トップへ  SSの部屋へ


死へといざないし者

作者:カッツォ


   キーンコーンカーンコーン
 昼休み開始のチャイムが鳴り響く。
 生徒達にとって、至福の時の始まりだ。
 そう、普通の生徒にとっては…だが、俺は極度の緊張に包まれている。
 奴が…奴が来る…
 おそらく、今の俺にはリングのテーマなどがぴったりだろう。「来〜る〜きっと来る〜」ってやつだ。
 などと思いつつも、周りの気配をうかがう。
 そんなことをしても無駄だとはわかっている。
 でも、そうせずにはいられない。

 奴の気配が近づいてくる。一歩…また一歩と……
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
 そして、気配は俺の教室の前までやって来た!
 俺の緊張は頂点に達する!
 そして次の瞬間、恐ろしき声と共にとびらが開け放たれた!
「は〜い、にいさま! お弁当を持って来ましたの!」
 来た…俺をあの世へといざなう死神が…


 俺には、12人のかわいい妹がいる。
 そして、そのほとんど全員が俺の命を危険にさらす。
 その中でも特に凶悪なのが、千影とこの白雪だ。
 この2人の作るものはいろんな意味で強力と言える。
 ちなみに昨日の弁当は、コカトリスの丸焼きマンドラゴラの絞り汁がけ(材料提供:千影)だった。
 ……お花畑、きれいだったなぁ。

 毎日がそんな感じ。三途の川の船頭さんとは既に雑談をかわす仲だ。
 我ながらよく毎回生き返るもんだ……
 というわけで、今日も逝ってみますか!
「にいさま、今日のお弁当はワニ肉の唐揚げですの!」
 なに? 今日はやけにまともだな…(あくまでも普段と比べれば、だが)
 そうか、今日はあの日か。

 白雪の料理は、月に一度くらいすごくまともな時がある(まあ、いつも美味いことは美味いんだが・・・)
 だから今日がその日だと思ったのだ。だがそれが甘かった……

  パクッ  モグモグ  ゴクン
「ん〜? 変わった味だな……なんだこれ?」
「ちなみに、この唐揚げには千影ちゃん特製の媚薬がた〜っぷり入ってますの!」
「なに〜〜〜!? もう飲み込んじゃったじゃないか〜〜〜!!」
「副作用として死ぬこともあるかもしれない、って言ってましたけど……にいさまなら大丈夫ですよね!」
 はぁ、また千影か…そら最強(凶)の二人が組めば俺なんてイチコロだわな…
「あ…意識が遠のいていく……」

 その日、三途の川にて。
「よぉ、兄ちゃん。今日も来たかい」
「はい…こんにちは、船頭さん」
「しかし、兄ちゃんも毎日がんばるねぇ。」
「ははは…好きでやってるわけじゃないんですけどね…」
「兄くん…」
「お、迎えが来たみてぇだな。じゃあな、兄ちゃん。また明日」
「うぅ…あと30年ぐらいは来たくないです…」



 次の日(休日)
「にいさま、今日は姫とどこかにお出かけしましせんか?」
「ん? そうだな…たまにはいいかもな。で、どこに行く?」
「姫、行きたい所があるんですの!」
「そうなの? じゃあ行ってみようか。」
「ありがとうですの、にいさま! 大好きですの!」

 というわけで、俺と白雪は出かけることにした。
 しかし行き先ぐらいは聞いておくべきだったと、今更後悔。
 俺達が到着した場所。それはなんという…とにかく変な場所だった。

 そこは、一見ただのレストランだった。しかし、尋常じゃないのはその入り口。
 そこには仁王像に天使の彫刻、小便小僧など、全く統一性のないものが所狭しと並べられていた。 
 …おいおい、マスクをしたカエルの人形まであるぞ…これってパクッてきたもんなんじゃ…
 極めつけに、看板には「恐怖!世界の美味大集合! 世界の一流シェフが腕を奮っておもてなしいたします!」と書かれていた。

「なあ、白雪……ここって何だ?」
「にいさま、見てわからないんですの? どう見たってレストランですの。」
「た・確かにそうだが…(恐怖ってなんだ! 恐怖って!)」
「ここのレストランはおいしいって評判ですの! ここに来たきり帰ってないって言う人もいる程ですの!」
 それって、ここから行方不明者が出てるってことなんじゃあ…
「し・白雪…ホントに入るの?」
「当たり前ですの。さぁ行きましょう、にいさま!」
「あぁ〜〜〜〜(泣)」

 白雪に無理矢理引っ張られて入ってみたが、中は意外と普通だった。
 客も、そう多くはないが一応はいる。

「にいさま、何にします?」
 メニューを持った白雪が俺に聞いてくる。
「白雪と同じのでいいよ。」
 が、正直俺は料理のことなんて何も知らない。
 だからこれが一番確かな方法だ。
 白雪の料理に関する知識量は、ほとんどプロ並だからな。
「そうですの? じゃあ…すいませ〜ん、例のメニューを2つお願いします、ですの!」
「な・本気ですか!? お客様!」
「はいですの」
 ……いったい何頼んだんだ?
 っていうか、店員がなぜに自分の店のメニューでビビる?
「か・かしこまりました……御武運を…」
 な・なんだそれ!? 戦うのか? ここで俺は戦闘するのか?

「例のメニュー入りま〜す!」
「れ・例のメニューだって!?」
「誰だいったい!」
「またあの惨劇が繰り返されるのか・・・・」
 店内が一斉にざわめき始める。
 っていうか惨劇ってなんだ? 料理を注文しただけじゃないのか!?

「な・なあ白雪?」
「なんですの? にいさま」
「いったい何を頼んだの?」
「それは…来てからのお楽しみ! ですの」
「(ぐ…俺の本能が危険を告げている…これはかなりやばいぞ…)」


「お待たせしました。例のメニューです。…ご無事をお祈りいたします」
 しまった…ここからどうやって逃げようかと考えているうちに料理が来てしまった 
 …っていうか『ご無事を』って…やっぱり危険なのか…?
「さ、にいさま。例のメニューですの。召し上がれ」
 例のメニューって料理名かよ…しかし、見た目は普通だな…
 いや! 油断はできん! 白雪の料理だって、見た目は普通じゃないか!(失礼)

「い・いただきます…(もぐもぐ)…って、うまいじゃないか!」
「でしょ? これは姫が目標にしている料理ですの。いつかは、にいさまにこんなおいしいお料理を食べてさせてあげたいんですの」
「そっか…ありがとう、白雪…」
「にいさまのためですもの…」
 その後も特に変わったこともなく、俺達はレストランを後にした。
 辺りはもう夕闇に包まれようかという時刻。
 2人で帰り道を歩いていく。
「また来ましょうね! にいさま!」
「あぁ…そうだな。たまにはこういうのもいいかもな…」
「でも姫は…にいさまといっしょなら、どこだっていいですの…」
「ん? 何かいった?」
「いいえ、何でもないですの! さ、帰りましょう、にいさま!」
「おいおい、引っ張るなよ」
 その道、白雪はいつも以上に魅力的な笑顔をふりまいていた。
 …うん、たまにはこういうのも…いいな!








〜妄想(現実逃避)終了〜
何!? 妄想!? いったいどこからだ!?
(作者)「しかし見た目は普通だな…からです」
 と、いうことは…

(以下、現実)
 俺の前にはとても文章では表現できないような料理が置かれていた。
 何て言うか…この世のものとは思えない…
「さ、にいさま。召し上がれ!」
 うむむむ…ここで食べないわけにもいかないし…そうさ、奇妙なのは見た目だけかもしれないじゃないか。
 きっとそうに違いない!
「いただきます…」
 …………やっぱだめでした。
「ふぐっ! またこのオチかよ……」
「にいさ………この料……ですの………」
 遠くに白雪の声が聞こえる…

 ふ……結局俺のお出かけ先は、あの世以外は許されないってことか……







あとがき
一応手直しした後のSSなわけですが、今回はびっくりするほど直すところが少なかったです。
というか、たぶん今書いてるのとあんまり変わりません。
この頃から成長してないってことですね…
下手すりゃ、この頃の方が上手いかも…
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

トップへ  SSの部屋へ