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「ふわぁ…おにいたまぁ…」
「ん? 何だ雛子、眠いのか?」
「うん…ポカポカしてて、フワ〜ンってなるの…」
「まぁ、春ってのは眠くなる季節だしな。じゃあ、もうお昼寝するか?」
「えぇ〜? ヒナ、もっとおにいたまと遊びた〜い!」
「う〜ん…そうは言ってもなぁ…」
「雛子くんが眠いのは…この暖かさのせいなんだろう…」
「いつも通り唐突だな、千影よ」
「ならば…その暖かさを無くせばいい……ブリザード…!」
   ビュオォォォォォ…
「さっむぅぅぅぅ!!」
「おにいたま…ヒナ、なんだかまた眠くなってきちゃった…」
「わ〜! 寝るな雛子! 寝たら死ぬぞ〜!!」


春眠暁を覚えず

作者:カッツォ


 何とか千影を止め、生命の危機から脱出した2人。
 しかし、また暖かくなった途端、再び雛子は眠そうな顔をし始めた。
 なかなかの大物のようである。
「ほら、眠いんだったら早く寝た方がいいぞ」
「ふわ〜い…」
 兄にそう言われ、ソファーに向かっていく雛子。
 どうやら、眠気に抵抗しきれなくなったようだ。

 雛子が、 少しウトウトし始めた頃…
「お兄様〜!」
「うわっ!? 唐突に抱きついてくるな!」
 出かけていた咲耶は、帰ってくるなり兄に抱きついた。
 ドラム缶ぐらい軽くへこむような力で、だが、その程度で砕けるほど兄のろっ骨は弱くない。
「帰ってきたら、まずお兄様を抱きしめなきゃ!」
「いや、意味がわかんねぇよ」
「うみゅ〜…」
「「あ…」」
 突然雛子が起き上がり、兄に向かってフラフラ歩いてきた。
 それを見た2人は、同時に『しまった』という表情をする。
「あにいたま〜…ヒナも〜…」
 雛子に合わせて兄が少しかがむと、そのまま兄の胸にポスっと収まった。
「ほら、起きちゃったじゃないか…」
「あら、そうでもないみたいよ?」
「え?」
「く〜…」
「ホントだ…」
 兄の胸で、雛子は気持ち良さそうに寝息を立てていた。
 小さく可愛いその手は、兄の服をしっかり掴んでいる。
「ふぅ…仕方ないな。部屋まで運んでやるか…」
 そのまま雛子を抱きかかえ、雛子の部屋へと向かう兄。
「お兄様〜…く〜…」
 後ろでそんな声が聞えた気もしたが、完全に無視である。

「これでよし、っと…」
 雛子をベットに移した頃には、その手は兄の服から離れていた。
 可愛い寝顔を確認してから、兄は部屋を出て行く。
 そのすぐ後、雛子の部屋に忍び込む影が1つ…
「ふふふふふ………」





 …。
 …。
 …あれ? ヒナ、どうしてこんなに真っ暗ところにいるのかな?
   (ぱっ)
 あっ! お子様ランチだ!
   (ぱっ)
 オムライス!
   (ぱっ)
 ハンバーグも!
 いっただっきま〜す!
   (す〜…)
 ありり? みんな消えちゃった?
 ヒナ、食べたかったのになぁ…
「ひ・な・こ・ちゃん」
 あれ? 可憐ちゃん?
「雛子くん…」
 千影ちゃんも。
 ねぇねぇ、どうしてここにいるの?
 ここ、どこ?
「フフ…美味しそうだね…」
「うん…とってもおいしそう…」
 え? どうしたの…?
「「いただきま〜す」」
 うわ〜ん! ヒナを食べちゃやだよ〜!!



   ガバッ
 2人の手が到達しようかという瞬間、雛子の目の前に光が広がった。
 次に見た光景は、見慣れた自分の部屋。
「???」
 状況がイマイチのみこめないのか、寝ぼけ眼で辺りを見回している。
 ふと、その目に鈴凛の姿が映った。
「ヤッホー! いい夢見れたかな?」
「???」
 いつも通りやけにテンションが高い鈴凛に対し、やっぱり寝ぼけ眼の(というか半分寝ている)雛子。
 今更ながら、自分の頭にある機械に気付いた。
 さらに鈴凛の隣にも、雛子の体より少し小さいぐらいの機械が置いてあった。
 2つは、どうやらコードで繋がっているようだ。
「あ、気付いた? これはね、とっても楽しい夢を見れる機械なんだよ! ねぇねぇ、どんな夢が見れた?」
「ふみゅぅ…あり? どんな夢だっけ…?」
「あちゃ〜、覚えてないのかぁ…こりゃ、まだまだ改良が必要みたいだね」
 もっと別の所に改造が必要なような気もするが。
「じゃ、あとはアニキで実験するから。ありがとね〜!」
 そう言って、部屋を出て行く鈴凛。
 ちなみにその後、兄は夜な夜な悪夢に悩まされる日々が続いたそうな。





「みゅ…」
「あら雛子ちゃん。お昼寝ですか?」
 まだ残る眠気に従い寝転がろうとした時、鞠絵が部屋に入ってきた。
 鈴凛が開けっ放しにしていったドアから、たまたま見えたのだろう。
「うん…ヒナ、お寝んねするの…」
「そう。なら、この薬を飲むといいですよ」
 そう言って、何かの錠剤を取り出した。
「これ、なぁに?」
「これは、安眠を促す効果のある薬ですよ」
「あんみん?」
「つまり、気持ちよ〜く寝られるんです」
「ふ〜ん…」
「ちょっと待て〜い!!」
 雛子が錠剤を受け取ろうとした瞬間、突然兄が部屋に駆け込んできた。
 さすが、こういう時の速さは尋常ではない。
「鞠絵、その薬は何だ?」
「ですから、気持ちよく…」
「もしかして、ピンクの象が見えたり、世界がまわったりして、妙に楽しくなったりするのか?」
「あら、よくわかりましたね。これは新しいタイプで、それが夢の中で見られるという…」
「犯罪だ! つーか、んなもんを妹に薦めるな!」
「でも、とっても気持ちいいんですよ?」
「そういう問題か!」
「兄上様、お静かに…ほら…」
「ん?」
 鞠絵が指差した方、つまりベットを見てみると、雛子は気持ち良さそうに眠っていた。
 兄のツッコミなど日常的すぎて、騒音にすらならないのだろう。
 それにしても鞠絵は、見事な変わり身の早さである。
「く〜…」
「ふぅ…ま、今回は許してやるよ………ただし、この薬は没収な」
「そんな! わたくしは明日からどうやって生きていけば…」
「まっとうに生きんかい!」
 そんな2人のやりとりなど露知らず、雛子は1人安らかに寝息を立てていた。
「おにいたまぁ…」
 きっと、楽しい夢でも見ているのだろう。
 その表情は、とても幸せそうに見えた…





 ちなみに、その夜。
「おにいたま、次のお話は?」
「え〜!? もういい加減寝ようよ…」
「だ〜め! 次のお話!」
「へいへい…」
 昼にいっぱい寝た雛子は、夜遅くまでおにいたまにご本を読んでもらいましたとさ…









あとがき
どうも、カッツォです。
この作品は、ムガツ ノアさんのリクエストSSです。
死ぬほど遅くなってすみません(殴
あんましほのぼのになってないような気もしますが…(汗)
こんなもんでよければ、リクエストはいつでも受け付けております。
しかしこの作品、書いてる最中に雛子を壊したくて仕方ありませんでした(死)
というわけで、そのうち壊れバージョンとかを書いてしまうかもしれません。
その場合、おにいたまおねえたまな方々を読まないことをお薦めいたします。
たぶん、とんでもない作品になると思いますから(汗)
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです…




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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