「さぁ、今年も来ましたわ!」
「クリスマス恒例、持ち芸披露大会! In.2004!」
「よく忘れなかった!」
「自分で自分を褒めてあげたいとは作者の言!」
「でもとっくにクリスマスは過ぎてますの!」
「というかとっくに年も明けてマス!」
と、いうわけで。
いつの間にやら4回目。
今年も始まります。
「開ま……」
ビー! ビー! ビー!
「……?」
咲耶の開幕宣言(そんなもん毎年あったか……?)直前にて、緊急事態を告げるブザーの音。
うなぎ上りのテンションは、しかし決して下がることはなく。
それが変な方向に傾いていくのを、俺は確かに感じていた。
「なんだ? なんかあったのか?」
ブザーを止める鈴凛に尋ねる。
「うん、侵入者みたいだね……煙突から」
『……煙突!』
その言葉に、やたら反応を示す妹たち。
「ちょっと待てお前ら、まさか……」
『サンタさん!』
「やっぱり!?」
瞬間、妹達の心が一つになった(一部確信犯ありと見たが)。
全速力で暖炉の部屋に向かっていく。
「いや、サンタさん違うから! サンタさんブザー鳴らさないから!」
俺の言葉に、もちろん止まる者は一人もいない。
「アニキ、私の警報装置はサンタクロースすら捕まえるって評判なんだよ」
「どこでだよ!」
言いながら、俺も駆ける。
先頭の衛と共に、部屋に飛び込んだ。
「あ……」
そこにいたのは、確かに見た目だけならサンタだった。
お約束の赤い服に、帽子。そして白いヒゲ。
明らかに付けヒゲである彼が本物かと言えば、もちろん断じて否。
『サンタさんだ!』
……と、思わない者がここに12人(一部……ていうか半数くらいは確信犯だろお前ら)。
「は、は〜い。サンタさんです……」
ホッとした表情で、サンタ(便宜上こう呼ぶ)がぎこちない笑みを浮かべる。
が、その笑顔が固まるのに数秒とはかからなかった。
「……よ?」
顔のすぐ横、壁に刺さったクナイを横目で見る。
頬についた一筋の傷は、そろそろ痛みによってその存在をアピールし始めた頃か。
「お待ちしておりましたわ、サンタさん。ワタクシ、とても欲しいものがあるんです」
「ひっ!」
春歌が数歩歩み寄る。
クナイを投げた本人の接近に、同じ分だけサンタは距離をとる。
ちなみに、クナイを投げた意味は不明。おそらく、最初にビビらせて交渉を有利に進めるためと思われる。
……うん。もしかして、サンタはそういうものじゃないって教えなかった俺が悪いのか?
「是非とも兄君さまと一晩……」
「あら、それは欲張りすぎね」
春歌より一歩前に、咲耶が出る。
本能で何かを感じ取ったのか、サンタはまた同じ分だけ距離をとった。
「私は……そうね、お兄様の唇でいいわ」
「いやお前らそれ、そもそもサンタに頼むようなもんじゃないから……」
「あのね、花穂は……」
「姫は……」
「お菓子……」
「現金……」
「実験台……」
それぞれの願いを胸に(?)、12人がサンタににじり寄る。
人によって受ける印象は違うだろうが、まぁまずサンタにお願いしている風景には見えないだろう。
「う、う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
サンタの目にそれがどう映ったのかはわからない。
が、逃げるという選択肢を選んだのはたぶん正解。
一目散に駆け出すサンタを目だけで追いつつ、咲耶は片手を上げた。
そして、声と共にそれを振り下ろす。
「全員、散開!」
咲耶の号令に、全員がそれぞれの方向に駆け出した。
口を開くものはいない。戸惑う者すらいない。
「……うわぁ、何このもの凄い団結力」
普段からもうちょっとそれを生かしてくれ……
あ、花穂こけた。
とりあえず、俺は直でサンタを追いかけることにする。
この際サンタが逃げようがどうしようが構わない(というか、無事逃げ延びてほしい)が、我が家で殺人事件を起こすわけにはいかんからな……
『サンタさんは北東に移動中。もうすぐD-22に到着だよ』
「了解。聞いたわね、白雪?」
『了解ですの』
隣を走っているのは咲耶一人。
トランシーバーで他のメンバーと連絡を取り合っている。
「なぁ。いちいちそんなことしなくても、衛が追いかけりゃすぐ捕まるんじゃないのか?」
「ふふ、それじゃ狩りの楽しみがないでしょ?」
狩りなんですか……
「やっぱお前確信犯だろ……」
「何か言った?」
「いや、なんも……」
角を曲がれば、そこにサンタはいた。
立ち止まった、その目線の先には白雪。
一瞬の足止めにすらなり得ないように見える少女だが、そうじゃないことは俺が一番よく知っている。
「さぁ、サンタさん? 大人しくプレゼントを渡しなさい」
「……くっ!」
俺達と白雪を、一度ずつ見る。
一瞬迷ったサンタは、白雪の方へと走った。
なるほど、そちらの方が突破しやすいと見たわけか。
確かにその判断は間違っちゃいない……が、あまりに無謀。
「白雪、殺しちゃダメよ!」
「わかってますの!」
「いや、そんな注意しなきゃいけないこと自体がおかしいと思うんですが!?」
ま、まぁとにかく。どうやら殺す気はないらしいことに一安心。
事実、白雪はいつもの包丁を構えてはいない。
「どいてくれ!」
力で押し切ろうとするサンタ。
その顎を捉えたのは、細く綺麗な足の先。
「……がっ」
「ふぅ……やっぱりコックといえば足技ですの」
白雪の蹴りが、見事にヒットしていた。
「お前はどこの海賊団だ……」
「大丈夫、ちゃんとスパッツは穿いてますの」
「いや、そこの問題じゃなくてね?」
「ふふ、心配しなくてもにいさまの時はスパッツ無しでいきますの」
「だからそんな心配は……って、俺の時!? 俺くらうの確定なの!?」
「さて……」
白雪の目が、再びサンタに戻る。
「あ、ぐ……」
サンタはグロッキーながらも倒れていない。
打たれ強さはなかなかのようだ。
「さすがサンタさん。でも、次がトドメですの」
いや、サンタにトドメさすなよ。
「スピ○ング・○ード・キッ○!」
「なんですと!?」
縦に回転すること、約180度。
そして。
「ですの゛!?」
落ちた。
うん、いやまぁ、そりゃそうだよね……
「大丈夫か、おい……」
「あぅぁ……ですの……」
「……大丈夫。目を回してるだけよ」
「そうか、そりゃよかっ……目!? 落ちた影響じゃないのかよ!」
うん、確かに大丈夫みたいだけど……さすが我が妹、頑丈にできている。
……なんてことで納得していいのか? ホントに……
「……あ」
障害が無くなったことに気付き、サンタが再び走り出す。
「白雪撃沈。次いくわよ」
『もう準備できてるよ』
「あら、さすがね」
続いて、咲耶も……
「って、白雪放置!?」
「目を回してるだけでしょ? お兄様、踏んじゃわないように端の方に寄せといてくれる?」
「扱い悪っ!」
まぁ、その通りにして俺も追走に行くわけですけどね?
すまん、白雪……
「うぉ!?」
突然、俺の足元から槍が飛び出した。
一瞬反応が遅れていれば、まず死亡ゾーン。
「あ、あぶ、危……」
『あはははは! 鈴凛ちゃん特製地獄トラップゾーンへようこそ!」
トランシーバーからではなく、備え付けのスピーカーから鈴凛の声。
『さぁ、サンタさん。我が家に入ったからには、タダで出られるとは思わないでね?』
「だからなんだそのサンタの扱いは!」
言いながら、横から飛び出た矢を避ける。
サンタも俺達も、止まらずに進む。
「……ん?」
吹き出した炎は、身を低くして一気に突っ切ることで回避。
「なんか……」
落とし穴をギリギリで飛び越える。
「あいつ、むちゃくちゃスムーズに進んでないか……?」
これだけの仕掛けの中、サンタは苦もなさそうに進んでいく。
まさか、忍者……?
「……いや、ていうか」
強酸の雨を上着で防いだあたりで気付いた。
「なんかこの仕掛け、俺だけを的確に狙ってきてませんか!?」
サンタがスイスイ進めるのも当たり前。さっきから一回も仕掛けが作動していない。
そして俺の巻き添えをくらってはいるものの、咲耶も一度も仕掛けを作動させていない。
「鈴凛! どうなってんだ!」
『……あ〜、そういえば。そこのトラップ、アニキにしか作動しないようになってるんだった』
「なんで!? ねぇ、なんで俺にトラップ仕掛ける必要があんの!?」
『まぁ、頑張って抜け切ってよ』
「つーか解除しろよ!」
『ごめん、そこのシステムって解除不能なんだよね』
「なんだその究極欠陥システムは!」
『ほら、3、2、1、……さすがアニキ、しっかり抜け切ったね! 今度はもっと強力なの作るから!』
「なぜその結論に!?」
多くは望まないから、せめて。
せめて、次は停止機能くらいは付けといてください……
「ちょっと鈴凛、逆に差が開いちゃったじゃない」
『大丈夫大丈夫。こっからの布陣は完璧、でしょ?』
不満げな咲耶に、しかし鈴凛の声は楽しげだ。
思い出したように、咲耶も口の端を上げる。
「……そういえば、そうだったわね」
「……?」
咲耶の笑みの意味はわからない。
だが、俺は心から思っていた。
――追いかけられてるのが俺じゃなくてよかった……と。
「そこまでですわ、サンタさん」
次に立ちはだかるのは、春歌with日本刀。
……なるほど、これは最強の布陣かもしれない。
構え、翔ける。
「ちょ、春歌! 殺……」
言い終わる前に、二人が交錯する。
「さないように……」
抜刀の瞬間はおろか、一瞬たりとも刃を見ることができなかった。
それ程に速い。
気がつけば、春歌は刀を鞘に収めているところだった。
サンタは動かない。
「ご心配なく、兄君さま」
春歌が微笑み、刀をこちらに見せる。
「……おぉ」
なるほど。刀が鞘に収まった瞬間にチン、ハラリってな具合に服だけが切れるやつだな。
「さすが春歌、そんなことまで……」
チン、ブシュ
「急所はちゃんと外しておきましたわ」
「モロ斬り――――――――――!?」
刀を収めた瞬間、サンタから血が吹き出た。
元々赤かった服が、さらに紅く……
「グロいわ! お前、ここは斬るの服とかにしとけよ!」
「あぁ、それならば……」
チン、ともう一度刀を鳴らせば。
「ぬかりなく」
サンタの服が、細切れになっていた。
「いや、遅っ! 服の方が後でどうすんだ! ていうか、服を斬る斬らないの問題じゃなくて中身を斬る斬らないの問題だから!」
「大丈夫ですわ。下着だけは残してあります。あ、でも兄君さまの時はちゃんと全てを……まぁ、ワタクシったら」
「だからなんで俺くらうの確定なの!?」
「ポッ」
紅くなった頬を両手で押さえ、春歌は顔を背ける。
「いや、ポッじゃなくて! って、サンタさんの顔が蒼くなっていっていらっしゃる!?」
うわーい、春歌とサンタで凄い対照的……なんて言ってる場合じゃねぇよ!
「あわわ、て、手当て……止血……」
「その辺抜かりは無いわよ、お兄様」
「え?」
振り返れば、そこに咲耶。そして鞠絵。
「どうせこうなるだろうと思って、スペシャリストを連れてきといたわ」
「おぉ! ナイスフォローだ咲耶!」
そういやさっきからいなかったが……なるほど、そういうことか。
いやしかし、こうなることがわかってんなら最初からやらすなよ……
「頼むわよ、鞠絵」
「えぇ、任せてください。こと吐血に関して、わたくし以上の方はちょっといませんから」
「別に吐いたわけじゃないんだが……」
鞠絵が、時々痙攣を繰り返すサンタに歩み寄る。
普通になら確実に引くところだが、慣れているのか鞠絵は全く動じない。
嫌な慣れではあるが……今は、心強い気もする。
「大丈夫ですか?」
「う……あ……」
「まずはお着替えですね」
「いや、まず治療だろ」
とはいえ、確かに下着オンリーは絵的にマズい(ケガの方がもっとマズいけど)。
咲耶が用意していた服(なぜかやっぱりサンタ服)を俺が着せる。
そこでようやく治療開始なわけだが、なんかもう瀕死になっちゃってるような……
「ふふ、すぐに良くなりますからね?」
「あ……」
サンタの表情が少し安心したように緩む。
鞠絵のその笑顔、サンタには天使に見えたのだろうか。
あぁ、俺にだってそう見えたさ。だが俺は知っている。
それが、本当は悪魔の笑みだということを。
「ちょっと我慢してくださいね」
ドボドボと、何かの液体を傷にかける。
その光景に、俺の胸のあたりが少し疼いた。
「大丈夫。5秒ほどで治りますから」
「ご、びょ……?」
サンタの不思議そうな顔と共に、俺は心の中でカウントを開始。
1、2、3、4、5。
きっちり5秒で、確かにサンタの傷は治った。
そこから生えてきた謎の生物っぽいウネウネのおかげで……ではあるが。
あぁ、懐かしいよね……思えば2年前のクリスマス、俺の傷もあんな風に塞がったよね……
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
よっぽど怖かったのか(誰がかは不明。たぶん全員)、ウネウネのままサンタは駆け出した。
そこで響く、ピアノの音。同時に、照明が落ちた。
スポットライトが、暗闇にピアノを浮かび上がらせる。
奏者は可憐。奏でるは『エリーゼのために』。
そして、もう一つのスポットライトに照らし出されたのは雛子。
ピアノの音に合わせ、ゆるりとサンタに歩み寄る。
「くっ……」
合わせ、サンタは一歩引いた。
が、すぐにそれを戻す。
子供相手に気圧されたことを恥じてか、今度は勢いよく足を踏み出す。
雛子も動く。それは、まるで音色に合わせたかのように優雅。
右を通り抜けようとしたサンタの進路を、半身を動かすだけで塞ぐ。
一瞬止まりかけながらも、サンタはそのまま突っ切ろうとする。
その出足に合わせた、雛子の足。サンタの動きが、今度は完全に止まる。
流れるように突き出された雛子の手が、サンタに鳩尾に深く突き刺さった。
さしたる威力はない。しかし何の警戒もしていなかった腹に、それは確実にダメージを与えた。
伴い、曲がる体。射程圏内に入った顎を、雛子の掌底がとらえる。
ほとんど同瞬、サンタの膝裏にも軽く衝撃を。
ピアノの音が、一際大きく響いた。
二箇所同時に与えられた衝撃は、成すすべなくサンタを倒す。
吸い込まれるように、仰向けのまま雛子の方へ。
自重によって十分勢いのついた頚椎に、添えるような雛子の手刀。
まったくもって静かな、しかし十分な衝撃を伴った一撃に、サンタの意識は完全にブラックアウトしたことだろう。
可憐が、最後の鍵盤を叩き終え。
サンタが、倒れた。
「……おぉ」
洗練された一つのシーンを見たような、不思議な昂揚感。
自然、拍手が起こる。
そんな一種の別空間を壊したのは、それを創った本人達だった。
「ワ〜イ! おにいたま、サンタさん捕まえたよ!」
チャンチャン、と可憐のピアノが奏で、俺も我に返った。
「……って、え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 何今の!? 明らかに暗殺拳とかそんな類の動きしてたよね!?」
「え? 雛子ちゃんは可憐のピアノに合わせて踊ってただけですよ?」
「とてもお上手でしたわ」
「そうね。私もついつい魅入られちゃったわ」
「可憐さんの演奏も素晴らしかったです」
「クシシシ……」
「えへへ、ありがとう」
「いや、君ら何普通に受け入れちゃってんの!?」
あ〜……うん、まぁとにかく。
こうして、俺達はサンタ捕獲に成功したわけである。
「……で。どうすんだ、これ?」
椅子に縛られたこれ……サンタを指す。
雛子の活躍により、今も気を失ったままだ。
「プレゼントの場所を吐かせるわ」
「だからサンタはプレゼント隠さないから!」
「まずは、そうね……花穂、サンタさんにお水を持ってきてくれるかしら?」
「は〜い!」
元気よく返事をし、花穂は台所へ。
頼まれごとをされたのが嬉しいのか、その足取りは軽い。
それが余計に危なっかしいが……とりあえず、姿が見えなくなるまでに転ぶことはなかった。
「おい、なんでわざわざ花穂に頼むんだよ」
「わからない?」
「花穂に水頼むなんて、爆弾にガスバーナーで火ぃ点けるような……まさか、お前……」
「そういうこと」
「いや、それはちょっと危険すぎるような……」
「お待たせ〜!」
言っているうちに花穂が戻ってきた。
ここまで奇跡的に転ばなかったようで、お盆の上の水は……水?
「あの……花穂? なんかその水、赤くないか?」
「え?」
花穂が自分の手元を見る。
そのコップに入っている液体は、なんか赤いどころかぶっちゃけ毒々しいまでに赤かった。
ここに至ってようやく本人も気付いたらしく、花穂の顔色が変わる。
「あ! 花穂、お水と間違えてタバスコ入れてきちゃったぁ!」
「何その間違い方!?」
「花穂、ドジだから……」
「もうドジとかそんな次元の話じゃないから! あれか!? 我が家にはタバスコの出る蛇口でもあんのか!?」
「? にいさま、そんなのあるに決まってますの」
「ホントにあんの!?」
「一般家庭にはあって当然ですの」
「どこの星の一般家庭のお話だよ!」
「ごめんなさい、汲みなおしてきま〜す!」
あ、なんかパターン読めた。
「花穂、ちょっと待……」
「あっ!」
予想通り、花穂転倒。
「衛、キープ!」
「了解!」
咲耶の指示で衛が動く。
その間、コップは俺の方へ放物運動。
幸い回転はなく、もの凄くいい感じで飛んでいる。
キャッチしようと、俺が手を伸ばした瞬間。
「チェスト!」
「おごっ!?」
衛キックが俺の頭に炸裂。
衝撃で前のめりになった額に、今度はコップが衝突。
その勢いで飛んだコップは、サンタに命中。
「……んぼっ!? ぐばっ! な、なななななな!?」
タバスコを頭からかぶり、一発で目覚めたようだ。
「グッジョブ、衛!」
「イェア!」
「グッジョブ、イェア……じゃねぇよ!」
前後頭部に生じたありえない痛みを抑えながら、ハイタッチを交わす二人に叫ぶ。
「なにゆえ我蹴る必要あらんや!?」
「いやぁ、ちょうど軌道上にあにぃの頭があったから」
「だからなんで蹴るんだ! ほっときゃ俺ちゃんとキャッチしてたから!」
「まぁまぁお兄様、結果オーライよ」
「オーライしてないんだよ!」
「さて」
それで俺との会話を打ち切り、サンタの方に向き直る。
「本題に入りましょうか、サンタさん。いったい、どこにプレゼントを隠したの?」
「かっ、いや、違……」
タバスコのダメージが残りまくりで、まだうまく喋れないようだ。
「あら、あくまで喋らないつもり?」
「いや、喋れないだけだって……」
「衛、ちょっと痛めつけてやりなさい」
「は〜い」
背後にスタンバっていた衛が、サンタの頭を両手で軽くはさむ。
「えいっ」
コキッ
「コキッ!? コキッっつよね今!? とどめ!? とどめ刺しちゃったの!?」
実際、サンタの首はちょっとあっちゃいけない方向に曲がっている気がする。
最早辛さどころではないらしく……というか意識がぶっ飛んでいるらしく(死んでないことを祈る)、ピクリとも動かない。
「はい衛、もう一回」
「もっかい!?」
「は〜い」
コキッ、とホントにもう一度。
さっきとは逆にやったため、見た目は元に戻ってるが……
「はっ!? お、俺は一体……」
「治ってんの!?」
うわ、しかもなんかタバスコのダメージも消えてるっぽいし……
なに? 気功とか使ったわけですか?
「おかえりなさい、サンタさん」
「あ、ただいま……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咲耶の顔を見、ようやく今の状況を思い出したのか。
慌てて逃げようとするが、しっかり固定されているため動けない。
「す、すんません! おっきい家だなぁって思ってつい! 出来心なんです! 警察に! 早く警察に!」
普通、ここは警察は勘弁してくださいって言う場面なんだが……まぁ、気持ちはよくわかる。
「ふふ。そんな嘘が通じるとでも思ってるの?」
「サンタがそんな嘘ついてどうすんだよ! あんたも! なんでそんな格好で煙突から入ってきちゃったわけ!?」
元はと言えば、こいつがサンタの格好なんかしてるからややこしいことになったんだ。
「うぅ……これならいざという時言い訳もできるかと思って……」
「それがあんたの人生最大のミスだよ!」
「まぁまぁ兄チャマ、過ぎたことを言っても仕方ないデス。ようは、これからどうするか」
「いや、お前らが止めれば普通に解決なんだけどな……」
「というわけでサンタさん、ほら」
と、一枚の写真を見せる。
「春歌チャマの時にバッチリチェキしておいたのデス!」
それは、春歌によってサンタの服が細切れになった時の写真だった。
「クフフフ……これ、どうして欲しいデスか? まずはご近所?」
「あ、あわわわわ……」
サンタがガクガク震える。
しかし、それは100%純粋な恐怖ゆえ。あの時の惨劇を思い出してしまったらしい。
確かにこれ、裸がどうとか以前にグロ画像だもんな……血ぃ吹き出てるし……
「それとも、ネットで世界配信が先……」
「それじゃ甘すぎますの」
「え?」
ふと感じる、物凄い殺気。そして憎悪。
背後に、白雪が佇んでいた。
「ここは、姫に任せて欲しいんですの」
「……いいわ。やりなさい、白雪」
「……ど、どうぞデス」
四葉も、素直に道を譲る。
「ふふ……ありがとうございますの」
ユラリと一歩、白雪が歩み寄る。
「タンコブの恨み……数億倍にして返してやりますの……」
「それ増やしすぎだろ! つーかありえないくらい逆恨みだから! あれ完全に自業自得だったから!」
「地獄を見せてやりますの……」
「ストップストーップ! 見せるどころか直行させる気満々じゃねぇか!」
包丁片手ににじり寄る白雪を、羽交い絞めにして止める。
その横を、トテトテと。
「……亞里亞?」
サンタの袖をクイクイ引っ張る。
「亞里亞のプレゼント、ないの……?」
あ、やばい。ちょっと泣きそう。
「亞里亞、悪い子……?」
目を潤ませる亞里亞を、サンタはじっと見つめる。そして。
「……ぐばぁ」
「血ぃ吐いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
白かった髭が真っ赤に染まった。
良心に響きまくったのか、あるいはロリ……うん、前者ってことで。
「し、しかし無い袖は振れませぬ……」
搾り出すようにサンタが言う。
そんなにダメージでかかったのかよ……
「くすん……やっぱり亞里亞、悪い子……」
「いや……そんなことはないさ……」
千影が、亞里亞の頭に手を置く。
その手を、そのままサンタのポケットへ。
「ほら……ちゃんとあるだろう……?」
抜いた手には、キャンディが握られていた。
受け取り、亞里亞が笑顔になる。
「わーい……」
そんな亞里亞の頭に、もう一度千影が手を置く。
なかなかに微笑ましい光景だ。
「さすがだな、千影。超ファインプレーだ」
「フ……」
千影が、少し微笑む。
「では……もう少しサービスしようか……」
千影の右手が輝き……って、あれ? もしかして、いつものパターンですか?
「あ、いや、これ以上は別に何も……」
「出でよ……魔界の者よ……」
「しなくていいっつてんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
やっぱり恒例、今年も悪魔さん登場です。
「亞里亞のおやつ……いっぱい……」
「もはやおやつ扱い!?」
「ふえ〜ん! お兄ちゃま、タバスコの蛇口壊しちゃった」
「大惨事!? こんな時に何やっちゃってんだ!」
「さぁ……楽しんでくれたまえ……」
「さっきのでほのぼの終わっときゃいいじゃん! こんだけサンタで引っ張っといて結局これですか!?」
「大丈夫……サンタさんならそこで……ちゃんと食べられているよ……」
「いやそれ全く大丈夫じゃないよね!? つーかちゃんとってなんだ!」
「亞里亞くんに……」
「くすん……あんまりおいしくないの……」
「って、亞里亞にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
まぁ、なんつーか結局今年もやっぱり。
クリスマスに相応しい12の笑い声と、クリスマスに似つかわしくない1つの叫びが、遅くまで響き渡りましたとさ。
「メ・メリークリスマス……」
「「「「「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」」」」」」
あとがき
どうも、カッツォです。
本当はクリスマスに間に合わせたかったのですが(当たり前)、間に合わず。
せめて年が明ける前に完成させようと思ったのですが、それも間に合わず。
どうせならジャスト一ヵ月後にしようということで(?)、ここで登場です(死)
しかしこれ、なんか毎年長くなっていってる気がします。
それでネタが増えてるんならまだしも、ネタの数自体はむしろ減ってるんですよね……
無駄な部分が多すぎる、と(汗)
来年(というか今年)は、その辺を頑張ってみたいと思います。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです……
カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp
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