「寒いわねぇ…」
咲耶ちゃんが、白い息を吐きながら言った。
「ねぇ、可憐ちゃん？」
咲耶ちゃんがこっちを向いていた。
今、可憐と咲耶ちゃんでショッピングモールを歩いています。
ふと、ざわざわと騒がしい周りを見渡せば、
クリスマス前にプレゼントを買い求める夢のない家族連れや、クリスマスに何をするのか恋人たち、
楽しそうに友達同士で騒ぐ寂しいやつら、
その皆が店頭に飾られている小さなツリーの光やお店の明かりに照らされ、
楽しそうに顔をほころばしています。
「うん、そうですね」
暖かい服に手袋をしている手も、
まるで関係ないように寒さに耐えている状態です。
咲耶ちゃんはその答えに満足していないのか、
少し不満げな顔をしてこっちを見続けています。
「ど、どうかしたんですか？」
「別に…。ただ、クリスマスも近いっていうのに…、普通なら…ほら、あんな感じに恋人同士楽しく過ごすものじゃない？」
咲耶ちゃんは、
いわゆる秋葉系の服装で限定BOXがどうこう言ってる歩くカップルを見ました。
あの二人だけでなく、確かに一般人よりもヲタクたちが多い気がします。
「ごめん、今のなし！」
咲耶ちゃんが咄嗟に否定しました。
だから可憐は咲耶ちゃんを上から覗き込むように見て、
「可憐じゃ…ダメですか？」
「あんたなんで私を見下してるのよっ!!」
「あう…」
う〜ん…でも、家族連れもいるし…
姉妹仲良くいるのも、別に変じゃないと思うんですけど…。
でも、咲耶ちゃんはちょっと不満そう…。
「なら…」
「何？」
「可憐が咲耶ちゃんの彼女役をやってあげます！」
「は？」
「咲耶くん…優しくしてね？」
咲耶ちゃんの肩に手をまわし、少し声を低くして言いました。
「……………」
咲耶ちゃんはそのまわした手をとり、すばやく体を翻して、
可憐の腕を締め上げました。
「いたたたた、くっ」
「え？」
「あはははは」
「笑うなんて…まだ締めが足りないようね」
「だ、だって…痛気持ちい…」
咲耶ちゃんは思いっきり締め上げてます。
さ、さすがに可憐も危険を感じたので、
「ご…ごめんなさい…」
「全く…」
でも、よかった…。
咲耶ちゃん、少し暗かったけど、
元気になってくれて…。
その後、物凄く疲れた顔をしてたけど…。
「それにしても…毎年のことだけど、悩むわね…」
可憐と咲耶ちゃんはお店のショーウィンドウを見て回っていました。
今日はクリスマスパーティーのときに交換するプレゼントを買いにきたんです。
「そういえば、可憐ちゃんは去年は結局何にしたの？」
「えっと、確かピンクの熊さんです」
「あぁ、春歌ちゃんがずっと戦ってたやつね」
「はい。春歌ちゃん、気に入ってくれてよかった…」
「私は去年は新作ルージュだったのよね……亜里亜ちゃんがもらっちゃたけどね」
「亜里亜ちゃん塗ってましたよ、あの後」
「その後、あなたの唇にも同じ色がついてたのは何でかしら？」
「咲耶ちゃんは、何をもらったんですか？」
「露骨に話題を変えたわね…。私は雛子ちゃんの金一封を受け取ったわ」
「あぁ、あれですか」
「えぇ。雛子ちゃん賢いわ…誰がもらっても対応できるもの…。可憐ちゃんは？」
「可憐は四葉ちゃんをもらいました」
「何？」
「四葉ちゃんからプレゼントをもらいました」
可憐は咲耶ちゃんの顔を見て、少し照れてしまいました。
咲耶ちゃんが小さく、ふぅ、と息を漏らして言いました。
「あんた、私がいないとすぐに暴走してしまいそうね…」
「でも、その後の咲耶ちゃんのお仕置きが…」
「黙りなさい！」
「う〜ん…こんな感じのウェアなら、衛ちゃんが喜ぶわね」
ショーウィンドウに展示されているスキー用のウェアを見て咲耶ちゃんが言いました。
「鈴凛ちゃんはこっちのパソコンゲームですね」
可憐は電気店の店頭に置いてある、パソコンのゲームを見て言いました。
「今ちょっと、あんたの私見が入らなかった？」
「そうですね…」
二人で苦笑しながら、
「私は呆れてるのよっ！」
あれは誰に合うとか、これがいいとか、
そんな会話をしながらクリスマス前の町を歩いていた。
そんなときに、咲耶ちゃんがふと思い出したように言いました。
「…ねぇ？」
「ホテルですか？」
バゴッ！
「痛い…」
「黙りなさい！」
咲耶ちゃんの右ジャブが炸裂しました。
どんどんお仕置きがきつくなってます…。
「お兄様のプレゼントは何だったのかしら？」
「え？ …そういえば、誰がもらったのかな？」
お兄ちゃんのプレゼント……
そういえば、可憐は咲耶ちゃんからのプレゼントを直接もらってないわ…。
ついでに、お兄ちゃんからのプレゼントもらったことなかったかしら？
…………あれ？
「……(可憐は)プレゼント交換に参加してましたっけ？」
「………あ」
咲耶ちゃんは立ち止まって顎に手を当て、
一生懸命思い出そうとしている。
可憐はその顔をずっと見てました。
でも、咲耶ちゃんの可憐への気持ちがわかりません…。
「なんで、私を見てるの？」
「ぽぽぽ」
「人のネタ使わないっ！」
毎年、皆で集まって、綺麗な他の姉妹たちを見て、
皆で料理を食べて、サンタさんにプレゼントを頼んで、
可憐を除いてプレゼントを交換して……一緒に寝て
「勝手にイベントを増やさないでくれる」
可憐が喋ってるわけじゃないのに、
ところどころ咲耶ちゃんが思考を読んでる気がする…。
「あんたが涎垂らしながら変な顔してるからよ」
「え？」
「………よだれ」
「あっ」
「………ところで…さっきまで、あんたお兄様のこと全然考えてなかったでしょ…」
「はい」
二人でじゃれあってるところへ、聞き慣れた声が届いてきました。
「あれなんかどうデスか？」
「えぇ〜、私がもらっちゃったらどうすんのよ！」
「鈴凛ちゃんに四葉ちゃんじゃない！」
咲耶ちゃんが声の主を見つけて、名前を呼びました。
二人はこちらに気がつき、歩み寄ってきました。
でも、可憐をみるとちょっとひいていました…。
「咲耶ちゃんじゃない」
「プレゼント探しデスか？」
やっぱり二人とも、可憐のこと放置プレイですか…。
でも、何で……コスプレショップの前にいるの？
…探偵、服…？
と、四葉ちゃんがさっきより離れた位置で待ってました。
咲耶ちゃんは可憐のヨダレを拭きながらいいました。
「そうなんだけど…」
「「？？？」」
「パーティーの途中にアニキのいる場所？」
「チェキ？」
咲耶ちゃんがさっき話そうとしてたことを聞きました。
鈴凛ちゃんと四葉ちゃんは互いに見つめ合って、何か考えています。
可憐もそれに加わろうとしましたが、咲耶ちゃんが止めました。
「あぁ…っと、多分それは…」
「えっとデスね…それは…」
二人とも照れてます…。
やっぱり可憐も参加したいな…。
「ほ、ほら兄チャマも何ｋ」
「やっぱり、可憐も見つめあいたい！」
「…デス」
「いや、たぶんアニｋ」
「ワケのわからないこと言ってないで黙って聞いてなさい！」
「…よ」
……今二人が何か言おうとしてなかった？
咲耶ちゃんのせいで聞こえなかったわ…。
もしかしたら可憐への愛の告白…!?
そうなのね！ だったら…、
「そうだ！ 今から家に行きましょう！」
「チェキッ!?」
「いや、急には無理！」
「皆！ 行くわよっ！」
「皆、こっちに避難！」
「いない…」
四葉ちゃんの家の前まで来ました。
でも、やっぱり咲耶ちゃんの避難って声が聞こえたと思ってたけど…
皆、いつの間にかいないみたい…。
凄い残念…。
…鈴凛ちゃんと四葉ちゃんも残念だったろうな…。
「仕方ないか…また明日来ましょ」
「(まだ来る気みたいよ)」
「(チェキ…)」
皆に逃げられたあと、可憐は一人町を歩いていました。
結局、あれから色々とお店を回ってみたけど、
今日はプレゼントを選ぶことができなかったなぁ。
プレゼントは選べなかったけど、
限定DVDBOXを買えましたから満足です。
秋葉の皆もそうだった見たいだけど、
可憐もずっと限定版のことを考えていました。
クリスマスパーティーのとき、一気に見てしまおうと思っていたのに…。
ふと気が付けば、もうヨダレで服はビショビショでした。
白い息もハァハァいってます。
だんだんと周りから人の姿も見えなくなってきました。
ふと、ショーウィンドウに飾られている展示用のサンタさんが目にとまりました。
サンタ…か。
そういえばあのコスプレショップってサンタさん売ってるのかな？
可憐はいつも白雪ちゃんの衣装を拝借して…。
サンタ……は、もしかして!?
「あ！ 可憐ちゃんだ！」
「え？」
ずっと妄想をしていて、うつむき気味だった可憐の前に、
いつの間にか雛子ちゃんがいました。
「雛子ちゃん!? どうしてこんな時間にここに？」
「んっとね、雛、花穂ちゃんと一緒に遊んでたらね、いつの間にかこんなに遅くなっちゃったの…」
「そうなんだ。でも、ダメよ早く帰らないと」
「うん……可憐ちゃんなんか少し目が恐い…」
雛子ちゃんが恐がらないように、優しい口調で言ったつもりだったけど…
表情は隠しきれなかったみたい…。
雛子ちゃんは帰りが遅くなったことに反省しているのか、
声が少し沈んでいます……たぶん。
「可憐ちゃん……どーしたの(その服)？」
「可憐は……可憐は列に並んでたら遅くなっちゃった」
「何の？」
「これのですよ！」
可憐は誇らしげに限定BOXを見せました。
雛子ちゃんは何時からのアニメかを聞いて聞いてきましたけど、
雛子ちゃんにはまだ早いので、別の深夜帯のアニメを教えました。
その後、可憐は雛子ちゃんをつれて一緒に帰りました。
途中雛子ちゃんが歌いだした歌に少し萌えたけど、
さっきまでのムラムラした気持ちがそのときは倍増してました。
きっと、そういうものなのかもしれません…。
お兄ちゃんは、きっとクリスマスパーティーをやるための準備をしてくれて、
きっと…皆がプレゼントを交換してるときに、
可憐にゆっくり品(妹)定めをさせてくれているのかもしれません。
皆と一緒にいるときの楽しい気持ち…それをお兄ちゃんはくれてるのかもしれません。
でも、今年はきっと咲耶ちゃんと一緒に……
(12月24日)
「可憐ちゃん！」
「あっ！ 咲耶ちゃん(///)」
「何で出会い頭に照れてるの？」
可憐が今年のパーティーをする場所に行っている途中、
咲耶ちゃんが声をかけてくれました。
「ねぇ、結局プレゼントは何にしたの？」
「それは…秘密です」
「けち」
「じゃあ、咲耶ちゃんは教えてくれますか？」
「それは…秘密」
「もう…照れ屋さんなんだから！」
「何でそんなフレンドリーなの今日？」
そんな会話を交わしながら、パーティー会場までの道を歩いていました。
すると…
「こっちデス、鈴凛ちゃん」
「ちょっと待って」
と、言う声が聞こえてきた。
可憐は咲耶ちゃんの顔を見つめて、
「あんた…私を無駄に見てるの、これで何回目よ？」
「えへ」
咲耶ちゃんは可憐を無視して声のした場所を探していました。
その時、可憐の四葉ちゃんセンサーが路地裏に反応しました。
でも、あっちは可憐とは逆方向じゃ…。
「あんた鈴凛ちゃんに改造されたの…？」
咲耶ちゃんにもわからないみたいで、
可憐の秘密が1つ増えちゃいました。
咲耶ちゃんが可憐の手をひいて走り出しました。
そんな…咲耶ちゃんって大胆…。
そして、可憐がその先で見たものは…
「えっと、四葉のチェキによると可憐チャマの今年のターゲットは咲耶チャマデス」
「私の調査でもね…」
と、紙を取り出し、
可憐と咲耶ちゃんの名前を確認している二人と、
それを真剣に聞いている可憐の敵…。
それを見た咲耶ちゃんが、どういうことかわからなくて、
可憐に少し声を荒げて言いました。
「ど、どういうことなの、可憐ちゃん!?」
「フフ…」
「サンタさんとトナカイさんの服を用意してます！」
「って、こんな終わりかたさせるかっ!!」
バキッッッッ!!!
グシャァッッ!!
「い、痛いです…」
あとがき
どうも啓-kei-です。
突然ですが、クリスマスっていつからこんなお祭りになってしまったのですか？
ビバ、キリスト？
またまた可憐さんが暴走してます。
…咲耶さんたちは秋葉に行ってたのでしょうか？って雰囲気ですよね…。
僕の中で可憐の飼い主は咲耶です。
暴走可憐をとめる咲耶…。
前にある人から戦闘シーンのご要望がありました、これはまだまだ戦闘じゃないですよね…。
各々のキャラの性格や飼い主とかいう関係にもツッコミどころ満載ですが、感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。
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fairytale@mx91.tiki.ne.jp
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