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「にいさま、ちょっと欲しい食材があるんですの」
「何だ? あんまり高いのはダメだぞ」
「いえ、自分で盗るからタダですの」
「…盗る?」
「あ、ついいつもの癖で出ちゃいましたの。正しくは『採る』ですの」
「いつもって…?」
「つきましてはにいさま、いっしょに来て欲しいんですの」
「ま、それはいいけど…いつもって?」
「じゃ、早速行きますの」
「で、いつもって?」


伝説の食を求め

作者:カッツォ


「…で、何故に千影の部屋に連れてこられたのかな?」
 結局白雪の素行もわからないまま、千影の部屋まで連れてこられた俺。
 千影関連の食材ですか…
「ふむ…では、2人で魔界に行きたいと…言うのだね…?」
「はいですの」
「いや、俺は言ってないから」
「本当に…いいんだね…?」
「もちろんですの!」
「だから俺はよくないって」
「準備は…できてるのかい…」
「バッチリですの!」
「部屋の窓とか開けっ放しだし…」
「じゃあ…行くよ…」
「レッツゴーですの!」
「だから俺は嫌だって言ってんだろうが〜〜〜!!!」
     カッ!
 こうしてある冬の午後、僕は魔界へと旅立ちました…







 …相変わらず千影はすごいと思う。
 一瞬光ったかと思えば、もう魔界に着いてしまった。
 え? どうして魔界だってわかるのか?
 そりゃあだって…常連ですから(涙)
「で、白雪。探してる食材って?」
「ついて来ればわかりますの。確か、あの山のてっぺんにあるはずですの」
 と、白雪が指差すので、それに合わせて俺もそちらを向く。
 そこには、確かに山らしきものが存在した。
 ただまぁ何て言うか…針の山って感じ?
「ん? 何か聞えないか?」
「そういえば羽音のようなものが…」
 かなりの嫌な予感を感じつつも後ろを振り向くと、遠目に見てもかなり大きな鳥がこちらに向かってきているのが見えた。
「あれは…」
「コカトリスですの!」
 だんだん近づいてくるにつれ、姿がはっきりと見えてくる。
 恐らく、ゆうに1メートルは越えているだろう。
「白雪! 逃げ…」
「ふふ…早速獲物が来ましたの…」
「ぬな!?」
 言うが早いや、どこからともなく包丁を取り出した白雪は、鳥に向かってハイジャンプ。
 完全に人間じゃないと思われる跳躍力で、白雪は一直線にとんでいく。
「危ない!」
 しかし、あと少しで鳥に到達しようかというその時、いきなり鳥が妙な息を吐き出した。
 確か、コカトリスの息を浴びた奴って…石化!?
「白雪〜〜〜!!」
「何ですの?」
「…………はい?」
 てっきり石になったと思って、思わず叫んじゃった俺。
 にいさま、恥ずかしい!
 …じゃなくて、なぜか白雪は全然平気のようだ。
 どうでもいいが、この一瞬でどうやって移動したんだろうか?
 …あのジャンプができる奴に、常識を求めるのが間違いか。
「お前、どうして無事なんだ?」
「無事って、何ですの?」
「コカトリスの息をあびた奴は石になるんじゃなかったっけ?」
「あぁ、それならきっとこのリボンのおかげですの。このリボンは、全ての状態異常を回避するんですの」
 FFかよ。
「そんなことよりにいさま! 姫の魔界料理第一弾ですの!」
 そう言う白雪の手にあるものは…焼き鳥。
 ………。
 ………。
 まぁ今更、コカトリスを料理するなよ! とか、
 どうやってあの時間で!? とか、
 火はどっから出したんだ!? とか言うつもりはない。
 ただ…
「訊きたいことがある」
「何ですの?」
「肉以外の部分はどうした?」
 そう、白雪の手には『焼き鳥』がある。
 綺麗に皿に並べられて。
 しかし、それはあくまでも肉の部分である。
 鳥というからには、ちゃんと羽もあったし、嘴とかもあった。
 その部分はいったい…
「なかなか美味しかったですの」
「食ったのかよ!」
「でも、やっぱり調理した方が良かったかも…」
「しかも生かよ!」
「嘴はかなり固かったですの」
「なんつぅ歯だよ!」
「特に目玉が生臭…」
「エグいわ!」
 ……ツッコミ疲れた。



「む…あそこにあるのは…」
「今度は何だ…」
 どうやら休む暇もなく、またつっこまなくてはいけないようだ…
「マンドラゴラですの!」
「…料理に入れるの?」
「そんなわけないですの」
 お前の場合、そんなわけあるから言ったんだよ。
「千影ちゃんに頼まれたんですの。『魔界へ送る代わりに…マンドラゴラを…採ってきてほしい…』って」
「うわー、すっげー似てないモノマネ」
「そ・そんなのはいいですの!」
 あ、ちょっと赤くなってる。
「それより、とっとと引っこ抜きますの!」
「え、ちょっと待て!」
   ズボッ
「−−−−−−−−−−−−−−−!!!!!」
 俺の制止も間に合わず、引っこ抜かれるマンドラゴラ。
 当然の如く、根っこがこの世のものとは思えない叫び声を上げる。
 …あ、魔界だからこの世じゃないか。
 そんな悠長なことを考えつつ、俺はお星様に近づいていった…




 …次に目覚めた時、ポクの目の前にはおっきなお魚さんがいました。
「………って、何ィィィィィィィ!?」
 一瞬トリップしてしまったが、そんな場合でもなかった。
 その魚が俺に食いついてくる。
 …俺はミミズにでも生まれ変わったのだろうか?
 それにしても経過無しで、いきなりエサだったような…
「いよっしゃぁ! ヒットですの!」
 またしても悠長なことを考えていたのが、その声によって現実に引き戻された。
 と同時に、一気に浮遊感が身体を支配する。
 どうやら魚がかかったので引き上げられるらしい。
 ミミズじゃないとすると、ゴカイにも生まれ変わったのだろうか?
 それにしても(以下省略)
「やったぁ! 大きいお魚ゲットですの!」
「白雪…」
「あれ? にいさま?」
 どうやら、俺はまだ白雪のにいさまだったようだ。
 …うん、だんだんと意識がはっきりしてきたぞ。
 なんて、やっぱり悠長なことを考えているが、俺は今魚に食いつかれてます。
 俺が人間のままだとすると、とんでもなくでかい魚に。
「にいさま、何でお魚に食べられてるんですの?」
「どう考えたってお前の犯行だろうが!」
「あっ、すみませんですの…寝ているにいさまを見てたら、つい…」
 どうやら我が妹には、寝ている人を見たらエサにしたくなる性質があるようだ。
 以後、気をつけることにしよう。
「それはそうと、何でマンドラゴラの叫び声聞いても平気なんだ?」
「やっぱりこのリボンのおかげだと思いますの」
「即死防御も有りかよ…で、お前はいいとして、俺は?」
「きっと、免疫ができてるんですの」
「あぁ、なるほど」
 納得できる自分が死ぬほど嫌ですが。
 



 魚も始末(調理)して再び針の山にむかった俺達だが、まぁその後もいろいろあった。
 …あるにはあったのだが、とてもじゃないが表記できる内容ではない。
 よってここには、苦難の末俺達は何とか山の山頂へと辿り着いた、とだけ記しておこう。
 決して作者の怠慢ではない…そうだ。





「ついに…ついにゲットですの〜!」
 見た目ヨモギのようなものを摘み取る白雪。
 ようやく目的を果たしたようだ。
 ふぅ〜、これでやっと帰れるのか…
「ついに、『ヨモギ』をゲットしましたの!」
「よかったな、白雪………………? …………りぴーとわんすもあ」
「え? だから、ついに『ヨモギ』ゲットですの! って言ったんですの」
「ヨ…モ…ギ…? ヨモギヨモギヨモギヨモギ…」
「これで蓬餅が作れますの!」
 まんまヨモギかよ…って、待て待て。
 ふふふ、俺としたことがつい取り乱してしまったよ。
 そうだよね。何か特別なヨモギに違いないよね。
「で、そのヨモギは普通のやつと違うのかい?」
「にいさま、当たり前ですの! 魔界に生えてるんですのよ!」
 うん。そうだろうそうだろう。
「で、どこが違うんだ?」
「んもう! にいさま、今は何月ですの?」
「1月だな。向こうの世界では」
「そうですの!」
「…で?」
「まだわからないんですの? つまぁり! このヨモギは、一年中青々として旬なんですの!」
「…………」
「………?」
「えっと………それだけ?」
「そうですの! この寒い時期に蓬餅が作れるなんて、こんなすごいことはないですの!」
 その時、俺は全身から力が抜けていくのを感じた。
 つーか、実際千影辺りに魂抜かれてるんだと思う。
 だから、涙ながらにこう叫ぶのが精一杯だった。

「頼むから……春まで待てよ!(涙)」








あとがき
このSSは、『しらゆキッチン』さんへの遅すぎる開設祝い(爆)として投稿させていただいた作品です。
今作は、また微妙な出来に仕上がりましたね…(苦笑)
とりあえず兄の性格があちこちに行ってますが、混乱してるということで許してくださいな(爆)
そして、白雪ぶっ壊れ(埋葬)
う〜ん、ネタ自体は悪くなかったと思うんですがねぇ…
文章、特にモノローグがイマイチでしたね。
最近シリアスばっかり書いてたんで、ギャグの書き方を忘れたんでしょうか?
何にせよ、まだまだ精進が必要ですね。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。





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