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(前・中編のあらすじ)
「皆さん、可憐です。あけましておめでとうございます」
「何言ってんの? 可憐。もう9月だよ」
「お兄ちゃんこそ、どうしたんですか? 今日は1月1日ですよ?」
「・・・・・・・・・」
「あ、分かった。・・・ウフフ、お兄ちゃんったら、可憐のあられもないブルマ姿にあてられて、
 もうメロメロなんだぁ」
「いや、あのさ、見てて寒そうなんだけど・・・」
「それなら、お兄ちゃんが可憐のこと温めて下さい」
「だからそんな暴走はダメだって!」
「ぐげ」
「何でアナグマ語なんだよ」


シスプリ劇場 金魚鉢が観た家族

第7話 白玉荘の年末年始(後編)

作者:いちたかさん


「・・・遅いわね」

年越し番組にも飽きた咲耶が、天井をぼんやり見つめながら呟いた。
大きく伸びをして、そのまま仰向けに寝転がる。

「心配することはありませんわ。小さい子達を寝かしつけるのに、手間取っているだけだと思います」

向かいに座る春歌が、そんな咲耶を諭すように言った。
兄の為に淹れた、すっかり冷めてしまったお茶を見つめ、彼女は自分の胸に手を当てる。

(何より、兄君さまはワタクシの気持ちを受け取って下さったのですから・・・)

「咲耶さんの杞憂ですよ」

「・・・だといいんだけどネ」

気だるそうに身を起こし、咲耶は、既に去年となった昨日の日のことを思い返す。

時間にして12時間足らずの間に、思えば色んなことがあった。

全てを兄に内緒で、小学校の修学旅行以来の、東京に足を運んだ。
3人だけでのそれは、ある種の冒険だった。

初めてのお台場で、テレビにも出演した。
結果は最悪だったが、兄に気持ちが伝わったことだけは確かだ。
そう思えることだけが救いだった。

今、目の前で頬を紅く染めている春歌や、表情一つ変えずにテレビを見つめる千影が何を考えているかは
分からないが、同じような達成感に包まれている事は確信できる。

そういえば、四葉も良くやってくれた。
彼女の協力無くしては、今回のことは在り得なかっただろうから。

(お礼を言わなきゃね)

そう思い部屋を見回した時初めて、咲耶は四葉の姿がどこにも見当たらないことに気付いた。








「お、落ち着きなさい、可憐。とにかく、はい、深呼吸して」

迫り来る可憐を前に、僕は必死の抵抗を試みる。

「うふふ、可憐は本気ですよ、お兄ちゃん」

可憐の天使の仮面をかぶった悪魔のような微笑みに、僕は瞬間的に悟った。

(駄目だ、説得不可能。然らば)

「三十六計逃げるに如かず!」

言うと同時に、可憐の脇をすり抜け、玄関へと駆ける。

「甘い、デス!」

「何だと!」

ドアノブに手をかけた瞬間、頭上から僕に向かって網が放たれた。

「どわあああああ!」

網に絡め取られ、仰向けに倒れ込んだ僕に、似非天使と網を投げた張本人が歩み寄り、
僕はちょうど2人を見上げた格好になる。

「こ、この中一ズがぁ・・・」

「ありがとう、四葉ちゃん。可憐、助かっちゃった」

「えっへん! お安い御用デス」

必死にもがく僕の頭上で、四葉が精一杯胸を張る。

「ちくしょおおお、出せえええええ」

「ふっふっふっ。兄チャマ、覚悟はいいデスネ〜?」

言うが早いか、四葉は胸元からカメラを取り出した。

「お、おい、何する気だよ?」

「可憐ちゃんとの密約デス。兄チャマの恥ずかしい格好をカメラに収めるのデスよ」

(は、恥ずかしい格好って)

「ば、馬鹿なことはやめろ、こらっ」

僕の制止が耳に入っていないかのように、四葉はカメラを構え、じりじりと近寄ってくる。

「さぁ、可憐ちゃん、いつでもいいデスよ」

今まで僕たちのやり取りをにこやかに窺っていた可憐が、四葉の呼びかけにようやく口を開く。

「うん、でもね、その前に四葉ちゃんに、お礼がしたいの。ここに立ってくれる?」

「?・・・ここデスか?」

四葉が可憐の指差した場所に立つ。

「そうよ、ありがとう」

可憐が壁から出ていた紐を引っ張ると、

ぱかっ

四葉を支える床が左右に開いて、

「ばいばい、四葉ちゃん」

その体は階下の物置部屋へと自由落下していった・・・。

「酷いチェキィィィィィィーー・・・・・・!!」

可憐、君はいつの間に部屋にそんな仕掛けを・・・・・・。

「さ、お兄ちゃん、始めよっか」

体操服の可憐が爽やかな笑顔で振り返る。

「いや、でも四葉が・・・」

「あんなお馬鹿さんはほっといても大丈夫だよ」

「・・・・・・まぁ確かに、自業自得っちゃあ、自業自得だけど」

しかし、自分で罠にかけといて、『お馬鹿さん』はあんまりじゃないか?可憐・・・。



「ねぇ、・・・お兄ちゃん・・・・・・。折角2人きりになったんだからぁ・・・・・・」

甘い誘惑と共に、可憐の胸の微妙な膨らみが僕の腕に押し当てられる。

「いや、ちょっと待った、可憐?落ち着きなさいって!頼むから!」

未だに網の中の僕は、身をすり寄せてくる可憐に抵抗できない。

「・・・・・・・・・・・・」

無言の可憐に、四つん這いの格好で覆いかぶさられる。
白く柔らかい太ももで胴をぎゅっと挟みこみ、頭に両腕を回してきた。

「ちょっ・・・待っ・・・・・・可憐ってば!」

可憐のブルマに包まれた部分が、下腹部に密着する。
パジャマの上からでも、その温もりが伝わってきた。

同時に綺麗なロングヘアーの先っちょが、僕の頬にはらりと落ちる。


(あれっ? 何だ?)

妙なことに気付いた。


抵抗する気力が、無くなっていく。


このまま流れに任せて、可憐を抱いてしまってもいいんじゃないか?
そんな思いが湧きあがってくる。

「・・・お兄ちゃんも・・・・・・気持ちよくなってきたの?・・・」

消え入りそうで小さな、それでいて耽美なささやきに、可憐の中の『女』を意識させられた。
ピンク色に染まった頬、潤んだ瞳、艶めかしい唇が、たまらなく愛しい。
ツヤのある髪から零れ落ちるシャンプーの香りに、僕の背徳は加速する。



静寂。

耳につきまとうのは、可憐の息遣いだけ。

僕たちを遮るものが、遠くなっていく・・・・・・。



「・・・・・・これ、邪魔だよね・・・・・・」

言いながら可憐は、僕の体の拘束を解こうとする。


(やめてくれ・・・)


今体を自由にされたら、僕は目の前の少女に何をするか分からない。
自分で網から抜け出してでも可憐を襲ってしまいたいと、心の片隅で考えている自分が怖かった。
呼吸が大きく、荒くなっていく。

可憐は僕の右腕から解放しようとしているらしかった。

「・・・・・・可憐は・・・、お兄ちゃんだけのものだよ? ・・・・・・」

瞬間的に僕の脳裏に、可憐の身体をメチャクチャにしている自分の姿が稲妻のように駆け抜けた。
ギリギリのところで、僕はその衝動を押さえ込む。
体の中心が、熱くたぎっているのが分かった。

やがて右腕を押さえ込む力が弱まっていき・・・・・・・・・ゼロになった。


「お兄ちゃん・・・・・・大好き・・・・・・」


トドメだった。

僕の中で、倫理は海の藻屑と消え去った。

自由になった右腕で、僕は可憐を思い切り抱きしめる。
可憐の吐息が僕の首筋に吸い付くように絡みつき、生暖かい感触を残した。

「・・・・・・可憐ッ」

本能的に乳首に吸い付く赤ん坊のように、控えめな乳房に顔をうずめる。
グリグリとその感触をむさぼると、可憐が切なく喘いで、背筋をピン、と張った。

「あ・・・・・・ふぁぁ・・・」

甲高い、小さな悲鳴にも似た声に、僕は征服欲に支配される。
可憐の身体が、小刻みにピクピクと震えた。



「おにい・・・・・・ちゃん・・・」















突如目の前に、閃光が走る。

「!!!??」

間髪入れずに発せられた爆音に、鼓膜を引き裂かれたような錯覚を覚えた。

「お兄様ーー!!!」

(さ、咲耶!?)

一気に現実に引き戻される。
もうもうとする煙幕の向こうに、確かなツインテールのシルエットが見えた。
そのシルエットは何かを乗り越えた動作の後、僕たちの元へズカズカと近寄ってくる。

(腕、腕を離さなきゃ)

そう思う僕の意に反して、腕はピクリとも動かない。


やがて視界が秩序を取り戻し、見覚えのある3人の仁王立ちが姿を現す。
液化窒素よりも冷却力のある目で見下ろされている上に、1人として口を開こうとしない。

よく見ると、3人の背後にあるはずの壁がぽっかりと穴を開けている。
この部屋からは見えないはずの、僕と千影の部屋の壁時計が、午前零時半を告げていた。

プレッシャーに押され、僕はようやく上ずった声で、通じそうにない言い訳を開始した。

「あのね、3人ともね、落ち着こうね。これは可憐が、可憐がね・・・・・・」

「あら、そう」

反応したのは咲耶だった。

「その割には可憐はお寝みになってるみたいだけど?」

「えーーっ」

ようやく言うことを聞いた腕を動かし可憐を横たわらせると、確かにやりきった笑顔で寝息を
立てている。

「あれ、ちょっと!? 可憐? かれーん!?」

いくら揺さぶっても、寝息以外の反応が無い。
寝たふりだと思ったが、どうやら本当に眠ってしまっているらしかった。

「おーーいっ、起きてくれー!」

必死に可憐を起こそうとする僕を見て、咲耶が含み笑いを浮かべる。

「全く、可憐もしょうがない娘ねぇ。お兄様のお蕎麦をつまみ食いしたのね、きっと。
 間に合ってなによりだわ」

僕は腕を止め、3人を見上げる。
何故かその表情は一様に明るさを取り戻していた。

「フフ・・・・・・兄くん・・・眠らせてあげるといい・・・・・・。きっと・・・・・・
 薬の副作用だろうから・・・」

「く・・・薬? 副作用?」

意味が分からない。でも、不幸な予感だけはした。

「千影さんのところには、魔界の方からよく雑誌やチラシが送られて来るというのは、兄君さまも
 ご存知だと思うのですが・・・。その中に・・・その・・・・・・」

頬を赤らめつつ、春歌が一般的に在り得ないセリフを発した。

「時々・・・紛れているんだよ・・・・・・そういう物の通販のチラシがね・・・・・・。
 もちろん・・・来ても相手にしていなかったけれど・・・・・・」

「偶然、わたしの目に触れちゃったのよね」

3人の声がステレオのように交錯して、僕の耳に届いてくる。

「自分で調合して作るから・・・モノは安かったからね・・・・・・。試しと思って・・・」

「それで、完成しましたのが、その・・・・・・」

「一種の媚薬、ってやつなの」

人差し指をピンと立て、咲耶がハッキリとした結論を加えた。

「お兄様、年越し蕎麦をツユまですっきり飲み干してくれるんだもの。ウフフ、見ていて楽しかったわ。
 ・・・・・・でも良かった。効果はバッチリだったみたいね」

言い返せなかった。
バッチリはめられて、ハメようとしていた自分がここにいる。

「あぁ・・・・・・」

喉の奥から諦めのため息を絞りだす。

「でね、ここからが本当の目的よ。お・に・い・さ・ま」

咲耶が屈んで、おもむろにパジャマのボタンを外し始める。

「・・・・・・やっぱり?」

強調されたバストを目の前にして、僕は工夫の無い展開を呪った。

「兄くん・・・・・・目的を果たせなければ・・・・・・計画の意味が無いだろう・・・?」

「春歌に兄君さまの熱いお灸を据えて・・・下さいませ・・・・・・ポポッ」

一難去って、また一難。
春歌の言ってること意味分かんないし。

「抗えないのは分かってるんだから・・・。それに、私達も・・・・・・ネ」

恍惚とした咲耶の表情を見て、悟った。
なるほど・・・、これから薬に支配された4人が18禁を繰り広げる訳ですか?





「・・・・・・そんなの嫌だああああぁぁぁぁぁ!!」

僕が叫んだ正にその時、再び閃光が僕たちを包んだ!

「きゃあ!」
「う!」
「ああ!」

腰を上げていた3人が、爆風にその身を運ばれる。

玄関に開けられた穴の中から、爆煙をまとって現れたのは・・・・・・。


「ヤッホー! アニキー!」

「おお! 鈴凛!」

「事情は四葉ちゃんから聞いたよ! 何だかアネキ達もやばそうだし、ここはアタシにまっかせといて!」

キャタピラーに乗せられた大砲を携え、鈴凛が僕の真横に立つ。
助け舟とは正にこの事!

「た・だ・し、見返りは、分かってるよねぇ」

「え、何だろう? うん、わかってる、お年玉だよね」

大砲の口がこちらを向いたので、僕はとぼけるのをやめた。

「そうそう! さっすがアニキは話が分かるね!」

その時、視界の端で3人が立ち上がる姿が目に入った!

「おい! 鈴凛!」

「分かってる! いっくよーー!! ほーーらほらほらほらほらほらほらぁ!!」

ボタン連打に呼応して、バレーボールが3人に向けて次々と襲い掛かる!
小爆発を起こすボールに、部屋には一気に黒煙と熱気とが充満した。

「くぅっ・・・! この・・・・・・!」

咲耶の苦悶の声が爆音の隙間から漏れた。

(よし、いいぞ!)

3人は絶え間の無い鈴凛の射撃攻撃に、攻めあぐねているようだ!

ありがとう鈴凛!
本当に助かったぞ、鈴凛!
でも部屋を破壊しすぎだ鈴凛!!
どんだけ火薬を詰め込んでんだお前!!

「アニキ! お年玉アップ、よろしくねーー!!」

「ああ! 任せとけ!」

修理費もどんどんアップしてるけどな!
お前のお年玉から引いとくぞ!

「あはははははは!! アネキ達ぃ? どうしたの? 手も足も出ないのかなぁぁ?!!」

・・・何か恨みでもあるのか鈴凛?
それとも受験勉強のストレス発散か?



天井の穴から夜空に浮かぶ天体を眺めていると、ふと、僕を拘束する網の力が弱まっていくのを感じた。

「兄チャマ、大丈夫デスか? 網を解いたら可憐ちゃんを連れて一緒に逃げるデス!」

見ると、端の方から網を切り進んでいく四葉の姿があった。

「四葉・・・、お前・・・・・・可憐にあんな酷い事されたのに・・・」

「可憐ちゃんはおかしくなってたデス。四葉は忘れることにするデスよ」

必死に作業を進めながらも可憐を気遣うその姿に、僕は目頭がアツクなるのを感じた。

「四葉・・・・・・本当に優しい娘に育っ・・・あ、ごめん、なんかすっげー眠くなってきた」

薬の副作用というやつか・・・。

「!? 兄チャマ! 駄目デス! 眠ったら死ぬデスよーー!!」

お決まりのセリフながら、おそらく間違ってないのがちょっと怖い。

「いや、でもものすごい眠気が・・・・・・」

「ならせめて、褒め言葉を最後まで言ってからにして欲しいデス!」

せめてって何だ。

テコでも言わない気持ちを固めた時、僕の意識が急速に遠くなり始めた。

「あーー・・・・・・駄目だ・・・」

「ちょ、ちょっと!? 兄チャマ?」

視界が霞み、四葉の声も遠くなっていく・・・・・・・・・。





「あははははははははっ!! そろそろ降参したらぁーー!!」

(鈴凛・・・・・・あとは、任せた・・・・・・)

「あははははははハッ!? ・・・・・・・・・あら・・・?」

(・・・・・・?)

「あわわわわわわ、ち、違うのよ! アニキがやれって・・・・・・!」

(・・・・・・)

「『お年玉アップしてやるから』って! 狡いよねー、アタシが金に目が無いのを知っててさぁ!」

(・・・金に汚い、の間違いだなぁ、それは)

「アタシもどーんと、アネキ達にご協力するからね!」

(・・・・・・・・・・・・)





「鈴凛ーー! お前何負けてんだぁ!」

どうやら僕が眠りの世界に落ちるにはまだ、早すぎたらしい。
四葉がもう網を解いてくれていたお陰で、難なく立ち上がることができた。

「あ、アニキー! 助けてーー!!」

「やかましい!!」

3人の前で土下座モード全開の鈴凛に向かって叫ぶ。

「これは・・・驚いたね・・・。・・・副作用の眠気に・・・耐えるなんて・・・・・・」

千影が驚くってことは、よほどこの副作用ってやつは効果が強いのだろう。

「驚いただとぉ! 漫画家の精神力をなめるな!! こちとら眠気に耐えるエキスパートだ!!!」

説明になっているかは分からないが、とにかく今はこの状況を打開する手を探すのが先決だ。
大砲はもう、砲身がたたっ斬られていて使い物にならない。
同じ薬を飲んだ以上、3人にもいずれ眠気が襲ってくるはず。
時間を稼げるものなら何でもいいのだ。


「兄チャマ、兄チャマ! これを使って下さい」

後ろからの四葉の囁き声と同時に、僕の手に何かが手渡される。

「これは?」

それは、炊飯器ぐらいの大きさのブラックボックスだった。
上面に幾つかのボタンがついていた。

「この部屋に入る前に渡されてたデスよ。ボタンを押すと、睡眠ガスが出て来るって言ってました」

「よし! ナイスご都合主義だ四葉!!」

睡眠ガスなら申し分無い!

「でも、起きていてくださるのなら、かえって好都合ですわ!」

「・・・・・・あまり・・・時間も無いしね・・・」

「手っ取り早く済ませましょ、お兄様」

3匹の雌ライオンの気配を感じた僕は、とっさにブラックボックスを構える。

「ふはははは!! これでクライマックスじゃあ!!」

「あーーっ、駄目! それ、赤いボタンを押したら駄目ーー!」

鈴凛が言い終える前に、僕の指は一番目立っていた赤いボタンを押し切っていた。

「どああああああーーーーーーーー!!!!! ダメだって言ったのにぃぃぃぃ!!!!!」

「うるさいな! 仕方ないだろ! 眠いんだよ僕は! 注意力だって無くなるさ!」

並々ならぬ鈴凛の絶叫に、思わず全員がその主に注目を寄せる。

「ア・・・アニキ! それ! 早く外に捨てて!」

「馬鹿言うな! それにしても何だこれ! ガスが出ないじゃないか!!」

「だからぁ! それ、赤いボタンは自爆スイッ」















可憐は、お兄ちゃんの夢を見ていました。

真っ白い光に包まれた、とってもかっこいいお兄ちゃん。

可憐を守ってくれるそのお兄ちゃんのお姿が、とってもとっても、頼もしく見えました。










「お兄ちゃん・・・。・・・・・・お兄ちゃん・・・」

左右に揺れる衝撃に意識を取り戻すと、抜けるような青空をバックに、可憐が僕を心配そうに
覗き込んでいた。

「あぁ、可憐・・・。おはよう。よかった、無事だったんだね・・・・・・」

壊れたタンスの布団から身を這い出すと、視界にほぼ半壊した可憐の部屋が広がる。
すぐ隣りでは、崩れた天井の下敷きになった四葉が気を失っていた。

「あ、あの・・・お兄ちゃん? 可憐、どうしてこんな格好してるの? それに、可憐のお部屋、
 どうしてこんな事に・・・・・・」

「それは、ワタクシ達が説明しますわ」

「?」

声のした方に目を向ける。

薙刀を携えた春歌。
ボクシンググローブの紐を、口で固く締める咲耶。
バズーカを構えた鈴凛。
真っ黒い本を手にしている千影。

4人が、殺意を剥き出しにして立っていた・・・・・・。


「可憐が無事で、ほんっと、良かったわねえ、お兄様」

「アニキ・・・、昨日アタシ達に何したか、覚えてるよね」

「・・・・・・」


血の気が引いていく。

「あら? 皆さん?」




冷気を乗せた風が吹いて、ガレキの上で歌っていたスズメ達が飛び去っていった。

今日は、とてもいい天気だ。





「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」





爽やかな新年の幕開けだった。








第8話に続く




あとがき

最後まで読んで頂いてありがとうございます。
開き直った訳では無いのですが、今回も嫌がらせに近い長さになってしまいました。
前回も書きましたが、シリアスの前のギャグということで、お楽しみ頂けたのなら本当に幸いです。
まあ・・・各所に反省すべき点が多々あるのですが、これ以上長くするのはやめにしましょう。
どんな事でも良いですので、ご感想、ご意見等頂けましたらありがたく思います。
それでは機会がありましたらまた次回も、お付き合い下さい。



いちたかさんへの感想はこのアドレスへ
to-show@k6.dion.ne.jp

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