き始めよか」
「そうだね」
 政樹と圭が試合を始めようと再び用意をする。…が、
「きゃ〜! 熱ちちち!!」
「わぁ〜! 花穂! 火がついてる! 火がついてる!」
 さっき火の粉にでも引火したのであろう。花穂のポンポンには火がついていた。
 彗と2人で大騒ぎしてる。
「はぁ…これじゃ続きはできそうにないね…」
「そうやな…」
 2人は顔を見合わせ、一瞬フッと笑う。
 そして、2人も彗と花穂の元へ。
「おい! とっとと消火や消火!」
「ほらほら、卓球室が燃えちゃうよ!」
 困ったように、でもどこか楽しそうに駆けて行った…







あとがき
作:作者 四:四葉
(作)「どうも、カッツォです!」
(四)「四葉デス!」
(作)「ようやくオリキャラも出揃いました!」
(四)「次からは四葉達が大活躍デスね!」
(作)「まあ、あくまでも予定ではな」
(四)「曖昧デスね〜…」
(作)「まあ、それはそうと、今回は『壁』の補足だ」
(四)「普通そういうのは本編で言うもんデス…」
(作)「本文でも述べた通り、『壁』というのは結界のことです」
(四)「その張り方も色々デス。圭チャマみたいに精神を具現化させる人もいれば、魔力を変化させる人もいマス」
(作)「千影なんかは後者だな」
(四)「今回の亀サンは、それ自体が特殊能力デス。つまり、生まれつき持ってるものなので、何も消費しないということデスね」
(作)「さて、これも本文で述べましたが、風紀委員の仕事は意外と少ないです」
(四)「ディファーの出現率自体が、そんなに高いわけじゃないデスしね」
(作)「そのため、100人いれば十分だし、普通に学校にも通えるのです」
(四)「しかしこの世界でも自衛隊は自衛隊なんデスね〜」
(作)「その方がわかりやすいだろ? 当然、現実世界より遥かに強力な装備だけどな」
(四)「それはそうと、今回は圭チャマのお話でしたね」
(作)「うん。そういうわけで、圭の設定資料を公開」
  安田 圭(やすだ けい)
 彗の友人その2。新学の、彗と同じクラスに通う。
 性格は温厚で、微笑を浮かべていることが多い。
 顔はそこそこ美形だが、恋愛関係に興味は無いらしい。
 風紀委員2番隊隊長。
 精神を具現化させる能力を使い、政樹とは反対に防御主体の戦い方。
 主に、具現化させた槍を武器として使用する。
(作)「具現化についてはいろいろ制約等もありますが、今後出していきたいと思います」
(四)「つまり今回じゃ出し切れなかった、と」
(作)「まあね。彗と政樹の能力も、今後いろいろと明かされますので」
(四)「相変わらず行き当たりばったりデスね…」
(作)「まあ、今回はこのへんで。四葉」
(四)「はいデス! 感想はモチロン、ふざけんじゃないデス! っていうものまで何でもいいので送って欲しいデス!」
(作)「そいうわけで」
(全員)「「次回もよろしくお願いします!」」




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