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(12時00分)
  社の中は静まり返っていた。
  本来、祭られているべきものを失ったその部屋は、どこか寂しげであった。
  木で出来た床は、古くなっているようで、少し動くと、
  ぎしぎし、っときしんだ。
  その床の上である奇怪な事件について、これから四葉の推理が行われようとしていた。


四葉少女の事件簿

File1 犬と仏像と脂男 (解決編)

作者:啓-kei-さん

「これは事故じゃないデス、殺人事件デス」
「「!?」」
  四葉の言葉に花穂とサプライズボーイは驚いた。
「どういうことだい」
  サプライズボーイは当然の疑問を聞いた。
「四葉のチェキによると、まず不審な点は床デス」
「床?」
  花穂は自分の立っている床を見た。
  が、何も不審なところも傷もない床だ。
「そう、床デス。あの仏像が倒れ掛かってきたなら、人にぶつかってしまっても、床にぶつかって窪みなどの傷がつくはずデス。でもこの床にはそれがない…」
「本当だ…一つも傷が無い」
「それから、瞳の色デスが…、それも簡単デス」
「えっ!? そうなのっ?」
  四葉はさらっと言ってのけた。
「その仏像の瞳にはアレクサンドライトが使われていたはずデス」
「あれく…何?」
「アレクサンドライト。金緑石の一種で、自然光が当たると赤色に、人工の光が当たると緑色に変わる不思議な石デス。質のいいものは、宝石として扱われています」
「へぇ…不思議な石…」
  花穂は素直に感嘆の声をあげた。
「でも、今は外に出してるけど、夜になっても何の変化もないぞ!」
  サプライズボーイが言った。
  確かに、最近は色が変わるどころかずっと赤い色をしているのだ。
「それは、この事件の犯行動機がこの石だからじゃないデスか?」
「もしかして…盗まれちゃったの?」
「その通りデス」
  花穂の意見に、四葉が答える。
「は、犯人は誰なんだっ?」
  サプライズボーイが声を荒げて四葉に尋ねた。
「……ワンちゃんにあまり好かれていない様子で、ワンちゃんのところどころについた何かの跡…第二発見者のファットマンが怪しいデス」
  四葉が自分の意見を言う。
  しかし、ハッキリとした証拠がない。
「あっ! もしかしてあのクーラーボックスの中に…!?」
「その可能性もありますね」
  花穂は、ふと思い出したことを言った。
  それに四葉は同意する。
「でも、斎藤さんはその時僕と一緒にいたよ」
「「………」」
「マジデスか?」
「…うん」
  四葉の推理の決定的な欠点は、
  各々のアリバイなどの時間の把握ができてない、ということだった。

「………」
「………」
「………」
  すっかり手詰まりになって、黙り込んでしまう三人。
  と、四葉は先程まで側にいた犬がいなくなっていることに気付いた。
  犬は仏像が祭られていた、台の周りを鼻でかいだり、足で蹴ってみたりしている。
「どうしたのかなぁ?」
  花穂は犬の側によった。
  側に寄った花穂は台から何か布のようなものが出ているのに気付いた。
「何だろ、これ?」
  花穂はその布を引っ張ってみた。
  すると中から白いTシャツが出てきた。
  しかしその中に一点、赤が混じっていた。
「こ、これって!?」
  花穂はシャツを落とした。
「犯行時に運悪く着いてしまった血…かもしれないデスね」
  四葉はシャツを拾い上げて言った。
  そしてサプライズボーイのほうへ振り返り、
「血液を調べてもらえば、誰が犯人かわかるかもしれないデスね」
「あ、ああ……」
  サプライズボーイは歯切れの悪い返事を返した。
  それを見た四葉は台の周りを見ながら、
「あと、この辺りの指紋も調べてみる価値がありそうデスね」
「そうだな…」
「何で、犬を引き取らなかったのデスか?」
「それは…犬があまり好きじゃないから…」
「今、ファットマンが警察に仮にでも捕まると犬の引き取り手を捜さないといけませんもんね。だからと言って、殺してしまうわけにもいかない」
「何が言いたいんだ…?」
「父親が飼っていた犬デスが、一度も側に寄る様子も無かったデスね」
「僕を疑っているのかっ? 証拠が無いだろ!」
  必要な四葉の質問攻めに、明らかに不快感を表すサプライズボーイ。
  四葉もこれ以上追及する手がないので、少し考えて言った。
「……じゃあ、サプライズボーイは誰が犯人だと思いますか?」
「そんなことわかるわけないじゃないかっ!」
  両者の間に険悪な雰囲気が漂う。
  花穂はどうしたらいいのかわからず、おろおろしていた。

「どうかしたのかい?」
  突如、しわがれた声がして、皆の視線がそっちに注がれた。
  そこに立っていたのは、見た目からも年をとっているとがわかる顔つきの、
  この神社の神主だった。
「神主さん…」
「おお、雅之くんじゃないか」
「雅之ぃ?」
「たぶん、サプライズさんの名前だよ…というか、どこから出てくるのその変な名前…」
「サブキャラのくせに立派に名前があるなんて…」
  神主は、雅之(サプライズボーイ)に近づき、思い出したように言った。
「そう言えば、あのテグスはまだ使うのかい?」
「チェキデス!!」
「わっ!」
  神主の言葉に、四葉は間髪いれずに切り出した。
  いきなりの声に驚いた花穂は小さく声をあげた。
「これを見るデス!」
  四葉はポケットから何か糸のようなものを取り出した。
「何これ?」
「さっき花穂チャマが転んだところで拾ったデス!」
「…なんでも拾わないでよ」
  花穂はため息混じりに言った。
  同時に、確かに転んだときに何か足に引っかかったような気がしたことを思い出した。
「それで、これは…何の糸?」
「テグスデス」
「テグス?」
「釣り糸などに使用する、天蚕糸(てぐすいと)デス」
「四葉ちゃん…それがどうしたの?」
「仏像デス! 仏像についたヒビのような傷…テグスの跡デス!」
「仏像?」
  花穂は外にある仏像を見てみた。
「遠くて見えない…」
「もっと近くに行って見るデスっ!!」
  外に向かって走っていったはずの花穂は、入り口付近で飛ばされて帰ってきた。
  雅之(サプライ…略)が道を塞いでいた。
「痛たた…」
「雅之くん!?」
  神主は雅之の行動に驚いた。
  花穂も尻餅をついて、一人痛がっていた。
「そうさ、僕がやったのさ。このテグスは仏像を倒すために使ったんだよ!」

  突然の雅之(サプラ…略)の告白に、神主は驚いた。
  最初は何のことかわからなかったが、仏像を倒す、という言葉で理解をした。
「な、なぜだ? 雅之くん」
「いい加減、あのわがまま親父の介護をするのも疲れたんだよ!」
「フムフム…つまりこのワンちゃんは盲導犬だったデスね」
「盲導犬なのに元気だね」
  四葉は足や首周りについていた跡の謎が解けて、頷いていた。
「それにここのおきらくな村のやつらはアレクサンドライトの存在にも気付いてない! それを僕が有効活用してやろうってだけじゃないか!」
「…知っておったよ」
「へ?」
「昔、ここにあった神像が壊れてしまう事件があったらしくての。その時にかわりに貰い受けたのがこれなんじゃ。その時にすでに説明はうけとるよ」
「………」
「………」
  奇妙な沈黙につつまれた。
「と、ともかく…知られたからには生かしておくものかっ!!」
  雅之(サプ…略)は近くにいた神主に掴みかかろうとした。
  が、

 ガンッ!

「ぐはっ!?」
  そのまま床に倒れてしまった。
  雅之(…略)の倒れた後ろにはクーラーボックスを持った斎藤(ファッ…略)が立っていた。
「ファットマンさん!」
「おぉ、斎藤さん」
「いいとこどりデスね、ファットマン…」


(12時50分)
  その後、雅之(略)は神主に通報されて警察に連れていかれた。
  雅之が連れて行かれた後、四葉と花穂、斎藤(ふぁ…略)は参道を歩いていた。
「全く何処に行ったのかと思えば…」
「すいません…」
  花穂は申し訳なさそうに謝った。
「ところで…」
  花穂はずっと気になっていたことを聞いてみた。
「この子を保険所かどこかに預けるんですか?」
「あぁ? …そうだな」
「!?」
  あっさりと言ってのけた斎藤(略)の言葉に、
  花穂のみるみる泣きそうな顔になった。
  しかし…
「盲導犬としてまだ働けるんだ。他の盲導犬を必要とする人の所に行くだろうな」
「ぁっ…そっか…」
  花穂はあの犬が盲導犬であることを思い出した。
  昼の暖かな日をうけ、少しだけ花穂の表情が緩くなった。
「ところで…このクーラーボックスは何デスか?」
「クーラーボックス? これは……持ってるだけだ」
「マジっすか…」
  無駄に固執していたクーラーボックスに何の意味もなかったことを知り、
  四葉は一人ショックをうけていた。
  しかしまだ諦めきれない、というように、
「な、中を見せてくださいっ!!」
「別に構わんが…」
  斎藤略)はクーラーボックスをゆっくり開けた。
  そして、その中には…
「氷?」
  斎藤略はクーラーボックスを閉めながら、
「あぁ、収穫祭の時の出し物に使うんだ」
「マジデスか…」


(13時10分)
  穏やかな日差しが村を照らしていた。
  日の匂いに混じって、山の上まで甘酸っぱい香りが届いてきそうだった。
  日に照らされる中、花穂は神社で犬と遊んでいた。
  その様子をまるで自分の娘を見るような顔をしていた斎藤に、
  四葉はずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ファットマンはどうしてこの犬を引き取ったんデスか?」
「引き取ってはないぞ」
「チェキ?」
「預かってるだけだ、一時的に…な」
「預かってる…何でデスか?」
「わしと、あいつ…前の飼い主は昔から仲が良くてな…。あいつから雅之と最近上手くいってないことは聞いていたからな…。それで、毎日のようにどこかに行こうとしているこいつを見てたら、何かあるんじゃないかって思ってな…」
「ふ〜ん…」
  どこか遠くを見つめながら、そして穏やかに話す斎藤の今は脂のない横顔を見ながら、
  四葉はもう1つ気になっていたことを聞いた。
「ところで…ここに来る前に、何処へ行ってたのデスか?」
「仕事って言わなかったか?」
「何で四葉たちが神社にいるってわかったデス?」
「それは毎日神社に行くからな、この犬は」
「あれ?」
  四葉は駅で交わしていたやり取りを思い出していた。
「役場は…?」
「あぁ、あいつが役場で働けるわけないだろ? それにあの時、神社に行ってるなんか言ったら、お前らが興味を持って行ってしまうかもしれないと思ったんだが…」
  斎藤なりの気遣いだったのだが、四葉の好奇心の前には全く効果なしだった。
  結果として、事件解決となったのだが…。
「ところでお前ら…」
「何デスか?」
「電車の時間はいいのか?」
「………」
「………」
「………」
「「あっ!! 鞠絵ちゃん(チャマ)!!」」









あとがき

どうも啓-kei-です。
突然ですが、斎藤・雅之って名前に特に意味はありません。
サプライズボーイ? ファットマン? 何だこいつら?
って感じでしょう。僕も感じてます(ぉ〜ぃ…)

ミステリー初挑戦です。
これがミステリーか? と言われると…ミステリーなんです!
謎解きですよ謎解き。サプライズを無理やり犯人に仕立て上げてますが…。
指紋で犯人わかるじゃん…、天蚕糸は何しに出てきたのでしょう?
てか、この四葉は四葉かこれ?

各々のキャラの性格や中途半端な謎解きにツッコミどころ満載ですが、感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。


啓-kei-さんへの感想はこのアドレスへ
fairytale@mx91.tiki.ne.jp

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