「兄くん…もうすっかり…冬だね…」
「お〜、そうだな〜」
「冬と言えば鍋ですの!」
「お、いいね〜。日本の文化だね〜」
「鍋と言えば…闇ナベだね…」
「そうそう、やっぱ鍋と言えば………闇ナベ?」
作者:カッツォ
「さて、何故かあのまま話は進んでしまい、我が家の今年初めての鍋は『闇ナベ』に決定した。
妹達は闇ナベ経験初めてのメンバーがほとんどらしく(当たり前だ)、とても楽しみにしている。
「ワタクシ、また新たな日本の文化を学べて嬉しいですわ!」
日本の文化って…違うだろ。
「ねぇねえ、やみなべってなあに?」
まぁ、雛子くらいの年齢なら知らなくて当然だな。
「フム、四葉の推理によるとデスね、闇ナベとは鍋の材料を細工して、いかに早く相手を殺れるかを競うものデス!」
「いや、ちょっと待て!」
四葉…お前は探偵から犯罪者に方向転換したのかい?
「闇ナベというのはですね、普段はあまり鍋に入れないようなものを入れ、部屋を真っ暗にした状態でそれらを食べる、というものですよ」
説明ありがとう、鞠絵。さすがに博識だな。
…どこで仕入れた情報かは知らんが。
「ま、そんな感じだ。というわけで次の日曜あたりにやろうと思うから、各自それまでに材料を集めといてくれ。一応1人2種類な」
「つまり、普段鍋に入れないようなものを持ってくればいいのね?」
「う〜ん…でも、ちゃんと食べられそうなもの持ってきてくれよ。…特に千影、四葉」
「ホワ〜イ? ナゼ四葉に言うの?」
「フフ…安心してくれて…いいよ…」
はぁ…このメンバーで闇ナベをしようっていうこと自体が間違ってるよな…
そして闇ナベ当日。
『混沌よりも尚深き闇ナベパーティー』
と書かれたプレートが吊り下げられている。
命名が千影なのは言うまでも無い。
しかも、いつの間にかパーティーになってるし…
「みなさん、材料は持ってきたようですね。及ばずながら、今日の鍋奉行はわたくしが務めさせていただきます」
パチパチパチパチ
妹達の間に拍手が起こる。
…闇ナベって、こんな雰囲気でやるもんだっけ?
っていうか鍋奉行って自分で名乗るもんなのか?
いや、そもそも闇ナベに鍋奉行はいらんだろ。
ま、司会のようなもんか?
「それではルールの説明をさせていただきます。まずは部屋を暗くし、みなさんの持ってきた材料を入れます。ちなみに、鍋にはあらかじめ白雪さんに味付けをしていただいております。ありがとうございます、白雪さん」
「お安いごようですの!」
「さて、材料を入れればフタをし、そのまましばらく待ちます。中に入れたものにもよりますが、20分もあれば十分でしょう。で、ここからいよいよ食べていただくわけですが、今回は一人一人順番に食べていただきます。食べる人はフタを取って中のものを一つ食べてください。一度口に入れたものは出しちゃだめですよ」
ふむ、とりあえずは普通の闇ナベ(?)っぽいな。
千影空間(真っ暗)でやらないだけ、良しとしよう。
「食べる順番についてですが、くじで次のように決まりました」
1番:雛子 2番:四葉 3番:衛 4番:花穂 5番:鈴凛 6番:白雪
7番:亞里亞 8番:千影 9番:春歌 10番:咲耶 11番:可憐 12番:兄
鞠絵:刺激物に耐えられない恐れがあるため不参加
「異議あり!」
「なんですか? 兄上様」
「12番:俺って…明らかに『オチ担当』じゃねぇか!」
「くじで決まった結果です。諦めてください」
ぐ…そもそもこの鞠絵の不参加の理由はなんなんだよ…刺激物があること予告してんじゃねぇか…
「…ルールはこんなところですね。ではみなさん、始めましょう」
パチパチパチパチ
1番:雛子
「いっただっきま〜す!(ぱくっ)」
うん、何のためらいもなく口に入れたようだな。(よく見えんが)
無邪気っていうのは羨ましいな…
「あ〜! イチゴさんだ〜!」
「あ、それ可憐が入れたやつだ」
「とってもおいしかったよ!」
「そう、よかった」
果たして、味付けされた汁の中で20分間も煮られたイチゴがおいしいものなのか。
まあ、それは雛子の味覚の問題なので置いておこう。
とりあえずは無難なところだったみたいだな。
2番:四葉
「いただきますデス…四葉が入れたやつじゃありませんように!(パクッ)」
…お前いったい何入れたんだよ。
「う゛〜…何かふやけたお菓子の味がするデス〜」
「ああ、それはきっとワタクシの入れたお煎餅ですわ」
「オセンベイはもともとあんまり好きじゃないデス〜…」
せんべいか…ま、春歌らしいというか…
そろそろ闇ナベの本領発揮(?)ってところかな。
3番:衛
「う〜…どれにしようかな…あ、これなら小さくていいかも…(ぱく)」
さて、次は何が出てくる…?
「(バリッボリッ)う…何この歯ごたえ…」
「…どうやら、わたくしの入れた薬のようですね」
「んなもん入れるな!!」
「大丈夫です。ただの栄養剤ですから」
いや、そういう問題じゃないだろ…
「うぅ…まずい…」
「いくら闇ナベだからって、これはないだろう…」
「『混沌よりも尚深き闇』ナベですから」
何でもありってことかよ…
その後は薬以上にインパクトのあるものも無く、進行は穏やかに進んでいった。
しかし気になることが1つ。
どうやら千影と四葉の入れた「ブツ」が、まだ出てきてないようなのだ。
俺にはそれがオチへのカウントダウンに思えて仕方が無いんだが…
12番:兄
「ぐ…覚悟を決めるか…いただきます!(パクッ)」
さあ、オチか? それとももっと工夫された展開か?
「何かの根っこっぽい…千影か!?」
「いや…残念だが違うね…私が入れたのは…『肉類』だよ…」
「何の『肉』だよ…しかし千影じゃないとすると…四葉か?」
「NOデス兄チャマ! 四葉はそんな生ぬるいもんは入れないデス!」
…結局、四葉の入れたやつも千影の入れたやつもわからずじまいか。(その方がいいけど)
「じゃあいったい誰が入れたものなんだ?」
「あ、それはわたくしの入れたやつだと思います」
鞠絵…草を根っこごと入れるなよ…
「で、何の草なんだ?」
「『トリカブト』という薬の材料になる草です」
トリカブト…
「うん。確かに薬にもなるよね。ただ、そのままだと…ごくわずかで…致…死…量……(バタッ)」
最初から見えているオチほどつまらないものは無い。
俺は心の中で作者に説教しつつ、天へと召されていった。
でも大丈夫。俺は死なない。
きっとあの世まで素敵な妹が迎えに来てくれるから。
…俺には死ぬ自由すら与えられないんだね。
「なんちゅう人生じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あとがき
このSSは「Closed World〜閉ざされた世界〜」さんの3万Hit記念に書かせていただいたものです。
全員登場SSにするつもりが、出てない妹もいるようですね(爆)
つーか、鞠絵メイン?(核爆)
何にせよ、ラストはもうちょっと工夫できると思うんですがねぇ…
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ! というものまで、何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)
カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp
トップへ SSの部屋へ