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あるデートの風景

作者:カッツォ


「…ちゃん! …いちゃん! …きて!」
「ん…?」
「お兄ちゃん! 起きて!」
「ん〜…」
 もう朝か…あの声は…今日は可憐が起こしに来てくれたのか?
「あ、おはようございます! お兄ちゃん!」
「おはよう、かれ…ん゛!?」
 …そこには、鬼の様な形相で怒りのオーラを発しつつも、なおかつ笑顔を浮かべているという、この世にものとは思えない表情をした可憐(らしきもの)が存在した。
 寝起き一発目でこんなものを見るとは…
「か・可憐? 可憐だよな!?」
「ふふ…そうよ、お兄ちゃん…」
「な・何を怒っているのかな? 可憐さん…」
「うふふ…お兄ちゃん、昨日が何の日だったか覚えてる?」
 昨日。
 そう、昨日は可憐と買い物の約束をしていた。
 でも俺は行かなかった。…というよりも行けなかった。
「ま・待て可憐! 昨日は出かけようとした瞬間に鈴凛の仕掛けた地雷踏んじゃって、そのふっとんだ先が道場で、そこにいた春歌に無理矢理修行相手(人間サンドバック)にさせられて、その後怪我を治すとかいう千影の薬を飲んだら意識(魂)が飛んで行って(逝って)しまったんだ! ま・また今度行こう! 約束するからさ! 怒らないで!」
「可憐は怒ってなんてないよ〜? ただ昨日は待ち合わせ場所で五時間も立ちっぱなしで疲れちゃったな〜なんて思ってるだけだから〜」
 やばい…十分過ぎるほどに怒ってる…こうなりゃ兄の威厳もくそもねぇ! 命第一だ!
「あわわわ! お・俺が悪かった! 許してくれ可憐!」
「許す? やだなぁ、お兄ちゃん。可憐がお兄ちゃんを許さないわけないじゃない。ただちょ〜っとお兄ちゃんと遊ぼうと思って」
「へ・へぇ〜、そう…」
「というわけで、死んで(はあと)」
 はぅ…可憐が禍々しい得物を…俺の命もここまでですか…
「みぎゃ〜〜!!!」
  (表記することすら恐ろしい効果音)
「あははは! 楽しいね! お兄ちゃん!」
    
 …それでも何とか生き残った俺。
 いっそのこと殺しちゃってください…
「だめです。話が終わっちゃいます」(作者)
 生殺しってやつですかい…

「あ〜楽しかった! じゃあお兄ちゃん、お買い物行こ!」
 …はっきり言って今の俺はそんなことできる状態じゃない。
 しかし可憐からは、『断ったら殺っちゃうぞオーラ』がただよっている。
 選択の余地は無しかよ…
「わかった。行こうか、可憐…」
「わ〜い! お兄ちゃん、大好き!」

 ってなわけで、俺は可憐と買い物に行くことになった。
 さすがにその状態では危うかったのだが、千影特製「一発で元気になる薬」で傷は全て治ったようだ。
 …しっぽ生えてきたけど。





デート1 楽器屋

 ふむ、楽器屋か…可憐らしいな。
「ねえねえお兄ちゃん、この曲なんてどうかな?」
「う〜ん、いいんじゃないか?」
 さっきから可憐は、夢中になって楽譜を選んでいる。
 ただ、俺は楽譜を見せられてもさっぱりわからんので、適当に返事をしているのだが。
 まぁ、可憐が選ぶんだからいい曲なんだろう。
「あ、そうだ、お兄ちゃん」
「ん? どうした?」
「ピアノ線も買わなくっちゃ」
 ピアノ線? 切れてるのかな?
「でも、この前ピアノ弾いてた時はちゃんと弾けてなかったけ?」
「知らないの? お兄ちゃん。ピアノ線といえば殺人トリックの定番だよ?」
「さ・殺人!? …つかぬ事をうかがいますが可憐さん。あなたが今買おうとしているピアノ線の使い道は?」
「それはもちろんお兄ちゃんを・・・(ニヤリ)」




デート2 服屋

 はぅ…結局ピアノ線買いやがった…コ○ン! 金○一! 俺を助けてくれ!
 あ…奴ら、殺されてからじゃねぇと活躍しねえじゃん…
「どうしたの? お兄ちゃん。早く入ろうよ」
「お? お、おう…」
 今度は服屋か…ま、ここなら大丈夫だろ。

「で、今日は何か欲しいものがあるのか?」
「うん、もうそろそろ寒くなってきたでしょ? だから可憐、新しいコートが欲しいの」
「コートか…よし、俺が買ってやるよ」
「ホント!? お兄ちゃん!」
 コートぐらいならいくらでも買ってやるさ。可憐のこの笑顔が見れるならな…
「あら可憐ちゃん、いらっしゃい」
 店員さんが声をかけてきた。
 名前まで覚えられてるってことは、たぶん常連なんだな。
「あ、お姉さん。いいコート入ってます?」
「ええ、もちろんよ! ちゃんといろいろ揃えといたわ!」
 へえ、前に来た時に頼んどいたのか。なかなか計画的じゃないか。
 …その計画性が別のことに利用されなけりゃいいんだが。
「これなんてどう? なんと肘の部分からナイフが出てくる『仕込みコート』!」
          ズルッ
 ついつい古典的な転び方をしてしまう俺。
「なんじゃそら!」
「わぁ…素敵…」
 素敵ってお前…
「あの…ちなみにその使い道は?」
「それはもちろんお兄ちゃんを…(ニヤリ)」
 …またかよ。

 その後もいろいろなコートが出てきた。
 が、俺はなんとか可憐を説得し、一番安全そうな『仕込みコート』にしてもらうことに成功した。
 しかし『仕込みコート』が一番安全とは…日本も危険な国になったもんだ…





デート3 武器屋

「武器屋!?」
 ホントに『武器屋』って書いてある…
 いやいや! 店名が『武器屋』なだけで、中は普通に違いない!
 きっと、ブティック『武器屋』とか、そんな感じのネーミングだ。
 店長さんがちょっとお茶目なだけなんだ!
 そう信じたい…
「お兄ちゃん遅〜い! 先行っちゃうよ〜!」
「い・今行く…」

「…可憐?」
「なぁに? お兄ちゃん」
「朝使ってた得物はここで買ったのか?」
「『えもの』ってなあに? 朝のおもちゃならここで買ったんだけど…」
 …え〜と…そこには、禍々しい『モノ』が大量に置いてあった。
 何で日本でこんな店が認可されるんだよ…
「おじさ〜ん! この前注文したやつ、ありますか?」
「おう、嬢ちゃん! ちゃんと入ってるぜ!」
 しかも常連かよ。
「ほれ! 『ふう○しゅりけん』! 300000ギルだ!」
「わぁ〜! ホントだ!」
 ふう○しゅりけん? ギル? 何のことだかさっぱりわかりませんな。
「まいどあり!」
「あはははははは……」(壊)



デート4 帰り道

「今日は楽しかったね! お兄ちゃん!」
「あはははは……」
「うん! また行こうね!」
「あはははは……」
「お兄ちゃん…大好き!」
「あはははは……」
「うふふふ」
 そこには、楽しげに笑いあう兄妹の姿がありましたとさ。
「あはははは…は…は…」





あとがき
私的に、ぶっ壊さないとギャグが書けないキャラの1人、可憐。
…すみません。
ラストが妙に弱かったのもイマイチでしたね。
え〜っと、とりあえず(その他、いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)





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