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忘却の時と共に

作者:雪魔さん


「天才」「百年に一人の逸材」「神の子」
いつもそんな言葉が周りにあった。
「化物」「人に在らざるもの」「悪魔」
又、そんな言葉も周りにあった。
多くのであったものが彼を、敬い、憧れ、恐れ、そして離れていった。
友、師、そして、親。

そんな中、ただ一人、いつも在る「友」の姿があった。


私立神無砂希学園、あらゆる分野の天才達が通うエリート学校。
―――世間からはずれた「化物」の集う場所。

「オイ、遅刻するぞ」
「ん、ああ」
見知った声に意識を現実に戻す。先ほどから聞こえていたあわただしい音は彼によるものだろう。
昇神彗。
ちょっと変わった、いや、かなり変わった両親と暮らす以外これと言った特徴の無い学生。
それが彼の印象だろう。
事実、弓もそう思っていた。
「今日は制服が綺麗だね」
「ああ、何か入学式ぐらいは無事送り出してやる、だそうだ」
彗はため息を一つ、それを弓は軽く笑う。

もう十年以上続く当たり前の関係。
数多くの裏切りの中、唯一続く関係。


「今、暇?」
弓ははじめ、その声が自分に向けられたものとは思わなかった。
「うぉい、無視かよ!」
なおもしつこく話しかけてきているようであるその男の子に五回ほど同じ質問を投げかけられた後のこの言葉で
初めて弓は自分に向けられた言葉だと悟った。
「・・・なに?」
「いやだから、暇かってきいてんだけど」
「・・・」
みたことは、あった。
後の感覚で言えば「よくいじられる」ことで有名な男の子だった。
名前は・・・。
何でもいい。
「暇じゃない。ほっといてよ」
冷たい言葉で突き放すと意識をまた空へ戻した。
と突然腕を引っ張られ立たされた。
まあ、当然のごとく、腕を引っ張ったのはさっきの彼だ。
「鬼ごっこやってんだけどさ、人数少なくて面白くないんだよ」
「っ、僕には関係ないだろ!」
「でも、暇そうだし」
「暇じゃないっていってるだろ!ほっといてよ!」
今思い返せば、なにを意地になってたのだろう。
離れられるときの辛さを、もう、知っていたから。
近づくものはみな必ず離れていってしまうと、知っていたから。
子供心に植えつけられた記憶。
「それにさ・・・」
男の子は言葉を続けた。
「何か辛そうだし、寂しそうだからさ。遊んでるほうが気が紛れるぜ!」
「・・・」
弓は不思議だった。
なぜこの男の子がこんなにも自分の気持ちを察してくれようとし、元気付けようとしているのか。
「・・・何で?」
「いや、なんでって・・そりゃ」
ちょっと照れくさそうに鼻を掻きながら、その後何度も口にするであろう言葉を呟いた。
「そりゃ、普通やるだろ?」


一瞬とんだ意識が戻ってくる。
その一瞬にフラッシュバックした景色に弓は妙な懐かしさと確信のようなものを得ていた。
「ホント、おせっかい焼きだね」
そのおせっかいがいろいろな人を変えているのは事実だった。

「敵」であった殺し屋を「味方」につけたり。
「無関心」な青年の「関心」をひいたり。
『消極的」な少女に「積極的」に協力させたり。

「命を狙う」死神の「命を救おう」としたり。

「ま、二千年生きる死神にも通用すればいいんだけどね、おせっかい」
「何をぶつくさ言っている」
もう一つの脳で動くそば屋から受けた傷は浅くは無いが少しは落ち着いた。
一見すればかなりの量の血が出ているが致死量には程遠い。
自分にもできる事がまだあるはずだった。
「お待たせしたね。予定外の展開とはいえ彼女も無事送れたわけだし、第二ラウンドといこうか」
「貴様を血祭りに上げるな」
そば屋がいやな顔で笑い言う。
それに弓は不敵な笑みを返しながら言った。
「まだ死ねないね。刀、返してもらうんだから」

どこからか足音が聞こえた気がした。









もせああとがき


ということで送る相手の家でこれかいてます、雪魔です。
祝、二巻の原稿あがりということで書いたわけなんですが、
筆者の想像以上にわけわからんまとまりの無い文章に仕上がってしまい素敵だなオイというわけです(?
一応弓SSというわけになるんでしょうか?

雪魔さんへの感想はこのアドレスへ
yukimamikoto@hotmail.com


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