作者:Prof.ヘルさん
『5 15 (水)
明日は・・・
(春歌の日記より)
今日も一日が終わりました。
今は子の刻、即ち、午前零時です。
今日もいろいろなことがありました。
枕草子の清少納言しかり、吉田兼好の徒然草に習い、ワタクシも、日記というものをつけています。
夜眠る前に、その日に起きた出来事を書きつくろうため、ワタクシは今日も筆を取りました。
今日は、少し前、四葉ちゃんが訪ねてきていたので、一緒にお話をしていました。
うふふ、四葉ちゃんったら、『春歌ちゃんの好みをチェキッ!』 などと申して、ワタクシの部屋に入ろうとしたまではよかったのですが。
ワタクシの部屋の開け方が分からなかったみたいでした。(ワタクシの部屋は、引き戸になっているのです)、
『あ、あれれ? ノブがないデスネー…とりあえず、押してみまショウ』って……当然、引き戸ですからそれは開かなくって……『お、おかしいデスね、四葉の部屋のドアとは違うデス・・・で、でも名探偵な四葉には、ノープロブレムなのデス! ニホンのことわざにあります、押してだめならひいてみろ、って!』
でも、次の瞬間には…『あうぅ……どこで引っ張ればいいのか分からないデス……』って……
ワタクシ、おもわず笑ってしまいました(四葉ちゃんには悪かったのですけどね)。
四葉ちゃんはそのまま、引き戸の前で考えているようで………うーん、うーん、って唸っていたので………
ワタクシ、ドアまで行って、開いてさしあげましたわ。
思わず笑ってしまったワタクシを、四葉ちゃんは、『あぁ〜! 信じてないデスねっ!? ホントですっ! 四葉は知ってたの』って力説するから、ワタクシも『はいはい、わかってますよ、四葉ちゃん』って。
四葉ちゃんはけろりとして、『それならいいです。クフフフフ、春歌ちゃんも、四葉の名探偵さが分かってきたのねっ♪』 と、いいました。
ワタクシは、そんな四葉ちゃんを微笑ましくおぼえながら、四葉ちゃんに、ワタクシの元を訪ねた理由を、訊ねました。
四葉ちゃんは、なぜか自信満々で、『当然、春歌ちゃんをチェキしにきたのよっ!』 って。
四葉ちゃんが、いつも兄君さまに対して『ちぇき』というのをしていることは知っていましたけれど、ワタクシ、『ちぇき』の意味が分からなかったので、訊ねましたわ。
そうしたら四葉ちゃんは、ますます胸を張って、『チェキって言うのは、つまり、チェキのことよっ♪ 分かりまシタか? 春歌ちゃん』 ですって。
ワタクシ、釈然としなかったのですけど、会話が進みそうになかったので、止めておきました。
四葉ちゃんは、言いました。『今日は、春歌チャマがドイツにいたころのお話を聞きたいの。』
ワタクシは、少なからず驚きを覚えました。
だって、まさかそのような事を訊かれるとは思っても見なかったのですもの。
ワタクシの驚いている表情を見て、四葉ちゃんは、申し訳なさそうに、『ダメ………デスか?』
ワタクシは、ただそんな事を訊かれるとは思ってもいなかっただけでしたので、『いいえ、いいですわよ』 と、答えました。
ワタクシの部屋の中に入った四葉ちゃんは、“おおはしゃぎ”でした。
『チェキ! 春歌ちゃん、これは何デスかー? これは? これは? これはー?』
どうやら、イギリスで育った四葉ちゃんは、日本の文化というものを、あまりよく知っていなかったようです。初めて目の当りにする物が多すぎて、好奇心を抑えられない、そんな感じでした(はぁと)
ワタクシは、一つ一つ、教えて差し上げました。
『これは、障子というもので、部屋と部屋とを遮るものですわ。えぇっと、これは、急須。お茶…teaを淹れるための物です。これは抹茶。日本のお茶のひとつです。あとで入れて差し上げますわ。これはお蒲団。日本のひとは、普通、これで寝るものですわ』
四葉ちゃんは、しきりに感心していました。うふふ、四葉ちゃんって、勉強家なんですね。ワタクシがそういいましたら、
『イエース! 探偵たる者、どんな物にも興味を持たなくちゃダメなのよっ! クフフ、四葉ったら、またいっぽ、名探偵さんになっちゃったデス!』
四葉ちゃんは言いました。
『さて、春歌ちゃん? ドイツにいたころのお話をして下サイ』
『ええ、構いませんわ。そうですわね……じゃあ、このおはなしで……』
ワタクシは、新しくお茶を点てながら、ゆっくりと、四葉ちゃんに向かって話し始めました・・・
あれは、ワタクシがまだ、9歳ぐらいの時でしたわ・・・そのころワタクシは、ドイツのとある地方に住んでいました。ワタクシの両親は、出張が多いので、お祖母さまの家にあずけられていたのですわ。
ワタクシのお祖母さまの背の君、つまり、ワタクシのお祖父さま――血はつながっていないのだけれども――は、その地方の領主の家系で、なんと、お城に住んでいたんです。とまぁ、そんなころのお話です。
その日は、お祖母さまの用事で、このドイツの首都、ベルリンに来ていました。それは、1泊2日の予定で、だから朝早くにでました。ホテルに着いたのは3時で、ちょうどチェック・インできました。でも長旅の疲れからか、ワタクシは、そのときは、すぐ寝てしまったらしいのです。
――おきると、既に夕食の時間で、お祖母さまは、もう、用事を済ませてしまったみたいでした。
次の日。
「春歌さん、早くいらっしゃい。あなたにお似合いの、可愛いアクセサリーでも、買ってさし上げるから」
用事の終わったお祖母さまは、ハルカを、街へ連れ出そうとしました。
「ハーイ、お祖母さま。今行きます!」
ハルカは、お祖母さまに手をつながれて―― 都会は人が多いカラ ――街へと出ました。
「うわぁ・・・」
おもわず、そんな声がでました。前来た時は、小さすぎて、はっきりおぼえてなかったの。だから、ハルカは、「お祖母さまは、ハルカをどこへつれて言ってくれるのかなっ!」「お祖母さまは、ハルカにどんなアクセサリーを買ってくれるのかなっ!」って、とぉーっても、わくわくしていたの。
お祖母さまは、「春歌さん、はしゃぎすぎですよ」って、きょろきょろと首を動かすハルカをたしなめました。でも、きっと、お祖母さまも、ハルカと同じ気持ちだったと思うの。
――それから、いくつかのアクセサリー屋さんを回って、お祖母さまに、星型のブローチとか、月の形をしたティアラとかを買ってもらっちゃった……お昼をレストランでとりました。ハルカは、お祖母さまに「ニホンの料理、食べたい!」なんていったら、お祖母さまは笑って、「仕方ない子ですこと。でも、今日ぐらいは、ハルカさんのわがままを聞いてあげましょう」って。ハルカ、嬉しくて、飛び跳ねちゃった(はぁと)
でも――午後街を回ってるときに、急に雨が振り出して……雨宿りするために走る人とかに阻まれて……いつのまにか、お祖母さまと離れ離れになってしまっていて……そして、すこし表通りから離れてしまったのか、周りには誰もいなくって……そう思ったとたん、急に寂しくなっちゃって……
「お、お祖母さまー!」
ハルカ、必死に呼んだけれど……やっぱり周りには誰もいなくて……
「ぐ、ぐすん………」
おもわずハルカ、泣いてしまったの。
雨は、ますます強くなって……まるで、ハルカの今の気持ちのように……
そのときでした。
「ねぇ、どうしてないているの」
いつの間にか、ハルカのとなりに、男の子がいました。ハルカよりちょっぴり背が高くて……でも、どことなく、頼りなさそうな顔をしていました。瞳の色は黒色で、肌の色はおう色。
「……だぁれ?」
それが日本語だったで、ハルカはびっくりしちゃった。そのおかげで、ハルカの涙は、どこかへ行ってしまいました。
「僕? 僕は……ジークフリード。そう、ゲルマンの英雄、ジークフリードさっ!」
「じぃくふりぃど? うふふ、なにそれー」
ハルカ、笑っちゃった。だって、聞いたことがなかったんだもん。
後で知ったのだけど、ジークフリードは、北欧神話という神話で、ニーベルンゲンの悪竜とかを退治したとかで有名な、王様でした。ゲルマン民族に伝わっていたから、ゲルマン神話、と言っても過言じゃないそうですって。オーディンや、トールくらいは、お祖父さまに聞かされたおぼえがあったけれども、ジークフリードは、初耳でした。
「あ、あれ? 分からなかった? 北欧神話だったんだけど………まぁいいや。で、どうして泣いていたの」
その男の子……小さなジークフリードは、ハルカに再び訊ねました。
「あのね……お祖母さまと、はぐれちゃったの……」
「ははぁ。迷子になっちゃったんだ」
「うん……。」
ふたたび、お祖母さまとはぐれたことを思い出して、ハルカは、また悲しい気分になってきちゃったの。
「な、泣かないで! 僕も一緒に探してあげるから!」
「……ほんとに?」
「ほんとだとも。行こう、ヘラ」
今度は、ギリシャ神話だったの。
それから、その子の持っていた大きめな傘に二人で入って、あちこち探していると、いつの間にか雨がやんで………
「みて、ヘル。虹だよっ!」
毎回毎回、呼び方が変わっていたけど、全部、何かしら、神話の女神だったり、そうした人でした。頼りなさそうに見えたけど、それは、優しさゆえだったのでしょう。
「キレイ……」
街の向こうに見えた虹は、とっても鮮やかで………ハルカたちみたいに、立ち止まって、その虹を見ているひとも、少なくなかったのです。
そのとき……
「春歌さん!」
ききなれた声。
振り向いてみてみれば、案の定、お祖母さまの声でした。
「お祖母さま!」
春歌がお祖母さまを呼ぶと、お祖母さまは駆け寄ってきました。
「お祖母さま! こちらの方が………」
ハルカは、駆け寄ってきたお祖母さまに、自分の右にいた男の子を紹介しようとしました。
「こちらの方? 春歌さん、誰もいませんよ?」
「えっ!?」
ハルカ、驚いて、右を思わず向きました。お祖母さまが言ったとおり………そこにひとは、影も形もありませんでした。
「確かにいたのに……」
「それに春歌さん、その傘、どうしたんです?」
ハルカの手の中には、まだ、傘がありました。
「男の子がくれたの」
「ちょっと貸してください」
お祖母さまは、ハルカから、傘を受け取ると、眺めていました。すると、何かに気づいたように、
「あっ!」
と、言いました。
『で、どうしたんデスか?』
四葉ちゃんが訊ねました。
『さぁ……それからお祖母さまは、笑い出してしまってので……』
ワタクシには、未だにあの笑いの意味がわからないのです。
ワタクシがそう言うと、四葉ちゃんは、笑いました。『クフフフフ、四葉は分かっちゃいまシタ。さすがは、四葉デス。ホームズさんも驚きネ!』
ワタクシ、驚いてしまいました! だって、あれから、もう五年ぐらい経つのだけれど、未だにワタクシには分からないんですもの。それを四葉ちゃんは、ワタクシの話を聞いただけで……これには、ほんとうに名探偵なのかしら、と思ってしまいましたわ。
四葉ちゃんは、ワタクシに『今日はとってもいいお話をアリガトウです。サンキューです!』と言って、部屋から出ていきました。
『あ、あれ? このトビラ、どうやってあけまシタっけ?』
後書き
Prof.ヘルです。
全く以って、何が書きたいんでしょうか、このワタシは。
勘のいい………というか、おそらく、読んだ人みんな分かっていると思いますけど、春歌と会ったのは、誰でしょうね。論理的に考えて、春歌のお祖母さんは誰にあったのでしょうか。 送ってくれたひとに、エピローグ、差し上げます。うう、一時間と四十分もオーバーして、こんなんです。
この際、ウィルス以外の何でも、即ち、感想、アドバイス、批判『こんなの俺の春歌じゃねぇ』等のメールくださいませんか。
近頃鬱な、Prof.ヘルでした。
ホームページなんて作りました。http://www8.ocn.ne.jp/~metal/celestialunderworlds.htmです。ぜひ、来てください。
Prof.ヘルさんへの感想はこのアドレスへ
kawakamishinji@hotmai.com
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