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「兄くん…肝試しの季節だね…」
「…千影、今何月か知ってるか?」
「1月…」
「何でこのくそ寒い時期に肝試しなんだ!」
「肝試しに…季節は関係ないよ…」
「いや、今『肝試しの季節だね…』って言ったじゃねぇか!」
「さぁ…行こうか…」
「無視かよ! しかも既に決定かよ!」


Wild Wind 
第5話 肝試し

作者:カッツォ


「彗、こんな時間にいったい何なの?」
「緊急招集って、何かあったんか?」
 夜11時半、『緊急だ! 今すぐ学校に来い!』と呼び出された圭と政樹。
 同じ場所には、彗と妹達9人も集まっている。
「ああ、実はな…」
 真剣な顔で言葉を紡いでいく彗。
 聞く2人も、緊張した面持ちだ。
「肝試しをする。よって、お前らも付き合え」
「…僕、帰って宿題しなきゃ」
「…あ〜、もうそろそろ水戸○門12時間スペシャルがえぇ所になるから、観に帰らんなんわ」
 緊張した(ような)面持ちのまま、回れ右で帰ろうとする2人。
 その2人の肩を、彗がグッと捕まえる。
「圭、今日は宿題出てねぇだろ。政樹、水戸○門なら、春歌が標準録画してるから大丈夫だ」
「何でオレらまで、こんな時期に肝試しやらんなんねん!」
「俺だって怖いんだよ!」
「何でやねん! お前、悪魔でも普通に素手で殴っとるやんけ!」
「お化けには俺の攻撃が当たらんだろうが! たぶん!」
「そもそも、それとオレら呼ぶのと関係ないやろうが!」
「10人も一気に動くとややこしいだろうが!(作者が)」
「オレらは保護者役かい!」
「そうだよ!」
「だいたい、何でお前そんなに偉そうやねん! それが人にもの頼む態度かい!」
「ごめんなさい。是非とも付き合ってください(棒読み)」
「よっしゃ! それならOK!」
 隙間なく繰り広げられる政樹と彗の会話(?)。
 ツッコミ所は多々あるが、とりあえず省略。
「よし。じゃあ行くか」
「僕はまだOKしてないんだけど?」
「ん? 異存があるのか?」
「別に?」
「じゃあ問題ないだろ」
「うん」
 とりあえず、出番が欲しかっただけらしい。

「よ〜し、じゃあ組み分けするからクジ引くぞ〜」
『は〜い』
 ちなみに、ここにいる人数は12人。
 「亞里亞…おねむです…」な亞里亞と、
 「2日も徹夜した後でさ〜、眠いんだよね〜」な鈴凛、
 「お・お化けさんはちょっと…」な花穂。
 この3人を除いた妹全員と、彗・圭・政樹で12人だ。
 ちなみに、雛子は昼間の4時間ほどの昼寝のため、眠くはないそうだ。
「『当たり』って書いてあるのは俺と、何も書いてないのは圭と、『はずれ』って書いてあるのは政樹とだ」
「おい! 何でオレがはずれやねん!」
「みんな引いたな〜? じゃあ、一気に開くぞ。いっせーの…」
「いや、完全に無視かい!」
「せっ!」
 何かわめいている政樹をよそに、全員が一気にくじを開く。
 同時に、様々な声が飛び交った。
「わたくしは圭さんとですね」
「フフ…私は当然…兄くんとだ…」
「私もお兄様とよ!」
 (以下略)
 まとめると、彗チームは咲耶・千影・春歌、圭チームは雛子・白雪・鞠絵、政樹チームは可憐・衛・四葉、となった。
「う〜し、じゃあ出発だ。2時間後にここに集合。あとは各チームに任せる」
『は〜い』
 こうして、確実に無事には済まなそうな肝試しが始まった…





   圭チーム(雛子・白雪・鞠絵)
「お〜い、白雪ちゃ〜ん? 置いてっちゃうよ〜?」
「ま・待ってくださいですの!」
 スタスタと歩いていく圭達から少し遅れて歩いていた白雪は、急いで追いついた。
「ど・どうしてみんな、そうなに普通なんですの? 怖くないんですの?」
「う〜ん…怖い? 鞠絵ちゃん?」
「いえ、わたくしは時々仲間に入れてもらいますから」
「ははは、それはちょっと問題発言だねぇ」
「ねぇねぇ、何の話してるの? ヒナもまぜて!」
「はいはい、あのね」
 肝試しで夜の学校にいるにも関わらず、ほのぼのムード全開の3人(会話内容は別として)
 白雪は思った。
「(このチーム…何か別の意味で嫌ですの…)」


 お化けに逢うこともなく、ほのぼのムードで歩いていた一行(白雪除く)。
 しかし、前を歩いていた圭と鞠絵が、急に立ち止まった。
 そして、そのまま前を向いたまま話し掛ける。
「ねぇ、白雪ちゃん? お化けって、いったいどんなのだと思う?」
「え? そ、そりゃあ…とっても怖いんですの」
 いつもと微妙に違う圭の声に少し戸惑いつつも、そう答える白雪。
 今度は、鞠絵が話し掛けてきた。
「例えば…どんなのですか?」
「どんなのって言われましても…」
「こんなのじゃ…ないかな…?」
 ゆっくりと振り向いた圭の顔には…いや、そこに顔は無かった。
 目も、鼻も、口も、何も無かったのだ。
「キャーーーー!! ま・鞠絵ちゃん! 圭さんの顔が…」
「顔が…どうかしましたか…?」
 振り向いた鞠絵には、今度はちゃんと顔があった。
 ただし…片方の目玉は飛び出し、口は裂け、見るも無惨な顔が…
「…(クラッ)ですの…(バタッ)」
 あまりのショックに、白雪は気絶。
 しかし気絶する直前に、ある光景を見ることはできた。
「ねぇねぇ、白雪ちゃん、どうしたの?」
「う〜ん、ちょっとやりすぎちゃったかな…?」
「まさか、ここまで驚くとは思いませんでしたからね」
 そう言いながら、マスクのようなものをとる圭と鞠絵の姿を。
 白雪は思った。
 心の底から。
「(あぁ…姫の引いたくじは…『はずれ』だったんですの…)」





   政樹チーム(可憐・衛・四葉)
「ただ歩いてんのもヒマやなぁ…よし、あの世の話でもしよか」
「あの世のお話デスか? それはチェキです!」
「え〜、ちょっと怖いよ〜…」
「ええか? 話すで?」
「「「(ゴクリ)…」」」
「………あのよー」
「「「………」」」
「可憐ちゃん、どこか行くあてはあるんデスか?」
「う〜ん、学校の怪談の定番、理科室にでも行ってみようか?」
「うん、ボクもそれでいいと思うよ」
「(ウケんかったか…やっぱり、『死体を愛したい』とかの方がよかったか…?)」
 相変わらずバカなことを考えている政樹をよそに、一行は理科室に向けて歩き出した。


 そして理科室前
 そこでは…
「あ〜、最近肩がこっちゃってさ〜…」
「いやいや、お前筋肉ないじゃん」
「あ、それもそっか」
「「あははは〜」」
 骨格標本と人体模型が、お茶を飲みながら雑談を交わしていた。
「(ね、ねぇ…何あれ?)」
「(わかんないデス…)」
「(でも、気付かれないうちに逃げた方がいいよね…)」
 ヒソヒソ声で結論を出し、そこからそーっと立ち去ろうとする3人。
 …が。
「おぉ! これがホンマの『骨休め』ってか!」
「「「言ってる場合か!」」」
「ん? お客さん?」
「久々だねぇ…」
 いきなり叫んだ政樹と、思わずつっこんでしまった声で、思いっきり気付かれた。
 そして骨格標本と人体模型が、こちらに向かって走りだす。
「ギャー! こっちの来たデス〜!!」
「政樹さんのバカ〜!」
 それから逃げるため、4人も走り出す。
「でもさぁ、あの骨が飲んだお茶ってどこ行くんやろうな?」
「知らないよ〜!」
 静かだった校舎が、唐突に騒がしくなった瞬間であった。





   彗チーム(咲耶・千影・春歌)
「ん? 何か叫び声みたいなのが聞えなかったか?」
「フフ…地獄の声でも聞えたかい…」
「いや、それは違うと思うんだが…」
 こちらは、ある程度年齢が高いためか、全員が妙に落ち着いている。
 専門家である(?)千影がいるというのも、落ち着いていられる要因だろう。
「しかし…出ねぇな、お化け」
「そもそも、本当にこの学校にいるのでしょうか?」
「あら、私の友達にも、見たっていう子がいるわよ」
「見間違えたのかもしれませんよ? そう、例えば…ディファ−などと」
「フフ…その可能性はあるね…ほら…」
「噂をすれば、か…」
 その瞬間、窓ガラスが割れ、何かが廊下に入ってきた。
 ある程度の距離を置き、全員が戦闘態勢をとる。
「昇神彗! 貴様の弱点はわかっている!」
「あぁ? 唐突なやつだな…」
 月明かりに照らされ、その姿が闇に浮かび上がった。
 2本足で立ってはいるが、毛むくじゃらの体…そう、狼男のような姿だった。
 別段慌てることもなく、彗が問う。
「んで、俺の弱点って?」
「前に、我が分身達を倒したのは見てたぜ。確かに恐ろしい力だ」
「前に…? あぁ、雛子が襲われた時か…ありゃ、てめぇの差し金か?」
「そういうこった。そして俺は見破った。貴様の武器は風! つまりそれは封じてしまえば、お前の戦力はガタ落ちだ!」
「へぇ…で、どうやって風を封じるんだ?」
「ククク…これを使うのよ!」
 そう言って、ガラス球のようなものを取り出す狼男。
 それに反応したのは、彗よりも千影だった。
「!! あれは…風のオーブ…?」
「? 風のオーブとは、何なのですか?」
「風の王が作ったとされる…高密度の魔力結晶体さ…それを持つものは…風を支配できると言われている…」
「じゃあ、お兄様は風を使えなくなるってこと?」
「そいうことになるね…」

 千影の解説が終わった所で、彗はおもむろに右手を前に突き出した。
 そして、気を集中させていく…
「風刃!」
  スゥゥゥゥゥゥ…
 彗の呼びかけに答えるように、周りの風が手に集まってくる。
 そしてそれは、剣の形をとりはじめた…いつもと全く変わらずに。
「使えてるじゃない」
「フフ…やはり偽者だったか…」
「な!? そんなはずは…」
「お前さ、それどうやって手に入れたんだ?」
「…ゴミの日に拾った」
『………』
 一瞬の沈黙。
「んなもんが本物のわけあるか!」
「ぐぬぬ…くそぉ!」
 なぜか勝手に逆ギレした狼男は、自分の毛を数本むしりとり、それを空中に放った。
 すると、すれは次々と狼のようなものに姿を変えていく。
 その姿は、あの日…雛子を襲ったものと全く変わらない。
「ふぅ…だいたいだ、お前は重大な勘違いをしている」
「なにぃ?」
 狼男が彗を睨みつけようとした瞬間、その視界から彗が姿を消した。
 そして、次に聞えた声は背後から。
「無血流の武器はな、風じゃない…『速さ』だ」
 その声に気付いて後ろを振り返ったその時、周りにいた狼達すべてが、激しい出血と共に倒れた。
「な…」
「そもそも無血流という名は、あまりの速さ故刃に血がつかないという「ファイアーボール…!」うわっ!」
 彗の言葉を遮るように、炎の玉が横を通り抜けていく。
 その出所は、言わずもがなである。

「私たちの邪魔をするとは…いい度胸だ…」
「私たちは、あんたなんかに会いに来たんじゃないのよ!」
「成敗いたします!」
 すでに、3人は臨戦態勢に入っている。
 最初に動いたのは千影。
「ファイアーボール…!」
「うおぉぉぉぉ!?」
 さっきと同じように、だが今度は連続で炎を放つ。
 しかし狼男も、なんとかそれを全て避けきった。
 ちなみに、かわされた後の炎はというと…
「だ〜! 学校が燃えるだろうが!」
 彗が、責任を持って全て消したそうな。
「はぁっ!」
「ぐっ…」
 炎を避けた時に生じた隙を狙い、咲耶が狼男を蹴り上げた。
 身動きのとれぬまま、狼男は空中に投げ出される。
「せいっ!」
「がぁ…」
 続いて、春歌の薙刀が狼男を捉えた。
 当然空中で避けることもできず、そのまま切り裂かれる。
 それがそのままとどめとなり、落ちてきた狼男は既に灰になっていた。
「な、ナイス連携…」
 まぁ、今回はちょっとかっこよかったからいいか。などと思う彗であった。



「(それにしても…)」
 また歩き始めて少しした時、疑問が頭をよぎった。
「(あいつが、事前に敵を偵察するような頭のいいやつには見えなかったが…?)」
 多少の不安が浮かぶ。
「(だとすれば、奴も誰かの差し金か?)」
 珍しく、真剣な表情だ。
「(いったい誰が? 何のために?)」
 でも、結局は…
「(ま、いっか。考えてもわかんねぇし)」
 そんな結論なのであった。




「なぁ…何か聞えないか?」
 廊下の曲がり角にさしかかろうかという時、またも何かの音が聞えたような気がした。
 それも、だんだんと近づいてくるような…
「さぁ? 何か聞えました、咲耶さん?」
「ん? 別に何も聞えないと思うけど…」
「私も…おや…? これは…」
 何かに気付いたのか、千影は少し歩き、その場でしゃがんだ。
「どうした?」
「いや…ただのビー玉だった…」
 たった今拾ったものを見せ、少し苦笑い。
『うわ〜〜〜〜!!!!』
 その時、またしても何かが聞えた。
 しかも今度は、よりはっきりと、より近くに、である。
 彗以外のみんなにも聞えたらしく、ちょっとした緊張状態に入る。
 千影も、立ち上がろうとした体勢のまま様子を窺っている。
『うわ〜〜〜〜!!!!』
   ゴツッ!
「「!!!?」」
 声がすぐそこまで来た時、いきなり角から出てきた何かと千影がぶつかった。
「って、四葉!?」
 千影と共に倒れた物体を見てみると、それは四葉だった。
 続いて、他のメンツも次々と角を曲がってくる。
「お兄ちゃん!」
「可憐? いったい何があったんだ?」
「あにぃ! あれ! あれ!」
「あれって…うぉあ!?」
 衛の指した方向を見てみると、人体模型に骨格標本、血まみれの生徒、首の無い人間など、とにかくいろんなものが走ってくるのが見えた。
 それを確認した瞬間、千影と四葉を抱えて猛ダッシュする彗。
「何じゃありゃぁぁぁ!?」
「いや、何かいつの間にかいっぱい増えててん!」
「千影! 起きろ! 千影〜!」
 走りながら名前を呼ぶも、目を覚ましそうな気配は全くない。
「このくそ肝心な時に〜!」
「きゃ〜! また増えてる〜!」
「うわ〜ん!」
 その後千影が起きるまで、みんなは真夜中の追いかけっこを楽しみましたとさ。




 その頃。
「そこで、足を踏みはずして死んじゃったってわけよ」
「は〜、大変でしたね〜」
「わたくしも気をつけなくてはいけませんね」
「ねぇ雛子ちゃん、私の首で縄跳びしよっか?」
「わ〜い! ありがとう、『ろくろ首』さん!」
 お化けに会った圭達は、思いっきり和んでいた。
「う〜ん…ですの…」
「あ、この子起きたよ」
 そこで(運悪く)目を覚ます白雪。
 一つ目小僧が、顔に1つだけある大きな目玉で見つめる。
「きゃ〜…あ、今度は騙されませんの!」
「あ、起きた? 白雪ちゃん」
「結構長い間眠ってましたね」
「え? 圭さん? 鞠絵ちゃん? ということは…」
「ねぇねぇ! ヒナね、新しいお友達がいっぱいできたんだよ!」
 『こんにちは〜』と、雛子の友達の皆さんが挨拶をしてくる。
「…(くらっ)ですの…」
 再び気絶しようかというその時、白雪は叫んだ。
 声にはならない、心の叫びを。
「こんなメンバー…もういやですの〜〜〜!!!!」










あとがき
作:作者 四:四葉

作「どうも、カッツォです」
四「四葉デス!」
作「実に、3ヵ月半ぶりのW・Wです!」
四「なぜそんなに遅れたんデスか?」
作「だってさ…ほら…遅れないだろ?」
四「あぁ…それは仕方ないデス…」
作「言い訳するわけじゃないけど、話自体は3ヶ月前からできてたんだよ」
四「まぁ、それはいいデス。今回は、ようやく四葉達の出番がたくさんデシタね」
作「だから言っただろう」
四「でも、前より腕が落ちてるのは気のせいデスか?」
作「う…そうかも…」
四「特に、戦闘シーンはショボショボです!」
作「むぅ…シリアスになるまでに何とかせねばな…」
四「しかも今回、ちょっと長すぎデス!」
作「いろんなネタ入れてたら長くなっちゃって…特に政樹が絡んでくるとどうも…」
四「関西人の血が騒ぐんデスか?」
作「まぁ、そんなところかな」
四「これ以上長くするわけにもいかないデスね。あとがきはこのへんで」
作「そうだな。じゃあ、四葉」
四「はいデス! 感想はモチロン、ふざけんじゃないデス! っていうのまで、何でもいいので送って欲しいデス! ただし、ウィルスなんかは送っちゃイヤデスよ!」
作「では…」
「「次回もよろしくお願いします!」」




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