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神無月天使の憂鬱

作者:啓-kei-さん

  雲ひとつない澄み切った青空。
  今日の降水率0%。
  小鳥のさえずりが聞こえる。
  今日の占い乙女座は絶好調。
「う〜ん……いい朝!」
  かるく伸びをひとつ。
  可憐、今日はとってもいいことがありそうな気がします。
「…これで、お兄ちゃんに会えたら…もっといいのにな…」
  でも、あまり欲を出すと、折角の運勢が逃げちゃいそうですね。
  こんな日は、自然といいことが起こるはずだから、ね。
  …そうだ! こういうときはお散歩にでも行きましょう。



  公園に来てみました。
ポカポカしてて、気持ちがいいです。
「あら?」
  するとベンチに見慣れた姿が座っていました。
  あれは……衛ちゃん?
  どうしたのかな? …何だかちょっとうつむいてて、元気がないみたいだけど?
「衛ちゃん?」
「えっ? …可憐ちゃん?」
「どうかしたの? 何か元気がないように見えるけど…」
「え……う、ん…まぁ…」
  声をかけると、衛ちゃんは少し笑みを浮かべて可憐のほうを見たけど、すぐに少し暗い顔をした。
  やっぱり可憐の思った通り、元気がないみたいですね衛ちゃん…。
  でも…確か今日は衛ちゃんの……
「はぁ…」
「衛ちゃん…。何かあったの? 可憐でよかったら、話してみて下さい」
「うん…実は昨日、学校でね…」


 (回想中〜昨日の学校にて〜1)

「………」
「………」
「………………」
「……………衛ちゃん」
「えっ?」
「回想するのはいいけど…喋ってくれないと、可憐、全然わからないんだけど…」
「あっ! そうか!!」
「気付いてなかったのっ!?」


 (回想中〜昨日の学校にて〜2)

「衛ちゃんって、運動好きだよね」
「うん」
「でも、球技が苦手だよね」
「うん」


 (回想終了〜現在〜1)

「って、ことなんだ…」
「…え?」
「どうかしたの?」
「ごめんなさい…可憐には何を悩んでるのかわからなかったんだけど…?」
「あれ? そうなの?」


 (回想中〜昨日の学校にて〜3)

「衛ちゃんって、運動好きだよね」
「うん」
「でも、球技が苦手だよね」
「うん」


 (回想終了〜現在〜2)

「って、ことなんだ…」
「…え?」
「どうかしたの?」
「ごめんなさい…可憐にはデジャヴにしか思えなっかたんだけど…?」
「あれ? そうなの?」


 (回想ちゅ…
「ちょ、ちょっと待って!! も、もういいですよ!」
「あれ? そうなの?」
  と、とりあえず…
  たぶん球技が苦手なことを悩んでいる…はず…?
  衛ちゃんをどうにかして、元気付けてあげないと…。
  でも、どうしよう……?
「えっと…衛ちゃん!」
「え?」
「大丈夫ですよ! 誰にだって苦手なものがあるものです」
「…うん?」
  何か…歯切れの悪い返事ですね…でも、可憐の思っていることを伝えないと…!
「衛ちゃんは球技以外なら十分できるし、今まで出来なくても困ったことないでしょう?」
「……何が?」
「だからそんなに悩むことは…あれ?」
  ちょっと話が…かみ合ってない…ですか…?
  もしかしたら…可憐の説得がヘタだったのかしら…?
「何?」
「悩みがあるの…ですよね?」
「うん」
「球技…のことではないのですか…?」
「なんで?」
「いえ…だって…」
  あの回想だとそうだとしか思えないんだけど…?
  何か暗号だったのかしら?
  だって、会話中には他には何も…?
「……う〜ん?」
「実はね…」
「は、はいっ?」
「名前が思い出せないんだ」
「は?」
「だから名前だよ」
「…誰の?」
「回想中にでてきた人の」
「………」
  そんなこと知るかーーっ!!
  で、でも衛ちゃんは本気で悩んでるみたいだし…。
「さてと…可憐ちゃんをからかうのはこのくらいにしといて…」
「からかってたんですかっ!?」
  って、本気で悩んだのは可憐のほうですか…。


「コレ、見てよ」
「何ですか?」
  衛ちゃんは凄く困った顔をしながら、ズボンのポケットを探り始めました。
  そして小さな長方形の紙切れを取り出しながら言いました。
「こんなものが送られてきたんだ」
「これは…チケット?」
「そうなんだ…これスポーツパークとかジムとかの無料入場券なんだ」
「そうなんですか?」
「うん、しかも10枚も送られてきたんだ…」
「10枚も…?」
  10枚って数に何か違和感を感じるんだけど…。
  そういえば、最近そんな話を聞いたことが…。
「これってストーカーってやつかなぁ?」
「え?」
「ほら、よく何か送りつけたりする人がいるっていうじゃない」
「えっと…それは…」
「だとしたらどうしようっ!? ボク、襲われちゃうのかなっ?」
「いや…たぶんそれは大丈夫だと…思います…」
「何でそう言い切れるの?」
「それは…」
  これは…言っていいのかな?
  たぶんこれは皆から衛ちゃんへの誕生日プレゼントだと思います…。
  偶然にも、皆のプレゼントが同じようなものになってしまったのですね…。
  でも、衛ちゃんは気付いてないみたいだし…。
  可憐も皆から何も聞いてないし…。
「そういえば、今朝もこんなものが届いたんだけど…」
  衛ちゃんは、またズボンのポケットから、封筒のようなものを取り出しながら言いました。
「まだ開けてないんだけど…開けてみようか?」
  衛ちゃんは、封筒の周りを確認した後、封を開けて中を確認すると…
「あれぇ? これって…またスポーツジムの無料入場券だよっ!」
「えっ!?」
  どういうことでしょうか…?
  最初の10枚なら可憐に心当たりがあるんですが…。
「あら?」
  封筒の中にまだ何か入ってるみたい…。
  困惑する衛ちゃんから封筒を借りて、よく中を確認すると…
  紙切れのようなものが入っていました。
  それには、大きくこう書いてありました。

『萌へぇ〜、ボクっ子萌へぇ〜』

「…………」
「どうしたの、可憐ちゃん?」
  可憐の刻が一瞬止まりました…。
  こ、これってまさか…
  本当にストー…
「可憐ちゃん!」
「え!? は、はい?」
「どうかしたの?」
「あっ、いえ…何でも…」
「?」
  不思議そうな顔をしている衛ちゃんを尻目に、可憐は不安でいっぱいでした。
  ど、どうしよう…もしかしたら本当に衛ちゃんが襲われちゃう…。
  衛ちゃんに言ったほうがいいのかな…でも…
「何をしてるんですの?」
「え!?」
  突然、声をかけられて振り返ると、白雪ちゃんと四葉ちゃんと亜里亜ちゃんがいました。
  なんというか…珍しい組み合…い、いえ何でもないです。
「三人ともおはよう」
「おはようございます、衛チャマ、可憐チャマ」
「萌へ萌へぇ〜…」
「おはようございます、ですの」
  犯人発見!!?
  明らかにおかしい人がいますっ!?
「どうかしたんですの、可憐ちゃん?」
「皆何で普通なの!?」
「何が?」
「え?」
「変な可憐ちゃん」
  変なのはアンタらだーーーっ!!
  で、でも皆本当に普通にしてるし…
「…大丈夫?」
「亜里亜ちゃん…」
  アンタのせいだーーーっ!!
  いつからそんなキャラになってしまったの亜里亜ちゃん!?
「何を持ってるデスか?」
「あ、これ? これスポーツパークとかの入場券なんだ」
「なんでそんなに持ってるんですの?」
「うん…実は10枚も送られてきたんだ…」
  何で皆普通に会話できるの…?
  可憐がおかしいのでしょうか?
  可憐が色んな考えを廻らせている間に、衛ちゃんは皆に今までのことを説明していました。
「ムム…これは事件の香りがします!」
「というか、ストーカーですの」
「白雪ちゃん…そんなハッキリと…」
「萌へぇ〜…?」
「それしか言えないの!? しかも何で疑問形!?」
「どうしたの、可憐ちゃん?」
「い、いえ…」
  もう、可憐は諦めました…。
  どうやら可憐がおかしいみたいです…。
「それと…さっきもう1枚…」
「ムム…ますます事件の香りがします!」
「というか、ストーカーですの」
「ハァハァ…?」
「なんなんですか…」
「それより、これ…封筒のここに小さく何か書いてあるんですの」
「え?」
  そういえば…何で気付かなかったのかしら?
  えっと……

『衛チャマへ』

「アンタかいっ!?」
「あっ! 四葉でしたか」
「忘れてたのっ!?」
  ちょっと照れながら四葉ちゃんは言いました。
  何で忘れるのこんなこと…?
「何だぁ四葉ちゃんでしたの」
「ならいいや」
「許しちゃうのっ!?」
「萌へぇ…」
「………」
  あんなに悩んでたのに、そんなあっさりと…。
  それよりも、四葉ちゃん…何であんなこと書いてたの?
「じゃあ、この10枚も…」
「それは違います」
「え?」
「絶対に四葉は違います」
  なら、これは一体…?
  やっぱり、皆からのプレゼントなのかしら?
  まさか、白雪ちゃんと亜里亜ちゃんまで自分が送ったことを忘れて…?
「そういえば、この10枚のチケットが入ってた封筒とかはないんですの?」
「あるよ」
  衛ちゃんは、ズボンのポケットから…っていくらでもでてきますね…。
「ほら」
  衛ちゃんは、可愛らしい薄いピンク色をした封筒を取り出しました。
  ………ピンク?
「あっ…これにも何か書いてある」
「チェキ? 何々?」

『衛ちゃんへ
    可憐より』

「…だそうデス」
「あっ!?」
  か、可憐でしたーーーーっ!!
  忘れてました……
「忘れてたんデスか?」
「ちっ、お前かよっ!」
「ごめんなさい、って何でそんなに対応が違うの!?」
「萎へぇ…」
「ぁぅ…」
  うう…何で可憐だけこんな扱いなんですか?
  あんなに一緒に考えてあげたのに……可憐が犯人でしたけど…。
「何で10枚も送ったんですの?」
「10月だからと、切りもいいし、10日以上も行ったら亜里亜ちゃんの誕生日の準備が出来ないじゃないですかっ!」
「「「……………」」」
「……そんな目で見ないでください…」
「…一緒に行くのぉ?」



  その後、皆は可憐を避けるように公園から去っていきました。
  何だか今日は騒がしい日でしたね……。
  あっ!? 確か、今日の乙女座の運勢は絶好調でしたね……。
  そういえば、今日は四葉ちゃんや衛ちゃんと朝からお話できて…
「フッ、ウフフフフ……」
「ママ、あのお姉ちゃん涎でてるよぉ?」
「見ちゃダメっ!」



「うっ!?」
「どうしたの、四葉ちゃん?」
「悪寒と共に嫌な思い出が…」
「?」









あとがき

どうも啓-kei-です。
突然ですが、微妙にシリーズ化してますね。
そして可憐は変た……暴走気味なキャラになってますね…。

色々な巨匠様の皆さんのアドバイスを参考にしながら、新しい作品を書いています。
ですが、基本はギャグですね…。いつか感動できる作品を書いてみたいものです。
一応、これ、BDSSですから。

各々のキャラの性格や会話主体の文章などにツッコミどころ満載ですが、厳格な感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。


啓-kei-さんへの感想はこのアドレスへ
fairytale@mx91.tiki.ne.jp

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