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『飛べない豚は…ただの豚だ…』
 某映画のワンシーン。
 結構有名なので、このセリフを耳にしたことがある人も多いはずだ。 
 だがここに、そのセリフに対して過剰なまでの反応を示した1人の少女がいた。
 そのセリフを聞いた瞬間、肩をビクッと震わせた少女……その名は花穂。

 彼女は、最近太り始めたことを気にしていた。
 そのため、「ただの豚」という言葉に過剰に反応してしまったのだ。
 しかし、花穂はもう一度そのセリフを思い出し、ある閃きに達する。
「そうだぁ! 飛べればいいんだぁ!」
 その頭のネジのとび具合が、やはり最強の姉妹(仮)の1人というところか…


 かくして「紅の花穂計画」は開始された。
 ……著作権とか大丈夫なのかな?(作者)

紅の花穂

作者:カッツォ


計画@『やっぱりこういうことは鈴凛ちゃんだよね!』

「鈴凛ちゃ〜ん、ちょっといい?」
「なぁに、花穂ちゃん? 私、これでも結構忙しいんだけど?」
「あのね、花穂ね、お空を飛べるようになりたいんだけど……」
「え? そういうことならちょうどいいや。今『飛んで逝け〜る君1号』の援助をアニキに頼みに行くところだったから」
「そうなんだぁ。(なんか今、「いく」の発音が違ったような…)」
 少しの疑問を持ちつつも、素直に鈴凛についていく花穂。
 しかし後に、その選択を死ぬほど後悔することになる。

 実際、鈴凛は数々の飛行装置を開発してきた。
 それだけなら問題は無い。
 むしろ、花穂にとっては幸運だったと言える。
 ただ一点、それらがすべて兄を死の危険に晒しただけに終わった、ということ以外は……

「ねぇアニキ、援助して(はぁと)」
「ダメだ」(即答)
「えぇ〜? なんで〜?」
「今月だけでいくら援助したと思ってんだ。もうお前に援助できる程の余裕はない」
「どうしも〜?」
「どうしてもだ」
「お兄ちゃま、花穂からもお願ぁい!」
「わかった。いくらあればいいんだ?」(超即答)
「ア〜ニ〜キ〜?」
 何やらとても理不尽なものを感じつつも、とりあえず援助が貰えたことに喜ぶ鈴凛。
 早速「飛んで逝け〜る君1号」の開発に取り掛かった。



 そして数日後。
「うん、完璧! これできっと飛べるはずだよ!運がよければ・・・
「え? なぁに? 最後の方が聞こえなかったよぉ?」
「何でもない何でもない。じゃ、発射するよ〜!」
         ポチッ
「え? まだ心の準備が…って………ふえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…ふげっ!」
 まぁ、予想どうりと言うかお約束と言うか…爆発した。
「あはは…やっぱりニトロはまずかったかな…」
 果たして、飛行装置にニトロは必要なものなのであろうか?
 そんな疑問がよぎるところではあるが、それでも生きてるというところが、さすがは最強の(以下略)





計画A『やっぱりこういうことは四葉ちゃんだよね!』

 早くも爆発から復活した花穂。 
 次はとりあえず、(ある筋に関しては)情報通である四葉に聞いてみることにした。

「ねえ、四葉ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「チェキ!? か・花穂チャマ…ま、まかせてくださいデス! この名探偵四葉が何でもお答えするデス!」
 普通に声をかけただけなのに、妙に慌てている四葉。
 それに対し、さすがの花穂も多少の疑問を持った。
「いったい何してたの?」
「ななな何でもないデス! 四葉は別に兄チャマの部屋をチェキし、あわよくば弱みを握ってやろうなどとはこれっぽちも思ってないデス!」
「ふ〜ん?」
 ここまで言ってるのに気づかないところが、花穂らしいというか…
「そ・それより! 四葉にチェキして欲しいことって何デスか?」
「あ、そうだった。あのね、どうやったらお空を飛べるようになるか教えて欲しいの。」
「ホワ〜イ? なぜそんなことを四葉に聞くのデスか?」
「う〜ん…四葉ちゃんならいろんな事知ってそうだし…それに、四葉ちゃんなら飛べそうな気がしたから!」
「よ・四葉をいったい何だと思ってるんデスか…まあいいデス! そういうことなら、これを使うといいデス!」
 ドーン、と何やら機械を取り出す四葉。
 妙に見覚えがあるようなその機械に、花穂は少なからず恐怖をおぼえた。
「それって……」
「鈴凛ちゃん特製『飛んで逝け〜る君プロトタイプ』デス!」
「ちょ…それはさっきやったよ!」
「問答無用デス!」
 花穂の必死の抗議も虚しく、装置は着々と体に装着されていく。
 四葉の素早い動きの前では、いつも「ドジ」などと言われている花穂はどうすることもできなかった。
「できたデス! それでは早速、スイッチオンデス!」
           ポチッ
「またぁ〜〜〜〜〜〜〜!?……ふげっ!」
「う〜む、やっぱり爆発デスか…使う前に試しといて良かったデス♪」
 …合掌。
 




計画B『やっぱりこういうことは千影ちゃんだよね!』

 あれだけ酷い目にあったにも関わらず、果敢にも作戦を続行する花穂。
 しかし元々多くの作戦があったわけではない。
 よって、三つ目にして最終手段である「千影に頼む」という作戦を決行することとなった。



 数分後
「…………」
 そこには、千影の部屋で見たものにあまりに大きなショックを受けたため、半分放心状態になっている花穂の姿があった。

 開けた瞬間に不思議な生物を見ることぐらいは覚悟していた。
 千影が悪魔らしきものと戦っているのも何度か目撃した。
 怪しげな儀式などは最早見慣れたものだ。
 しかし、まさかあんなものを見ることになろうとは・・・・・・

〜計画B開始直後〜
「千影ちゃ〜ん、ちょっといい?」
 返事も聞かずにドアを開ける。
「ねえくまちゃん。ちかね、あにくんにおこられちゃったんだぁ。どうしてか………はっ! か・花穂くん!?」
「おじゃましました!」
 そして次の瞬間に全力でドアを閉めた。
 くまのぬいぐるみに話し掛けいる千影。
 会話文に、全然『…』がない千影。
 心なしか、身長まで縮んでいたような気がする千影。
 というか、明らかに8歳は幼くなっていた千影。
 とにかく今みたものは、これまでの千影イメージを根底から覆すようなものだった。
「……忘れよう」

〜戻って現在〜
「……忘れよう」
 もう一度そう呟き、花穂は千影の部屋を後にした。





計画C『やっぱりこういうことはお兄ちゃまだよね!』

 そろそろ肉体的にも精神的にも限界に近い花穂。
 最終手段も失敗(?)に終わったため、自分が最も信頼する人物、即ち兄の所へ相談しに行くことにした。

「ねぇお兄ちゃま、どうすればお空を飛べるようになるのかなぁ?」
「ん? どうしたんだ? 突然」
「花穂ね、最近太ってきちゃったの。だからね、飛べないとお兄ちゃまに嫌われると思ったの。」 
「(…なんでそうなる?)か・花穂。お兄ちゃまは、たとえ花穂が太ってても嫌いになんてならないよ。もちろん飛べなくてもね」
 妹の思考にかなり疑問を感じるものの、その辺はもう慣れたもの。
 優しく兄らしく花穂を励ます。
 その言葉で、花穂の顔はぱぁっ明るくなった。
「ホント? お兄ちゃま? 花穂のこと、見捨てないでね」
「ははは、花穂のこと見捨てたりなんてするわけないじゃないか」
「ありがとう、お兄ちゃま! 大好き!」
 そう言って兄に抱きつく花穂。
 ドサクサ紛れって感じである。
「おいおい、ははは……(他の妹に見つかりませんように…)」


 後日
「ふふ…花穂くん…私の秘密を知ったからには…ただで済ますわけには…いかないな…」
 千影の功績(?)で、花穂は見事(げっそりと)痩せたそうな…




あとがき
6作目にして、未だに妙に人気を誇るこの作品(自分で言うな)
手直ししたことで、会話の連続は多少緩和されたと思います。
思えば、これが一番最初に感想が来た作品なので、非常に思い出深いです。
これがなかったら、私はもう活動してなかったかも…
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)


カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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