トップへ  SSの部屋へ


おさかな天国を聞きながら

作者:やまおさん


「兄くん・・・楽しかったね・・・」

「そうだな・・・」

「・・・特に一番大きなアレはとってもステキだったね・・・」

「そうだな・・・」

「・・・兄くん?」

「そうだな・・・」

「・・・・兄くんの好きなアイスクリームは?」

「SOHだな・・・」

「・・・兄くん」

ギュゥゥゥゥ!!!

「痛い!!」

いきなり千影に足を踏まれてこっちの世界に戻ってくる。

「なんだよ!」

「なんだよ!・・・じゃないよ・・・!私が話しかけているのに・・・」

千影がぷぅっと頬を膨らませ起こった顔をする。

・・・かわいい。だけどなぁ・・・

「で・・・なんだって?」

「今日のアレはとってもかわいかったね・・・って・・・」

「ふざけるな」

意見を一蹴。

「どうやら兄くんには・・・あの素晴らしさがわからないようだね・・・」

「わからないし、一生わかろうとも思わない」

俺は頭を掻きながら続ける。

「まったく・・・何のために秋葉原まで行ったんだ・・・」

「アレを・・・見にいったんだよ」

「とんだ無駄足だったな」

「はぁ・・・」

とうつむき千影がため息をつく。

「多分・・・亞里亞くんに兄くんがハァハァするのと一緒だと思うよ」

嫌だ、絶対否定してやる。

「っていうか周りの奴も周りの奴だろ。あんなもんに15万も出すなんて・・・」

ちなみに千影もほしいとねだってきたが死ぬ気で説得してやめさせました。

「周りじゃなくて・・・兄くんがおかしいんだよ・・・」

そりゃあ、正常な人が一人きりで残りが異常な人だったら正常な人は異常な人扱いされるわな。

「まあ・・・帰るか・・・」

「うん・・・」

そうして俺達は夕焼けの中家路についた。

ちなみに見に行ったのは『世界の寄生虫展』ですが、何か?





そして電車を乗り継ぎようやく家の近くの駅に着き、駅前の商店街に差し掛かったころだった。

「・・・兄くん?」

「なんだよ?」

「・・・何か聞こえてくるね・・・」

「え?」

俺は耳を澄ました、すると・・・

『さかなさかなさかな〜♪ さかな〜を〜食べ〜ると〜♪』

どうやら魚屋から流れてきているようだった。

「え・・・?千影知らないのか?この曲・・・」

「・・・『みゅ〜パラin the hell』ではこんな曲かかってなかった・・・」

どんなラジオだ、それは。

「これは『おさかな天国』って曲だ」

「偉く・・・ふざけた歌だね」

「子供の夢を壊すような事言うな・・・ほら・・・見ろ」

「・・・?」

俺は魚屋の方を指差してやる。すると・・・

「わ〜ママ〜私お魚食べた〜い」

「わかったわ。えっと・・・じゃあ鯖をくださいな」

「ヘイ、毎度!」

「ママ、お魚を食べると、頭がよくなるんだよね?」

「うふふ・・・そうね・・・」

魚屋の前には、見ててほのぼのするような親子がいた。

「ほら・・・見てみろちか・・・げ?」

横を振り向くと千影がいない。どこへ行ったんだ・・・

「やぁ・・・」

千影は魚屋の近くにいた。どうやらさっきの子供に話しかけているようだ。

「どうしたの、お姉ちゃん?」

・・・黙り込む千影。しばらくすると。

ボワァ!いきなり手から緋色の炎が舞い上がる。

「・・・・死んでみるかい?」

「わぁぁぁぁ!!」

「キャァァァァ!!!」

親子が悲鳴を上げるって・・・こんな解説してる場合か!

「お前はアホかー!!!」

スパァァァァン!!!

一気に千影に近づき、頭をはたく。

「何やってるんだ!」

怒声を千影に飛ばす。

「だって・・・」

「だって・・・じゃない!」

「・・・なにするんですか!」

ようやくわれに返った母親が口を開ける。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい!・・・こいつも悪気があった訳じゃ・・・」

「私は悪くない・・・!このガキのせいだ・・・!」

「ガキっていうな!!」

「ウワァァァァァン!!!」

子供が母親にすがり泣き出してしまった。

「もう本当に申し訳ありません・・・お詫びといってはなんですが俺の『きたきた踊り』を・・・」

「いりません」

即却下されてしまった。

「勇者様ぁ〜」

「ちゃ・か・す・な〜!!」

千影の服の襟を持ちグワングワン体を揺らす。

「・・・もういいです・・・・」

「モウコネェェェヨ!!」

俺達にあきれてしまったのかそういう。

「申し訳ありません・・・」

「・・・はぁ・・・」

母親がそうつぶやき、親子が帰ろうとすると、

「ちょっと・・・待って・・・」

千影が親子を呼び止める。どうやらやっと謝る気になったらしい。

「なんでしょうか?」

「・・・これを・・・」

そういい、振り返った母親に何かを手渡す。

「・・・・?」

確認する母親。刹那

「キャァァァァァ!!!」

母親がいきなり叫びながら去っていく。

そして俺達の前に残っていたのは15万する寄生虫だった。

・・・もうなにからつっこんでいいのやら・・・

「・・・千影・・・」

「・・・?」

「・・・ちょっと・・・路地に入ろうか」

「・・・・やさしくしてね」

「勘違いするな!!」





そして路地裏。

「とりあえず正座しやがれ」

「・・・なるほど・・・兄くんはこういうプレイが・・・」

「勘違いせずにさっさとしろ!」

「・・・はい」

とりあえず正座をさせる。そして反省会開始。

「・・・とりあえず・・・順々におっていこうな」

「うん」

・・・なんで楽しそうなんだ、コイツは。

「初めは・・・寄生虫からだ。あれはなんだ・・・」

「・・・15万円の節約」

「犯罪だ!」

ビシ!と牛丼少女よろしくつっこみを入れる。

「だって・・・やっぱりほしかったんだ・・・」

千影が泣きそうな顔をする。・・・泣き脅しかよ。

「・・・わかった・・・それは許してやる」

「・・・うん!」

千影がにこっと微笑む。

「っていうかむしろ問題なのはその後だ・・・」

はぁ、と俺はため息をつき、一拍あけてから、

「・・・どうして殺人未遂なんてしたんだ・・・」

「ちょっと・・・聞こえが悪いよ・・・」

事実だ。

「まあそれはどうでもいい。一体どうしたんだ・・・」

「あのね・・・」

千影が深刻な顔をする。それにつられ俺もぐっと息を呑む。

そしてしばらくの沈黙の後、

「・・・許せなかったんだ」

「・・・何が?」

「・・・あの子供が」

「はい?」

シリアスな顔で千影が続ける。

「許せなかった・・・『さかな天国』の影響で魚を食べると頭がよくなると思っているあの子供が・・・」

「・・・」

俺はなんと返せばいいのか本気でわからなくなった。って言うかこいつはアホだと確信した。

「どうでもいいだろ!」

「・・・よくない・・・!よくないよ・・・!」

なぜか千影が泣き出してしまった。どうすればいいんだ(アビスボートより)

「それだったらくまさんは・・・鮭ばっかり食べてるから世界一の天才だよぉ・・・」

「ああ、そうだな・・・」

とりあえずなんのこっちゃわからんが慰めてやる。

「わかった・・・わかったからもう・・・帰ろう、千影」

「うん・・・家に帰ったら世界に向って『さかな天国』がいかに間違っているか・・・訴えてやるんだ・・・」

「どうやって・・・」

「可憐ちゃんの・・・電波を使って」

すっかり忘れてた。そういえば可憐の奴この前、

「お兄ちゃん、私の電波はFMの74.6MHzで聞けるのよ♪

 語呂合わせで可憐って読めるから覚えやすいでしょ?」

って言ってたっけ・・・どう語呂合わせにしたら読めるのかわからなかったけど。

まあ、それはともかく。

「じゃあ帰ろう・・・」

そうして俺は千影の手を引きながら帰った。





家に着く直前。

「ねえ兄くん・・・」

「なんだ?」

「私が・・・さっきあれだけ取り乱してしまった・・・理由を教えようか・・・」

「ああ・・・」

別に聞きたくないが、そういったらまたキレそうだし。

「私・・・小さいころ、パパに『お前は錬金術師になれ』っていわれたんだ・・・」

「なるほど、でイングリド先生に教わったんだな?」

「!!・・・どうして・・・わかったんだい?」

気にするな。

「それで・・・私のアホさ加減に・・・先生が『こんなアホな子教えられません』って言って・・
 
 それでパパが賢くなれって言ってその日から一年くらいずっと毎食魚だったんだ・・・」

「・・・そうだったのか・・・」

「当然・・・頭なんかよくならなかったさ・・・唯一得したのは魚の漢字がたくさん書けるようになったくらいさ・・・」

そりゃあ否定もしたくなるわな。って言うか親もお前に輪をかけてアホか。

でもそんなこと口が裂けても言えそうになかった。

そんな時、

「ハァイ、にいさま♪」

後ろから買い物かごを持った白雪がやってきた。

リボンを揺らしながら楽しそうにしている。

「今日のお出かけは楽しかったですの?」

「ああ・・・まあまあ・・・な」

「楽しかったよ・・・」

千影もようやく機嫌が戻ったようで、少し微笑んで見せる。

「それは良かったですの!じゃあ帰ったらすぐに晩御飯にしますの!」

「今日の晩御飯はなんだ?」

「今日は秋刀魚の塩焼きですの!・・・ところで知ってますか?」

白雪が質問を投げかけてくる。

「・・・何がだい?」

「魚を食べると頭が良くなるらしいですの!」

「「え・・・」」

そして俺と千影はしばらく沈黙。

「・・・どうしたんですの?」

聞いてくる白雪。

とりあえず千影より早くわれに帰った俺は叫ぶ。

「早く夕飯の準備をしろ!」

「は・・・はいですの!!」

そして白雪が家に入っていく。それと同時に・・・

「・・・くそぉぉぉぉ!!!・・・おさかな天国めぇぇぇぇ!!!」

「千影、落ち着け〜!!!」





あとがき
初めての人は始めまして。そうでない人はコンバンビ!!(死
どーも、やまおです。
はじめてSSをカッツォさんのところに送るのに、意味不明なSSを送ってしまいましたw
ごめんなさい・・・
マイナーなネタもいくつかありますが、なんとなく笑ってくださいw



やまおさんへの感想はこのアドレスへ
yamao315@hotmail.com

トップへ  SSの部屋へ