(前編のあらすじ)
年も押し迫った12月31日。
消化試合のようなまったりとした雰囲気は、突然の四葉の登場によってブチ壊された。
指定されたテレビのチャンネルに合わせると、そこには僕の妹達の姿があったのだ。
作者:いちたかさん
「兄チャマ、驚いたデスか?」
四葉が唖然としている僕の顔を覗き込んで言った。
「そりゃあ・・・びっくりしたけど・・・・・・。これ、一体何の番組?」
言うと同時に、僕は新聞を手に取る。
テレビ欄を見ると、そこには
『電波に乗せてお手伝い! あなたに伝えたいこの想い!!』
という文字が躍っていた。
高校生妹トリオが何の目的で行ったのか、だいたい予想がつく。
「そうかー・・・・・・」
ため息と同時に僕は頭を抱える。
「ホントは四葉も行きたかったデスけど・・・参加資格が高校生以上だから、諦めたの」
そう言いながら、ビデオのセッティングを始める。
録画までしようというのか。
「お姉ちゃん達、何やるんだろうね」
「わたくし達にも黙って行かれるくらいですから、よほどのお考えのことがあってのことなんでしょうね」
妹達は身内のテレビ出演に興奮しているのか、いつもより多弁に言葉を交わしている。
暖かい空気に満たされた部屋に、別の熱気がこもっていくのが分かった。
何やるつもりかって、そりゃあ・・・企画名見れば一目瞭然。
どうやら僕は全国ネットで妹に『告白』されてしまうらしい・・・・・・。
逃げようかとも思ったが、見なければ見ないであの3人に何をされるか分かったものではない。
僕は覚悟を決めることにした。
ビデオのセットを終えて僕の隣りに寄ってきた四葉に引きつった笑顔を返し、画面を見ると、
丁度CMがあけたところだった。
妹達の目が、テレビに釘付けになる。
「お姉ちゃまたち、いつ出て来るのかなぁ?」
笑う花穂に僕は、さぁ、とだけ返した。
なるべくなら永久に出て来ないことを祈りながら、番組の進行を待つ。
どうやら司会と思われたお笑い芸人もゲストらしく、本当の司会は局アナがやるらしい。
場の雰囲気に似合わず、スーツに身を固めた初老の男性が画面中央に現れる。
司会:「皆さん、今年もあと、4時間と少しを残すところとなりました」
司会者が、番組の趣旨説明をしていく。
気持ちを伝えたい人に、叫ぶことでその気持ちを伝えてもらうという、予想通りの内容だった。
ただその際、何らかのパフォーマンスが必要なようだ。
司会:「さぁ、それではまず、エントリーナンバー1番の方」
紹介に合わせて、画面の奥からフリップを持ったツインテールがイイ笑顔で現れた。
(トップバッターかよ)
「わーい、おねえたまだー!」
妹達の歓声が耳に響く。
司会:「お名前をどうぞ」
咲耶:「棚又市から来ました、佐倉咲耶です。・・・お兄様! 見てるーー!?」
胸元に小型のマイクをつけた咲耶がこちらに手を降りながら言った。
僕としてはいきなり他人のフリをしたいような気持ちにさせられたが、その言葉に妹達が更に大きな歓声を
上げる。
「お姉ちゃんがんばれー!」
「もっちろん見てますわー! にいさまもきっと大喜びですの!」
「フレー! フレー! お姉ちゃまーー!」
「アネキの心を震わすもの・・・いっつ・ざ・てれびじょん!」
間違ったテンションで叫ぶ鈴凛を尻目に、僕はブラウン管を見つめる。
司会:「はは、元気ですね。今日は、誰に対して想いをぶつけてく」
咲耶:「お兄様、LOVEよーーー!!」
(早っ)
叫んだ通りの言葉が引っくり返したフリップに書かれていた。
たぶん段取りを完全に無視しているんだろう。
司会者がちょっと焦ってるのが分かった。
しかしそこはさすがはベテラン。
テンション上がりまくりの咲耶の手綱を引こうと必死だ。
司会:「いや、司会の仕事を減らしてくれるとは、実に優しいお嬢さんですね」
会場の笑いを利用して上手くペースを元に戻すと、今度はアシスタントとおぼしき女性が
リンゴの入ったバスケットを手に、2人のもとにやって来た。
司会:「咲耶さんはこのリンゴを使って、自分のお兄さんになんと、愛の告白をしてくれるそうです」
司会者が言い終わるか終わらないかの内に、咲耶がアシスタントの女性から真っ赤なリンゴを奪い取る。
それを右手で握り締め、カメラの前に力強く差し出すと、
咲耶:「お兄様、これが私の気持ちの強さよ!」
司会:「あの、咲耶さん、まだ・・・」
咲耶:「ふん!」
ぐしゃあ!
掛け声と共に、いとも簡単にリンゴは粉々に砕け散った。
「えーーーっ」
僕と妹達はほぼ同時に声を上げる。
会場全体がさざ波のように引いていくのが分かった。
やがて、静けさに包まれた会場でただ一人、首をひねっていた咲耶が沈黙を破る。
咲耶:「ごめんなさい、今のは失敗よお兄様。汁の滴り方が美しくなかったわ」
頭が痛くなってきた僕の気も知らずに、次なるリンゴに手を伸ばす。
司会:「あ、あの、咲耶さん、もう結構ですよ」
咲耶:「うるさいわね、あんたは黙って私にリンゴを渡していればいいのよ!」
(何でお前そんなに偉そうなんだよ)
呆然とする僕たちの前で、次から次へとリンゴを粉砕していく咲耶。
咲耶:「ふん! はあ!」
司会:「あ、はい、それでは咲耶さん、どうもありがとうございましたー」
どこからともなく現れた男達に押さえつけられ、咲耶が退場していく。
30秒ほど抵抗していたが、やがて画面からその姿を消した。
僕はひとまず、胸を撫で下ろす。
しかしまだ春歌と千影が残っている以上、安心は出来ない。
下手したら今のが一番マシでした、なんてことになりかねないし。
司会:「それでは続きましてエントリーナンバー2番の方、どうぞ」
袴に剥き身の薙刀(本物)を携えた娘が姿を現す。
もう驚きません。
春歌:「お初にお目にかかります。棚又市から参上致しました、佐倉春歌です」
丁寧に頭を下げる春歌に、司会者もどこか安心したような表情になった。
薙刀光ってるけどね。
司会:「言葉遣いが丁寧なお嬢さんですね。さてここで、もうお一方登場して頂きましょう」
司会に促され、奥から出てきたのはクールな笑顔の千影だった。
千影:「エントリーナンバー3・・・佐倉・・・千影・・・」
司会:「お二人はどういったご関係なんですか?」
「あっ」
思わず声を上げる。
「どうしたデスか? 兄チャマ」
春歌:「先ほどの咲耶さんもそうなのですけれど、ワタクシたち3人は姉妹なんです」
千影:「・・・それだけじゃない・・・まだ9人の妹達がいる・・・・・・13人兄妹なんだよ・・・」
(やっぱり・・・)
全国ネットで家庭事情大暴露。
案の定、会場からは信じられないという悲鳴が上がっている。
司会:「いやこれは驚きましたね。お2人も、お兄さんに向けてパフォーマンスをしてくれるそうですが、
幸せなお兄さんですね」
紀香:「よっぽど素敵なお兄さんなんでしょうね。機会があったら是非お会いしたいですね」
咲耶:「ちょっとアンタ! 私のお兄様をたぶらかすつもり!?」
突如乱入してきた咲耶が藤山紀香につかみかかる。
(お前はもう出てくんな!)
藤山紀香の悲鳴を聞きながら、僕は祈るような気持ちでいた。
やがてスタッフに取り押さえられながら、咲耶は退場。
司会:「さ、さて、では早速お二人にパフォーマンスをお願いしましょう」
春歌:「分かりましたわ。ご安心下さい、ワタクシ達は咲耶さんのように常識を外れた行為は
いたしませんから」
微妙にトゲのある言葉を発し、春歌がリンゴを司会者の頭に乗せる。
春歌:「今からこれを弓矢で打ち抜きます」
(何処が常識的な行為だよ!)
会場の引き気味の笑いと同時に、司会者が苦笑しながら春歌に話し掛ける。
司会:「あの、春歌さん。何か台を用意しますので、そちらでやられた方が・・・」
春歌:「まぁ! 出来ないと仰るのですか!? 貴方それでも日本男児なのですか!?」
司会:「いや、その・・・」
春歌:「兄君さまならきっと、喜んでやって下さいますのに・・・」
一億積まれてもやりません。
春歌:「ではそちらの方は、いかがですか?」
指差した方には、深山雅治。
雅治:「あ、いや、ごめんなさい、俺もちょっと」
春歌:「ふがいない! ここには大和魂を持っておられる方はいないのですか!? キリキリキリ・・・」
キリキリキリとか言わないで下さい。
殺気立ってる表情と相まって、ホントに怖いです。
春歌:「では貴方! お笑い芸人なのですから、体を張って当然!」
芸人:「え?」
少し戸惑いつつも、笑いの取り所だと知るとステージの中央へ出て、自分からリンゴを頭に乗せる。
妙なポーズをとって笑いを取ろうとしているところを見ると、どうやら会場の雰囲気は
『春歌の行動はギャグ』になりつつあるようだ。
・・・ご愁傷様。
何故かそんな言葉が脳裏に浮かんだ。
春歌:「では、参ります」
弓矢のチェックを終えた春歌が、振り向きざまに矢を放つ。
ビュン!!
人の命が懸かってるんだからもっとよく狙えよ、と心の中でツッこんだ時には、矢はリンゴを貫き
セットの梁へ突き刺さっていた。
会場にも部屋にも、嫌な沈黙が流れる。
「あんびりーばぼー」
鈴凛が珍妙な英語を発したが、会場に上がった悲鳴の方が気になった。
パニックになりつつある雰囲気の中、春歌が一人やりきった表情でいる。
春歌:「兄君さま、春歌のご奉仕・・・楽しみにしてくださいませね・・・ポッ」
「近所の人も見てるんだから滅多なこと言わないでー!」
もうだめだ。
冷静でいようと努めてきたが、声を上げてテレビにしがみつく。
「もう帰って来い! な? 頼むから!」
「・・・お、お兄ちゃん・・・?」
「兄や、何だか怖い・・・くすん」
「あ、兄チャマ、落ち着くデス! きっと千影チャマが何とかしてくれるデス!」
ピーン!
「千影ええぇぇぇ! 一番心配なのはお前だよ!」
千影:「ラ・イズラ・ハルエス・・・・・・ヒルケ・ニーザ・ヴィーウル・・・・・・」
「呪文唱えてるー!」
画面の端っこで千影がリンゴ片手に魔方陣。
千影:「兄くん・・・心配しなくていい・・・・・・これは・・・マイリンゴだよ・・・」
「んなことどうでもいい!」
リンゴ:「そうです。ご心配なさらずに、お兄さん」
「わけわからーーん!!」
カッ!
一瞬光に包まれた後、ステージには巨大でグロテスクな魔物が3体・・・・・・。
千影:「・・・・・・失敗・・・エヘ」
「あぁ・・・・・・」
頭の中が真っ白になっていく。
完全にパニックに陥った会場から、老若男女様々な悲鳴が木霊する。
藤山紀香が食われかけてる。
あ、咲耶が助けに入って魔物をボコボコにし始めた。
春歌:「ワタクシも加勢致します!」
薙刀を構えた春歌が別の魔物に向かう。
春歌:「これ以上の暴挙は許しませんよ! とうっ!」
千影:「一人・・・一体だね・・・低級だけど・・・一応・・・気をつけて・・・・・・」
千影が魔物に手の平を向けると、魔物の左肩に爆発が起こり、腕が吹き飛んだ。
ていうか爆発のとばっちりでセットが崩れ始めました。
腕の下敷きになったお客さんもいるみたいです。
春歌:「やあ! たあ!」
魔物の攻撃をひらりとかわし懐に潜り込むと、気合と共に魔物を斬りつける。
ていうか魔物と一緒にセットもぶった斬ってます。
咲耶:「お兄様と私の愛の饗宴を! 邪魔すんじゃないわよ!」
投げ飛ばされた魔物が、セット崩壊に拍車をかける。
崩れ行くセットと、噴き出す魔物の血液。
逃げ惑う人間たちの後ろで、暴れ続ける6つの影。
「あねぇ! アンタたち・・・。アンタたち、格好いいよ! 嗚呼・・・ッ!」
何故か衛が絶叫して、凄惨な光景は一面の花畑へと変わった。
「わーっ、きれいなお花がたくさん咲いてるよー」
花穂が呑気な声を上げる。
僕はゆっくりと立ち上がると、ふらふらと玄関の方へと向かう。
「あ! 兄チャマ! どこへ行くデスか?」
「逃げる。ここにいたらあの3人が帰ってくる。だからもう逃げる」
「そんなのダメデス! 四葉が何されるか分からないデス!」
「いやだあぁ、はなせえぇぇ」
「ダメデス! 行かせないデスー!」
足にしがみついていた四葉に、ビデオデッキで頭を殴りつけられた。
「ぐわーー!」
うつぶせに倒れこみ、僕の意識はブラックアウトしていった・・・・・・・・・。
「・・・うーん・・・」
「・・・様・・・・・・お兄様・・・」
「んー・・・、・・・・・・咲耶あああ!」
「お兄様、どうしたの? そんなに驚いて・・・」
「え・・・・・・」
体を起こし、部屋を見回す。
コタツで年越しそばを食しながら、妹達が談笑していた。
「兄上様、お目覚めですか」
鞠絵の問いかけに、ゆっくりと頷く。
「兄くん」
「ひっ」
背後から囁かれ、思わず振り返る。
「千影・・・あの・・・収集は・・・?」
「心配ないよ・・・少し疲れたけど・・・・・・記憶は抹消しておいた・・・」
自業自得かと。
「・・・視聴者全員にやったの・・・?」
「電波を利用させてもらってね・・・・・・あと精霊たちにも少し・・・力を借りたかな・・・・・・」
「お、お疲れ様・・・って、どうして僕の記憶は残ってるんだよっ」
そう言うと千影は、一段とクールな笑みを浮かべて、
「憶えていてくれる人がいなければ・・・悲しいだろう・・・・・・?」
「おおお前ら3人が憶えてればいいだろうが」
「・・・これ以上・・・言わせないでよ・・・・・・兄くん・・・」
半泣きの僕を尻目に、千影はそばを食べに行ってしまった。
とりあえず、気分を落ち着ける。
11時10分。
もう少しで、妹に殴られて気絶したまま年を越すところだった。
衛、花穂、白雪、亞里亞、雛子が、コタツの一辺を占領して眠っていた。
僕は、とりあえず空いている場所にすべり込んだ。
「どうぞ、兄君さま」
「あ、ありがと」
春歌からそばを受け取り、即座に一口すすると、何かを待つように僕を見る視線に気付いた。
春歌の笑顔だった。
「・・・・・・。あ、春歌、気持ち・・・確かに受け取ったよ・・・」
「そんな・・・春歌は妹として当然のお仕えをしたまでですわ・・・」
「2人で何の話してんのー」
顔を赤らめる春歌の隣りで、鈴凛が不思議そうに僕を見つめて言った。
「いやいや、R指定の話ですよ。15歳以下厳禁」
「現金!?」
守銭奴の天然が、場の空気をより一層明るくする。
そんなほのぼのとした空気の中、妙に腰をくねらす春歌と、笑顔の咲耶がなんだか怖かった・・・。
「5、4、3、2、1、ゼロ。はい、あけましておめでとう、みんな」
日付が変わり、僕の言葉ををかわきりに一斉に挨拶が飛び交う。
さてこれからどうしようかと考えたが、とりあえず眠っている年少組を部屋に連れて行くことにした。
「花穂、衛、白雪、起きて。部屋に行って寝よう」
3人が目をこすりながら体を起こす。
「あ・・・おはよう・・・お兄ちゃま・・・」
「あれ・・・あっちゃー、寝ちゃったんだ。あけましておめでとう、あにぃ」
「んー・・・・・・あらら・・・おめでとうございますですの・・・」
「あけましておめでとう。残念だったね、衛は」
寝息をたてる雛子と亞里亞を抱え上げながら、今年こそは年越しまで起きていると
意気込んでいた衛を思い出した。
「兄上様、わたくしもお手伝いいたします」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
「いえ、もう眠ろうと思っていたところですから・・・」
「あ、それじゃあ可憐もお手伝いしまぁす」
可憐が新春一番の動きを見せる。
「そう、ありがとう。それじゃあ、可憐は2階の白雪をお願いね」
「はぁい」
階段を登っていく2人を見送り、僕と鞠絵は4人を寝かしつけに行く。
全員を布団に入れた後、僕達は一度外に出た。
夜空にぼうっと浮かぶ月が、幻想的だった。
「鞠絵、夜更かししちゃって、体は大丈夫?」
鞠絵はマフラーをかけなおすと、月明かりで白く照らされた顔を僕に向け、微笑んだ。
「心配なさらないで下さい、折角兄上様がご一緒なんですもの・・・。・・・こんなに調子のいい日が、
ずっと続けばいいのに・・・」
「大丈夫さ、来年も再来年も、一緒にこうやって新年最初のお月様を眺めようよ。あったかいお茶なんか
飲みながらさ」
肩を抱き、囁くように言った。
鞠絵が小さくうなづく。
「目が覚めたら、全員で初詣か。楽しみだな。・・・・・・・・・おやすみ」
「おやすみなさい・・・兄上様・・・」
後編に続「お兄ちゃん」
「うわっ!」
色々あったが、いい感じでまとまったと思っていたので、背後からの可憐の声に過剰に反応してしまう。
僕のあまりにも大きなリアクションに、可憐の方も目を丸くしていた。
「ど、どうしたの? ・・・お兄ちゃん・・・」
「いやいや、何でもないんだけど・・・何?」
「あのね、可憐ももう、お休みしようかと思うんだけど・・・」
うつむきながら、僕の服の袖をつかむ。
「可憐、1人のお部屋でしょう・・・? なんだか少し怖くって・・・目をつぶると真っ暗で、周りにもし
お化けさんがいたらどうしようって思うと、『お兄ちゃん助けて』って、涙が出てきてしまうの。
・・・お兄ちゃん・・・可憐が眠ってしまうまで、おそばにいてくれませんか?」
「あ、うん、なんだ、そんなことか。分かった、後ですぐに行くよ」
可憐らしいなと思いつつ、僕は笑顔で承諾する。
「本当、お兄ちゃん!? わぁ・・・可憐嬉しい・・・。それじゃあ、お支度して、待ってるね」
満面の笑顔で階段を駆けていく可憐。
僕は苦笑しながら食事部屋のドアノブに手をかける。
(・・・支度?)
ふと気になった言葉に、可憐を呼び止めようと思ったが、もう既に部屋に入ってしまったようだった。
仕方無しに部屋に戻ろうとして、足を止める。
(・・・待てよ・・・)
今、食事部屋には高校生トリオが揃い踏みしている。
四葉も鈴凛も寝に行ってしまったら、この時間帯、果たして僕は可憐の元へ安全に行けるだろうか。
それ以前に、僕の身が無事でいられるだろうか、いやいられない。
「よし」
そのまま可憐の部屋へ直行することに決めた。
あわよくば食事部屋には戻らず、寝てしまおう。
可憐の部屋の前に来て、ノックをする。
「可憐、来たよ」
「あ・・・、お兄ちゃん。・・・・・・どうぞ」
ドアの向こうから聞こえて来るくぐもった声に、僕はドアを開けることで答える。
部屋の中は真っ暗だった。
「どこ? 見えないよ」
靴を脱ぎ、部屋の中まで進んでいく。
布団の辺りまで来た時、不意に玄関の方で鍵をかける音がして、部屋に明かりが満たされた。
そこに立っていたのは・・・・・・
「2人っきりになれたね、お兄ちゃん」
体操着を着込んだ、笑顔の可憐。
「・・・・・・・・・」
「衛ちゃんにやってたみたいに、ロープもあるんですよ?」
こんなのは・・・・・・
「お兄ちゃん?」
「やだーーーーーーーーー!!!」
今度こそ後編に続く
あとがき
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
今回はテレビの描写に非常に苦戦してしまいました。
雰囲気が上手く伝えられているかどうかは不安ですが、やるだけの事は出来たかなと思っています。
そのせいかどうかは分かりませんが、今回もかなり長くなってしまいましたね。
次の後編が終わった後、少しの間シリアスな調子が続く予定なので、その前にギャグを爆発させてみよう
という気持ちで、このシリーズを創っています。
そんな私事はさておき、ご意見・ご感想、頂けたら本当に嬉しいです。
また機会がありましたら、お付き合い下さいませ。
いちたかさんへの感想はこのアドレスへ
to-show@k6.dion.ne.jp
トップへ SSの部屋へ