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輝く星とペンダント

作者:啓-kei-さん

『恋愛運から金運・友情まで、あなたの運を上昇させるおまじない!
 恋愛成就・一攫千金も夢じゃない! このペンダントを身に付け…』

  いつも買ってる雑誌に載ってたこの記事。
  普段なら怪しい記事でも今はすがりたいほどの金欠。
  最近、欲しいパーツが多すぎて困ってたんだよね…。
  ってことで…
「買っちゃった…」
  お金ないのに買ってしまった…。
  で、でも! これで一攫千金なら安くないっ? 安い…よね?
  安い安い!! …はい、自分の説得終了。

『このペンダントを身に付け、星に願いをそっと託すだけ!』

「星…」
  星に願いをってかなり乙女チックじゃない!
  ペンダントもあるし…。
  あとは、できるだけ星が綺麗に見える場所がいいよね……。

『今 人気のデートスポット特集!』

「デート…」
  確か、金運だけじゃなくて恋愛運も……。
「………よし」
  場所決定!
  ペンダントもOK!
  あとは…
「待っててね…アニキ…!」



 (翌日〜アニキ宅前〜)

「えぇーー!? いないのっ!?」
「はいデス」
  朝一番にアニキを誘いにアニキの家まで来たのに……。
  今日は、アニキは他の友達と遊びに行ったんだって…。
「ところで…ここで四葉ちゃんは何をしてるの?」
「四葉デスか? 四葉は兄チャマと遊ぼうと思って来たけど、兄チャマは先にお約束があったデスね…」
「…で、何してるの?」
  四葉ちゃんはちょっと照れたように下を向いて、
「放置プレイを堪能中」
「いや、それヤバイよっ!?」
「兄チャマが四葉よりも別の女を選ぶなんてありえないデス! だからこれは兄チャマの愛情表現デス!」
「いや、もっと別の解釈があるよねっ!? ………女?」
「はいデス。女が誘いに来たデス」

 がーーーんっ!?

「ア、アニキに女……」
  アニキに彼女がいるなんて…。
  確かに…普通に考えて、アニキに想いを寄せない人が全くいないなんて考えにくいけど…。
  まさか、もう付き合ってる人がいるなんて…。
「で、放置プレイを堪能しながら考えたデスけど…」
「…なにを?」
「どうやって咲耶チャマのクツに画鋲をいれるか」
「咲耶ちゃんかいっ!! てか、画鋲って地味っ!?」

「鈴凛チャマは何しに来たデスか?」
「私は……」
「四葉の推理によると…」
「よると?」
「資金援助をしてくれない兄チャマを押し倒していかがわしい行為をしたあと兄チャマを家畜のように鈴凛チャマの○○ペットとして…」
「ストッーーープっ!! 裏にいきそうな下ネタ禁止っ!!」
「友達とメールで『今年はオリンピックで、日本は何個禁を取れるか?』ってやり取りしてたデス!!」
「それは作者っ!!」
「『18でも危ないのに20超えたらマニアックだよね?』ってやり取りも…」
「それも作者だよっ!!」
「ペンダント着けてますね?」
「いきなり普通の会話っ!?」
「結局、鈴凛チャマは何しに来たデスか?」
「………」
  アニキ…いないんだよね。
  でも…当初の予定は金運上昇だし…。
「…四葉ちゃん」
「はい?」
「一緒に星を見に行かない?」



 (同日午後〜どこかの山前〜)

「……………」
「……………」
  私と四葉ちゃんは、今人気のデートスポットという山の前まで来たんだけど…。
  どこから登るのかわからないくらい草木が所狭しと生え、長い間人が通った形跡もなく、
  生い茂る草木の中にある木で出来た立て札も腐りかけていた…。

『熊出没注意』

  しかもこんなこと書いてるし…。
  っていうか、どう注意すればいいの?
「鈴凛チャマ…」
「何?」
「こんな人気のないところに四葉を連れてきて…一体四葉に何をするつもりデスかっ!?」
「何もしないよっ!!」
  と、とりあえず…雑誌に載るくらいだから大丈夫…なはず…。
「…行こう、四葉ちゃん」


 (数分後)
  生い茂る草木に足を取られながらも、確実に頂上に……近づいているはず…。
「鈴凛チャマ…」
「何?」
「こんな奥まで連れ込んで…一体四葉に何をするつもりデスか!?」
「何もしないってっ!」


 (更に数分後)
  段々と、草木も高くなってきて、周囲も薄暗くなってきた…。
「鈴凛チャマ…」
「何?」
「もう好きにしていいデスから帰りませんか(泣)」
「…私も帰りたいけど」
  振り返ると……草木しか見えない…。
  何かずっとデジャブな感覚…。


 (数十分後)
  足元が全く見えなくなってきた。私は四葉ちゃんと離れないように、しっかりと手をつないでいた。
「鈴凛チャマ…」
「…何?」
「人は遭難するなど生命に関わる危機的状況が近づくと子孫を残そうという考えが生まれ、愛・恋など関係無しにいかがわしい行為を求めるらしいデスが…」
「何処の情報なのよ、それっ?」
「四葉と鈴凛チャマじゃ無理デスゥ…(涙)」
「何で今日はそんなに下ネタ多様なのっ!?」
  それよりも…。
  私は落ち着いて周りを見渡してみた…。
  木 草 木 草 木…
  やっぱりこれって…
「遭難…?」


 (更に数十分後)
  鬱蒼と薄暗い草木の間を延々と登り続けていた。
  そして、急に視界の開けた場所に出てきた。
「やっと出られた…」
「はう…着きましたかぁ…?」
『ぐる…』
  ぐる?
  お腹の音とは…ちょっと違うみたいだけど…。
「何か言った? 四葉ちゃん…」
「何も言ってませんけど?」
『ぐるる…』
「…………」
「…………」
  ゆっくりと後ろを振り返ってみる……と…、
『ぐる…』
  体は太く、四肢は短く、毛は鬱蒼と生い茂る草木よりもうもうとしている黒い毛。
  目は鋭く、口から滴り落ちる唾液がその荒々しさを強調している。
「「熊ーーーっ!!?」」
「の、のん気に特徴を説明している場合じゃないよっ! どどど、どうしようっ?」
「死んだ振りデス、鈴凛チャマ!!」
「え!? でもそれって意味無いって聞いたことあるけど…?」
「それは完璧に死んだ振りが出来てないからデス!」
「完璧ってっ?」
「まず、テニスボールなどの球を脇の下にいれて強く脇を締め、球を挟んでない腕がお腹の下にくるようにうつ伏せに寝そべる。すると、球を挟んでいて一時的に脈が止まっている腕のほうしか確認できないので、死んでいると勘違いしてしまうのデス!!」
「熊が脈を調べるかっ!!」
『ぐる!!』
「わわっ!? あの長い説明の間、何も行動してなかった熊が怒ったっ!!?」
「鈴凛チャマ!!」
「何っ?」
「ここは四葉に任せて、鈴凛チャマは先に…!!」
「よ、四葉ちゃん!?」
「四葉が山を登りきるから、鈴凛チャマは先に熊と戦うデス!!」
「私が先かいっ!!」
『……』
  何か熊も呆れて立ち尽くしちゃってるよ…。
  ……チャンスじゃん!
「四葉ちゃん!」
  と、振り返ると四葉ちゃんは…、
「何デスか〜〜〜…?」
  すでに逃げていた。
  …呆然としてたんじゃなくて、私を標的に決めただけだったのねっ!?
「ま、待って四葉ちゃんっ!!」
『ぐぉーーーっ!』
  急いで四葉ちゃんを追いかけ始めた私に熊が反応した。
「やっぱりーーっ!?」


  熊の足は結構速いというけど、鬱蒼と生い茂る草木のおかげか、まだ熊との距離はあった。
  でもこのままだといずれ捕まっちゃう!!
  どうにかしないとっ…!
「鈴凛チャマ!!」
「四葉ちゃん!?」
「こっちデスっ!」
  先に逃げていたはずの四葉ちゃんが薄暗い森の中、体をいっぱいに使って私を呼んでいた。
  私は迷わず四葉ちゃんに駆け寄ると、
「こっちに何かあるのっ?」
「崖デス! うまく誘い込んで、熊を落としてやりましょう!!」
「わかった!」
  相変わらず熊は追いかけてきている。
  私たちは走りながら作戦を決め、全速で崖のあるという場所に向かい、
  そして………

  ……二人して落ちた…。

「な、何でぇ〜〜…っ!?」
「もうちょっと先だと思ったのデスが…」
「ちゃんと覚えてなさいよっ!!」
  な、なんてお約束な展開なの…。
  お約束な展開ほど厄介なものはないのに……。
  まだ、金運も……アニキとのこともお願いしてないのに…。

 ガンッ!!

「痛いデスっ!?」
「な、何っ?」
  私たちは何か固いものに当たり、そして何故かさっきまで落ちていたはずの崖を上へ昇っていた。
「昇天現象デスか?」
「…何それ? でもどうして……?」
  私は、今自分がいる場所を恐る恐る確認してみた。
  箱? しかもこのケーブルみたいなものは…?
「ゴンドラ…?」
「ロープウェー…デスか?」
  ゆっくりと下を覗いて見ると、中に乗っていたカップルがビックリしたようにこっちを見ていた。
「こんな乗り物が…」
「あったデスねぇ…」
  私たちは抱き合うようにその場で力なく寄り添った。



 (〜頂上〜)

  当たりはすっかり暗くなっていた。
  私たちは、ロープウェーを管理しているおじさんにこっぴどく怒られた後、
  多くのカップルの間を通り抜けて、星のよく見える人気の少ない場所で腰を落ち着かせていた。
「疲れましたねぇ…」
「そーだねぇ…」
  開口一番、四葉ちゃんが言った。
  確かに疲れた…それに…
「カップルだらけデスねぇ…」
「そーだねぇ…」
  さすが今人気のデートスポット…。
  明らかに私たちは浮いていた。
「ところで鈴凛チャマ」
「何?」
「ここに何しに来たのデスか?」
「それは…」
「ずっと気になってたのデスが、そのペンダントって雑誌に載ってるやつデスよね?」
「ギクっ!?」
「鈴凛チャマ…?」
「実は……金運を…ちょっと…」
「………」
「ごめん…」
「まぁ、楽しかったからいいデスけどね」
「四葉ちゃん…」
「……クフフフフ」
「ぷっ…はははは」
  満天の夜空に輝く星々に照らせれて、四葉ちゃんの笑顔がとても眩しかった。
  二人でひとしきり笑いあった後、私は四葉ちゃんの横顔を見て想った。

  そして星に…そっと願いを…
(ずっと…ずっとこうして四葉ちゃんと一緒に笑い合えますように…)



 (後日〜咲耶宅〜)

「痛ーーっ!!?」
「どうしたの、咲耶ちゃん?」
「見てよ可憐ちゃん! クツに画鋲が入ってたのよっ!!」
「え…? 画鋲?」









あとがき

どうも啓-kei-です。
突然ですが、四葉の次の次に鈴凛が大好きです。
でも鈴凛に資金援助を頼まれても、僕は払えません。
貧乏ですから…(涙)

ギャグ系が好きなのですが、ある程度ストーリーを持たせようとすると中途半端になってしまいます…。
ほんわかした雰囲気のストーリーも好きなのですが…、これは…何でしょう?

各々のキャラの性格や話の展開にツッコミどころ満載ですが、感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。


啓-kei-さんへの感想はこのアドレスへ
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