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長いよ、気合入れてね?


名(迷?)探偵 四葉

AS6  "HIDING"

作者:Prof.ヘルさん


Thursday

20

June

Scene1

ハートをチェキ!

 

きゃっほー! 今日も兄チャマをチェキです!

むむぅ! さっそく兄チャマを発見しちゃった さすが四葉デス! 

よーし、兄チャマぁ! チェキチェキよっ!

四葉は兄チャマに向かって走りだしまシタ。兄チャマは、驚いた表情で、こっちを振り向いたの。

クフフフフ、さすがの兄チャマも、後ろから来るとは思っていなかったみたいデス♪

『や、やぁ四葉、どうかしたかい?』

今日も兄チャマをチェキチェキ! やや? その手に持っているものはなーに? 兄チャマ

すると兄チャマは、ハッとして、慌ててそれを後ろに隠して『ええっ!? い、いや、なんでもないよっ』って。

クフフフフ、その程度で、この四葉を欺けると思ったら大間違いよっ! 兄チャマのことは、この名探偵四葉に隠し事しても、すぐに分かっちゃうんだから

そう言うと兄チャマはいつも、

 

「分かったよ、四葉。実はこれは・・・」

 

……と、いつもなら、四葉とのチェキに負けて、兄チャマはこう言うんだけど……

『あ、あはははは、なんでもないって!』

むむむ……ますますアヤしい……これは絶対にチェキしなくっちゃ! 兄チャマ、覚悟はいいデスか、いいデスね?!

兄チャマは、困ったようなお顔をしていましたが、突然、四葉の後ろを指して、『あ! 四葉、後ろ、後ろ!』

思わず四葉、振り向いてしまいマシタ。

えっ! なになになに!? ……兄チャマ、何もな………あーー!!! 兄チャマ、四葉を騙したのねっ!?

視線を戻せば、既に兄チャマの姿はどこにもなかったの!

あう……さすがは兄チャマ、この四葉のチェキをかわすなんて……で、でも! 四葉はまだ、まけたわけじゃないデスよ! 絶対にチェキしちゃうんだから

 

 

兄チャマー どーこデースかー? 兄チャマの可愛い四葉が呼んでますよー

………むむむ、兄チャマったら、一体どこに隠れたのかしら? 

四葉は、一生懸命あちこち探したのだけれど、兄チャマは見つかりませんでした。

………………こういうときは、初心に戻ることが大切なの。

四葉は“現場(兄チャマが逃走したした場所デス)”に戻って、痕跡を調べることにしまシタ。

さっそくルーペを取り出して、と。

四葉は床をルーペでジックリみました!

 

「むむむ、これはなんでショウ?」

 

“現場”には、なにやら機械の部品らしきネジ。

ひゃっほぅ♪ 手がかり発見デスっ♪

さっそくその“証拠物件”を押収デス。手袋をはめて(証拠は素手で触っちゃダメなの!)、それを拾い上げました。

うーん、見たところ、なんのヘンテツもないネジデスねー。他に何か落ちていないかな………あ!

チェキ! これは………歯車………デスね? なんかの機械のかな?

………機械といえば、鈴凛ちゃんデスね。よーし、鈴凛チャンに訊きに行くデス!

 

Scene2

グリーングリーンズ

 

コンコン!

 

鈴凛ちゃ〜ん! いマスか〜?

四葉は、鈴凛ちゃんの部屋のドアをノックして、待ちました。

………………? いないデスか? もういちどノックです。

 

コンコン!

 

それでも、鈴凛ちゃんは出てきませんでした。

うーん、鈴凛ちゃん、まだ寝てるんでショウか………?

鈴凛ちゃんは、自分の部屋を隣とくっつけて、隣をラボラトリー………ええっと、つまり、研究室にしてしまってるの! で、夜遅くまで起きていることが多くて、徹夜なんかする時もあるんだって! 

だから、今も寝ているのかも知れまセン。

不規則な生活は、体にストレスを溜めマス。だから、鈴凛ちゃんの寝起きは、とても眠そうでいて………とても機嫌が悪いのデス。兄チャマしか起こせません。

仕方ありまセン。また後で来ることにしまショウ。

そう思って歩き出すと……

 

♪♪ ♪♪♪ ♪♪廿♪

 

四葉の耳に、ピアノの音が、開いている窓から、風にのって聞こえてきました。うん♪ 心地いい音………『歓喜に寄せて』デスかね?

四葉のチェキによれば、この時間にピアノを弾いているのは、可憐ちゃん♪

あっ! もしかしたら、可憐ちゃんは、兄チャマを見ているかもしれません!

クフフー、『アンズルヨリウムガサスシ』ね! さっそくチェキ!

 

 

コンコン!

 

四葉は、ピアノの音が聞こえてくる、音楽室のドアを叩きまシタ。

『はぁーい!』

ピタリ、とピアノの音が止み、案の定、可憐ちゃんが応えました。

パタパタ、とスリッパのなる音がして、ほどなく、可憐ちゃんが扉を開け、姿をあらわしました。

『よ、よよ四葉ちゃん!??』

……何でそんなに驚くデスか? 

『お、驚いてないよ、うん』続けて、『ちょ、ちょっと待っててね』

四葉が言う暇もなく、可憐ちゃんは、室内へ戻りました。

パタパタと、スリッパの音。そして、何かがうめいているような音がして………

 

どしんっ!

 

何かが落ちた音。しかも、音から察するに、相当に大きい………

事件のニオイねっ! 四葉、ドアを開けて中をチェキしちゃいマス! どうしたデスか?! 可憐ちゃん!

可憐ちゃんは、窓の脇に立っていました。

『えっ! え、え、い、いや、どどどうもしてないです!』

? ………いったい、何を慌ててるんデスか?

『えっ! か、可憐、慌ててますか?』

チェキ! 何か隠し事デスか? よかったら、四葉が相談にのりマスよー。四葉のチェキに任せれば安心デス!

『そ、そうなの? 実は体重が増えちゃって………って、そうじゃなくね』

チェキ! 可憐ちゃんは体重が増えた、と。『いや、あの………そ、そんな事より、四葉ちゃん、音楽室に、何かご用が会ったの?』

おおっ、そうでシタ! 兄チャマ見ませんでしたか? チェキ逃げされたデス。

『ええっと、可憐、しらないです、たぶん』

なーるほどチェキほど。それでは、第二問! 『え、ま、まだあるの?』

もっちろんよ!

可憐ちゃんは、何故か驚いていました。うーん、なんででショウ、今度チェキの必要がありそうデス………

 

「さっきの物音はなんデスか?」

 

可憐ちゃんは、大きなお目瞳をますます大きくして『………か、可憐はなんにも知りません! ………たぶん』って。

むぅ、黙秘するつもりね………仕方ありまセン、今日のところは退散デス………

四葉は扉を閉めました。

そのとき、四葉の頭の中で、何かが閃いたの!

さっきの物音から推理するに、あれはヨホド重いものが落ちたかどうかしたときデス………しかし、音楽室の床はじゅうたん。大きな音がたつとは思えないし、仮にじゅうたんの上に落ちたとしても、音は鈍くなるハズ。ということは……

 

「何かが外に落ちた……」

 

しかし、音楽室には、そのような重いものなんてありまセン。つまり、可憐ちゃん以外に、誰かヒトがいて、そのヒトが窓から逃げたのデス。可憐ちゃんが窓際に立っていたのは、そのせいデスね。そして、今四葉から逃げなくてはいけない人物といえば……

 

「兄チャマデス!」

 

四葉は音楽室のドアを荒々しく開け放ちました! 『四葉ちゃん!?』と、再びピアノを弾こうとしていた可憐ちゃんが、驚いて言いました。が、それよりも、四葉の眼は、中庭に向いていました。

クフフフフ、四葉の推理どおり、兄チャマ、はーっけん!

本当は、土足のままじゅうたんに上がっちゃいけないんだけど、今回は緊急事態。一気に窓枠に駆け寄って、外へ飛び出しマスっ!

 

「きゃぁ〜!」

どしんっ!

 

イタタタタ……で、でも、同じ音がしたから、兄チャマも同じことしたのね……

四葉はおしりをしたたか打ち付けていました。アイタタタ。痛むおしりをさすりながら、立ち上がりました。どうやら、兄チャマは、四葉の動きに気づいてしまったようで、辺りにはいまセン。

『四葉ちゃん! 大丈夫?』後ろから、可憐ちゃんが声をかけてくれました。

大丈夫よ……心配してくれてサンキューです! 

四葉は、やっぱりイタいおしりをさすりながら、歩きました。

……短時間で、遠くまで行けれるはずありまセン! しかも、低木ばかりで、見通しは良好デス。だから、兄チャマは、きっとどこかに伏せているハズ……そんなとき、四葉は、花穂ちゃんを見つけました。

 

Scene3

はるかぜとともに

 

「花穂ちゃん! 兄チャマ見ませんでシタか?」

 

四葉は、花に水やりをしている花穂ちゃんに声をかけました。しかし、反応がありまセン。なにか意思の宿る、それでいて虚ろな、そんな瞳を、花穂ちゃんはして、なにか小さなこえで『……お兄ちゃま……よつ……ばれな……がんば……』 ………あうぅ、なんて言ってるか分からないよ。気が付けば、手に握っているホースからは、水が溢れ出て、地面を水浸しにしていマス。花穂ちゃん、どうしちゃったのかな?

 

「……うわぁ! 四葉ちゃん!?」

 

突然、花穂ちゃんは四葉に気づいたみたい。でもそれとは別に、新たに驚いた声を上げました。『ああっ! 花穂またドジっちゃった……』

どうやら、地面にできた水溜りを言ってるようデスね……いったい、なんでぼうっとしてたデスか、花穂ちゃん? 四葉がそう訊ねると、『ええっ!? な、なんでもないようよぅ……』って言いまシタ。

むむむ……アヤしいデス……でもまぁ、今はそんな事について話している時間はありまセン。早速デスが、本題にはいるデスよ。ズバリっ! 兄チャマはどっちへ向かったデスか? 花穂ちゃんは、ナゼかより慌て出して、『え!? ええっと?! あ、あっちだったかな……』

花穂ちゃんはホースを持っているほうの指で南西の方角を指しました。

ほんとにあっちでいいんデスか? 四葉が確かめると、『えっ……あっちだったかも……』と、今度は、花穂ちゃんは北北西、ウェルカムハウス本館の一番山よりのあたり、を指しました。宙空を舞う水に、太陽の光が反射して、虹が煌めきマス。

『四葉ちゃん! 虹だよっ!』はしゃいだ声で、花穂ちゃんが言いまシタ。キレイです。

四葉の声が聞こえたのか、花穂ちゃんはますますおかしそうに、水を高くに舞い上げました。虹とともに、四葉の瞳に、一種類の花が入ってきました。

バラです。四葉の誕生花。“愛情”の言葉の花 四葉は、バラが大好きデス。イギリスでは、毎年グランパにローズガーデンに連れて行ってもらってまシタ。

花穂ちゃんは四葉の瞳が、一点で止まっている事を怪訝に思ったようでした。『なにを見てるの?』

バラです。四葉は花穂ちゃんに向き直って言いました。

 

「えぇーっ!?」

 

ど、どうしたデスか、花穂ちゃん?! 『えっ!? あ、いや、そのぅ、な、なんでもないけど………あはははは!!』 花穂ちゃんは、笑って誤魔化しました。

四葉が言及しようとすると、『四葉ちゃん、バラはいいから、お兄ちゃま追いかけなくていいの?』

兄チャマ? どこどこ? どこデスか?

『ほ、ほら、あそこに………』

花穂ちゃんは本館の壁の一角を指し示しました。そしてそこには………

 

「あっ! 兄チャマ発見デス

 

兄チャマは、再び、本館の中へ入ろうとしていたの!

むむむ、四葉に気づかれずにあんなところまで行くとは………って、感心してる場合じゃなかったデス! 兄チャマを追いかけなくっちゃ!

花穂ちゃん、兄チャマの居場所をチェキしてくれて、アリガトです!

………それにしても、兄チャマ、何でずぶ濡れなんでショウか?

 

Scene4

射陽・そよかぜ

 

四葉は兄チャマを追って、窓から部屋へ入りました。

四葉は入ってすぐに、あることに気づきました。

 

「むむむ……これは……?」

 

絨毯がぬれていマス。ルーペを近づけてみると、何かの形に見えまシタ。

………なるほどチェキほど、これは兄チャマの足跡ね。きゃー、我ながらナイス推理デス♪ 兄チャマに褒めてもらわなきゃ!

……その前に、兄チャマをチェキしなくてはいけまセン。あうぅ……探偵はつらいデスね……

ともかく! これを辿っていけば、兄チャマの元へ導いてくれる筈デス!

四葉は、それを見失わないように、ゆっくりと進んだの。その足跡は、その部屋から出ると、階段を登り、2階へと続いていまシタ……

四葉はそれをしっかりとチェキしながら、追っていきマス。

でもでもっ……あるところで突然その足跡が途絶えちゃったのっ!

おかしいデスね……行くところなんてどこにも……あ……

えへへ ドアの前でしたっ。どうりでそこから続く足跡がなくなっているハズです……

えへへへへ 四葉ったらおドジさんでシタ……♪

あらためて、よくチェキしてみると、そこは図書館。らいぶらりーデス。

むむむ、兄チャマのご本の趣味をチェキ!

 

「兄チャマっ! もう逃げられないデスっ! 観念した?! ………あれぇ?」

 

四葉はドアを開けました。開けたんだけど……兄チャマがいないのっ!

 

「四葉ちゃん、どうかしたんですか?」

 

チェキっ!? ……むむ、鞠絵ちゃんデスか。

鞠絵ちゃんは、直接陽が射さないけれど明るい場所で、ご本を読んでいました。今はその本を膝において、こちらを向いて微笑んでいました。

 

「何のご本を読んでるの?」

「北欧神話ですよ、四葉ちゃん」

 

ホクオウシンワ? ああ、ヘルチャマが好きなやつデスね。それはおいといて……

そのときになって、四葉は鞠絵ちゃんの隣に、誰かが座っているのに気がついたの。

座っているからよく分からないんだけど、多分、四葉より年上デス。可憐ちゃんほどの長髪を、頭の後ろで縛ったりしてマス。なぜかそのヒトは、緊張しているかのように、下を向きっぱなしで、肩がふるえていまシタ。むゥ、どうして上を向いてくれないのかしら。

仕方なく四葉は、鞠絵ちゃんにチェキを試みたの。

 

「鞠絵ちゃん、そのヒトは?」

 

四葉が訊ねると、『うふふ……四葉ちゃんもよく知っている人ですよ』と言いました。

四葉がよく知っているヒト? ……はっ! まさか……

 

『兄チャマデスかっ?!』

 

ビクッとして、その()は顔を上げました。四葉がじぃっとチェキすると……むむ、まがうことなく兄チャマデスっ! ……姉チャマにしか見えないデス……

……四葉、とぉーってもサプライズだったの! まさか兄チャマがルパンさんみたいに変装するなんて!

あ、ルパンさんていうのは、ご存知怪盗紳士アルセーヌ・ルパンのことデス。

とにかく、四葉、とぉっても驚いてしまいまシタ! でも、その瞬間に、四葉、ちょっぴり油断しちゃったみたい……

兄チャマ(姉チャマ)は一目散にドアへと駆け寄り、ピューッとでていっちゃったの!

しまったデス! ……鞠絵ちゃん、チェキようならっ!

四葉は兄チャマを追いかけました。……途中、なにか凄い音がしたけど何だったのかな?

 

Scene5

競争

 

どうやら兄チャマは外に向かったようデス。

……さ、さすがは兄チャマデス。いつも、衛ちゃんとランニングしているだけの、ことはあるデスっ…

四葉も階段を下ったころには、兄チャマは外へ出るところでした。

ううっ、おいつけないデス……さ、さすがは、兄チャマ……

でも、四葉は必ず追いつくデスよー! そして、チェキ、デス!

四葉は本館の廊下を走りきり、外へでました。

……イギリスでは、コワーイ寮母先生に『廊下走るような淑女(レディ)なんていませんよ』、なんて怒られてたけど……今は非常事態だから、淑女だって走ってもいいよね なにしろ、兄チャマのチェキをしないといけないんだもんっ!

四葉は外へでると、辺りを見回しまシタ。兄チャマは今、ウェルカムハウスの、入り口の辺りにさしかかろうとしていまシタ。町へ逃げるつもりなのかな? 女装のまま町へ出るなんて、さすがは兄チャマデス!

……あれっ? 何で止まっているのかな?

その理由はすぐに分かりました。春歌ちゃんが、即席の薙刀を兄チャマに突きつけていたからなの。隣には、白雪ちゃんもいマス。で、周りにおいてあるビニール袋。どうやら春歌ちゃんと白雪ちゃんは、買い物…特に食料品の買出しの帰りみたい。白雪ちゃんはいっぱい買うからなぁ……1度付き合ったことがあるケド……

春歌ちゃんは、その場にビニール袋を置いて、姉チャマな兄チャマに何かを詰問しているようす。

クフフフフッ! 春歌ちゃんも兄チャマが姉チャマになっているってことに気づいてないみたいっ! きっと、『アニギミサマに近づくフシンな輩は、ワタクシが成敗して差し上げますわっ!』なんて言ってるに違いないデスねっ

でも、これは好ましい事態デス。あのまま春歌ちゃんが薙刀を突きつけていれば、兄チャマも動けないデス。ということは、四葉がチェキできちゃう!

でも、あとすこしで追いつくというところで、白雪ちゃんが四葉に気がついて『あっ、四葉ちゃん……』。その言葉に春歌ちゃんが一瞬気を取られた瞬間、兄チャマが脱兎の如く逃げ出しました。

 

「あ、兄チャマっ! 逃げちゃだめぇ!」

 

『にいさま?』『兄君さま?』白雪ちゃん、春歌ちゃん、ふたりとも、同じような反応をしました。

そうなのっ! あれは姉チャマな兄チャマなの!

『?』 むゥ、どうやら、理解できてないみたい……

 

「だから! 姉チャマな兄チャマなのっ どう? わかった?」

 

でも、二人は首を傾げるばかり。ああっ! このままじゃチェキ逃げられちゃうよっ。

四葉、あせってしまいまシタ。でも、言葉が浮かんでこないデスぅ!

うーん、うーん……あ、そうか。

 

「つまり、姉チャマの格好をした兄チャマなの」

 

二人はなんだか、分かったようなわからないような、そんな顔をしていまシタ。

『つまり、歌舞伎の女形のように女装している兄君さま、と言うことですね?』

そう、そのとおり! なぁーんだ、分かってたのね♪

『……四葉ちゃんは省略しすぎですの……』 白雪ちゃんがなんかいった気がしたケド、四葉まで聞こえてきませんでした。それに、今は、兄チャマを追わなきゃ!

 

「じゃあ、春歌ちゃん、白雪ちゃん。チェキようならデス!」

 

『……チェキようなら?』 ……むゥ、どうしてそこで疑問符なの?

 

Scene6

甘い園

 

ハァ、ハァ……

あ、兄チャマったら、どうしてあんなに速く走れるのかナ?

街まで来たんだけど……見失っちゃった。

島で唯一の街。四葉のいる方向からは、ちょびっとだけ下り坂になっていて、ちょびっとだけ曲がり道になってるの。その道の両脇に、ショップが立ち並んでいます。

うゥ……まだ“ツユ”の季節なのに、暑いデス……

四葉は額の汗をぬぐいました。

でもね、兄チャマ。四葉のチェキからは逃れられないよっ、クフフ

でも、このままではどこに行ったかわからないし……しょーがないデスね、兄チャマは 四葉が推理して、兄チャマの居場所をあてちゃおぅっと!

えぇっと、確か、兄チャマとは、50メートルも離れてなかったよね。ということは、この道を真っ直ぐ行ったなんてことはないデス。いってたら、四葉が見てるはずだもん。となると、どこかの店に入ったハズ。ちょっとしたカーブで見えなくなっていただけだったから、そんなに遠くの店にまで入れまセン。せいぜい6軒のうちのどれかってところね。

ええっと、酒屋さん、服屋さん、小物屋さん、時計屋さん、靴屋さん、………あとひとつは休みデスか。

酒屋さんはないと思うケド……くゥ……あとは絞れないよ。

……いや……服屋さんデス、きっと。四葉なら、そこに入って服を変えて、さらに欺こうとしマス。それに、服の掛けてある柱の高さのおかげで、姿も隠せれマス。

でも……と、四葉は思いました。

兄チャマは裏をかいてくるかもしれない。いまも、どこかから四葉を見ていて、四葉がどこかに入るを見ているのかもしれまセン………

そのとき、四葉の頭に、ある言葉がよぎりました。

 

『自分を信じれば、必ず、うまくいく』

 

四葉の、グランパの言葉デス。この言葉を言われて、四葉おっちょこちょいだけど、探偵になれるって信じまシタ……

今、四葉は運命の分岐点に立っていマス。信じれば、必ずうまくいく。四葉は……自分を信じて行動するデス!

 

「ごめんくだサーイ!」

 

四葉は服屋さんに入りました。

ほとんど誰もいなくて、その少しのヒトの中にも、姉チャマしてる兄チャマの姿はありまセンでした………

あゥ〜、四葉、間違えちゃったのかな……?

もういちど店内を見渡します。やはり、兄チャマの姿はどこにもありまセン……。

うゥ、仕方ないデス……どこかで待ち伏せするしかないデスね……

そう思って、店から出ようと、後ろを向いたとき、ある考えが、四葉の脳裏をよぎったの。

思ったことを確かめてみると……

………クフフ、ヤッパリネ♪

兄チャマ、『シリヲカクシテアタマカクサズ』デス………あれ? 違ったかな? まぁいいや。

とにかく………失敗したわね、兄チャマ!

クフフフフ、兄チャマを驚かせちゃおっと!

四葉は服屋さんから出て、隣の小さな路地へと入りました―――

 

―――数分後

………クフフ! 思ったとおり

どうやら兄チャマは、テッキリ振り切ったと思ってるみたい

 

「クフフフフ 兄チャマ、甘いわよっ!」

 

四葉は路地から飛び出して、兄チャマに向かってひとさしゆびを突き立てました。

 

「よ、四葉ぁ!?」

 

なぜここに、と、兄チャマの顔は語ってました。

四葉は、指を『ちっちっちっ』とふって、

 

「クフフ、カーテンの裏に隠れてても、靴を隠さないと意味が無いのよっ、兄チャマ!」

 

『そうだったか………』と、兄チャマは下を向いて納得していまシタ。

さぁ、兄チャマの負けよ。おとなしく、四葉のチェキにこたえてね

四葉の言葉に、兄チャマはうなだれていたけど、やがて、負けを認めたようでした。

兄チャマは四葉を見つめて、

 

「実は………」

「四葉ちゃん! 何してんの?」

 

兄チャマが何かを語り始めようとした時、後ろから声がかかりました。

衛ちゃんデスか。それに…鈴凛ちゃんと、咲耶ちゃん。

四葉は後ろを振り向いて、声をかけてきた人物を確かめようとしたんだけど……

その間に兄チャマは逃げ出したの!

ひどーい! 負けを認めたのに―!

…そういうわけで、四葉もこれで失礼するデス。

と言って、四葉が兄チャマを追いかけようとすると、咲耶ちゃんが尋ねました。

 

「今のって………誰?」

 

鈴凛ちゃんと衛ちゃんが、自分も不思議に思うとばかりに首を縦に振りました。

んもぅ! 兄チャマに逃げられちゃうじゃないデスかっ!

『いまのが……アニキ!?』

『嘘……お兄様が!? 何で女装してるのよ! ……そりゃあ確かに、お兄様は線が細いから女装したって似合うと思うけど……なんでこの服装コ−ディネーターの咲耶ちゃんに聞かないで女装しちゃうの!?』

『いや、咲耶ちゃん、それは誰に聞いても分からないと思う……』

『それもそうね』

 

………いつまでたっても終わりそうになさそうデス。

だから四葉は、何か話し込む3人に背を向け、兄チャマが行った方向に駆け出しました。

 

………そういえば、なんで街に来てたのかナ? あの3人。

 

Scene7

雲よりももっと上で

 

くゥ、まさか兄チャマに、後ろに気を取られている隙に逃げられるなんて………四葉、不覚でした。でも、今度こそは、ぜったぁいチェキ!

…………とはいうものの…………

兄チャマの後ろ姿は、四葉の視界に辛うじて捉えられているだけで、その差は一向に縮まる気配がありまセン。

あうゥ……このままじゃ逃げられちゃう……

兄チャマを追っているうちに、いつのまにか、街を抜け、再び樹木に囲まれた道に入りました。この道は、ウェルカムハウスとは、逆の方向。つまり、学校や、山の頂上に向かう道デス。

ハァ、ハァ……

さすがに…上り坂は…ツラいデス……

でも…ここで歩いたら…兄チャマに逃げられちゃう…。だから…兄チャマから…目を離すわけには…いきまセン…。逃げられたら…今までの苦労が…“みずのあわ”デス…

………………

樹木に囲まれた地帯を抜け、学校を通り過ぎ、ついに、その上の湖に着いてしまいました。

そこまで来てついに、兄チャマは糸が切れたように、その場にへばりました。

ハァ…ハァ…四葉も…限界…デス…

兄チャマの少し手前で、四葉も地面に伏せました。

 

「ハァハァ……やるな……よつば……」

「あ、兄チャマこそ……ハァ、ハァ…なかなか…やりマスね……

 

あまりに長い距離だったから、もう疲れちゃって動けないよ。

よつばは額に浮かんだ汗をぬぐいながら、横目で兄チャマを見ました。

どうも、兄チャマも、四葉と同じみたい。荒い息をつきながら、額に浮かんだ汗をぬぐってました。

 

「兄チャマ……よ、つばの勝ちよ……」

「馬鹿言え………勝負は…これからさ……」

 

とはいえ、ふたりとも動けません。

四葉は、四つん這いになって、兄チャマのところまでいきました。

 

「……兄チャマ……つかまーえたっ

 

四葉は兄チャマの腕を捕まえて言いました。

 

「ひ、卑怯だぞ、四葉……」

 

なに、言ってるんデスか…“やったもんがち”よ……!

『一体どこでそー言う言葉を覚えるんだ……』兄チャマはなにか呟いたようだったケド、よく聞こえませんでした。え、ナぁに、兄チャマ……、と尋ねようとしたとき……

 

「おっにいたま〜! なにやってるのぉ〜

 

唐突に、遠くから声がしました。雛子ちゃんデス。雛子ちゃんは、どうやら、この湖の対岸から叫んだみたい。その雛子ちゃんの両脇には、亞里亞ちゃんと、風上唯さんがいました。

風上唯さんは、2ヶ月くらい前から、亞里亞ちゃんの教育係として、亞里亞ちゃんのもとすんでいた家からやってきました。まだ若くて美人なのに、なぜか亞里亞ちゃんからは、“じいや”なんて呼ばれてるの♪ フランス語も話せる、才色兼備な女性なの。うーん、すごいデス。唯さんはいつも、亞里亞ちゃんと雛子ちゃんの面倒を見ていマス。だから、ここについてきてるんだと思うけど、亞里亞ちゃんと雛子ちゃんは、日向ぼっこでもしてたのかナ?

兄チャマはちらりと四葉を見ると、雛子ちゃんに『鬼ごっこだよ……』といいました。

でも、小さな声だったので、当然雛子ちゃんにまで届いていまセン。でも、雛子ちゃんは、それでも別によかったみたい。亞里亞ちゃんを連れて、こちらへやってきマス。手には、大きな画用紙を持ってました。

『その画用紙、どうしたの?』 落ち着いてきて少し余裕が出来たのか、兄チャマが尋ねました。と同時に、四葉を腕から引き剥がしました。

あ〜ん、四葉もっとくっついていたいのにィ……

そんな四葉の声を無視して、兄チャマは雛子ちゃんたちのほうを見ました。亞里亞ちゃんが『あのね……絵を、描いていたの……』へぇ〜、なんのデスか? と、四葉も訊ねると、亞里亞ちゃんはこちらを向いて、

 

「あのね……」

「いけませんよ、亞里亞さま」

 

亞里亞ちゃんが何か言おうとしたのを、唯さんは止めました。亞里亞ちゃんが少し頬をふくらませ、そちらを向くと、『何のために描いているのかお忘れですか?』と、いいました。

なぜか兄チャマは、『ああ、あの絵ですか……』と納得していマス……ねぇねぇ、兄チャマ! 何の絵デスか?

四葉のチェキに、兄チャマは笑って四葉の髪をなでただけでした。むむゥ、それじゃあ答えになってないよ、四葉だけわかんないデス……

亞里亞ちゃんはますますむくれた顔をして『分かってます……今いおうとしたの……』と、いいました。

どうやら、亞里亞ちゃんからも教えてもらえないみたい。雛子ちゃんに目を向けても、『クシシシシ……』 と、笑ってるだけでした。

……別に四葉は兄チャマのチェキさえ出来ればいいも―ん!

四葉は少しむくれて言いました。……あれ? 兄チャマは?

いつの間にか、兄チャマの姿は、四葉の隣から消え失せていました。

あれ? あれれ?

キョロキョロ四葉が辺りを見回すと……

 

「あっ、あそこ!」

 

雛子ちゃんが叫んで、指を指しました。その方向に目をやると、

 

「兄チャマ! 何で逃げるんデスかぁ!?」

 

そろそろと、四葉から離れようとする兄チャマを見つけました。

んもぅ! 兄チャマったらぁ!

それでは、亞里亞ちゃん、雛子ちゃん、唯さん、しーゆーあげいん!

 

Scene8

海辺の新緑

 

再び、四葉と兄チャマは、鬼ごっことなりました。

やっぱり“イタチゴッコ”で、全然差は開かない代わりに、全然縮まりもしまセン。

走って、走って………そして………

 

あれれ……? 兄チャマが消えちゃった!?

確かに四葉の目前を走っていたはずなのに………

四葉は、兄チャマを追って、浜辺まできていました。

そのとき唐突に!

兄チャマの姿が消えてしまったのデス……

むゥ……ミステリーね……

あっ! ま、まさか、兄チャマはとーめいにんげんだったの?! あわわわわ……ど、どうしよう……

あ、兄チャマ―! どこ行ったデスかー! あ、兄チャマはぁ、と、とーめいにんげんさんだったのっ!?

でも、返事はありまセン………

四葉、困って困って泣きたくなっちゃうよ……ぐすん。

 

「あれ、四葉さんではないですか。このようなところで、何をしておいでで?」

 

とうとつに、横から声がかかりました。四葉がその方向を見ると、神威陽月さんがいました。

えぇっと、陽月さんは、ウェルカムハウスに住み込んで、お手伝いさんみたいなことしていマス。今はその陽月さんの変わりに、

 

「陽月さん、貝はとれましたか? ……おや、四葉ちゃんじゃない。どうしたの?」

 

この(ヒト)、鉄夏姫さんがやっていマス。

四葉は、目に浮かんだ涙をぬぐって、答えました。

 

「ええと、四葉は兄チャマをチェキしている最中なのデスが、陽月さんたちはなにをしているの?」

 

陽月さんが、指を立てて『貝殻を採っているのですよ』と答えました。それを夏姫さんが咎めるような眼でみると、『いいではないですか、そのとおりなのですから』と答えました。

四葉は続けて質問しました。何で貝殻を集めているの? と。

陽月さんは、顔に苦笑いを浮かべて、

 

「ごめんなさい、四葉さん。それは教えられません」

「『キミは知る資格がない』、なんてね♪」

 

夏姫さんが誤魔化しました。

うーむ、難しいデスね……そういえば、ふたりだけなんデスか?

『いえ、絶零もいます。彼は向こうで釣りをしています』『困ったことに、手伝わないのよ、あいつ』息のあった答え。いいなぁ、四葉も兄チャマと、こんな風になれるかな?

『そういえば四葉さん、兄チャマこと航くんを探していましたね。彼は今あそこです』といって、指を指しました。なるほどチェキほど、兄チャマはあんなところに……って感心してる場合じゃないデス! 早く追わなくっちゃ!

じゃあ、陽月さん、夏姫さんしーゆーあげいんデス!!

『しーゆーあげいん!』流暢な英語で、二人は返してくれました。

目指すは、森へ入ろうとしている兄チャマデス!

 

そういえば、兄チャマは透明人間じゃなかったのかナ? 後でチェキしようっと

 

Scene9

虚無と暗闇

 

兄チャマは、森の中に消えてしまったから、四葉もそれを追って、森の中に入ったんだけど………

この島に、こんな森、あったかなぁ……?

なんだか薄暗くて、さっきまで太陽が輝いていたハズなのに……まるで、全くの別世界デス……。そして、どことなくひんやりしている……デスね……。いまにも、何かでそうな予感……

あわわ……よ、四葉、こわくなってきちゃったよ……ブルブル……

道は真っ直ぐ伸びていて、でも、兄チャマの姿はどこにもありまセン。おかしいナ、確かに入ったハズなのに……。

酷く不安になっちゃったケド、頑張って歩いたデス。そのおかげか、割と長い時間歩いたように感じる前に、酷く不気味な森の一本道は、大きめの教会へと辿り着きました。何か変な物がでてこないかとの四葉の危惧は、杞憂に終わりました。ふぅ〜、良かったデス……。

森は、そこだけポッカリと開いていて、空が望めました。さっきまで燦燦と輝いていた太陽は、いつの間にか薄い雲に覆われ、光がさえぎられていマス。

よくよくみれば、その教会も不気味でした。所々に不自然な傷跡が入っていたりしてマス……。

か、帰ろうかなぁ……。

四葉がそう思ったときでした。

 

ギイィィィイィィ………バタン。

 

扉が音を立てて開きました。まるで、四葉を誘っているかのように。

……こ『コケツニハイラズンバ、コジヲエズ』という中国の言葉がありマス。危険を侵さなくては、利益はえられない、ということデス。ええっと、つまり、ハイリスク・ハイリターンということね。四葉は自分のもてるだけの勇気を振り絞って……教会の中へ、身を投じました。

 

カターン、カターン……

 

一定の間隔で、振り子のような音がしマス。

 

「し、失礼しま〜ス……い、いや、決して失礼をするつもりはないデスよぉ……」

 

トビラの影から身を乗り出して、四葉はなかの様子を覗きました。

教会は十字架型になっているようデス。その真ん中の上に、ステンドグラスがあるのか、色とりどりの光が、その中心を照らしていマス。でも……

――うーん、暗くてよくわかんないや……

しぶしぶ、四葉は中に入りました。

 

ギイィィィイィィ………バタァァンッ!!

 

「きゃぁ――!!」

 

四葉、その音に驚いて、思わず悲鳴をあげちゃったの! 思わずおしりをつきながら、後ろを振り向きました。

な、なんだ、トビラがしまっただけデスか……お、驚き損デス、くはは…は………は?

ななななんでトビラが閉まるんデスか? ………はっ! そ、そう、風が吹いただけデスね……

とはいえ、歯がガチガチなるのや、肩の震えは止まりまセン……冷や汗が、どっと吹き出まシタ……

そして、顔を元に戻したところで、四葉は更なる恐怖に教われました……

いつのまにか、この教会に唯一光の降り注ぐ空間の中央に人影があったからデス!!

 

「……ツ………」

 

もはや、四葉は声もだせず、引き攣った顔に、恐怖という名のマスクを貼り付けて、水面で空気を求める魚のように、口をぱくぱくさせることしかできませんでした……

あまりの恐怖に、四葉の瞳から涙が溢れでます。

あ、兄チャマぁ、助けてぇ……

その人影は、天にのばしていた手を、ゆっくりと下げると、こちらを振り向きました。

あああ、どうか見逃してくだサイ、千影ちゃん…………

………ん? 千影ちゃん?

涙に濡れた瞳を中央に向けると、そこにいたのは、紛れもなく千影ちゃんでした……

千影ちゃんは、四葉のほうを見て、妖しく笑いました。

 

「やぁ四葉ちゃん…………遅かったね…………もっと早くくると思ってたんだが…………」

 

な、なんで千影ちゃんがここにいるんデスかぁ!

四葉、一気に緊張の意図が途切れて、その場で脱力してしまいました。

 

「何でここにいるのかかい…………? ふむ…………それは難しい質問だね…………だが…………これは必然なんだ…………世の中に…………偶然なんて…………存在はしないんだ…………」

 

? なんだか難しいデスねぇ……

はぁ、でもとりあえず安心したデス。そうだ、千影ちゃん、兄チャマ知りまセンか? ここを通ったハズなんですケド……

四葉の質問に、千影ちゃんは怪しい笑みを再び浮かべ、『フフッ…………知っていると言えば知っているし…………知らないと言えば知らないな…………表裏常に…………いったいなんだ…………』

え、えぇっと? つまり?

すると千影ちゃんは、顎に手を当てる、考えるポーズをとって、視線を適当に走らせたのち、いいました。

 

「ストレートな物言いは好きじゃないな…………が、それが貴女(キミ)の美徳なんだろうね…………いいだろう…………」

 

一拍おいて、

 

「要は…………今は…………兄くんを追いかけるのを止めてほしいんだ…………」

「どうしてっ!?」

 

四葉は、反射的に叫んでいました。だって、だって……四葉にはそれしかないから……

千影ちゃんは、四葉の大声に驚いたようだったけど、すぐに気を取り直して、

 

「すまない…………貴女(キミ)自己同一性(アイデンティティ)を否定するつもりじゃないんだ…………」

 

千影ちゃんは歩み寄りました。

 

「でも…………すまないね…………さあ…………私の眼を見て…………」

 

千影ちゃんが、その深い色の瞳で、四葉を貫きました。四葉はなぜか、動くことで出来ません……

そうだ…………さぁ…………静かに眠ろう…………

瞬間、四葉は目の前が真っ暗になりま…し……た………

 

 

〈ここは……〉

 

再び目をあけた四葉の視界に広がったもの。それは、永久に続くかと思えるほどの暗闇でした。

 

〈ここは……?〉

〈狭間の世界よ〉

 

再び四葉が何もない世界に向かって問い掛けると、後ろから声がしました。

振り向けば、暗黒の中に、女性が浮いていました。

 

Scene10

壁を乗り越え……

 

〈アナタは……だれ?〉

 

四葉は問い掛けました。

 

〈私? どうでもいい事を聞くのね。まぁいいわ、答えてあげる。私は“過去(ウルド)”〉

 

ウルド?

 

〈そう、貴女を、人間を過去と向き合わせる〉

〈…えぇっと……つまり?〉

 

四葉は、ついさっき言ったような記憶のある言葉を放ちました。

が、ウルドと名乗った女性は、唇に薄い微笑を浮かべると、背景の闇に溶け消えました。

 

!?〉

 

まるで、はじめからなにも無かったかのように。

その瞬間でした。辺りがサンゼンと輝きだしたのは。今まで暗闇に包まれていたのが嘘のように、辺りは光が立ち込め……四葉は目をあけていられなくなりました。

 

 

……どうやら光は収まったみたいデス。

四葉が恐る恐る瞳を開くと、辺りはいつの間にか、騒然とヒトが歩いていました。どこか、見覚えがある街デスね。既視感

……なんだか、見覚えがありマス……でも、ニホンじゃないデスね……

 

〈どうやら、イギリスみたい……ね〉

 

そう、確かにそこはイギリスだったの。とおりを歩いているヒトは、ニホン人みたいに髪と瞳の色が黒じゃありまセンでした。

 

〈……でも、四葉、さっきまでニホンにいたのに、なんでイギリスにいるのかなぁ?〉

 

そうデス。四葉はさっきまでニホンにいたの! それがどうして……

そのとき、四葉の眼の前を、小さな男の子と小さな女の子が通り過ぎました。

 

『よつばのご本返してよぉ〜』

『ヤダヨーだ』

 

……四葉?

ビックリして、四葉はそっちを見ました。

 

『よつばがグランパにもらった大切なご本なんだから〜!』

 

……あ、あ、あ、あれは小さいころの四葉デス! 何で四葉がここにいるのに、もうひとり四葉がいるデスか?! と、とりあえず、チェキしなきゃ!

 

『返してよぉ〜』

『やだよ〜』

『返してってば……あっ!』

コケっ!

 

〈ああっ! 四葉転んじゃったデス! ダイジョーブデスか!?〉

 

四葉は慌ててこけている自分に駆け寄りました。なんか、違和感を覚えマス……

四葉は、自分の手を取って、起き上がるのを手助けしようとしました。

が……

 

〈あ、あれれ〜っ!?〉

 

四葉の手が、ミニ四葉をすり抜けちゃったよ?! な、何で……

あらためて自分の手をチェキして……愕然としました。

 

〈む、向こう側が透けて見える……〉

 

ど、どーして?! どーして四葉の腕が透けてるんデスか!?

透けてるのは腕だけじゃありまセンでした。全ての部位が、薄く霞んでいマス……。

 

『ぐすん、ぐすん……』

 

ボーゼンジシツの四葉の様子など知る由もなく、ミニ四葉は泣き出しちゃった……

さすがに男の子も、駆け寄ってきました。

むむむ、仕方ありまセン。事態を静観でチェキするしかないようね。

 

『お、おい。大丈夫か!?』

『うえ〜ん、返してよぉ……』

『分かったよ、返す……だから泣き止めよ』

『うん、ありがとう……

 

四葉が小さい時に、グランパからもらったご本を受け取ると、ニコっと、涙で濡れた瞳でミニ四葉は微笑みました。

 

〈う〜ん、さすがは四葉。小さい時からカワいいデス♪〉

 

おもわず自分のかわいさに見惚れちゃった、えへへ

少し嬉しくなった四葉だったケド、すぐに表情がこわばっちゃった……

 

『おい、外人相手になにやってるんだよ、トム』

『ロビン……』

 

急に後ろから、男の子が出てきました。そして、ミニ四葉を指して、外人、と言ったの!

 

『外人は、誇り高きイギリスの名探偵、シャーロック=ホームズにはなれねーんだよ。だから、それを思い知らせてやれって言ったのに・・・渡していちゃ意味ね―だろ?』

 

愕然として、そしてそのとき、四葉は過去を思い出すと同時に、悟りました。どうして自分が探偵に固執し、自分でも不思議に思うくらい明るく振舞うわけを。

 

瞬間、世界は再び闇に包まれました。イギリスの街並みも、ミニ四葉も、どこにも見当たりまセン。

再び後ろから、声。

 

〈過去を思い出したようね。あれが、貴女を過剰に動かす原因〉

〈過剰に動かす原因?〉

 

そう……デスね。四葉は、半分イギリス人じゃなかったから、あんまり相手にされなくて……かなしかった……デス……。

 

〈だから貴女は、無理にでも明るく振舞うことにした。そうすれば……〉

 

すこしでも、ココロはラクになるカラ……

 

〈そして、それでもあなたは戦おうとした。探偵になるということ、と〉

 

そうすれば、見返せると思ったカラ……

 

〈でももう貴女はボロボロ。無理やり明るく振舞うことは、貴女の精神へ負担を与え続けてきた。みえないけれどね……〉

〈アナタは……?〉

 

いつのまにか、先ほどとは違う女の人が立っていました。

 

〈私? 私は“現在(ヴェルダンディー)”〉

〈ヴェルダンディー?〉

〈そうよ。貴女に今の真実を教えてあげる〉

〈今の真実?〉

〈フフフ、分からなくてもいいわ。それが分からなくても、価値のない事だから〉

 

そこで一息つくと、

 

〈あなたは今の生活に充足があるのかしら?〉

〈……ありマス〉

〈果たして本当かしら。自分のやってることは、嫌われるようなことなんだろうか、とか考えているのではないの?〉

〈そ、そんなことっ!〉

〈しっかりと見つめなさい、現在のことを。あなたは所詮、フェフをもとめてるに過ぎない〉

〈フェフ?〉

〈……物質的な幸せのことよ。もう少しいえば、表面的な幸せのことね。真実にふれあおうとせず、自分の保身に走る。……話がそれたわ。ともかく、あなたの求めているのは精神的な充足でなくって?〉

〈………〉

〈……そう、まだあんまり分からないのね。じゃあ、分かりやすく説明してあげる。貴女は、貴女のお兄様を……“チェキ”? というのかしら? とにかく、そーいうことしているけど……ほんとうに、貴女のお兄様は、それで貴女のことが好きになっているのかしら?〉

〈え……っ?〉

〈答えは、貴女自身が見つけなさい。わたしが言ってもいいけれど、それでは、現在を見つめること、にはならないから〉

〈大切なのは、信じること………〉

 

そこで三度、声が現れました。

 

〈アナタは?〉

〈私は、“未来(スクルド)”〉

〈スクルド?〉

〈そうですわ。私は貴女に、未来を与える〉

〈?〉

〈貴女は、自身を信じて行動なさい。それが、信じることが、運命の螺旋に到達したならば、貴女は見え方が変わるはず。あなたは周りから、輝いて見えるはず。貴女には、それだけの力がある。信じなさい、己を。人を、愛する人を……〉

《貴女なら、運命を超えられる》

 

3人のからだが、闇に溶け込んでいきマス。いや、これは、3人の体が溶け込んでいるんじゃなくって、四葉が溶け込んでいるデス!

 

〈待ってよ! もう少し……〉

 

四葉の意識が、再び闇と同化する寸前に、3人は、口をそろえて言いました。『自身を信ぜよ』と………

 

Scene11

ちいさなまほう(パーティ)

 

『…、…つば……よつば、四葉!』

「ん、ん……」

 

誰かに呼ばれている気がしマス……ダレデスか……

 

「四葉っ!」

「ひゃあ?!」

 

あ、兄チャマっ!?

なぜか目の前に兄チャマがいマス……

『あ、おきたね』と、兄チャマは微笑みました。

四葉は、まだ事態を掴みきれていない頭をめぐらせ、辺りを見ました。……どーやら、四葉の部屋のようデス……窓からは世闇と月が部屋の中を覗いていマス。夜になっちゃったみたい……それにしても、おかしいデスね。四葉は教会にいたはずデス……

四葉がそのことを尋ねようとする前に、兄チャマが『うなされていたみたいだったけど、大丈夫?』と言いまシタ。

! そうデス! あのウルドやヴェルダンディーやスクルドは何だったのかナ? ……あれは、ヤッパリ、夢だったのかなぁ? こんなにもはっきりと覚えているのに……

それに、たとえ夢だとしても……酷くショックでした。

 

「ねぇ、兄チャマ……?」

「なに? 四葉」

 

兄チャマは、優しく微笑んで、四葉を覗き込みました。その視線を避けて、「ダンチョウノオモイ」で、この問いを、「四葉のチェキは、兄チャマにとって、メイワク?」 という問いを、問いかけざるをえませんでした。兄チャマは驚いた表情(かお)で、「どうして、そんなことを?」と、聞き返しました。

四葉にも良く分からないデス……。でもきっと、誰かに自分の行動を肯定して欲しかったんだと……思う。そうしないと、自分で築いたものに、押しつぶされちゃうような気がしたの……嘘がかりそめの幸せを与え、真実が苦しみを与えるのだとしても、かりそめという事をわかった今、問いかけざるをえなかったの――

 

「だってだって! 兄チャマはいつも、仕方ないな、って顔してるし、今日はずっと逃げちゃってたし……ぐす……だから四葉、ひっく、兄チャマは四葉のこと嫌いなんだって……うぇ……ぐすん、ぐす」

 

崩れ始めた感情の渦に、自分で歯止めがかけれないよ……温かいものが、頬を伝わって落ちまシタ。ああ、四葉、泣いてるんだ……

 

「ぐすん、四葉、メイワクでしょ? だから……」

 

ポンッ!

 

「チェキっ?!」

 

トウトツに、四葉の頭に、兄チャマの手が置かれました。

 

「よしよし……」

 

はぁ……四葉の中でフットウしていたものが、冷めていくのがわかりました……

兄チャマは、その瞳で四葉の濡れたそれを覗き込んで、

 

「僕が、四葉を嫌いなわけ無いだろ?」

 

四葉の髪をくしゃくしゃして、

 

「僕は四葉のことを大切だと思ってるよ。だから、そんな寂しいこといわないでおくれ」

「あ、兄チャマ……

 

四葉は、兄チャマに飛びつきました。『四葉!?』その体に顔を(うず)め、声をあげて泣いちゃった……。兄チャマは、さいしょ戸惑っていたみたいだったケド、四葉をやさしく抱きしめてくれました。

 

――アリガト、兄チャマ

 

 

――少しのあいだ、そうしていまシタ。兄チャマは、四葉の背中をポン、ポンと、優しく叩いてくれていマス

 

「四葉、もう大丈夫?」

「うん、ありがとうデス、兄チャマ 」

 

声をあげて、いっぱい涙を流したら、何もかも、一緒に流れ出ちゃったみたい。

 

「どういたしまして。じゃあ、四葉、行こうか」

 

……え? どこに行くデスか?

兄チャマは、立ち上がりました。……うー、四葉もいっしょに抱き起こしてくれればいいのに。

兄チャマは、人差し指を自分の唇の前に据え、『それはついてのお楽しみだよ、よ・つ・ば』と、いたずらっぽく笑いました。

 

「……?」

 

兄チャマは、首を傾げて戸惑っている四葉を見ると、四葉の手を引っ張りました。

 

「ああ、兄チャマ?!☆◆」

「さぁ、いくよ、お姫様!」

「……ハイ、兄チャマ

 

 

「ここだよ」

 

とあるドアの前で、兄チャマは立ち止まりました。ここは……ホール? 振り向けば、兄チャマは、優しい笑みを浮かべていました。

 

「兄チャマ、ここに何かあるの?」

 

けれど、兄チャマは、ニコニコ笑っているだけでした。

う〜ん、四葉には、ここに何かある理由が見当たらないの。……仕方ないデスね。四葉は覚悟を決めて、ドアに手をかけました。

3・2・1・えい!

 

パンパンパンッ!

?! チェキっ?!」

『ハッピーバースデー、四葉ちゃん!!』

 

中には、咲耶ちゃんをはじめとする、四葉の姉妹と、陽月さんや夏姫さん、唯さんが、使い終わったクラッカーを片手に、並んでいました。

……!?

えっと、どーいうこと?

おもわず、後ろを振り向くと、兄チャマは、満面の笑みを浮かべていました。

 

「四葉をビックリさせようと思ってさ。……誕生日プレゼントを見られるわけにもいかなかったから、今日は逃げちゃったんだよ。ゴメンね」

「兄チャマ……

「喜んでくれた……かな?」

 

兄チャマの顔が滲みました。四葉、嬉しくって、嬉しくって……涙が出ちゃうよ

躊躇うことなく、四葉は兄チャマの胸に飛び込んじゃった

 

「兄チャマ 四葉、とぉーってもハッピーデス 兄チャマ、大好き たとえ一日前でも、とぉーっても嬉しいよ!! 兄チャマ、大好きデス……

 

――あれ? 何でみんな顔が引き攣ってるデスか?

 

 

あとがき

まずはじめに、こんな無駄に長いようなSSを読んで下さった方、どうもありがとうございます。

Prof.ヘルです。

近頃、BDSSしか書いていないです。ダメダメですね……(泣

 

さて、今回は四葉BDSSということで、気合も一入(ひとしお)。頑張りました。

しかし、できてみれば、結局何が言いたかったんだ自分、と問い詰めたくなる出来で。

ホント、お目汚しでゴメンナサイ、諸兄チャマ。

“ほのぼの”を目指していた筈なのに、出来上がってみれば、中途半端にギャグ(といえないしろもの)や、シリアス(までいかないもの)なぞが混じりまして、ワタシのレベルの低さを公開したような気がして、たいへんお恥ずかしいかぎり。

それにいたしましても、何が言いたいのかサッパリ意味不明です。特にシーン10.

『つれづれなるままに、日暮し、硯に向かいて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば』(徒然草)、意味、不明になりぬ、のでございます。あー、ゴメンナサイ。バシバシ叩いてくだサイ。シーン11をよりハッピーエンドにするために、暗くする必要があったのですが、なりきれてないデスね。

 

さて、ここまで読んで下さった聡明な方ならば、気づいている人もいるかもしれませんが、小題はBGMやらのやつです。

 

1:ハートをチェキ!  言わずとしれた、しすぷりキャラクターイメージアルバム11番目デス。

2:グリーングリーンズ 分かる人は分かる、カービィの主題的歌。もしくは、ドラクエの主題歌で。

3:はるかぜとともに  『星のカービィ 夢の泉の物語(FC)』の曲(何面かは忘れました)だとおもってください。

4:射陽・そよかぜ   カービィ3(SFC)の降雪・砂漠・海岸やらの曲、もしくはカービィ64サウンドテスト14の曲。

5:競争        カービィ64のミニゲーム(特に蛙跳びゲーム)の曲です。もしくは、デデデのテーマ。

6:甘い園       カービィボウル(SFC)のおぼろげですが四面の曲、もしくはカービィ64サウンドテスト12の曲。

7:雲よりももっと上で カービィ64サウンドテスト10の曲、もしくはコロコロカービィの空のステージ。

8:海辺の新緑     カービィ3の二面の曲。もしくはカービィ64サウンドテスト6の曲。もしくはカービィDX、3(SFC)の海辺の曲(うわっ、不正確!)

9:闇のくちづけ    言わずとしれた、しすぷりキャラクターイメージアルバム7番目デス。もしくは、カービィ64サウンドテスト17。

10:壁を乗り越え……  カービィのボスキャラの曲ならどれでも(最後のボスならなおよし)。ナイトメアやマルク、O2とかです。

11:ちいさなまほう   アニメ『ぴたテン』のエンディングです。もしくはピュアぷり(よのひとはピュアストと呼ぶ)のOP『瞳の中で』。

12:輝く空の下で    カービィボウルの最終ステージ8面の曲。もしくは、カービィ夢の泉、の七面の曲。カービィのエンディングならどれでもいいのですが、特に一押しはDXの銀河に願いを、のエンディングです。Shining star。

 

分かってしまいましたか。そう、わたくしProf.ヘルはカービィ大好きデス。 (………アニメは見ていませんよ、念のため)

夢の泉がGBAで出たりしないかなぁ、と思っております。カービィファンの方、ご一報下さい(笑

 

誕生日の日になって誕生日プレゼントの用意をするなんて! という突っ込みは入れないでくだサイ。お願いデス。ワタシのご都合主義が分かるだけですので。

心の中で、ああ、

 

可憐は最後の調整をしてたんだな、

花穂は最後の調整をしてたんだな、

鞠絵はもう買ってしまった後だったんだな、

白雪と春歌はまぁ一日前から作っていてばれるのはいけないしな、

衛と咲耶と鈴凛は頼んでおいていたプレゼントを取りにいったんだな、

雛子と亞里亞は最後の調整だったんだな、

陽月と絶零はただ単にずぼらなだけだったんだな、

千影はまぁ謎だしな、

 

と思っておいてくだサイ………だめ?

 

さて、このSS、四葉の視点から捉えているので、捉え切れていないことが謎となって残っていたりします。

それらを解決するために、『兄視点Ver.』を用意しました。こちらはギャグのつもり………です( ̄ー ̄;)

このSSの感想、及び意見、要望、アドバイス、批評等を下さった方に、差し上げたいと思います。だから、何かくださいね? 一行だけでも、いや、件名だけでもいいので。

 

それでは、次回でお会いしましょう。次回は、鈴凛BDSSです………か?

ではどうぞ、エンディングをお楽しみ下さい。

 

Scene12

Ending“輝く空の(もと)で”(兄)

 

ふぅ……夜風が、心地いいデス……

四葉は、屋上にいマス。……時計は、12時10分前を指しています。

……絶零さんが持ってきたお酒を、咲耶ちゃんや千影ちゃん、春歌ちゃん、鈴凛ちゃん、唯さん、の五人は勧められるままに飲み、「ぐでんぐでん」に酔っ払ってしまったの。雛子ちゃんや亞里亞ちゃん、花穂ちゃんや白雪ちゃん、衛ちゃんは疲れたのか寝ちゃったし……可憐ちゃんと鞠絵ちゃんは、お皿洗いをしています。四つ葉も手伝おうとしたケド、『誕生日なんだから、休んでていいですよ』って、ふたりに声を揃えて、いわれちゃった、えへへ。

陽月チャマたちは、夜風をあびてくる、といってふらりとどこかへ行っちゃったデス。

かくいう四葉も、へろへろ……デス。

今日は一日じゅう走り続けて、兄チャマをチェキしようとし続けたし……

あ、いや、パーティはすぅっごく、おもしろかったデスよ

でも、パーティの後は、少し寂しいような気持ちになるの……終わっちゃった、ってキモチになっちゃって……四葉、ちょっぴり悲しくなっちゃう。

だから四葉、こーしてパーティの“よいん”にひたってるの。

おもしろかったこと、楽しかったこと……そういうことすべて、四葉は、四葉の名探偵なブレインの中にチェキしておかなきゃいけないよね♪

 

「……四葉」

 

四葉が振り向くと、そこに、手を後ろに組んだ兄チャマがいました。

 

「兄チャマ、どうしたの?」

「四葉にプレゼントあげてないことに気づいてさ……」

 

兄チャマは、四葉のそばまでやってきました。

 

「はい、これ」

 

何気なく出された、手の平に乗るぐらいのもの。四葉はそれを受け取りマス。

 

「ねぇ、兄チャマ。開けてもいいデスか?」

 

兄チャマは、首を縦に振りました。

包装紙を開くと……

 

「わぉ、ユニコーンです

 

そう、透明な、ユニコーンがそこにありました。キレイです……

 

「ありがとうデス、兄チャマ……

 

ぴっ!

 

時計が鳴りました。零時になったデス。

 

「四葉」

「ハイ?」

「誕生日、おめでとう」

 

ちゅっ!

 

 

兄チャマ、四葉、今日のこと、絶対に忘れないよ


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kawakamishinji@hotmail.com

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