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「お兄様、すごろくやりましょうよ!」
「お、懐かしいねぇ。でも、そんなもんどこにあったんだ?」
「物置に置いてあったの」
「物置に? …っていうかそんなすごろく家にあったけ?」
「とにかくやりましょうよ、お兄様!」
「…そうだな、やるか」
「あ〜! 花穂もやりた〜い!」
「亞里亞も…」
「…!! 咲耶くん…そのすごろくは…」
「よし、じゃあみんなでやるか!」
「「「は〜い」」」
「そのすごろくから…強い魔力が感じられる…」
「え?」
    カッ!
 俺がすごろくに触れた瞬間、それは強い光を放った。
 あまりの眩しさに目を瞑ってしまった俺が次に見たのは…


勝負!

作者:カッツォ


「う〜ん…どこだ? ここ」
 目を開けてみると、そこはさっきまでいた部屋とは全く違うところだった。
「ん? 地面に何か書いてあるな…S…T…A…START!?」
 ってことは…ここはすごろくの中か!?
「これは…! フフ…そうか…面白いね…」
「ん? 千影、何か知ってるのか?」
「これは…人の魂を駒とするすごろく…」
「ふ〜ん。で、どうすれば戻れるんだ?」
 普通の人なら今の千影のセリフにビビるんだろうな。
 しかし、俺だってだてにギャグの兄はやってないぜ! このくらいの事態はなれっこだ!
 …言ってて悲しくなってくるけど。
「兄くん…誰に語ってるんだい…?」
 はっ! いかんいかん。つい口に出してしまっていたようだ。
「いや、何でもない。で、どうやったら戻れるんだ?」
「ゴールが…現実世界との扉になっている…はずだよ…」
「そういうことなら安心ね! 逆にこの方がおもしろくっていいわ!」
 おもしろいって…咲耶、普通こういう時はもっと驚くもんだぞ。
 いや、うちの妹に普通を求めることが間違いか…
「どうせなら景品をつけましょうよ! そうね…一番にゴールした人は、明日お兄様とデートできるっていうのはどう?」
「あ、賛成かも!」
「フフ…いいね…」
「兄やとデート…」
「いや、ちょっと待て! 俺は…」
「もちろん夜のデートもありよ!」
 ふぅ…所詮俺に拒否権は無しか…
 こうなったら…絶対一番にゴールしてやるぜ!
「うふふ…お兄様を私色に染めてあげるわ…」
「夜もなんて…花穂、あんなことや、こんなことなんてできるかなぁ…」
「明日は…いい悪魔が召喚できそうだね…」
「兄やとデート…」
「うお〜! 絶対勝つぞ! いろんな大切なものを守るために!」
 各人それぞれの思いを秘め、俺達の壮絶なバトルは始まった…



「ふぅ…長い前置きだったな…」
「何の話だい…?」
「いちいちつっこむなよ…まあいい。よし! 始めるか!」
 ちなみにジャンケンの結果、順番は 咲耶→千影→俺→花穂→亞里亞 に決まった。


「まずは私の番ね…やった! 6よ!」
 咲耶、6マス目・ノーマルマスへ。
「フフ…私も6だ…」
 千影、同じくノーマルマスへ。
「次は俺…4か」
 俺、4マス目・ノーマルマスへ。
「えい! …3だ」
 花穂、3マス目・『洪水が起こる。1マス前の人とスタートへ』
「洪水?」
 ドドドドドドドドドドドド…
「うお! ホントに起こるのかよ!」
「ふえ〜ん! ごめんなさい、お兄ちゃまぁ!」
「ぬわ〜〜!!!」
「きゃ〜〜!!!」
 花穂、俺、共にスタートへ。
「くすん…1です…」
 亞里亞、1マス目・ノーマルマスへ。

「私は…ラッキー! また6よ!」
 咲耶、12マス目・ノーマルマスへ。
「私は…5だ…」
 千影、11マス目・『2マス進む』
「お先に…」
 千影、13マス目・ノーマルマスへ。
「俺だな…5か」
 俺、5マス目・ノーマルマスへ。
「今度こそ…やった! 4だ!」
 花穂、4マス目・ノーマルマスへ。
「くすん…1です…」
 亞里亞、2マス目・ノーマルマスへ。


「このペースじゃいつまでたっても終わらん! こっからはダイジェストだ!」by作者


「やった! また6よ!」
「フフ…4で…『3マス進む』だ…」
「くすん…2です…」

『火事が起きる。避難するため、1つ後ろのマスの人と5マス戻る』
「あちちちちち!!」
「ふえ〜ん! またやっちゃった! ごめんなさい、お兄ちゃま!」
「くすん…1です…」

「追いついたわよ! 千影!」
「フフ…私の『1マス後ろにいる人は2マス戻る』…さようなら、咲耶くん…」
「もう!」
「くすん…1です…」

『竜巻に巻き込まれる。周りの人とスタートへ』
「うぉぉぉぉぉぉ!! っていうかこれは死ぬだろぉぉぉぉぉ!!!」
「ごめんなさぁぁぁぁぁい! お兄ちゃまぁぁぁぁぁ!」
「くすん…2です…」

「今度こそ!」
「おっと…私は…5マス先にワープのようだね…」
「どうして追いつけないの!?」
「くすん…1です…」






「ちょっと! どう考えてもおかしいわよ!」
「フフ…何がおかしいんだい…?」
 向こうの方で、咲耶と千影が言い合い(咲耶が一方的に言っているだけだが)をしている。
 ちなみにここはかなり平坦なため、多少遠くのことでも見えるし聞こえる。
「だって、さっきから千影は良い目ばっかりじゃない!」
 うーん…言われてみれば確かに…
「千影…魔術使ってるだろ?」
「何か問題でも…あるのかな…?」
「大ありよ! そんなのルール違反だわ!」
「まあ、確かに魔術はイカサマってことでルール違反かな」
「フフ…『ルールを破っちゃいけない』というルールは…無かったはずだよ…」
「なっ!?」
 ふ〜む、確かにこんな世界に入った時点でルール無用っぽいしなぁ…
「っていうかさ、咲耶も千影に付いていってるじゃないか」
「それはね…ラブの力よ!」
 ドーン…そんな効果音が聞こえてきそうな雰囲気で咲耶が力説(?)する。
 つまりは運だけで魔術に対抗してるってわけだな。
 何かそっちこそ何でもありって感じがするけど…
「まあとにかく、今はゴールを目指すぞ!」
「了解…」
「こうなったら…お兄様へのラブで魔術に勝ってみせるわ!」


 というわけでゲームは再開された。
 このまま千影が勝利するのかと思いきや、その予想はゴール前であっさり崩される。
「どうやらこの辺りには…魔力封印の結界が…張られているらしいね…」
 ここのゴールは、いわゆる『ぴったり止まらないとゴールできない』ゴールらしい。
 つまり、ゴールまであと3マスという所で4を出すと、ゴールの1つ前まで戻ってきてしまう、ということだ。
 さっき千影が言ったように、ここでは魔術も使えないらしく、千影はさっきからゴール前でうろうろしている。
 その間に咲耶も追いついたのだが、こちらはこちらで運を使い果たしたらしく、同じくゴール前で足止めをくらっている。
 
 ちなみにその頃、俺と花穂は…
『地震が起きる。前後の人と共に2回休み」
「あばばばばばばばば…」
「ごごごごごめんなさい! お兄ちゃまままままま…」
 まだスタート付近にいたりした…


「はぁ…はぁ…もう! 何でゴールできないの!?」
「もうすぐそこに…見えてるというのにね…」
「あ…6です…」
「「へ?」」
 突然背後から聞こえたかわいい声に、思わず素っ頓狂な声を出す2人。
 そんな2人を尻目に、亞里亞はトテトテと歩いていく。
「4…5…6……あ、ゴール」
 そう、亞里亞は千影と咲耶がゴール前でうろうろしている間に、地道に1や2で追いついてきていたのだ。
 そしてゴールに着いた瞬間、亞里亞は姿を消した。
「あ…元のお部屋です…」
 亞里亞の声が聞こえる。
 どうやら、外の声はこの世界全体に届くらしい。
「やられたわね…あ、私もゴールだ」
「フフ…私もみたいだ…」
 咲耶、千影も続いて姿を消す。


「あ〜あ、いらなくなった途端にゴールしちゃうんだから」
「まあ今回は…亞里亞くんに…完敗だね…」
「亞里亞、一番…」
「…何か忘れてる気がしない?」
「そうかい…? 気のせいだろう…」
「う〜ん…」
「亞里亞、お腹すいた…」
「そうね、じゃあお昼にしましょうか」
「そういえば・・・まだだったね…」
「じゃあ行きましょう!」
「は〜い」
「そうだね…」






「うお〜〜!! いつになったら出れるんだ〜〜!!」
「ふえ〜〜ん! ごめんなさい、お兄ちゃま〜〜!!」




あとがき
このSSは「SHINE ROOM」さんの1000Hit記念に書かせていただいたSSです。
構想から推敲まで、1日で仕上げたという問題作(爆)
まぁ今見てみると、それにしてはまともにできてるかなぁ…なんて思ったり。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)



カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

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