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「う〜ん…奴が…奴が来る…」
 12人の妹を持つ男は、眠りについていた。
 今日は休日。
 さらに、珍しく寝込みを襲ってくる妹もいなかったので、彼にとっては久々の安らかな(?)眠りだった。
 しかし彼は12人の妹を持つ男。そしてこれはギャグSS。
 当然、このまま彼の安らかな眠りが続くはずもなかった…
「くししし…」
「兄や…」


寝起きドッキリ大作戦!

作者:カッツォ


 彼の部屋に忍び寄る2つの影、雛子と亞里亞。
 朝ごはんを作り終えた白雪から、兄を起こす任務を承った2人。
 だが幼く、悪戯心たっぷりの彼女達が、兄を普通に起こそうなどと考えるはずもない…

「くししし…どうやっておにいたまを起こそうかな〜♪」
「兄やをびっくりさせるの…」
 楽しそうに兄の部屋の忍び込む2人。
 うきうきしながらも、しっかり忍び足は忘れていない。
 どうやら将来は有望のようだ(?)
「(亞里亞ちゃん、どうやって起こそうか?)」
「(これかけるの…)」
「(おもしろそうだね!)」
 ヒソヒソ話で作戦を練る2人。
 ちょっとやそってで起きる兄ではないので、別に静かにする必要もないのだが、この方が秘密の作戦のようで楽しいのだろう。
 そしてたった今決まった作戦。亞里亞が取り出したものは…
     パッパッパッ
 コショウ。
「ふぇ…ふぇ…ぶぇっくしょい!」
「やったぁ!」
「兄や…面白い…」
 雛子と亞里亞が喜ぶ横で、兄はくしゃみを繰り返す。
「はくしょん! くしゅん! がしょるば!…く〜」
 が、妙なくしゃみ(?)をした後に、再び寝息をたて始めた。
 妹が寝込みを襲いに来た時などは人間離れした鋭さで速攻起きる兄。
 しかし普段は、お前わざとやってんのか? っていうぐらいに寝起きが悪い。というか起きない。
 世の中でも、くしゃみをしながら眠れる人間は某雪国の少女と、この男ぐらいではないだろうか。

「う〜ん、起きないね、おにいたま」
「起きないの…」
 何事も無かったかのように眠り続ける兄に対し、2人は新たな作戦を考える。
 ちなみに、既にヒソヒソ声は忘れているようだ。
「じゃあ…今度はこれ!」
「こっちもいいかも…」
「じゃあ、両方いっきにやろうよ!」
「うん」
 そう言って雛子が取り出したもの。今度はタバスコだ。
 それを寝ている兄に飲ませる(というか口に流し込む)
「……………かっら〜〜!!!!」
 今度こそ目が覚めたようで、ガバッと起き上がる兄。…が
     ガンッ!
 亞里亞の放つ金ダライ攻撃が兄の脳天にクリーンヒット(しかも角っこ)
 兄は再び(強制的に)眠りについた。
 雛子と同時に進行していた亞里亞の作戦は、金ダライで兄を強打することだった。
 しかし角が当たったとはいえ、亞里亞のどこに兄を気絶させるほどの力があるのだろうか…?
 …世の中、知らないことはまだまだ多いようだ。
 そして、知らない方がいいことも。
「あ〜あ、またおねんねしちゃった」
「残念…」
 またも作戦が失敗し、残念がる2人。
「ぐぁ…からしのついたキムチがワサビ漬けになって襲ってくる…」
 だが、兄もかなりのダメージのようだ。
 起きるまでもう一息というところであろうか。(実際はさっき起きたのだが)
「よぉし! もうちょっとだよ! がんばろう!」
「うん…!」
 2人もそのことはわかっているのだろう。はりきって次の作戦へ移る。
 しかし、その後の作戦はことごとく失敗に終わることになる。



「えい!」
  ザバァ
「ZZZ…」
「兄や…全然気付いてないの…」
 水をかける作戦は、今日の洗濯物を増やすだけに終わった。



「えい…」
  プニ
「むにゅう…」
「あはは! おにいたま、おっもしろ〜い!」
 洗濯バサミではさむ作戦は、兄の顔を面白くしただけに終わった。



「おにいたま、今日のごはんはね、フレンチトーストなんだよ! はやくしないと、ヒナ、おにいたまの分まで食べちゃうよ?」
「もう食べられましぇ〜ん…」
  ぐぅ〜
「亞里亞、おなかすいた…」
 食べ物の誘惑で起こす作戦は、自らの空腹を更に増すだけに終わった。



  ピピピピピピピ…
  ジリリリリリリリ…
  ピー! ピー! ピー!
「ぐ〜…」
「耳がキンキンするよ…」
「亞里亞も…」
 とりあえず家中の目覚し時計を集めてみる作戦は、五月蝿いだけに終わった。



「うにゅ〜…ヒナ、もう疲れちゃったよ…」
「うん…」
 そんなこんなで、時間はもう朝ごはんを食べるには遅すぎる時刻になっている。
 2人の作戦も底を尽き、もうそろそろ助けを呼ぼうかと思い始めた頃だった。
 ふと、今朝の出来事を思い出す。
『あ〜、アニキはなかなか起きないからね〜。よし、これを持っていきなよ。きっと役に立つからさ。このお礼として、アニキにはたっぷり援助してもらわなきゃね〜!』
 2人は兄を起こすために台所を出た時、そう言う鈴凛から機械を受け取っていたのだった。
「あ!」
「あれ…」
 それを同時に思い出した2人は、重いからと言って廊下に置いてきた機械をすぐに持ってきた。
「…? これ、どうやって使うの…?」
「う〜ん…わかんないよぉ!」
 しかし、使い方がわからない。
 機械にはボタンやら計器やらがたくさん付いていて、幼い2人に扱えそうな代物ではなかった。
 なぜ鈴凛は2人にこんな機械を持たしたのであろうか?
 …恐らく、何も考えていなかったのだろう。
「へへへ…きっとアニキ、今頃私の発明に驚いてるだろうな! 援助で何買おっかな〜?」
 やはり何も考えていなかったようである。

 話は戻って兄の部屋。
 2人は、機械の使い方でまだ悩んでいた。
「あ〜、もう! わかんないよ!」
 ついに雛子はギブアップ。
 亞里亞は、その雛子から機械を受け取り、しばらく考え込んだ。
 と、ふいに何か思いついたように顔を上げる。
「これで…いいかも」
 持っていた機械を上に放り投げる亞里亞(ちなみに10kg)
「ふわ〜…よく寝たな〜…」
 天井近くまで放り投げられた機械は、万有引力の法則に従い落下する。
「ん〜? なんか舌がヒリヒリするな…」
 いったいどこにだろうか?
「しかもやけに濡れてるような…顔には…洗濯バサミ?」
 既にお分かりの方が大多数だろう。
「おお、雛子に亞里亞。おは(ドゴッ)ぶ!!」
 当然…兄の顔に、である。
 『おはよう』と言おうとしたところで機械(10kg)を顔面キャッチした兄は、三度深い闇へ…

教訓:早寝早起き、規則正しい生活を心がけましょう





あとがき
このSSは聖望さんにリクエストをいただいて書いたものです。
初めてのリクエストSSとなった作品ですね。
ぶっちゃけ、ギャグになってるのかどうかかなり怪しいところです(爆)
まあ、こんなSSしか書けませんが、リクエストは随時受け付けておりま〜す。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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