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「……かげ。……ちかげ。おい、千影。千影! 起きろってば! おい!」
「ん……」
 私の朝は……兄くんの声で始まる……
 最初は静かに、優しく……だんだんと激しく……でも、やっぱり優しい兄くんの声……
 兄くんの声での目覚めは心地いい……
 兄くんは、早く目覚ましを買えというけど……
 やはり私の朝は……こうでなくてはね……


ちー様の一日

作者:カッツォ


「おはよう……兄くん……」
「お、やっと来たか。お前、起きてから部屋出るまでの時間が長すぎるんだよ。朝飯が冷めるだろうが」
「女の子には……色々準備があるものさ……」
「それで、か?」
 兄くんに指されて、改めて自分の姿を考える……
 寝癖そのままの髪……少し乱れているパジャマ……たぶん、眠そうな瞳……
 フフ……確かに、準備をした女の子には見えないね……
「どうせ、昨日も夜更かししてたんだろ」
「まぁね……」
「お前、夜更かしは美容の大敵、って言葉を聞いた事ないのか?」
「そんなものは迷信さ……」
「迷信ってお前……」
 あきれ顔の兄くんが……私の頬にそっと触れる……
「でも、なぜかホントに綺麗なんだな、この肌が」
 おもわず……顔の温度が上がってしまった……
 兄くんは鈍感だから……気づいていないようだけどね……
 不意打ちなんて……卑怯じゃないか……
「う〜ん、髪もツヤツヤだし……謎だ……」
「いつまで……そうしてるんだい……?」
「おぉ、そうだった。ただでさえ冷めてる朝飯が」
 思い出したように、椅子に座る……
 テーブルの上には……豪華じゃないけど、たぶん栄養のバランスとかが考えられた朝食……
 私も料理ができないわけじゃないけど……やはり、兄くんにはかなわないね……
「さすが、だね……」
「何が?」
「これが……」
 両手を広げ、テーブルの上をアピールする……
「何を今さら……だいたい、お前も料理できるんだから、たまにはやれよ。上達しないだろうが」
「上達する必要が……?」
「お嫁に行けないぞ」
「おや……? 兄くんがもらってくれるんだろう……?」
「お前に一生仕えろと?」
「フフ……光栄だろ……?」
「へいへい、大変光栄でございます」
 兄くん……本当に、私の運命の相手は……兄くんに決まっているんだよ……
 そう……生まれた時から、ね……



 学校の授業は嫌いじゃない……
 興味をもって聞けば……それなりに面白いものさ……
 兄くんも同じことをやってきたのかと思うと……少し嬉しい気持ちにもなる……
 でもやっぱり……兄くんがいない時間というのは……ね……
「ち〜かげ! 何ボーっとしてんの?」
「……私がボーっとしているのは……いつものことだろ……?」
「あはは、そうだったね〜」
 決して多くはないが……私に話し掛けてくれる人……
 友人と呼べる人もいる……
 彼女達との会話も……学校の楽しみの1つかな……
 そういえば……と、数年前のことを思い出す……
 あれは……私が初めて友達を家に連れて行った時……
 たぶん……私に友達がいるかどうか、心配だったんだろう……
 兄くんは、妙にはりきっていたね……
 変に色々世話を焼いて……あれはまるで……息子が初めて彼女を連れてきた時の……母親みたいだったよ……
「フフ……」
「何?」
「いや、別に……」
「ま〜たお兄さんのこと考えてたの?」
「あぁ……まぁ……」
「あいかわらずラブラブだね〜」
「……………………」
 本日二度目の赤面……
 どうも兄くんのこととなると……感情が顔に出やすくていけない……
「ね、ね、ところでさ。この前新しく発売されたリップがさ〜」
 さしたる意味もない会話……
 でも……嫌いじゃない……



「ただいま……」
「おう、おかえり」
 兄くんの帰りは……いつも私よりずっと早い……
 私は……何だかんだと寄り道するからね……
「お前、寄り道しすぎだって。もう5時半……5時半!?」
「どうかしたのかい……?」
「やっべぇ! スーパーのタイムサービスの時間だ! っていうか、もうすぐ終わる時間だ!」
「へぇ……それは大変だ……」
「お前、全然大変だと思ってないだろ。これを利用するかどうかで、家計へのダメージが凄い変わるんだぞ」
「まるで……若奥様だね……」
「旦那様のために、日々頑張ってるんですよ」
 私の肩にポンと手を置き……
「あ! もうホントに時間がねぇ!」
 慌てて私の横を通り抜けていく……
 ふむ……
「私も出かけようか……」



 河原……
 昔から知っている河原……
 兄くんと遊んだ河原……
 思い出が染みこんだ河原……
「ここは……変わらないね……」
 記憶にある限り昔の風景……今との相違点は見つからない……
 しいていうなら……ここに立っている私自身か……
 でも、私も……その気持ちはあの頃から変わっていない……
「あれ? 千影、何やってんの?」
「兄くん……」
 今も……昔も……たぶん、前世でも……私が愛した人……
「やぁ……偶然だね……」
「いや、ここスーパーからの通り道だし」
「やはり私たちは……結ばれる運命にあるんだね……」
「だから……いや、まぁいいや」
 歩み寄って、私の隣に立ち……
「変わんねぇな、ここは」
 私と同じ言葉を呟く……
 フフ……やはり私たちは……繋がっているんだね……
「俺たちも、昔からこんなことしてたよな。2人で、ボーっと川見たりして」
「あぁ……」
「進歩してねぇな、俺らも」
「フフ……そうかもね……」
「変わったことといやぁ……俺らの体がでかくなったぐらいか」
「兄くんの場合……料理の腕も、だろ……?」
「は、誰かさんが全然やらないせいでな」
「いいお嫁さんになれるじゃないか……」
「お前がもらってくれんのか?」
「喜んで……」
「はは、光栄だ」
「フフ……」
 こうやって笑い合っている時……本当に実感する……
 あぁ、私の居場所はここなんだ……とね……



 私の一日は……兄くんの声で始まる……
 私の一日は……兄くんのおやすみを言って終わる……
 私の一日は……兄くんのことを考えて過ごす……
 兄くん……兄くんは、わかっているのかい……?
 私が、こんなにも…………
 いや……きっとわかってくれているね……
 だって私と兄くんは……同じ魂を共有しているんだから……
 フフ……今日は兄くんの夢を見れそうな気がするよ……
 じゃあまた……夢の中で逢おう……
 おやすみ……兄くん……









あとがき
どうも、カッツォです。
このSSは、SHIN1さんからのリクエストで書かせていただいたものです。
間違いなく、ご期待には添えていないことでしょう(殴)
ほのぼのって結構書きやすいんですけどね……
やっぱり、私には向いてない気もします。
でも、機会があればまた書きたいですね。
今度こそは、もっとマシなものを書けるよう精進いたします……
それと、リクエストSSは随時受け付けております
こんなもんでよろしければ、いつでもリクエストしてやってください。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです……




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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