トップへ  SSの部屋へ


ヒナといっしょ

作者:カッツォ


 それはある休日。
 することもなくゴロゴロしてた俺に、雛子が話し掛けてきた。
「ねえねえ、おにいたま。ヒナ見たい映画があるんだけど…連れてってくれる?」
「う〜ん、どうせ今日は暇だし…よし! 行くか!」
「わ〜い!」




 というわけで、俺達は近くの映画館(徒歩10分)に行くことにした。今はその道中。

「なあ、雛子。何の映画を見に行くんだ?」
「う〜ん…ナイショのしみつ!」
「え〜、教えてくれよ〜」
「しみつしみつ!」
「あははは」
「えへへへ」
 う〜ん、ほのぼのとしたいい雰囲気だ。
「…ところでおにいたま」
 ん? 何か一気に空気が変わったような…
「な・何かな?」
「…昨日いっしょに歩いてた女は誰?」
 はう! 春歌や咲耶に匹敵するほどの殺気と威圧感に満ちた目! こ・恐ひ…
「たたたた・ただの友達だよ!」
 バカか俺は! これじゃあからさまに怪しいじゃないか! 
 ホントにただの友達なのに〜!
 っていうか、なんで雛子相手にこんなに焦ってるんだ!? 
「本当に?」
「本当! 本当!」
「よかった〜」
 あ、元に戻った…
「ヒナ、てっきりおにいたまを寝取る女ギツネかと思っちゃた〜」 
 雛子…頼むから元の状態(?)でそんなセリフを言わないでくれ…
「ははは…」
「えへへへ」
 う〜ん、再びほのぼのとしたいい雰囲気だ〜…俺の笑いが乾いてることを除けば。

 まぁそんな感じで、道中の会話は(ある意味)大いに盛り上がったね、うん。 
 




 そんなこんなでとりあえず映画館に着いた俺達。
 …何か、映画見る前からもの凄く疲れた。

「しかし…」
 なんでこんな映画を見たいと思ったんだろう…?

『愛してるって言って…レオナルド…』
『ああ…愛してるよ…』

 つまりはそういう映画だった。(決して18禁ではないぞ)
 雛子がこんなのに興味持つとは思えないんだけど…
 しかし当の雛子はというと…何やらうっとりとした目で真剣に映画を見ていた。
 …マジっすか。
 それにしてもあの半分閉じた目といい、微妙に赤く染まっている頬といい、どっかで見たことが…
 …そうだ! 咲耶だ!
 まずいぞ…もし咲耶なら次のパターンは…
「ねぇ…おにいたま…」
 ぬお〜! やっぱりか! 顔を近づけるな! 完全に目をつぶるな!
 っていうか、何故に雛子が咲耶化してるんだよ!
「ねぇ…いいでしょ…」
 よくないわ!
「い、いや…それはやっぱり…何ていうか…」
 はぅ! 俺は何を言ってるんだ! はっきり言え! はっきり!
「おにいたま〜…むにゅ…」
「 ? …なんだ、寝てたのか…は〜、びっくりした〜…」
 はは、やっぱり雛子にはちょっと退屈だったか。…だったら、何で見たいと思ったんだろう…?
 俺もこういうのはあんまり好きじゃないんだけどな…
「うみゅ〜…おにいたま〜…」
 ふ…まぁいいか。今日はこの天使の笑顔が見れただけで十分だ。
「おやすみ、雛子…」
 そう言って雛子に顔を近づけた刹那、眠ったと思っていた雛子の目がぱっちりと開いた。
 そして…
      チュッ
「!?」
「えへへ…おにいたまとチュ―しちゃった!」
 寝たふり…恐るべし、雛子…





 まぁ…何はともあれ俺達は、他の妹に見つかることもなく無事に(?)映画を見終えた。
 現在はその帰り道。

「なぁ、雛子」
「なぁに?」
「どうしてあの映画が見たいと思ったの?」
「えっとねー、咲耶ちゃんがね、『あの映画を見ればいくら奥手のお兄様だって私にキスの1つも迫りたくなるはずよ!』て言ってたから」
 犯人は咲耶か…あれだけ年少組に変なこと吹き込むなって言っといたのに…
「ねぇ、おにいたま」
「ん?」
「ヒナ、明日は公園に連れてってほしいな!」
「あ、ごめん…明日は用事があって…」
「おにいたま! これな〜んだ?」
「な!? そ、それは…」
 雛子が取り出したもの。
 それは俺と雛子のキスシーンがばっちり収められている写真だった…
 いったいどうやって撮ったんだよ…
「ねえ、おにいたま、連れてってくれる?」
「…了解」
「ワ〜イ! おにいたま! ダイダイダ〜イ好き!」
「ははは…」
 やばい…これは絶対に奪取せねば…
 



 ってなわけで翌日から、「写真奪取大作戦(そのまんま)」が決行されることとなったのだった。
 何で俺がこんなハメに…

作戦@「雛子に説得を試みよ!」

「わ〜い! おっにいたま〜!」
「こらこら、そんなに走ると転んじゃうぞ」
「だいじょ〜ぶ! ヒナは花穂ちゃんじゃないも〜ん!(酷)」
 とりあえず約束通り雛子を公園に連れてきた俺。
 よし! ここで作戦決行だ!
「なぁ、雛子。どうしてあんな写真撮ったりしたんだい?」
「え〜? だって四葉ちゃんが『兄チャマの秘密をチェキしちゃえば、兄チャマは思いのままデス!』って言ってたから」
 今度は四葉か…
「でもね、その写真を雛子が持ってると、おにいたまがと〜っても困っちゃうんだ」
「え? おにいたまが困っちゃうの?」
 よし! かかった!
「そうなんだ。だからその写真、渡してくれないか?」
「写真ってなんですの?」
「そりゃ俺と雛子がキ…うわ! 白雪!」
「俺と雛子がキ?」
「何でここに!?」
「姫は買い物の帰りですの。それより、何の話ですの?」
「ななな何でもないさ! よし、行こうか雛子! はっはっは!」
「 ? 変なにいさま…」



作戦A「入浴中を狙え!」

 白雪のおかげで説得は失敗に終わってしまった…
 さらにさらに、その後も数十回の説得を試みたのだが、ことごとく失敗。
 奴ら(妹達)が、示し合わせたかのように妨害してきたからな…
 そんなわけで、説得する作戦は破棄だ。
 次の作戦のために、その後夜まで観察してたわけだが、雛子のやつ、写真を肌身離さず持ってやがる…
 だがしか〜し! 風呂場なら持っては入れないだろう! 盗みの定番だな!

「雛子〜、お風呂の用意ができたぞ〜。入っておいで〜」
「は〜い。ねぇねぇ、おにいたまもいっしょに入ろうよ!」
 ぬ、そうきましたか…
「い・いや、おにいたまは後で入りたいから…」
「えぇ〜! おにいたまはヒナとお風呂入るのいやなの?」
 ぐ…なかなか手ごわい…いや! 誘惑に負けるな俺! 
 …っていうか誘惑されるなよ、俺。
「そ・そういうわけじゃないけど…」
「そうよ、雛子ちゃん。お兄様を困らせちゃだめよ」
 咲耶、助かった………のか? 本当に。
「お兄様はこれから私のお部屋でいいことするんだから!」
 やっぱりそれかい…
「いいことってなぁに?」
「ふふ…雛子ちゃんも大人になればわかるわ」
「ふ〜ん?」
「じゃ、行きましょ! お兄様!」
「なんでそうなるんだ〜〜〜!!!」



作戦B「寝込みを襲え!(多少語弊あり)」

 は〜…なんとか咲耶の部屋を脱出したものの…雛子はもう風呂から出ちゃたみたいだな…
 仕方ない、こうなったら寝てるところを狙うか…

丑三つ時
「…よし、みんな寝静まったみたいだな。じゃあ行くか」
  カチャ
  そろり…そろり…
「(写真はどこだ〜?)」
  そろり…そろり…
  ガシッ!
「(ガシッ!?)」
「兄君さま、いけませんわ…でもワタクシ、兄君さまとなら…」
「春歌!? なんでここに…って、ここ春歌の部屋じゃねえか!」
 どうやったら雛子の部屋(ロリロリ)と春歌の部屋(純和風)を間違えるんだ? 俺よ…
「あぁ、兄君さま…ワタクシ…もう…」
「(よし! 妄想中だな! チャンスは今しかない!)」
 そろり…そろり…
  カチャ
「ふぅ…脱出成功…」
「そ、そんなところまで…兄君さま、いや〜んですわ!」
 まだやってんのかい…


作戦C「こうなりゃ当たって砕けろだ!」

 くそ…妹達の妨害(?)のせいで作戦がことごとく失敗に終わってしまった…
 仕方ない、もう一度直接雛子に言ってみよう…

「雛子、ちょっと話があるんだけど…」
「その前に私達の話を聞いてもらえるかしら? お兄様…」
 殺気…それも11人分…
「雛子…もしかしてあの写真、みんなに見せたの…?」
「うん、そうだよ♪」
「へえ…そうなんだ…ははははは…………」

「はは、はははは…………」
 その日は、いつもに増してにぎやかな一日になりましたとさ。めでたしめでたし…






あとがき
私の作品の中でも、トップクラスの壊れ度を誇るこの作品。
…すみません。
どうも、雛子メインのギャグは書きにくいようで…
え〜っと、とりあえず(その他、いろんなことで)ごめんなさい。
感想はもちろん、てめぇふざけんじゃねぇ、というものまで何でもいいので送っていただければ幸いです。(ただしウイルス等はご勘弁)




カッツォへの感想はこのアドレスへ
1483sy@hkg.odn.ne.jp

トップへ  SSの部屋へ