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ああ、楽しき召喚

作者:カッツォ


「エロイムエッサイム…」
 千影の不気味な呪文が暗い部屋に響き渡る。
 部屋の中には俺と千影の2人だけ。
 …そう、俺は今千影の実験に付き合っている。
 何故そうなったのかというと…

「兄くん…ちょっと実験に…付き合ってくれないかい…?」
「い・や☆」
「フフ…」
「ギニャ〜!! わら人形!?」
「兄くん…ちょっと実験に…付き合ってくれないかい…?」
「喜んで協力させていただきます…」
「ありがとう…」

 というわけだ。
 しっかし、いつ見ても怪しさ大爆発な部屋だな…
 明らかに地球上には存在しなさそうな植物に、妙な角のある動物の骨、なんか泡立ってる液体とか、動いてるぐにょぐにょとか。
 う゛…あんまり見ないようにしよ…

「我の前に姿を現せ!」
 おぅ、いつの間にか千影が呪文を唱え終わったみたいだ。
 床に描かれた魔方陣がなんか光ってる。
 今日は召喚の儀式だって言ってたけど…?
「なあ、千影。いったい何を召喚したんだ?」
「ちょっとした…上級悪魔さ…」
「ふーん? で、今どうなってるんだ?」
「…兄くんは…自分の行動の全てを理解したうえで…生きているのかい…?」
「………つまり、失敗してお前にもどうなるかわからない、と?」
「……………」
「……………」
「…テヘ☆」
「(はは、かわいいなぁ)…って! テヘ☆ じゃねぇだろ!」

 そうこうしている間にも、魔方陣の光は強さを増していく。
 やがて光の中に1つの影が現れた。
「ちっ! いったいどんな奴が現れるってんだ…」
「こういう場合…あまりいい事態は望めないね…」
 魔方陣の光はだんだん弱まり、影の正体が明らかになっていく。そして…
「ピキュー!」
 影は完全にその姿を現した。
 そいつは、リスにウサギの耳をつけたような生物で、背中には天使の羽を小さくしたようなものが生えている。
「兄くん…」
「あぁ…」
「……………」
「……………」
「「かわいい(な、ね)」」
 俺と千影の声が重なる。
 だってホントにかわいかったんだもん。
「兄くん…私これ飼いたい」
「そうだな、こいつなら他の妹達も喜びそうだし…でも、どうやって飼うのかわかるのか?」
「ふむ…恐らくこいつも魔界の住人…そうなると…やはり食べる物は魂だろう…」
「魂? …ってまさか…」
「頼んだよ…兄くん…」 
 やっぱりかい…
「今すぐ捨ててきなさい」
「フフ…冗談だよ…食べ物については…調べればすぐにわかるだろう…」
 千影さん、あなたが言うと冗談に聞こえません。

「う〜ん、それにしても…」
「ああ…かわいいね…」
 そうそう、ペットといえば…
「名前つけてやらなきゃな」
「名前…? そうだね…あった方が…いいかもね…」
「どんな名前がいいかな?」
「ケルベロスなんて…どうだい…?」
 はい、ほぼ予想通りの回答をありがとう。
「い・いや、こいつには合ってないんじゃないか?」
「そうか…じゃあ…ルシフェル…」
「それもちょっと…」
「ふむ…わがままだね、兄くん…では、兄くんは…どんな名前がいいんだい…?」
 わがままってお前…
「う〜ん、そうだなぁ…単純にタマなんてどうだ?」
「兄くん…ネーミングセンス無い…」
「ぐ…あんまりお前には言われたくないな…」
「おいコラおのれら! さっきから何勝手なことぬかしとんじゃい!」
「は?」
 どこからともなく声が聞こえた。
 しかしこの部屋には俺と千影とタマ(仮名)以外には誰もいない。
 俺は違うから…
「今の千影?」
「そんなわけ…ないだろう…」
 と、なると…
「タマ!?」
「兄くん…それ違う…」
「そうじゃボケ! わしの名前はのう、『ポチ太郎』っちゅうんじゃ! わかったか!」
 やっぱりお前か…しかしポチ太郎って…タマの方がまだマシなような…
「っていうかお前さ、さっきの『ピキュー!』って時と全然声が違うじゃねえか」
「うっさいアホ! まったく…突然呼び出されるわ、変な名前付けられそうになるわ、いったいどうなっとんねん!」
「…君はいったい…何者だい…?」
 ポチ太郎のブチギレ&変な喋り方も気にせず質問する千影。
 ふ…ボケ2人に対してツッコミは俺1人か…
「わしか? わしはなあ、魔界にその人ありと言われた伝説の魔人、が飼っていたと言われるペット、を目撃したという奴の隣に住んでた者の子孫じゃ! どうや! ビビッたか!」
「全然凄くねえだろうが!」
「で…どうして君は…出てきたんだい…?」
 俺のツッコミ無視ですかい。
「んなもんわしが聞きたいわ! まったく…せっかく家で気持ちよう寝とったのに…」
「それは…悪いことをしたね…しかし…なぜ失敗したのだろう…? 確かに…上級悪魔を呼び出したはずなんだが…」
「なんでもええから早く帰らせ!」
「ふむ…仕方ないね…(チラッ)」
 …なぜにそこで俺を見る? 
 なんとなく想像はつくが…
「ち・千影? いったい何するつもりだ?」
「ふふ…ポチ太郎くんのために…魔界へのゲートを開くだけさ…」
「で、その方法は?」
「ゲートの門番を召喚し…兄くんを生贄に…ゲートを開いてもらう…」
 やっぱりそれですかい。
「さぁ…兄くん…」
「いやじゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「問答…無用だよ…」

 必死の抵抗もむなしく、生贄にされちゃったかわいそうな俺。
 まさか妹に殺されるとは…いや、うすうすそんな気はしてたけど。
「では…始めるよ…」
 はぁ…ちなみに、儀式はさっきとだいたい同じなので省略だ。
 魔方陣が輝き始め、中から人影が現れる。今度はちゃんとした(?)やつのようだ。
「我を呼び出したのは汝か?」
「ああ…そうだよ…」
 今度は、額に角が生えている以外は普通の人間と変わらないようなやつが出てきた。
 それでも悪魔らしく、俺にもわかるぐらいに禍々しいオーラを出している。
 しかし千影は慣れているのだろうか? 特に気にする様子もなく話を進める。
「我になんの用だ?」
「魔界に…帰したい子がいるんだ…」
「そうか。だが人間にゲートを開くには生贄が必要だ。」
「ああ…それならこの人が…」
「おい! マジかよ!」
「兄くん…暴れないでくれ…」
      ドスッ
「ぐはっ…」
 千影の突きを見事にみぞおちにくらい、俺の意識は闇の中へと消え去った…





「…う、う〜ん…ん? 生きてる?」
「やぁ…起きたかい…」
 やっぱり生きてる…
「千影、俺は生贄になったんじゃなかったのか?」
「…………何とか…説得したんだ…」
「そうか…ありがとう、千影」
「ふふ…本気で兄くんを生贄にするわけ…ないじゃないか…」
 とてもそうは見えなかったけどな。
 しかしあの後どうなったんだ? おい作者、回想頼む。
「あいよ」(作者)

〜回想(作者視点)〜
「いいのか?」
「あぁ…かまわないよ…」
「して、魔界に帰したい者とはどいつだ?」
「この子さ…」
 そう言ってポチ太郎を差し出す千影。
 その瞬間に門番の表情が一気に緩んだ。
「ポチ太郎じゃないか!」
「あ! ご主人!」
「…? …どういうことだい?」
 不思議そうな顔をする千影。
 さすがの彼女にも現状が飲み込めないようである。
「うむ、このポチ太郎は私のペットなのだ。」
「それが…どうしてここに…?」
「うむ、それがな…」

〜回想の中の回想(門番視点)〜
 ついさっきの話だ。
 私は夕食ができたことをポチ太郎に知らせに行くところだった。
「お〜い! ポチ太郎〜! ご飯だぞ〜!」
          ウ゛ォン
 その時突然私の前にゲートが現れたのだ。恐らく召喚用のものだろう。
「うお〜〜〜!!!メシ〜〜〜〜!!!」
          ウ゛ォン
「あ…」
「何じゃいこりゃ〜〜!!!」
 そうしてポチ太郎はもの凄い勢いでゲートに突っ込んで行ったのだ。

〜回想の中の回想終了〜
「と、いうわけなのだ」
「何だそりゃ! 何が『んなもんわしが聞きたいわ!』だ! 思いっきりお前が原因じゃねぇか!」
 その時、確かに気絶したはずの兄からツッコミが入る。見事、ツッコミ魂。
 しかし悲しいかな。それにいちいち反応するようなメンツは、ここにはいなかった。
「私は…君を召喚したつもりはないのだが…」
「うむ、恐らく別の者が私を呼び出そうとしたのだろう。だが予定外のものがゲートを通ったために空間が歪み、結局ここに出てしまったのだ」
「へぇ…」
「とにかく、ポチ太郎が迷惑をかけたようだな。よし、帰るぞ、ポチ太郎」
「了解。じゃあな、嬢ちゃん!」
「ああ…またいつでも…遊びにおいで…」
 そうして、門番達はゲートへと消えていった。

〜回想終了〜
「…千影」
「なんだい…?」
「お前が説得する場面、どこにあった?」
「さあ…どこだろうね…」
「っていうかあれ、生贄忘れて帰っただけじゃん!」
「そうとも…言うかもしれないね…」
 こいつ、本気で俺を生贄にしようとしてやがったな…
「さて兄くん…次の実験だが…」
「え゛!? まだやんの!?」
「当然さ…さっきのは失敗だしね…」
 マジで…? 
 …俺が妹に殺される日は、思ったよりもずっと近そうです。








あとがき
今作は、私にしてはなかなかに長く書けた方ですね。
しかしまぁ、相変わらず会話ばっかり。
間の取り方が、いまいち曖昧ですしね。
え〜っと、とりあえず(いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)






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