作者:Prof.ヘルさん
BGM:Go! Go! Love!
T
「……それじゃあだめですの」と、その少女は呟いた。
U 白雪
「にいさま、にいさま、にいさまぁぁ〜〜!!」
……姫は、手に、その手紙を握り締めて廊下を走っていました。
何で走ってるのかといえば……ウフフ、それはまず、最初ににいさまに伝えたかったから……です◇
ぱたぱたぱた……やっぱりスリッパじゃあ走りにくい、ですの…えへへ。
廊下を走ったあとは階段……姫のにいさまの部屋は3階……うぅ、にいさまに早く伝えるために、頑張らなくっちゃっ!
ぱたぱたぱた……ふ、ふぅ、さ、さすがに一気に駆けあがるとつらい…です…の……。
「……白雪? そんなに急いで、どうしたんだい?」
俯いていた姫は、その声を聞いて急いで顔を上げました。――姫の大好きな、にいさまの声◇
にいさまは姫を慌ててるようだと思って、少し驚いていました。
えへへ……すこし、お転婆だったかしら?
「あのね、あのね、にいさま、驚いて下さいっ◇ 実は、こんなのが送られてきちゃったんですの!」
そう言って、姫はにいさまに今までにぎりしめていた手紙を差し出しました◇
姫がにぎりしめていたせいですこしくしゃってしちゃってるけど……
「なになに……
『拝啓 白雪様。この度は『キッチンバトル DE DON』素人挑戦者枠応募ありがとうございます。
公正な抽選の結果、貴方が選ばれました。
つきましては、2月11日、××にお願いします。
なお、チームは5人構成となっておりますので、5人チームでお願いします。
キッチンバトル DE DONより』
……ふーん……ってなにィ!?」
にいさまはひどく取り乱しているみたい。
えへへ……姫よりおてんばですの◇
「そういうわけで、にいさま、ぜひ、姫と一緒に出てほしいんですのっ!」
「……むむむ、僕は全く料理できないんだけど……いいの?」
「はいっ! にいさまとでたいんですのっ!」
姫がそう言うと、にいさまはすこしだけ考えて、いいよ、といってくれました◇
ありがとう、にいさま、と姫が言ったとき、
「その話、チェキよっ!」
『はい?』
姫とにいさまは聞き覚えのある声が響いたので、辺りを見回しました。
でも、どこにも見当たりません。
そのとき、廊下と面した窓で音がしたんですの。慌ててそちらに目をやると……四葉ちゃんが入ってくるところでした。
――四葉ちゃん、そんなに脚をあげちゃ、そのなんていうか、はしたないですの……四葉ちゃんは、にいさまよりおてんばさんです◇
「よいしょっと」
四葉ちゃんは窓枠を乗り越えて入ってくると、びしぃ、と呆然としている姫に指を突きつけたんですの。
「クフフフフ、四葉もそれにでるデスっ! おっと、心配のチェキはゴムヨウよっ! 四葉に任せれば、ドーナツとかなら『お茶の子さいさい』なんだからっ! もちろん他のクッキングだってノープロブレムよっ」
「お、お茶の子さいさいって……」
ど、どこでそんな言い回し覚えたのかな……? おもわず、四葉ちゃんがイギリスじゃなくて、関西に住んでいたように錯覚してしまいました。
ともかく、雛子ちゃんや亞里亞ちゃんにはまだ無理だろうし、鞠絵ちゃんや衛ちゃんが料理しているの見たことないし、可憐ちゃんや花穂ちゃんは苦手だって聞いたし……。
四葉ちゃんのドーナツは、姫たちの間でも評判の美味しさですの。たぶん、任せても大丈夫ですの。
じゃあ、あと2人はどうしましょう? 咲耶ちゃんと千影ちゃんと春歌ちゃんかぁ……。
咲耶ちゃんは――、一時期がんばっていたみたいですの。
千影ちゃんは――、珍味を扱うのに長けてますの。
春歌ちゃんは――、和風は姫では敵わないですの。
うーん、困ってしまいますの……
そのとき、千影ちゃんと春歌ちゃんが向こうの方から歩いてきました。
春歌ちゃんは姫たちに気付くと、
「こんにちは、兄君さま、四葉ちゃん、白雪ちゃん。こんな場所で、一体どうしたのですか?」
「実は……」
姫はかいつまんで事情を説明しました。
あの3人の中からは決めれません。だから、最初に会ったこの二人に、応援を頼むことにしました。
「なるほど……そういうことでしたら、ワタクシ、お手伝いさせていただきますわっ」
「フフッ…………たまには……そういうのも悪くないね…………」
ふたりとも、協力してくれるみたいっ。
――そういうわけで、キッチンバトル DE DONに向けての、チームは決まったんですのっ◇
V
決戦の日を明日に控えた今日――姫たちの足並みは、軒並みずれていました。
にいさまは本当に料理音痴らしく……つい先日まで、塩と砂糖を間違えるほどだったし……曰く、『この一週間でだいぶ成長したぞ』。
四葉ちゃんは神出鬼没で、いつのまにかどっか行っちゃってるし……曰く、『体が動いちゃうの……』
春歌ちゃんはどうやっても和風にアレンジしてしまうし……曰く『て、手が勝手に……』
千影ちゃんはなにか不思議なものを持ってくるし……曰く『隠し味に………最適なんだ……』、ちなみに、姫は『それ』がなんだかよく分かりません。どうにも、現世で存在しないように見えるのは……さすがに姫の気のせいかも――気のせいであって欲しい……ですの。
ともかく、どうにも足並みが揃わなくって……ついつい姫は怒ってしまったんです...『本当に料理する気はあるんですのっ!?』って...
だって……フレンチなんだもん……。
でも、みんな違うもの作るし……。
そうだ、これが一番ひどいんですの。四葉ちゃんが、近頃友達のちゅーかちゃんに押してもらったとかで『ラーメン』と餃子を……確かに、おいしいです……でも、あんまりですの……。
だから姫……ついつい投げ出してきちゃった……。
(あーぁ、みんな今ごろ呆れてるだろうなぁ……)
姫が誘ったのに、姫が投げ出しちゃうなんて……
みんなが一生懸命やってるのは分かってるのに。
にいさまだって、なれない料理を頑張ってやっているっていうのは分かるんですの。――ソースと醤油を間違えたのにはちょっと閉口したけれど。
でも、どうしよう。もう、みんなと合わす顔がないよ……。
姫は途方にくれてしまいました...
これから、どうしよう……
やっぱり出場しません、じゃ無責任だし……。
姫の……姫の教えかたが悪かったのかなぁ?
ともかく、もうなんだかどうでもいいような気がして……
でも、やっぱり未練はあって……
あぁん、もう、どうしよう……
「―白雪」
あぅ、にいさまがいてくれたら、姫にアドバイスしてくれるかな? ――だ、ダメですのっ! 何とか姫自身がこの苦境を乗り越えれるよう努力をしなくちゃ……。
「――白雪?」
うぅ、にいさまの幻聴まで聞こえてきちゃった……
そんなに、姫は疲れてるのかなぁ……?
「――おーい、白雪さーん」
「ひゃぁ!」
突然目の前に出された手で、姫は我にかえりました。
「に、にいさま」
にひひ……幻聴なんかじゃなかったですの◇
にいさまはさっきとまるで変わらない表情で、
「さぁ白雪。休憩はもういいかな? 白雪が戻ってこなくちゃ始まらないよ」
と言いました。
はゎ……にいさま、どうしてにいさまは、姫の気持ちをそんなにもあっためてくれるの?
今までくよくよしていたのがバカみたい……じゃなくて、たぶんバカだったんですの。
「明日、勝つんだろ? なら、白雪が教えてくれなきゃ」
「にいさま……」
そうよっ、姫! ファイトですのっ!
「じゃあにいさま……」
「なんだい?」
「姫がスパルタで料理を詰め込むですのっ!」
姫の剣幕に押されてか、にいさまがげっ、とうめきました。
にいさまの送ってくれた塩で、姫は元気を取り戻したんですの、むふん◇
―――その日の特訓は、熾烈を窮めました。
「ほらっ、四葉ちゃん、ぼうーっとしないっ! 春歌ちゃん、それ以上弄くっちゃダメですのっ! 千影ちゃん、その黒いヤモリは混ぜないで下さいっ! にいさまっ、それは唐辛子ですのっ!」
姫はいわゆる監督でした。
みんなの動きを逐一観察して……的確に指示を出すこと、それが姫に与えられた仕事です。
「四葉ちゃん、それは切りすぎですのっ! 春歌ちゃんっ、栗きんとんにしないで下さいっ! 千影ちゃんっ、そのなんて表現すれば適切か分からないような色の植物かどうかも分からないようなものは入れちゃダメっ! にいさま、あと5分ですのっ!」
止まるか動きすぎてしまう四葉ちゃんをたしなめ、
一人歩きして和風に進む春歌ちゃんを止めて、
謎の食材を入れようとする千影ちゃんを食い止め、
なぜか調味料を間違えるにいさまを止める――。
姫は必死に指示を下さいました。
そのかいあってか、みんなもだいぶ慣れてきたようです。
「白雪ちゃん、頑張るのよっ! お兄様たちもファイトよっ」
「……咲耶ちゃん、涙を流す場面じゃないと……」
「いいえ、鞠絵ちゃん、こういう場面に涙は必要よっ」
「そうかな」
「そうなのよ」
そんな白雪たちを見守る影があったとかなかったとか。
「――今日は長い一日だった」
にいさまが呟きました。
日が変わって2月11日。キッチンバトル DE DONに出演してそれが終わった白雪たちは、帰路についていました。今は、電車の中です。人は休日の遅くということもあって姫たちしか乗っていません。
咲耶ちゃんたちも応援しに来てくれて……とっても楽しかったですの◇
その結果は――
「やっぱ白雪の特訓のおかげだな」
「いやん、にいさまたちの頑張りですのっ」
そう――なんと勝っちゃいましたっ◇
姫はまさか勝っちゃうなんておもいもしなくって……いまだに実感がないぐらい。
偶然にも向こうのチーフシェフが風邪を引いたという偶然も重なって……
あぁん、もう姫、とっても嬉しいですのっ◇
「やっぱり白雪の誕生日だからだね」
「えっ!?」
あ、そう言えば……今日は姫の誕生日……でしたっ。
あぅ…いまのいままで、忘れてたですの……。
「んん、その表情から察するに、どうやら忘れていたようだね」
「名推理ですの……」
うぅ、料理対決にだけ目が言ってて、全然考えもしなかったんですの……
そんな姫に、にいさまは笑って、
「今日の変わりに、明日、どこかに連れて行ってあげるよ。そう――これは、とりあえず、誕生日のプレゼント」
にいさまは辺りを見回して……電車の揺れで気持ちよく寝ているみんなの様子を確認してから、姫のおでこに……キッスをくれました◇
にいさま……大好き、ですのっ◇
姫は、にいさまの肩を枕代わりに、眠りにつきました………。
今回の懺悔
すみません。絶対白雪ちゃいます、これ。
すみません。料理冒涜してます、ワタシ。何にも知らないくせに料理のネタを使ってすいません。しかも料理しているところはっきり言って出てないし。
すいません。木下さくら先生すいません。キッチンバトル DE DONの名前をいただきました。
すいません。一人称は、やっぱり難しいです。
すいません。いつものとおり、噛み切れない中途半端です。
すいません。∞螺旋、読んでください◆
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