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 これは私が一人暮らしするにあたって奮闘した記録……ではなく。
 下宿周辺の地理を把握するのに奮闘した記録である。


下宿奮闘記?

作者:カッツォ

 電車に揺られ、約二時間。
 駅を出ました。
 背中と手には、合計(推定)15キロの荷物。
 重い。意外に重い。持てはしますが、歩けば歩くほどつらさが増します。
 これは早く着かねばなりません。
 下宿までは車で行ったとがあるだけ。しかも駅から行くのは今日が初めてです。
 不安を胸に、歩き始める私。
 もしここに未来の私がいれば、きっとこう言ったことでしょう。
 いきなり逆だよ!
 幸いそれにはすぐ気づいたものの、戻らずに進みながら修正しようとしたのが間違いか。90 度すれたまま進む。
 それでも、なんとか勘と大まかな方向だけで進み、見覚えのある道に辿り着きました。
 およそ一時間半かけ、ようやく下宿先へ。
 高校時代に歩きまくっていたおかげか、それでもさほど疲れはありません。
 が、これが後に悲劇を生むことに……



 一通り荷物の整理も終わり、今日やることは残りひとつ。
 大学までの道確認です。
 ここは全く未知の領域、大学に辿り着けないというかなりシャレになっていない事態も十分発生する可能性があります。


 4時ごろに出発し、およそ30分。
 ……どこだよここ!
 迷いました。
 完全に迷いました。
 周りにあるのは森と工場。わかるのは、この道が間違いだということぐらい。
 が、それでも私の悪い癖は出てしまいます。
 戻らない。進みながら修正する。


 で、さらに30分ほどが経過しました。
 なんか見覚えのある風景です。しかし、明らかに大学への道とは違います。
 多く見たから記憶に残っている風景ではなく、最近見たから記憶に残っている風景。
 そう。
 さっきの所に戻ってるよ!
 ここは30分ほど前に通った道です。
 間違いなく元の道です。
 樹海でも何でもないただの道なのに、戻りました。
 進んでたつもりなのに、戻りました。
 マンガかよ。
 ここにきて、ようやく私は決心します。
 来た道を戻ろう……
 これはもう根本に戻ってやり直すしかありません。
 どうせ、ほぼ30分ほどの距離は戻ったわけだし。
 というわけで、私はスタート地点(下宿)を目指して歩き始めました。



 それからさらに30分ほどが経って、だいたい5時半。
 私は、ようやく大学に辿り着きました。
 そう、大学に辿り着いたのです。
 スタート地点目指してたはずなのに。
 えぇ!?
 ビックリです。
 かなりビックリです。
 どういう現象なのでしょう。私は妖精にでも騙されているのでしょうか。
 まぁ、ぶっちゃけ方向音痴なだけですが。
 奈良・京都のまっすぐな道に慣れた私にとって、ここのグネグネ道はレベルが高すぎたようです。
 まぁしかし、とりあえずこれで一安心……ではありません。
 まだ、下宿に戻るという難題が残っているのですから
 しかも、来たのと別の道を行くという茨の道。
 ていうか、下宿目指してたのにここに来たんだから、普通に戻っても帰れんで しょう。たぶん。
 しかし、今度はちゃんと方向もわかっています。
 今度は大丈夫だろうと、進み始めて30分。
 大方の予想通り、また迷う。
 しかも事態は深刻です。膝の裏がものすごく痛くなってきました。筋肉がプチプチです。
 普段ならば、3時間やそこら歩いたところで特に問題はないはず。
 効いています。明らかに15キロ(推定)の荷物と共に歩いた1時間半が効いています。
 私は自分を呪いました。
 なぜ今また、私はペットボトル(1.5L)と牛乳、卵その他を持っているのか、と。
 途中で買い物などすべきではなかった……
 しかし神の救いか、私の前には地図。これで確認すればもう大丈夫です。
 地図を睨むことしばし。
 ……………………。
 わからん。歩いてりゃなんとかなるだろ。
 大体の方向は合ってるつもりでしたから。
 この期に及んで自信満々です。
 まぁ実際、ここまでの道は合ってたわけですが。
 その後、90度違う方向に進んだのがいけなかった。


 また30分ほどが経ったでしょうか。
 日はほとんど暮れかけです。足は冗談抜きに限界が近づいてきました。
 私の心に去来する思い。
 そ、遭難ですか!?
 周りを見れば住宅街。もはや方向も定まらず。
 今や私の目的は下宿ではありません。
 せ、せめて警察に……
 そんな私の目に飛び込む地図。
 これぞ天の助けか。
 しかし、ふと気づきます。
 何やらとても嫌な予感。
 よく見るとそれは。
 さっきの地図だよ!
 そう、またしても戻っていました。
 樹海でもない(以下略)
 しかし、私の心に浮かぶのはむしろ安堵。
 よかった、別の街まで行ってなくて……
 今度こそ、私は本気で地図を睨みつけます。
 もうそろそろマジで限界です。ここで先が見えなきゃかなりヤバいです。住所がわからんので人に聞くこともできません。
 そして、地図を見つめることしばし。
 ついに正規の道(らしきもの)を発見!
 ていうかさっき気づけよ!
 まぁとにかく、これで先は見えました。
 私は限界を超えてそうな足を引きずり道を行きます。
 これで間違ってたらどうしよう……そんな不安も、十分ほどで消え去りました。
 そう、ついに知っている道に辿り着いたのです!
 感動です。生きてるって素晴らしいです。
 その時刻、だいたい7時。
 3時間とは、意外に短かったんだなぁって感じです。
 疲労的には4時間歩いた時よりはるかに疲れてたんですが。
 しかし。
 それがまだ終わりでなかったことを、その時の私は知りませんでした。



 翌日。
 下宿後、初めての講義です。
 最初の講義は9時から。私は、余裕をもって8時前に家を出ます。
 そして進み始めました。
 また別の道を。
 だって、昨日の道は遠回りくさかったんだもの……
 作家に必要なのは飽くなき探求心なんだよコノヤロウ! と、誰にともなく逆切れしつつ出発。
 そして迷う。
 しかし、すぐに見覚えのある道に出ました。
 ここはそう……昨日迷っていた道です。
 一度迷った道ならもう大丈夫だろうとお思いでしょうか?
 そんな単純な話なら書きません。ぶっちゃけもう忘れてます。
 私の前には2本の道。
 1つは、高速道路に沿っている道。私の記憶が確かならば、大学は高速道路の脇にあったはず。
 もう1つは、昨日私が行った(と思われる)道。大学生っぽい人が通っています。
 迷った末、私は昨日行った(と思われる)道に。
 間違えてたらお前のせいだからな、と、とりあえず通っていた大学生らしき人に責任転嫁。
 しばらく行き、またも分かれ道。
 片方は昨日私が行った(と思われる)道。大学生らしき人はそちらへ。
 もう片方は、まったく逆方向への謎の道。が、なんとなく見覚えがあるような……
 そこで、奇跡は起こりました。私の脳は覚えていたのです。
 昨日、大学にたどり着いたときは後者の道を通った!
 ほぼ間違いありません。後者が正解です。
 そしてこのことは、二つの事実を浮かび上がらせました。
 一つ。
 大学生っぽい人は(少なくともウチの)大学生じゃなかったということ。
 結果的に道は合ってたものの、一歩間違えばまた遭難でした。
 二つ。
 私は昨日、大学とは真逆の方向に進んでいたということ。
 そら着かんわ。
 まぁとにかく、私は無事大学までたどり着くことができました。
 恐らく最短であろうその道を通り、以降(大学への道では)迷っていません。
 こうして、私の下宿奮闘記は幕を閉じた……ように見えました。
 が、しかし。さらなる難関が私を待ち受けます。
 次回、自転車迷走編へ……続きません。







あとがき

どうも、カッツォです。
本当は掲示板に書こうと思っていた内容なのですが、あまりにも長くドラマティックだったため(爆)こういう形にしました。
ちなみに、ホントに続きません。
しかし改めて見ると、あんまり面白くないですね(死)

感想はもちろん……って、今回はこの文章はいりませんね。
では、失礼します……




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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