「なぁ、鈴り……」
最初、それは鏡かと思った。
だが、鏡にしてはやけに質量感たっぷりで、何より俺の動きをトレースしていない。
つまり。
鈴凛の部屋のドアを開けると、そこには俺が立っていた。
「うぉぁ!?」
思わず仰け反ったのと同時に、俺じゃない方の俺の後ろから鈴凛が顔を覗かせる。
「へへ〜、驚いたでしょ」
その表情は、得意満面といった感じだ。
「な、何これ?」
未だ収まらぬ動揺を抑えて目の前の俺を指差すと、鈴凛はますます得意顔に。
いつもの、自分の自信作を発表するときの表情だ(そして鈴凛がそんな表情の時、俺は大抵とんでもない目に合う)。
「これぞ私の新発明、アニキロボ!」
「……相変わらず凄い才能だなオイ」
少なくとも美術に関しては。
俺が言うのも変な話だが、このロボはかなり俺にそっくりだ。
俺とこいつが並んで立っていたら、どっちが本物かわからなくなってしまうんじゃないだろうか、ってくらいに。
「で、こいつは何かできるのか? ロボっていうからには、人形とは違うんだろ?」
「とーぜん! まずはこれ!」
胸を張り、鈴凛がロボに向かって右手を差し出す。
すると、今まで全く動かなかったロボが動き始めた。
『鈴凛、おこづかいをあげるよ』
「ありがとう、アニキ!」
見た目の精巧さからは考えられないほどギクシャクした動きで、ロボが鈴凛の手の上に500円玉を置いた。
声もあからさまな合成音。
俺そっくりな顔からそれが発せられるというのは、なかなかに不気味な光景だ。
「その一、おこづかい機能!」
手の上に置かれた500円玉を、鈴凛は嬉しそうにしまいこむ。
「……ちなみに、その金はどこから?」
「最初にアニキロボの懐に入れとくの」
「自分で?」
「うん」
「……虚しくないか?」
「……若干」
一瞬テンションが下がり気味になった鈴凛だが、すぐに復活。
元気よく指を二本立てる。
「その二、ツッコミ機能!」
背中をポンと押すと、ロボはやはりぎこちなく動き始めた。
肘を垂直に曲げ、ゆっくり手を鈴凛に当てる。
『なんでだよ!』
「なにがだよ!」
いきなりの行動に、おもわず同じような動きでツッコミを入れてしまう俺。
「わぉ、夢のコラボレーションだね」
「どのあたりが!?」
どうやら背中を押さなきゃ発動しないらしく、ロボはそれっきり沈黙した。
「使えなさすぎるわ!」
「まぁ、私もそんな気はしてたけどね」
「じゃあ付けんなそんな機能!」
ツッコミ体勢のまま動かないロボ。
だから怖いって。
「……で、他にはどんな機能があるんだ?」
「ん〜、こんなもんかな」
「機能少なっ!」
「だって、アニキの特徴ってこんなもんでしょ?」
「俺の存在意義は金とツッコミのみ!?」
まさか妹にそんな目で見られていたとは……正直落ち込むわ。
「あ、そうだ。そういえばとっておきの機能があったんだよ」
「ほぅ。忘れてしまうような『とっておき』とはどんなもんだ?」
「うん。アニキといえばこれだよね」
鈴凛がロボの腹に全力パンチをぶち込んだ。
当然抵抗などしないロボに、かなりいいのが入る。
無表情に崩れ落ち……
ボンッ!
「うおっ!?」
爆発した。
同時に、なぜか俺に柔らかいモノやら液体っぽいモノやらがかかってくる。
いつの間にか持っていた傘のおかげで被害を受けていない鈴凛が、自慢げに言う。
「その三、自爆機能!」
「俺は自爆などしませんよ!?」
こいつ、俺をいったい何だと思ってるんだ……
「うわ、ていうか何だこれ……」
改めて先ほどかかってきたモノを見てみる。
なんか、赤っぽいこれは……
「血っ!? うわ、なんか内臓っぽいのも!」
「いやぁ、これが一番苦労した点だね。よりリアルな自爆を表現するために、内臓とか血とかが飛び散るようにしたんだよ」
「自爆する時点でリアルじゃねぇよ!」
「まぁ、おかげで場所がなくなっちゃって。他の機能のクオリティ下げることになっちゃったわけだけど」
「そこは他のクオリティ優先させろよ!」
だからあんなギクシャクしてたのか……
「ていうかこれ、グロっ! なんか凄いリアルだよ内臓とか!」
「ホント、ここまでグロいとは予想しなかったよね」
「何で嬉しそうに言うの!? スプラッタマニアかお前!」
「まぁまぁ、アニキ。落ち着いて、アニキも飛び散……」
「飛び散れんて!」
「ぶ〜、つまんな〜い」
「つまんなくない! ていうかそんな次元の話じゃねぇ! なんでお前はいっつも無駄に自爆機能を付けたがるんだ!」
「だって、自爆は科学者のロマンでしょ?」
「マッドサイエンティストの条件だよ!」
「じゃあ、はいこれ」
「あ?」
鈴凛が何かを俺に手渡す。
俺がそれを確認した瞬間。
「ポチっと」
ドゴン!
鈴凛のスイッチに反応し、手の中のものが爆発。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ……」
とても痛い。
が、痛いで済んでる俺もなかなかに凄いと思う。
「これぞ私の発明の真骨頂、自爆くん!」
「名前が若干パクりくせぇよ! こんなもん真骨頂にすんなよ! ていうか……」
手の中に残ってた残骸を床に叩きつける。
「これ、ただのプラスチック爆弾じゃねぇか!」
「まぁ、別名をそう呼ぶ人もいるね」
「こっちが正式名称だ!」
アレか? こいつ、流行に乗ってテロでもやるつもりなのか?
……シャレになってないって。
「お前、こんなもん作ってどうするつもりなんだよ……」
「アメリカにケンカ……」
「売るな!」
「冗談だって」
だからシャレになってないって。
ホントにやりかねないんだから……
「イラクに……」
「行っちゃダメだって! 時事ネタにしては若干古いし!」
「アニキ、発明は爆発だよ!」
「仮に一万歩譲ってその言葉が正しいとしても、絶対そういう意味じゃない!」
「う〜ん……じゃあアニキには、ちょっと実際に体験してもらおうか」
鈴凛が机に付いているボタンを押すと、俺の足元の床がパカっと開いた。
当然落ちていく俺。
「もう十分体験しましたが!?」
ていうか、こんな仕掛けどうやって作った……
落ちた先は(なぜか)地雷原。
そこで俺は、もちろん何度も大爆発。
今現在、なぜ飛び散っていないのかが不思議なくらいだ。
ちなみに後日。
「アニキ、発明は感電だよ!」
などという理不尽極まりない理由でいきなり電気ショックをかまされました。
「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
こいつは俺のことを痛めつけるのに喜びを感じているのではなかろうか、と思う今日この頃です。
あとがき
どうも、カッツォです。
さて、いきなりですが大問題発生です。
それは……話の落とし方忘れました!(死)
ホントの話です。
途中までも結構苦労したんですが。もうそろそろ終わらそうかな、と思った時。
あれ? ギャグってどうやって終わらせるんだっけ?
というわけで、オチが微妙な今作です(殴)
ちなみに今作は、少年Aさんにリクエストをいただいて書いた作品です。
この文章は、本文を読み直した後に書いてるわけですが。
正直なところ……うわ、ダメだろこれって感じです(死)
すみません、いやマジで。
今度もう一回鈴凛SSも書きますんで、今回はこれで許してください(汗)
え〜っと、とりあえず(その他、いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです……
カッツォへの感想はこのアドレスへ
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