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名(迷?)探偵 四葉 改め ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!
(鈴凛BDSS)

作者:Prof.ヘルさん


目覚めたら異世界⇒これってゲンジツ?

 

「ふわぁ……」

私は大きく欠伸した。うう、さすがに眠いわぁ……

時計は、明け方の3時を指している。えぇっと、丑寅の刻ってところだ。

やっぱ、徹夜は二日連続でするもんじゃないわね……。そーいや、近頃咲耶ちゃんに、『肌荒れてるんじゃない?』なんて言われちゃったっけ……やっぱ、睡眠は必要かなぁ。アニキだって、肌がスベスベの方がいいだろうし……

……よし、必要ということにしよう。かのナポレオンだって、三時間は寝てたんだもの。私だって、三時間ぐらいは寝よう。

というわけで頭脳明晰な鈴凛ちゃんは、作業効率を上げるために、自分のうちから溢れ出てくる眠気を抑えるために、そしてなにより自分の肌を保つために、44時間ぶりに、眠りの世界へと入っていくのだった。

 

――私は泉のほとりに立っていた。

(……ここどこ?)

泉を見る。なみなみとある水は、そこの方が見えるほど澄んでいる。周りを見れば、新緑が目にまぶしい森林に囲まれている。空を見上げれば、夕焼けのような、そうでもないような、とにかく、そんな色の空が広がっている。

残念なのかもしれないが、私はまったくこんな場所を知らない。(ゆえに)これは夢である。

と、現実主義者である鈴凛ちゃんは考えた。

(覚醒夢ってやつよね……)

そうと分かれば、一度しておきたいことがある。夢の中で頬をつねったら痛いか、常々考えていたのだ。私の聞いた話によると、視覚の記憶整理のために起こるとか。つまり触覚は覚醒していないので、頬をつねっても痛みを感じないと聞いたが……百聞は一見に如かず、好奇心旺盛な私は、自分の頬をつねった。

………別段、何とも無いような、痛いような……いまいちよく分からないわねぇ……もう片方もやるべきか、やらないべきか………

私が悩んでいると、唐突に、後ろから声がかけられた。

「あなた、「りんりん」さんですよね?」

両側の頬を引っ張りながら(結局、いまいちよく分からなかった)、振り向くと女の人がいた。うーん、自分の夢で尋ねられるのって、なんか不思議。

「うん、そーだけど? あなたは?」

「はじめまして、私は未来(スクルド)っていいます。………何やってるんですか? その手」

手? ああ、そういえば、頬を引っ張ったまんまだった。……はずかしい……。私は慌てて手を離した。

「あ、いや、なんでもないです………で、そのリクルートさんがなにか用ですか?」

未来(スクルド)です」

スクルドさんは、憤然としていった。あーごめんなさい……

「まぁいいんですけど」

スクルドさん(16・仮)はそう言って、急に申し訳なさそうになった。

「実は私の部下の手違いで、あなたの来世……二十万と七六三五年先の魂を見失ってしまって……」

二十万と七六三五年………

私は呆然とした。なんだって、夢の中で来世? 千影ちゃんじゃあるまいし。そんな私に目もくれず、スクルドさんは言う。

「というわけで、魂の型が同じなあなたに、少しの間、やってほしいいんですけど」

私は眩暈を覚えた。いくら夢とはいえ、私の来世ですと?

私が言葉に詰まっていると、よよよ、と、スクルドさんが泣き崩れる。「でも、このままじゃ、あなたの来世は、魂が無いので、死んでしまうんです」

え゛。……うー、夢だけに、それは寝覚めが悪いわ………あーもう、わかった、分かりました。やればいいんでしょ、やれば!

「助かります。ふぅ、これで姐さん達に怒られなくてすむわぁ。というわけで、ここにサインを」

なんか言ったのが気になったけど。「サイン?」

「ええ、運命着手許可証(ノルンズ・パーミット)です」

……よくわからないけど、とりあえず、名前を書けばいいのね。……サラサラサラっと。それにしても、夢で名前を書くとはおもわなかったわ。

うーん、字が汚くて見づらいけど……ま、読めないこともないので、オッケーです」

なんか、かなり失礼なこと言われた気がするわ……

と、スクルドさんが、虚空から杖のようなものを取り出した。そして、あたしの周りの地面に、何か模様をかいてゆく。

「……何書いてんですか?」

「『陣』です。……できた!」

うーん、我が夢ながら、先が見えないわ。

「ナビゲーターを一名つけますので。トーカちゃん?」

「はぁ〜い!」

虚空から、可愛らしい声とともに、女の子があらわれたじゃないの! さすがの私も、これには驚いてしまった。

「トーカちゃん、どういうお仕事か分かりますね?」

「ハイ、任せてください、未来(スクルド)様」

トーカと呼ばれた女の子は答えた。改めてみてみる。女の子は、トーカは、大体10歳といったぐらいだろうか。白のワンピースをきていて、頭に巻いたリボンがショートの髪に似合っている。それと。スクルド様、なんて呼ばれているんだから、もしかしたら、スクルドさんは、偉いのかもしれない。

「じゃあ行きますよ」

スクルドさんは、言った。そして、何やらを唱え始める。

「……………………………………………(←けっして、しゃべっていないわけではないが、あたしには何を言っているのか分からない)」

突然、あたしの周りが青白く輝きだした。その光は、一瞬にして、あたしの周りの風景まで飲み込んだ。青白い輝きの空間にいるのは、私と、トーカだけだ。

「じゃあ、行きましょう、鈴凛さん」

トーカは、あたしの前を飛んでいった。私はトーカの後ろにつづいた。ちょこんと、背から突き出た羽で飛んでいるらしい。うーん、不思議ねぇ。

「わたしはトーカです、鈴凛チャン。本来は、時と精神の世界(クロノデナジー・ワールド)で<時間的複雑構造体(クロノマチック・コンプレックス)>の修復担当官(リノベーター)なんだけど、運命の女神(ノルン)の末妹未来(スクルド)様に……」

あー、まったくわけわかんないからいいわ。

私がそういうと、トーカは少し考えて、

「じゃあ簡単にいうと、私は運命の女神様に仕えて、運命を管理してるんです。で、鈴凛チャンは、二十万と、ちょこっと先の未来で、自分の魂が見つかるまで行動してください。えっと……大体半日でいいらしいです」

はぁ。私は、気の無い相槌を打った。それに対して、すこし憤慨した調子で、トーカが言う。

「これは、同じ魂の型をもつ鈴凛チャンにしかできないコトなの」

……まぁ、全力は尽くすわ。そういうと、トーカはニコニコ笑った。まさに、天使の笑み、なのだろうか。

「じゃあ、いってらっしゃい」

トーカがそういうと、私は意識を失った。

 

がばっ!

私は跳ね起き、『ゴチンッ!』と、痛い音を立てて、何かに額をぶつけた。

「いった〜い!」

額をさすりながら、あたりを見回すと、知らない顔が、1、2、3、4、5………夢から覚めても夢ってーのもめずらしいわね。

「マナ、起きるんなら、起きるっていってから、起きてくれ」「それは無理、ジャックス」

と、私が言った。そう、知らないはずなのに、私は、知っていた。これが魂ってやつかしら。それにしても、私ってば、意外と落ち着いてる。

「ふん……仕事ぎりぎりまで寝てるとは……さすがはマナだな」

そう言ったのは……レイヴァだ。伝説の吸血鬼……? そんな非科学的な。このマナっていう私は、千影ちゃんみたいなかんじ(オカルティック)だったのだろうか。

「マナ、時間がありませんわ。はやく、準備してください」

そう言ったのは、ミンク。すんごくかわいいわぁ。お人形さんみたい。って、なぜか昔から知ってる気が………

「はやくしないと、契約破棄されちゃうわ! いつまでもぐずぐずしてないでっ」

そう言ってせかすのは、キール。褐色の美人だが、なんかむかつく気がする。で、あそこで縮んでいるのがファンね。

どうも私は、必要のあることだけ思い出せるようだ。いや、正確に言えば、教えてもらってる、のだろうか。

とにかく私は、『なぜかある記憶』にそって動いた。

 

私が着替えようと部屋を出ると、トーカが浮いていた。

「いい忘れてたんだけど、魂は行方知れずでも、肉体は存在するの。だから、記憶とかは、望めば、引き出せるはずです」

妙に大人っぽい口調で、トーカは言った。

「うんとさ、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」

「なぁに?」

「どうして、この世界、つまり、私たちの未来が、発展してるどころか退化してるの?」

この子(マナ)の記憶によると、この世界の動力は蒸気であるらしい。今の生活からは、考えれない。

「うーんと・・・・」と、トーカは考えている素振りを見せてるけど……それは、何かと交信してる、といったほうが正しい感じだ。

「世界は、2度、崩壊したの。一度は、あなた達の言う西暦で、9万2471年の事。もう一度崩壊したのは、さらにそれから、6万年のち。どちらも、高度な文明を築いたんだけど、それゆえに滅んでしまったの。で、今、この世界は、蒸気によって、動いているの」

ふーん……蒸気ねぇ……あんま私は触らないなぁ……まぁ、この子の頭の中には、それがかなり濃いみたいだけど。………分かっちゃう私が嫌だ。

「ま、この鈴凛ちゃんに任せなさい!」夢の中なんだから、なんだってしちゃうわよっ!

「頼もしいね。正吾クンとは、大違いだな……」

少し、トーカが悲しそうな表情をした。わけをたずねようとしたとき、『マナ、まだなのー?』と、褐色美人声がした。どうもあの声を聞くといらいらしてしまうのだが……それはどうも、この子の普段からの確執みたいなもんらしい。

 

私が戻っていくと、開口一番に、ジャックスが言う。

「よし、いこうぜ!」

いつも、熱血ねぇ。……ん、慣れてきちゃってるのかしら、私。

「あとはマナだけよ。はやく飛行器(ウィンギィ)をつけて」

ウィンギィ? ………この翼? 私のではない記憶に照会してみると、どうもこれのようであった。まさか、これで飛べと。この『鳥人間コンテスト』の王道で真っ先に落ちそうな、この翼で飛べと。

理解不能だった。鈴凛の知りうる限りでは、人類は未だ、鳥になったことはない。それを、蒸気が可能にする?

まさか。しかし、記憶では飛んでいるのだ。鈴凛は否定するが、時間もなさそうだ。視線がイタいことから、わかる。

ああ、まさか、夢の中で死ぬとは。鈴凛は覚悟を決め、それを着用した。その様子を見て、キールがいった。

「じゃ、いくよ。We are ――

『トレスパス!!』

 

うー、ホントに飛んでる………信じられない。

私がそんな風に思って飛んでいると、スススと、レイヴァがよってきた。うわぁ、ホントに飛んでるよ、吸血鬼ってホントかぁ……

「おまえ、マナではないな?」

小声で言った。

「……なんのこと?」

私ははぐらかす事にした。夢のなかで、これ以上厄介事を増やしたくない。

「とぼけても無駄だ。匂いで分かる」

いぬか、おまいは。.

「が、わずかな違いだ。……何者だ?」

「大昔の人類よ」

「???」

やはり吸血鬼でも、意味がわからないと見える。そりゃそうだろうなぁ。私の夢のなかなんだし。

 

作戦は単純であった。――陽動と撹乱につきる、らしい。

私は、鍵開けのプロのファンの護衛だそうだ。うー、あたしゃショタじゃないぞ。私には心に決めた人がいるんだから。

それにしても、彼の鍵開けは、芸術的ともいえるほどだ。『ほほほほ、ホントはやりたくないんだよぉぉぉ』なんていってるが、ほんとかどうかは分からない。

表からは、喚声が聞こえる。どうやら、陽動が始まったようだ。ほとんど警備は、そちらへ行ったらしい。

そーいや、私、護衛って言ったって、何すんだろ。そう思い始めてきたときだった。扉を開けると、それは、蒸気傀儡(スチームノイド)はいた。

ざっと三体。私にこれを倒せと。どーしろってーの? 記憶にたずねると、どうも、この背負っていた箱の紐を引っ張ると……ああもう、とにかく引っ張る!

一瞬のことで、私は、鎧に包まれていた。はは、なにがおきても驚かないよ、もう。

体が軽く感じる。運動不足だった鈴凛ちゃんでも、何とか倒すことができた。

それからは、あっという間だった。私たちは、数分後、金庫の中の目当てのものに、『トレスパス』のマークを貼り付け……撤退した。勝利……というらしい。

が、その余韻に浸るまもなく、あたしの意識は遠のいた。

 

再び起き上がると、そこは、見慣れた自室であった。やっぱ、夢だったのよね……異様に覚えているけど。

真っ白の羽根が、ひらひらと、舞い落ちてきた。

(もしかしたら……)

あたしは、本当に遥かかなたの世界に行っていたのかもしれない。だったら、今の技術で、あれも可能なはずだ。未だ、記憶は鮮明だ。手始めに、あの飛行器(ウィンギィ)を。

そーいや、今日私の誕生日だったっけ。アニキに、一番私の大切なヒトに、手がかりとなる材料を買ってもらわなきゃ!

 

真っ白の羽は、私に、新たな夢をくれた。私はそれに、向かい続けようと思う。

 

あとがき

いつも中途半端なしかも長い、Prof.ヘルです。ここまで呼んでくださった皆様、ありがとうございます。

なんつーか、趣味に走りまくったせいで、肝心の戦闘シーンが………な感じです。たぶん、鈴凛BDSSで、かなり異色だと自負します。

もっとも、鈴凛の口調に聞こえないんだから、はじめからいけない、という説はありますが(というか実際そう

………鈴凛はがんばりやサンですよね。しかし、やはり、世の中金ですね。彼女の援助率さえへれば、アニキは増えるんじゃないでしょうか、などと思ったり。

さて、雛子はどうしたものか。なにかありませんか、おにいたまがた。いや、おにいたまじゃなくてもいいので、なにか、こんな話かけ、みたいな物、だれか下さい。

では、エピローグまでどうぞ。………じつをいうと、エピローグが書きたいがために、このSSを書いたんですが。

Celestial Underworlds<http://www8.ocn.ne.jp/~metal/>
管理人:Prof.ヘル

 

『………20XX年のノーベル物理学賞には、日本から蒸気の発展に尽力した鈴凛博士です!』

「はぁ……鈴凛ちゃんもすごいデスね……」

昔の口調も変わらず、『彼女』が『私』に話かけてきた。ああ、私たちの中では、彼女が一番かもね……

「ほんとデス。まさか、ノーベル賞とるなんて……」

『私』は『彼女』と結婚し、家庭を築いた。他の妹達が兄離れしていく中、『彼女』と鈴凛だけは『私』を慕った。『私』が『彼女』を選んだ今でも、鈴凛は私を慕ってよく遊びに来る。

『今、一番これを伝えたい人は、どなたですか?』

『兄です。昔から、たいへん私を援助してくれた兄に、このノーベル賞をささげたいです』

「むぅ、鈴凛ちゃん、まだ狙ってるデスか……これはチェキしておかなくては……」

ははは。と、『私』は笑った。

相変わらずな『彼女』を見て。そして、あいかわらず、『私』を慕ってくれる二人に対して。

一週間に一回くらい誕生日(援助の日)のようだった鈴凛。『私』は、いつまでも、妹達の味方でありたい。

Fin

   



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