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 ある休日にて

「おにいたま〜、ヒナ、遊園地に行きた〜い!」
 すべてはその一言から始まった。
「いいわね、それ。お兄様、行きましょうよ!」
「亞里亞も、行きたい…」
「遊園地で兄チャマをチェキデス!」
 結局妹は全員賛成。
 俺としても特に断る理由もなかったので、みんなで遊園地に行くことにした。
 しかし当然の事ながら、俺達(特に俺)の一日が平穏に過ぎ去るはずもなかった……


みんなで遊園地

作者:カッツォ


その0 遊園地入り口にて

「お兄様は絶対私といっしょよ!」
「いいえ、兄君様はワタクシと共に行くべきです!」
「ヒナもおにいたまといっしょがいい〜」
「亞里亞も…」
(以下8人省略)
「わかったわかった。順番にな!」
「「「「「「「「「「「「は〜い…」」」」」」」」」」」」
 というわけで、俺達は遊園地の入り口にいる。
 そこで早速、お約束である俺の取り合いが始まったってわけだ。
 しかしみんな今日はやけに素直に引き下がったな……
 ……ん? 今なんか、「ニヤリ」って……気にしないでおこう。




その1 ミラーハウスにて

 結局咲耶がジャンケンで勝利したため、最初は俺と咲耶でミラーハウスに行くことになった。

「うわぁ〜! 鏡だらけね、お兄様!」
「まあ、ミラーハウスだからな」
「今どのくらいまで来たのかしら?」
「そうだな……半分ぐらいじゃないか?」
「そう……うふふ……ここまで来れば邪魔者はいないわね……」
「は?」
「お兄様、ラブよ!」
 そう言って咲耶は俺にタックルをかましてきた。
 何の構えもとっていなかった俺は、なす術も無く押し倒される。
「さぁ…お兄様…」
「わぁ〜!! こんな所で脱ぐな〜〜!!!」
         ピシッ
「「ん?」」
 俺的絶対ピーンチ! とか思っていると、突然前方の鏡にひびが入った。
 そして次の瞬間。
「兄君様!!」
 春歌が現れた……
「ふふ…何のまねかしら?」
「それはこちらのセリフです!」
 なんか、二人の周りに変なオーラが流れ始めてるんですけど……
「手加減はしないわよ!」
「望むところです!」
「うわっ! ちょっと待てお前ら〜〜!!!」




その2 ジェットコースターにて

 結局二人の戦いに巻き込まれた俺。
 体中にガラスが刺さり、普通の人間ならとっくに死んでる程の出血量だが、そこは妹への愛でカバーだ!

「お兄ちゃ〜ん」
「兄チャマ〜」
「お、可憐に四葉。今度はお前達か?」
「うん! お兄ちゃん、今度は可憐達といっしょにジェットコースターに乗ろうよ!」
「ああ、じゃあ行こうか。」
「ジェットコースターに乗る兄チャマをチェキデス!」
 どうでもいいけど、俺の傷についてはノータッチですか……
「だって、いつものことデス」
 さいですか…

 というわけで、俺達は今ジェットコースターに乗り込んでいる。
    ブォン!ブォン!ブォン!
「兄チャマ! 四葉のチェキによると、ここのジェットコースターは世界最速らしいデス!」
    ブォン!ブォン!ブォン!
「そうなのか? 世界最速ってこんな所だったっけ?」
    ブォン!ブォン!ブォン!
「お兄ちゃん…可憐、怖い…」
    ブォン!ブォン!ブォン!
「(自分が行こうって言ったのに…)大丈夫、俺がついてるよ、可憐」
    ブォン!ブォン!ブォン!
「………ところで四葉。さっきから何かエンジン音みたいな音がするんだけど?」
「あれ? 知らないんデスか? ここのジェットコースターは、世界初のロケットエンジン搭載なのデス!」
「へ?」

    ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
「それはジェットコースターじゃないだろおぉぉぉぉぉぉぉ………」




その3 メリーゴーランドにて

 ぐはっ…それにしてもすごいGだった…内臓がいくつか潰れたな…いやいや、妹のため、まだまだいける!
 それにしても、なんで可憐と四葉は無事なんだ?
 もう一回乗ろうとか言ってたし…さすがにそれは断ったが…

「兄やぁ」
「おお、亞里亞。次は亞里亞の番かい?」
「はい…亞里亞、メリーゴーランドに乗りたい…」
「メリーゴーランドか…さっきのは凄まじかったけど、今度は大丈夫そうだな…」
 なんて言って安心していた俺。
 しかし出発直前に聞えたものすご〜く不吉な声が、その安心を粉々に打ち砕くこととなる。。
「よし! 改造完了!」
「は? 鈴凛?」
     ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
「なんでこんなに速いんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
「亞里亞、ぐるぐるです〜」

 しばらく後。
「鈴凛! 勝手に改造しちゃだめだろ!」
「ゴメン、アニキ! …でも絶対こっちの方がおもしろいのになぁ…」
「おもしろくない! っていうか、どうやったらメリーゴーランドであんなスピードが出るんだ!?」
「そこが科学の力だよ!」
「あっそ……」
「兄や…」
「ん? どうした?」
「亞里亞、もう一回乗りたいです…」
「え゛? ………マジで?」
「はい!」
「………………」




その4 昼食にて

 結局もう一度あれに乗ることになり、別世界にトリップ寸前な俺。
 ………もうそろそろ限界かも。

「兄上様」
「昼食ですの!」
「鞠絵に白雪か。…よし、ここらで昼食にするか」

「「「いただきま〜す」」」
「あ! 白雪、今日の弁当は大丈夫なんだろうな?(「死へといざないし者」参照)」
「大丈夫ですの。ほら、鞠絵ちゃんも食べてますの。」
「おいしいですよ、兄上様。」
「ふむ、大丈夫そうだな……」
「どうです? にいさま?」
「うん、うまいよ」
「良かった〜ですの」
「今日のお弁当はわたくしも手伝ったんですよ」
「へぇ、そうなのか。ありがとう、鞠絵。もちろん白雪も」
 ここで俺は何となく違和感を感じた。
 ………穏やか過ぎる。
「……ところでさっきから他の妹の姿が見えないけど、みんなは先に食べたのか?」
「大丈夫ですの。(一食二食ぐらい抜いても死にませんの)」
「みなさん楽しんでいらっしゃいますよ。(今頃楽しい夢の中でしょう)」
「へぇ〜、そりゃ良かった」
「「(ニヤリ)」」




その5 お化け屋敷にて

 今日の中で唯一安らげた時間(何か嫌な予感はしたが)を終え、俺はまた妹達と遊園地をまわることにした。

「ん? 花穂、千影、こんな所で何してんだ?」
「あ、お兄ちゃま。なんかね、鞠絵ちゃんと白雪ちゃんにもらったジュースを飲んだらね、急に眠くなっちゃったの」
「何かの…陰謀を感じるね…」
「(鞠絵!? 白雪!?)と・とにかく、どっか行こうか」

 で。
「お化け屋敷か……花穂は大丈夫なのか?」
「うん! だって、お兄ちゃまがついててくれるもん!」
「そ・そう……(千影とお化け屋敷…既に危険な香り全開だな…)」
「何か…言ったかい…?」
「いえ! 何も!」

 それから。
「ふぅ………やっぱりこうなるのか…」
「兄くん…それが運命さ…」
「お兄ちゃま〜! 何か変なお花さんが襲ってくるよ〜!!」
 そこは…明らかに作り物でない、変な生き物でいっぱいだった。
「ふえ〜ん、お兄ちゃま〜!」
「ふふ…楽しいね…」
「なんでお化け屋敷の中が異世界なんだ…」
 とりあえず、もうつっこむ気力すら残ってなかった。




その6 コーヒーカップにて

 なんとかお化け屋敷(じゃない別の世界)を脱出した俺達。
 千影がいなかったら危なかったな…(いや、千影がいなければあんな所へ行くことも無かっただろうけど)

「おにいたま〜!」
「あにぃ!」
「雛子。衛。これでやっと全員か…」
「何ブツブツ言ってるの?」
「いや、なんでもない」
「おにいたま、ヒナね、あれに乗りたい!」
「コーヒーカップか……さっきがあんなのだっただけに心が和むな…」

 というわけでコーヒーカップ乗り場。
『限界の無いコーヒーカップ』
 そこには、そう書かれた看板が立てられていた。
 ……嫌な予感がするのは僕だけでしょうか?
「どういう意味だ? これ」
「乗ってみればわかるんじゃない?」
「おにいたま、ヒナ、早く乗りた〜い!」
「はいはい…」

 看板のことはすご〜く気になったが、とりあえず乗ってみることにした。
 しかし衛の言った通り、乗ってみると看板の意味はすぐにわかった。
「こういうことか…」
 現在俺は、超高速で回転するカップの中にいる(推定、一秒に10回転ぐらい)。
 理由…衛が真ん中のやつを全力で回しているから。
 回転速度に限界がないってことですか……いったいどういう原理でできてるんだろう?
 作った奴、殺しちゃおうかな……
「うわ〜い! 楽しいね、おにいたま!」
「そうだね…ははは…」
「よぉし、じゃあもっと回しちゃうぞ!」
「そうだね…ははは…」
 この状況でしゃべれる俺達って、結構すごいよね。
「ははは…」




その7 広場にて

 う゛…気持ち悪い…何であいつらあんなに元気なんだ?
 衛なんて、降りてすぐに全力疾走してたし…
 まぁ、あんなのに乗って気持ち悪くなるだけっていうのも普通じゃないけど…
 ふぅ…でも、これでやっと帰れるな…

「よし、これで全員と行動したな。じゃあ帰「お兄様! 次は私といっしょよ!」ろうか…」
「えぇ! ずる〜い! 次はもう一回ジャンケンだよぉ」
「姫も今度はにいさまといっしょに何か乗りたいですの」
「まだまだ兄チャマをチェキし足りないデス!」
(以下、8人続きます)
「マジですか…」




その263 遊園地出口にて

「楽しい時間というのはすぐに過ぎてしまいますよね。皆にとって、今日という日はあっと言う間に過ぎてしまいました。でも妹達は大好きなお兄ちゃんと一緒に過ごせて大満足みたいです。お兄ちゃんもそんな妹達の姿を見てとってもうれしそう」
「…可憐…爽やかにナレーションを入れるな…」
 結局、あの後も日が暮れるまで妹達に付き合わされた俺。
 何故命があるのか不思議…
「お兄ちゃんは、と〜っても優しい笑顔で笑ってくれています。それに、次のお休みにまた連れて行ってくれる、って約束までしてくれました。ありがとう、お兄ちゃん、大好き!」
「いやだ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 夕日にこだまする俺の声も虚しく、次の休日も妹達と楽しく過ごせそうです…






あとがき
シスパラの40万Hit記念に書かせていただいたSSです。
私が書いた、初めての全員登場SSでもあります。
まぁ、全員が出てるだけのショートショート、って感じになってますけどね。
え〜っと、(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。




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1483sy@hkg.odn.ne.jp

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