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《 〜まえがき〜
どうも啓−kei−です。
今回も"まえがき"です。
過去最長の作品です。そして結局エロいです。
そっち系が嫌いな人は読まないほうが……(死)
でも、裏SSみたいなのではない…ですよね師匠?

何とかSSで四コマふうにできないかなって思ったんですけど…
ま、無理ですね。……頑張れ、僕。
感想・(間接的な)批判があれば、ぜひ送っていただければ嬉しいです。
…もちろん"まえがき"のではなく本文の、です。 》


山に登ろう

作者:啓-kei-さん


#1,山に登ろうよ

「山登り?」
「そう、山登り。明日皆でハイキング気分で行こうよ!」
「それは、天気のいい土曜の朝に自転車で軽快に風を切りながら山の傾斜を下りている今、思いついたのか?
 わざわざ土曜の朝に駆り出されてキツイ山の傾斜を登った後の台詞としては中々いい考えだな」
「でしょ? 今日はサイクリングがメインであにぃと二人きりで来たけど、
 たまには皆で山に登るのも悪くないよね?」
「…………別に構わないけど、皆も都合があるだろう? 勝手に決めるのはどうかと思うぞ」
「大丈夫だよ、もう皆には3日前に言ってあるから」
「あぁ、つまり俺だけ仲間はずれだったって事ね」
「あにぃ大丈夫だよ。ボクもこれから準備するつもりだから」
「提案者が直前まで何の準備もなしかい! しかも何で余裕こいてサイクリングしてんだよ!!」
「それじゃボクこれから準備するから、あにぃまた明日ね!」
「そんな屈託のない(てか悪びれる様子もない)笑顔で手を振りながら勝手に一人で帰んなよ…。
 はぁ、仕方ない全員イベントなら参加しないとダメなんだろうな…。
 帰って準備でもするか……何しにサイクリングにきたのかわけわかんねーけど…。
 ………てか何処の山登るんだ?」


#2,妹達の準備(1)『冗談?』

「とりあえず登山店に来てみたけど……山登りって何を持っていけばいいのかしら?
 それよりも何処に登るのかもわからないし、こんなに専門的なもの必要なのかしら?」
「咲耶ちゃん、見てください」
「何かあったの、春歌ちゃん?」
「熊避けの鈴なんてありますよ」
「本当にあるんだ、こんなの…。でもさすがにこんなものが必要な山に登るわけないわよね。
 ねぇ、春歌ちゃん?」
「そうですわ。例え現れたとしても、私が返り討ちにしてくれますわ」
「……冗談よね?」


#3,妹達の準備(2)『誰もいないから…』

「ねぇ、鈴凛ちゃん…」
「ん〜? な〜に、可憐ちゃん?」
「何で山に登るのに、電気街に来てるんですか?」
「ちっちっち、甘いね可憐ちゃん。まるで素人、山のことがわかってないよ。
 いい? 山ってのは危険がいっぱいなんだよ。
 蛇とか蜂とかもいれば熊もいるかもしれない。
 暗くなってくると道が全く見えないし、誰も助けてくれないんだよ?
 だからそんなときに役に立つのは、文明の力じゃない」
「う〜ん…言ってることはわからないでもないですが……」
「それに、誰もいないって事は、少々発明に失敗して爆発なんかしても誰も怪我しないし」
「一体何をしに行くつもりなの…?」
「だって山なんか登っても得るものなんて何もないじゃん。
 私は精神論に興味がないんだよねぇ〜」
「鈴凛ちゃんが引きこもりの道を歩み始めてる…」


#4,妹達の準備(3)『○頭巾ちゃん』

「ハムにソーセージに…あっ、デザートのこと忘れてましたの!
 明日は姫の特製お弁当で兄さまをメロメロにしちゃうんですの、むふん」
「凄い数の食材ですね」
「鞠絵ちゃんはもう準備出来ましたの?」
「はい。わたくしは準備万端ですよ。
 明日のことが楽しみで衛ちゃんから聞いてからすぐに準備に取り掛かっちゃたんです」
「そうなんですの? 凄い楽しみにしてるんですのね。
 …あ、そういえば鞠絵ちゃん、お医者様の許可は取ってありますの?」
「はい。ちゃんとミカエルをおいてきましたから」
「え?」

〜鞠絵の療養所にて〜
「ねぇねぇ、今日の鞠絵お姉ちゃんのお口が大きいのは何で?」
「………くぅ〜ん……」


#5,妹達の準備(4)『巨大な…』

「う〜む…どうしたらいいのデスか…」
「どうかしたの四葉ちゃん?」
「あ、花穂チャマ。実は四葉は今、重大な事件に直面しているのデス」
「重大な事件? ……コンビニで?」
「ちっちっち、花穂チャマ、世の中には意外なところにミステリーが隠れているのよ。
 それを解明・解決するために四葉のような名探偵がいるの!」
「そ、そうなんだ〜。それで今四葉ちゃんが悩んでるのはなんで?」
「おやつを300円以内でどう有効活用するかデス」
「え?」
「四葉のだ〜い好きなドーナツを買うと一気に予算が無くなってしまうのデス。
 だからドーナツを諦めて、他の小物にしようかと思ったのデスが、
 他にも魅力的なおやつがたくさんあるのデスよ…」
「おやつって300円以内だったの?」
「違いマスか?」
「う〜ん…どうだったっけ?」
「とにかく、これは四葉と巨大な謎組織との一騎打ちなの」
「謎組織!?」
「そうデスよ、花穂チャマ!
 四葉たちが何気なく買っているおやつにも謎の組織が絡んでる可能性が十分に考えられるのデス。
 うかうかしてるとやつらの思い通りになってしまうのデス!!」
「ど、どうしよう…。花穂、今まで何も考えてなかったよぉ…」
「花穂チャマ安心してクダサイ! 四葉も今まで気にしてなかったから大丈夫デス!」
「……え?」


#6,妹達の準備(5)『名所といわれる山の周辺にも…』

「雛子ちゃんたちはもう明日の準備は終わってるのかい…?」
「うん! ヒナ、ちゃんとリュックサックとおやつと…あっ、お人形さんも準備できてるよ!」
「そう…亜里亜ちゃんはどうかな?」
「亜里亜は、一人で準備してたら、じいやがダメですって言うばっかりで、じいやが用意してるの」
「何をダメだって言われたんだい?」
「にいやと一緒に食べるお菓子と皆と一緒に食べるお菓子と、あと亜里亜が食べるお菓子と…」
「……なるほど、ね…」
「千影ちゃんは何持ってくの?」
「私…? 私は…何も持っていかないよ…」
「何で? 何で何も持っていかないの?」
「これは内緒…なんだけどね…雛子ちゃんたちには特別に教えてあげるよ…」
「ないしょのしみつ?」
「……最近は何処でも近くにコンビニエンスストアというのがあってだね…」
「「???」」


#7,妹達の準備(6)『冗談じゃないの?』

「おっきなカバンねぇ…。登山家の人って皆こんなの背負ってるのかしら?」
「テレビなんかではよくそういうカバンを背負った人を見ますわね」
「皆、同じ様な恰好してるわよね。やっぱり、登山に適したファッションってあるのね」
「そうですね。そういう意味では武芸やスポーツと同じで、登山の正装という感じでしょうか」
「山でお兄様をメロメロに出来ちゃう服装はないってことか…。
 でもお兄様の登山の恰好ってのもちょっと興味あるかも。
 きっとどんな危険な事だってお兄様が助けてくれるのよね……」
「そうですわ。兄君さまの凛々しいお姿を明日一日中見られるなんって…ぽぽぽ。
 きっと兄君さまでしたらわたくし達の危険も絶対に助けてくれますわ………
 相手は強くて大きいですからわたくし一人では無理かもしれませんからね」
「やっぱり熊なのっ!?」


#8,妹達の準備(7)『ピアノウーマン』

「ねぇ可憐ちゃん。可憐ちゃんなら山の中で何がしたい?」
「う〜ん…山の中で、ですか?」
「山ならどんな場所でもいいよ」
「だったら、可憐は、とっても見晴らしのいい山の頂上で、勇壮な景色の中でピアノ弾いてみたいなぁ。
 お客さんは山に住む動物さんたちで、あっ、お兄ちゃんも呼びたいなぁ。
 そんなところでピアノ弾けたらきっと気持ちいいだろうな…」
「いいねそれ! 私も一口かませてよ!」
「え? ひとくち?」
「え? もちろん有料でしょ、それ? たんまり稼げそう…」
「……動物さんたちはお金持ってないですよ」


#9,妹達の準備(8)『登山家は大飯ぐらい』

「それにしても本当にたくさん買ってますね。どんなお弁当を作るんですか?」
「だいたいいつも通りなんですけど、ところどころアレンジしますけど」
「いつもの料理のアレンジでコレだけの食材を使うんですか?」
「もちろんそんなことはないんですのよ」
「え? それじゃ何に?」
「カバンがおっきいからまだ悩んでるんですけど…」
「え? そんなにたくさん作るんですか…?」
「え? よくテレビで大きなカバン持ってるのってお弁当が入ってるんじゃないんですの?」


#10,妹達の準備(9)『登山の心得?』

「四葉ちゃんは明日の準備できてるの?」
「オフコース。四葉は今すぐにでもいけマスよ」
「例えば何を持ってくの?」
「ノ−トに鉛筆とかデス。明日は兄チャマのことをチェキしまくっちゃうのよ」
「せっかく皆と一緒に山に行くのに、いつもと同じだね…」
「ノンノン、やっぱり花穂チャマは甘すぎマス。山だからこそいつもと違う新鮮な兄チャマをチェキできるの。
 山は人を解放的にしマス。だから明日は兄チャマの真実の姿が見られる可能性が大なのデス!」
「解放的? 花穂よくわからないよ…」
「つまり、いつもと同じ事をしてもいつもと違う発見がある、ということ」
「じゃあ花穂はお兄ちゃまの応援をすればいいの?」
「そうデス。花穂チャマの応援に山の新鮮な空気・自然・木漏れ日からなの微かな光……
 とにかく全部ひっくるめて花穂チャマのチアをより一層引き立ててくれる、
 大自然のバックグラウンドとなるのデス!」
「すご〜い! 花穂ワクワクしちゃうよ!」
「ただ、いつも通りのドジッ子は極力控えたほうがリアルに得策デス」
「き、気をつけるよ…」


#11,妹達の準備(10)『物知りちーちゃん』

「ねぇねぇ千影ちゃん。やまびこって何でおこるの?」
「…唐突だね…」
「やまびこぉ?」
「山彦っていうのはだね……簡単に言うと、
 山で大きな声を出すとその自分の出した声が遠くから同じように聞こえてくる現象なんだ」
「大きな声? じいやみたいな…? …じいやが二人もいるの?」
「いや、そうではないんだが…。自分の声が山にぶつかって反響するのが原因なんだ」
「なんではんきょーするの?」
「えっとだね……人や動物が発する声はだね…喉にある声帯といわれる発声器官を使ってだね…
 肺から出た空気がその声帯を通る時に声門といわれる空気の通り道をだね……」
「えっと、えっと…ヒナよくわからないよ?」
「じいやは、どこにいるの?」
「えっと…だから…その…」


#12,兄の準備『シスコン』

「さて、と。こんなもんでいいだろう。
 山を登るって言っても、休みは明日の日曜だけだからな、一応。
 そんな遠くの山には行けないし登らないだろ…たぶん。
 だから無駄なものは持たずに、動きやすい恰好で十分だろう。
 …一応何かあったときのために友達に伝言でも残しておいたほうがいいだろうか…?
 …大丈夫、大丈夫だと衛を信じよう……いやでもやっぱり……
 …それよりも皆はちゃんと用意できてるかな?
 可憐はちゃんと準備してるだろうな。山登ってるときはずっと俺にしがみついてそうだけどな…。
 花穂は…まぁ多分大丈夫だろう。山登ってるときに俺の応援を始めそうだが…。
 咲耶は問題な…いか? 可憐とは別の意味で俺にくっついてそうだな…。
 雛子は…誰かに手伝ってもらったかな? はしゃいで走り回ったりしそうだから気をつけないとな。
 鞠絵も明日はいけるのか。せっかく病院の許可が降りたんだ、無理させないようにしないと…。
 白雪は準備できてるのか? お弁当だけしか持ってこないって事はないよな?
 鈴凛は…やや心配だな…。機械任せな装備なんじゃないだろうな?
 千影は準備…まぁ大丈夫か。千影が山登りね……想像し難いな…。
 春歌は心配ないな。何かあっても助けてくれそうな気もするよ。
 四葉は…危ないかもしれない。チェキチェキ走り回らないといいけど…。
 亜里亜はじいやさんが何とかしてくれるだろう。…山のふもとで諦めそうだなぁ。
 そして衛…コイツがなぁ…。どこに行くか知ってるのは衛だけっぽいしな…。
 自分だけはきっちりしてきそうだけど…。
 ………心配になってきた。
 簡単に数人分の準備も代わりにしていったほうがいいかもしれないな…。
 あぁ…俺ってば兄バカ…」



#13,山登り当日『東北・中部・東北…どこか』

「遅いわね衛ちゃん…。自分が言ったくせに遅刻だなんて…」
「まぁまぁ、咲耶ちゃん。まだ5分ですし…」
「まだ5分じゃなくて、5分も遅刻してるのよ!」
「衛のやつ、一体何をやってんだか…。それよりも可憐」
「はい? なんですかお兄ちゃん?」
「昨日のメール、助かった。よく考えたら集合時間も集合場所も知らなかったもんな…」
「いえ。お兄ちゃんのお役に立てたならそれで…」
「それにしても遅いデスねぇ。四葉でも今朝は目覚ましよりも10秒遅く起きたのに…」
「それは完璧に目覚ましのおかげだな」
「お、センサーに反応あり。衛ちゃん、近いよ」
「お前は衛に何の装置をつけたんだ!?」
「ごめんごめん。皆待った?」
「遅いわよ衛ちゃん! まったく…」
「それで衛、これから何処に行くんだ?」
「岩手山!」
「岩手県かい!! 遠いわっ!! しかも結構標高高いぞ…」
「じゃあ恵那山」
「やっぱり遠いし!! てかえらいマイナーな山だな!」
「仕方ない、八甲田山で…」
「青森かよ! 東北に戻ってんじゃん! どうやって行くつもりだ!」
「あにぃはダ○ダメ○人だね。じゃあ、地図にも載っていない近場のオリジナルの山に登ろう」
「オリジナルとか言うなし…」


#14,山に登る前に『ひっきー』

「これアニキの分ね、はい」
「お、おう…。て、何だコレ?」
「パパラパッパパー! 鈴凛ちゃん特製携帯電話型トランシーバー!」
「なぜトランシーバー? しかも携帯電話型…」
「基本的に携帯だと山の中じゃ電波届かないじゃん(場所によりけり)。
 だから私が作った試作型トランシーバー。傍受防止機能を搭載してみたつもり。
 半径300M以内なら会話できるよ」
「半径300Mって…。ていうか誰が傍受するんだよ」
「まぁまぁ、世の中どんな引きこもりがいるかわからないからね」
「………鈴凛ちゃん」
「それよりも鈴凛ちゃんがソレを造る必要性があったのかしら?」
「これで誰かがはぐれても大丈夫ってことで」
「まぁ出来れば使うことがないことを祈りたいな」
「いや、私は使いた…」
「ん?」
「何でもないよ」
「?」



#15,山登ってます(1)『お・や・く・そ・く』

「なぜだ……」
「はぐれちゃったんですの…」
「登り始めるイベントも全部省略して皆バラバラかい…」
「ドキドキ…」
「ん? どうした白雪?」
「誰もいない山の中で皆とはぐれて、にいさまと二人きりですの…。
 とってもとっても萌(自主規制)な展開…むふん」
「はぁ、皆一緒だといいんだが…。あっ、そうだ鈴凛のトランシーバーがあったな。
 ……まさか本当に使うことになるとは……。ここがスイッチか?」
『ぽち』
「…………ん?」
『……………』
「おかしいな…ほかにボタンらしきものはないし…
 ……こんな時に失敗作かい…どうすんだよこれから…」
「ドキドキですのぉ〜」
「……ま、いっか」


#16,山登ってます(2)『ドジとチャージ』

「ココは何処デスか?」
「ふえ〜ん…お兄ちゃまぁ…」
「あれほどドジは禁止と言いマシタのに…」
「うう…花穂何かしたの?」
「……たぶん。いやそれよりもこんな時こそ鈴凛チャマのトランシーバーの出番デス!」
「そ、そうだね。ココがスイッチかな?」
『ポチ』
「……………」
「……………」
『……………』
「…………アレ?」
「…………スイッチ…間違えマシタか?」
『…………ゴフゥ! 電池を入れ替えてYO!』
「「うわぁっ!?」」
『Yo…』
「電池…切れ……なのかな?」
「チャージくらいしとくデス!」
「それよりも…」
「鈴凛チャマのセンスを疑いマス…」


#17,山登ってます(3)『山登りは地図より根性』

「あれ〜? おっかしいなぁ? こっちであってるはずなんだけど…」
「…ちょっといいかな…」
「何?」
「……こんな…もはや道ではないところを歩きながら何を根拠にこっちであっている…と?」
「心配性だな、千影ちゃんは。ボクに任せといてよ! ちゃんと地図を見て歩いてるから」
「地図…?」
「うん。ほらこれ」
「………苗場山(なえばさん)? これは新潟の…」
「あれ? あっ、そうか! ここオリジナル山だったね、てへ☆」
「…………」
「あれ? 千影ちゃんの後ろから黒い霧のようなものが出てるよ?
 これはいわゆる怒ってるときに出る負のオーラみたいなものかな…?
 って、ごめん! 謝るから変な詠唱始めないで!
 あっ、そうだ! こんな時こそ鈴凛ちゃんの携帯型トランシーバーで…」
『ポチ』
「もしもし? 鈴凛ちゃん? あれ? もしも〜し?
 …おかしいな? 壊れてるのかな?
 ねえ、千影ちゃん? どう思う?
 …って普通、別のキャラが喋ってるときには他の人はちゃんと待ってくれてるのに、
 ヒーローが変身するときだって悪ですら待ってくれるんだよ、
 なのになんで詠唱完了して……」


#18,山登ってます(4)『ググッても出てこないかもよ』

「変ね? 繋がらないわコレ…」
「どこか壊れてるのでしょうか?」
「まったく…ちゃんと動くかどうか確認しといてよ…」
「これでは他の皆と連絡が取れませんわね…。…ここはやはり…」
「なにかいいアイデアがあるの?」
「はい。実はわたくし、狼煙(のろし)検定3級なんです!」
「何それ!? そんなのあるの?!」
「でも、火をおこす道具がありませんわね…。…やはりここは…」
「…今度は何?」
「はい。実はわたくし、切り火検定初級なんです!」
「それはちゃんとした公的検定なの…?」


#19,山登ってます(5)『到着』

「ここが頂上みたいですね」
「わぁ! すごいよ! ヒナたちの町があんなにちっちゃいよ!」
「小さいのぉ」
「う〜ん…」
「どうかしたの鞠絵ちゃん?」
「ええ。頂上までくれば兄上様たちがいると思ったのですが…。
 鈴凛ちゃんの機械も繋がらないみたいですし…」
「にいや…どこ?」
「おにいたま…」
「あっ! だ、大丈夫ですよ!
 皆バラバラの道に進んだから少し遅れてるからで、もうじき到着すると思いますよ」
「ほんと?」
「はい」
「にいや、ゆっくりなの…」
「ヒナもおにいたまと一緒に行きたかったな」
「兄上様…早くきてください…」


#20,山登ってます(6)『実験開始』

「お兄ちゃんたち一体どこに行ったのかしら…?」
「まったく、山では集団行動は当たり前なのに…。アニキたちはマナーがなってないなぁ」
「鈴凛ちゃんが皆から離れたからじゃないですか…」
「だって、あっちにいったら誰もいない広々とした実験……いや広い場所があるかと思ったから」
「せっかく皆で山にきてるんですから、こんなときくらい機械のこと忘れたらどうですか…」
「う〜ん…そうだね。ごめん可憐ちゃん私が悪かったよ」
「いえ。わかってもらえたなら…」
「じゃあ、今から実験を始めようか」
「わかってないじゃないですか!!」
「じゃあ、とりあえずトランシーバーの調子でも確認してみようか」
「…そうですね。とりあえずはお兄ちゃんたちと連絡をとらないと…」
「スイッチを入れて、っと…」
『ざーーーー…っ』
「あれ?」
「どうかしたんですか?」
「いや…なんか……どこか調子が悪いみたいで…」
『…………ぁ…』
「あっ、何かきこえましたよ」



#21,山登ってます(7)『この声が皆に届きますように』

「おっ、ちょっと見晴らしのよいところに出てきたな」
「ここは頂上じゃ…ないみたいですのね」
「みたいだな…。もう皆頂上についてるのか?」
「というか姫とにいさま、遭難届が出されてたり…」
「……最悪だ。俺が一番まともなやつだと思っていたが、こんなつまらないミスをするとは…」
「に、にいさま、大丈夫ですの。姫もいますから…」
「……はぁ…。なぁ白雪、試しに叫んでみるか? もしかしたら皆に聞こえるかもしれないし」
「それはいいアイデアですの。
 すぅ〜…
 『にいさま〜! 姫のお料理たっくさん食べてほしいんですの〜〜っ!!!』」
「なんでやねん!!」
「つ、つい…」
「まったく……しっかりしてくれよ…」
「……そういえば…何て叫べばいいんですの?」
「え? ……そりゃ、その…なんだ? 『やっほー!』とか?」
「それだと姫と同じですの…。あっ!
 やっぱり皆に姫の気持ちをわかりやすく伝えたほうがいいと思うんですの
 だからやっぱり、『にいさま大好きですの〜!!』で…」
「誰に何が伝わるんだよ…。ここはやっぱり『お〜い! 皆ぁ〜!!』とかか?」
「う〜ん…でもやっぱり姫たちが一緒にいることも伝えたほうがいいと思うんですの。
 だから『姫とにいさまは一緒なんですの〜』とか…」
「いや、それっていいのか? 誤解されるかもしれないぞ…。
 ただ呼ぶだけだと会えないかもしれないし…やっぱり場所も詳しく言ったほうがいいんじゃないか?
 『俺たちは今小高い景色のいい…』って無理があるか…」
「あっそれなら……」
「おいそこのお前らうるさいぞ!」
「あ、どうもすいません…」
「ごめんなさい…ですの」
「ったく…」
「……………」
「……………行ったみたいだな」
「ちょっと騒ぎすぎちゃったみたい…ですの」
「ああ…しかもだんだん最初の目的がわからなくなってきてたし…。
 やっぱり俺もまともなやつじゃなかったのか…?」
「にいさま、ファイトですの」
「ああ、ありがとう白雪。
 こういう状況だからこそ冷静でいないといけないっていうのに、妹に励まされるなんて…。
 しかし、意外と山で叫ぶのって人に迷惑なんだな。さっきの人も…………ん?」
「あら……?」
「「あーーーーーっ!!!?」」
「ちょ、ちょっと待ってくれさっきの人ーーっ!!」
「ここはどこなんですのーーーっ?」


#22,山登ってます(8)『変身そして逃走』

『YO!!』
「あーー!! うるさいデスっ!! 本当にコレ、電池切れなんデスかっ?」
「花穂に聞かれても…」
「もしかして太陽電池とか言わないデスよね、こんな山奥で」
『Y…』
「今度は何デスか?」
『ピーーーーーっ!!!』
「「うわっ〜〜!!?」」
『プシュ〜…』
「び、ビックリしました…」
「花穂もビックリして、ドキドキしちゃったよ…。
 どうしちゃったのかな? 急に静かになったけど…」
「今度こそ壊れたんじゃないデスか? そのほうが四葉としては嬉しい展開デスけど」
「う〜ん…四葉ちゃん、やっぱりどこか壊れちゃってるみたいだよ。
 どこをいじっても反応がないよ」
「そうデスか。ソレは何よりで」
「四葉ちゃ〜ん…」
『ニョキ』
「「え?」」
『うぃぃ〜ん』
「な、何の音かな、四葉ちゃん…」
「四葉にはその欠陥トランシーバーが変身してるようにしか見えないデスが…」
「へ、変身?! ホントだ!? 手とか足みたいなのが出てきてる!?」
「なんだか
 『何処かの町の受信環境を守ろうキャンペーンとかで小学生が描いた携帯電話から手足が生えてる不気味な絵』
 みたいになってるデス!!」
「わかり難いよその説明…」
『YO〜〜〜〜〜っ!!』
「あっ、いっちゃった…」
「って、ちょっと待つデス!! 一体どこに行きますか?!」


#23,山登ってます(9)『今回の登山の理由』

「助かった…。まったくもう…千影ちゃんには冗談が通用しないんだから…」
「……皆と合流できればいいのだが…とりあえず普通の道に出ることを優先しよう…」
「そうだね。じゃあ、ボクの女の勘と千影ちゃんの野性の勘で…」
「……………」
「じょ、冗談だってば…」
「仕方がない…あまりこういうことには使いたくなかったが……」
「オカルトマジック(言い方:ドナ○ドマジック)、だね!」
「……………」
「わ、わかってます。もう言いません」
「………ところで」
「なぁに?」
「そろそろどうして山に登ろうと思ったのか…話してくれないか?」
「それは海よりもすごい深い理由があるんだけど…聞きたい?」
「(こく)」←無言のうなづき
「感情移入しすぎて涙出るよ?」
「…………」
「っていうか海よりも深かったら何処にいくんだって感じだけどね。
 世界の中心に入れるのかな?」
「……君の声ではなく精神に直接入って聞いてみようか?」
「こ、恐いこといわないでよ。話すからさ」
「…………」
「アルピニズムを感じながらあにぃがトラバースするのを…」
「…は?」
「いやだから…」
「……なるほど…思い付きなんだね」
「いや、もう少し時間をくれたら…」
「…ゆっくり考えたまえ……それまで私が待てるかどうかわからないけどね…」
「激しくやばい感じがするんですけど……」
「早くしないと時間がなくなるよ…」
「ご、ごめんなさ〜い!!」
「逃げられると思ってるのかい…」


#24,山登ってます(10)『対決! 春歌VS熊』

「あ…咲耶ちゃん…」
「何? どうかしたの?」
「コレをみてください。この木の根の辺りです」
「根の辺り? ……何これ…すっごい濡れてる…」
「これは……熊の唾液ですわ」
「ウソ!? なんでこんなところにこんな大量に垂らしてんのよ…」
「まだ新しい……どうやらこの近くにいるようですわね」
「え……ど、どうするの?」
「倒します」
「即答!? 本気で言ってるの? 相手は熊よ!」
「大丈夫。動物愛護に引っかからない程度に切り刻んで見せますわ!」
「ダメじゃん!? そんな倒すとかじゃなくて早いところ逃げましょうよ」
「いいえ…。これはもう定めなのですわ。
 そう……やつを倒すことわたくしに課せられた生まれてきた宿命!」
「わけわからんわ!!」
『グルルルル…』
「げ!?」
「コレは…本当に近いみたいですね…」
「もしかして私があんなに叫んじゃったせいかしら…?」
「かもしれませんね」
「…………これもツッコミに課せられた宿命なのかしら…」
『グル…』
「! 咲耶ちゃん静かに…」
「え?」
「どうやらやつの射程圏内に入ったみたいですわ…」
「うそ……」
「大丈夫……負けませんから!」
「ごめん。すっごい不安なんだけど…」
『…………………』
「…………………………」
「………………………………………」
『………………………………………………』
「………………………………………………………」
「……………ていうか、この描写必要なのかしら?」
『がぁ!!』
「はぁぁぁぁぁ!!」
「え? 何?!」

――――キーーーーン!!

「…何がおきたの?」
「くっ!」
「は、春歌ちゃん?! ち、血が…」
「大丈夫ですわ……それよりも…熊は…」
「え? く、熊? そ、そういえば……」
「うう…」
「は? 今人の声が……」
「痛いよ〜…」
「って、熊じゃないし!? 普通のおじさんじゃない?!」
「こちらの方は、萌えを追求し続けてはや50年の通り名はロリコンの熊、の熊沢蕃さんです」
「すごい歴史の重みがある儒学者的な名前ね……じゃなくてなんでその蕃さんがなぜここに?」
「40年前に疾走したかと思われてましたがこんなところに潜伏してたんですね」
「もうわけわかんないわ……ていうか蕃さんって何歳よ?」
「ぐぼっ!!」
「うわ! 蕃さんの口から血が……!? 凄い出てるけど大丈夫なの?」
「大丈夫、峰打ちです」
「あの、勘違いしてる人いるかもしれないけど……
 峰打ちってのは刀の峰で打つこと、別名刀背打ちって書くのであって、
 打ちようによっては危険なのよ……」
「うわ〜ん!!」
「あっ、泣きながら逃げて行っちゃった…」
「くっ、まだ動けましたか…。わたくしもまだまだですね…」
「そういう問題じゃないでしょ!? とりあえず追う……わよ?」
「咲耶ちゃんだって少し躊躇してるじゃないですか」
「…………ヲタクを追うのもね…皆が皆○車男じゃないのよ」
「誰に言ったのですか?」
「とりあえず追う…わよ」


#25,山登ってます(11)『頑張れ鞠絵』

「そ、そうです。兄上様達が来るまで少し遊んで待ってましょうか」
「何して遊ぶの?」
「遊ぶのぉ〜?」
「えっと、あ…二人とも知ってますか?
 こうして…『やっほー!』」
 『やっほー やっほー… ゃっ…』
「ほら、声が帰ってくるんですよ」
「あ、それヒナ知ってるよ。やまびこさんだよね?
 人や動物が発する声は喉にある声帯って発声器官を使って、
 肺から出た空気がその声帯を通る時に声門といわれる空気の通り道を…」
「よ、よくご存知ですね……」
「でもヒナやまびこさんを聞くのは初めてだよ」
「やっほー…」
「亜里亜ちゃん、もっと大きな声じゃないと帰ってきませんよ」
「もっと? 『やっほー』」
 『ほー…』
「…ほー?」
「ヒナもヒナも!『ほー!』」
「『ほー』」
「『ほー!』」
「ふ、二人とも…何かの宗教みたいですから…」
「やまびこさんって楽しいね、亜里亜ちゃん」
「ほー」
「………まぁ、楽しんでもらえたなら…」
「「ほーーー!」」
「で、でもやっぱり恥ずかしいですね……あっ…」
「「ほーーー!」」
「いや、あほ……じゃなくて、雛子ちゃん、亜里亜ちゃん、あそこに…
 ほら、菜の花がたくさん咲いてますよ。あそこに言ってみませんか?」
「あ、ホントだ! ヒナ行く行く!」
「亜里亜もぉ」
「よ、よかった…」
「どうかしたの鞠絵ちゃん?」
「い、いえ…」


#26,山登ってます(12)『実験結果(R指定←!?)』

「もう少し音量を上げられないんですか?」
「ちょっと待っててよ……ここをこうして…これで…いいはず」
『……ぃ…』
「あ、聞こえてきましたね」
「し、静かに……」
『…姫とにいさま……』
「お兄ちゃんと白雪ちゃん…二人は一緒みたいですね…」
「アニキのはちゃんと動いてるみたいだね」
「でも少し…ノイズが激しいみたいですけど……」
「う〜ん…」
『試しに…少し遊んで………こんな山奥で…あ…』
「へ…山奥で何?」
「さ、さぁ……」
『姫のピーーーー食べてほしいんですの〜〜っ!!!』
「ぶはぁ!? し、白雪ちゃん何を言ってんの!?」
「(//////)」
『プシュ〜…………そりゃ、その…なんだ?…仕方がない』
「お、お兄ちゃん!?」
「仕方ないの!?」
『こうして……あっ!……すっごい濡れてる…ゃっ…』
「ふ、二人とも一体何を…(ドキドキ)」
「り、鈴凛ちゃん…もう…」
『……液です……から出た……がそのせいたいを…時にせいもん……を…』
「なになになに? よく聞こえなかったんだけど?!」
「り、鈴凛ちゃんっ!!」
『どこをいじっても……大量に垂らして……そろそろ………大丈夫…』
「そ、そろそろ……?」
「……………」
『すっごい不安………ニョキ』
「にょき?」
「なんの音かな?」
『にいさま大……ですの』
「ぶっ!?」
「か、可憐ちゃん大丈夫…?」
『くっ……初めて…ち、血が…』
「し、白雪ちゃんの…は、はじめ…」
「お〜い、可憐ちゃ〜ん…大丈夫?」
『大丈夫です……姫とにいさまは一緒なんですの……すごい深い…うう……痛い』
「……………」
「か、可憐ちゃん、鼻血鼻血っ!?」
『大きな声……出るよ……恥ずかしい……』
「はぁはぁ…」
「可憐ちゃん、鼻につめたティッシュを真っ赤にしながらハァハァ言わないでくれる…」
『あっ…直接入って……いったほうがいいんじゃないか……いや…』
「い、く…」
「お〜い、可憐ちゃ〜ん…帰っておいでぇ〜」
『待てるかどうかわからないけど……激しく……O〜〜〜っ!』
「なぜ英語!?」
「…………」
『あそこに……たくさん……あそこに……いくいく……早くしないと』
「……………」
「ね、ねぇ…何でさっきから無言で聞き入っちゃってるの?」
『あっ、いっちゃった……行ったみたいだな…』
「ほぁーーーーっ!!」
「可憐ちゃん、お、落ち着いて…」
『こんなところに……凄い出てるけど……』
「凄い…」
「こんなとこって…」
『ちょっと騒ぎすぎちゃったみたい…ですの』
「まったくだよ……」
「きゅ〜…」
「あ、あれ? か、可憐ちゃん!?」
『ありがとう白雪……こういう状況だからこそ……妹に励まされるなんて』
「ちょ、可憐ちゃん!? こんなところで気絶しないでよ!!?」



#27,結局皆到着(二名除く)

「うわぁ〜、すっごい綺麗だね」
「綺麗なの…」
「そうですね…」

 がさがさ…

「え?」
『YO〜〜〜〜〜っ!!』
「きゃぁぁーーーー!!!?」
「いい加減待つデスーーっ!!」
「よ、四葉ちゃん…待ってよ〜…」
『YO……ぐふっ』
「はぁはぁ…やっと止まりマシタか……。普通に電池残ってるじゃないデスか…」
「はぁはぁはぁ……あ、アレ? ま、鞠絵ちゃん…?」
「あ、四葉ちゃんと花穂ちゃんだ!」
「ふ、二人とも……一体何処から出てくるんですか…それにこの………機械?はいったい…」
「いや…実は……」

 がさがさ…

「今度はなんですか…?」
「うわ〜ん!! ママに言いつけてやる〜〜!!!!」
「「「ぎゃ〜〜〜っ!!!?」」」
「逃がしません! トドメです!!
 秘剣! 天の香具山斬りーーーー!!」
「ひでぶーーーー!!!」
「だからなんでトドメさしちゃうのよ!!?」
「狙った獲物は必ずしとめないと、と兄君さまが…」
「お兄様がそんな狩人みたいなこというわけなでしょう!」
「あ、あの…咲耶ちゃん…春歌ちゃん……」
「あら? 鞠絵ちゃん? それに皆も……」
「兄君さまのおかげで皆さんと合流できましたね」
「いや、お兄様関係ないから…」
「それよりあの汗だくの太ったおっさんほっといていいんデスか?」

 バリバリバリ…

「え? 何の音かしら?」

 ずどーーーん!!!

「うわぁ!? あのおじさんに雷が落ちちゃったよ!?」
「ピカピカ」
「亜里亜ちゃん違うよ、バリバリだよ」
「二人とも違いマス、あれは…」
「そんなことどうでもいいわよ! それよりも…」
「ちっ…はずしたか…」
「はずれてよかったよ!! 当たってたらボクが死んじゃうよ!」
「死ね」
「うわっ、ひどっ!?」
「あの…」
「おや? 鞠絵ちゃんじゃないか」
「あ、他の皆もいるよ? ほら、ボクの言ったとおりの道であってたじゃないか」
「……………」
「……ごめんなさい」
「何があったのよ?」
「ほら、ここが頂上だ」
「ありがとうございました」
「ありがとうございましたですの」
「あんまり騒ぐんじゃねーぞ。じゃーな」
「はい、まじ助かりました」
「親切な人でよかったんですの」
「だな。一時はどうなることかと思ったが……何とかなるもんだな」
「それよりも他の皆を探さないと……って、あら?」
「あっ、お兄ちゃまたちだよ」
「本当デス。兄チャマと白雪チャマも到着したみたいデスね」
「なんだ……やっぱり皆着いてたのか………やっぱり俺って…」
「にいさま、ドンマイですの」
「…どうも」
「えっと…あとは鈴凛ちゃんと可憐ちゃんね……二人とも何処にいるのかしら?」
「鈴凛ちゃんといえば…ボクたちのトランシーバー壊れてたんだよね」
「あ、わたくし達のもそうなんです」
「私達のもよ」
「四葉のもデス」
「俺達のも…って、皆壊れてんじゃねーか!
 コレじゃ使い物にならないじゃん…」
「それなら、その機械の製作者はどうやって探すんですの?」
「ねぇねぇ、おにいたま。これ、なんか喋ってるよ?」
「四葉たちのトランシーバーデス」
「どれどれ? 声が小さいな……音量は何処で調節するんだこれ?」
「花穂も色々調べてみたけど、電源のスイッチしかなかったよ」
「ちょっと待って、声がだんだん大きくなってるわ」


#28,山は人を解放的にするの

「ちょっと可憐ちゃん! 私じゃ可憐ちゃんを背負って山なんて登れないって…。
 ほら、起きてよ。お〜い!」
「……………」
「あ、目が開いた。大丈夫、可憐ちゃん? ……可憐ちゃん?」
「……ふ、ふふふ…」
「え…可憐ちゃん」
「うふふふふ…鈴凛ちゃん…」
「い、いや…あの可憐さん? なんか目が恐いんですけど…。
 いや、その肩に手を回さないでくれる? 凄い力が…」
「大丈夫…恐くないですから…」
「あれ〜…もしかしてまだ正気に戻ってないのかなぁ…」
「うふふふふ…」
「ちょ、待って、そんなところ…!?
 いや、いやぁぁぁ〜〜〜…!!」


#29,トランシーバー越しの声

「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「………皆大丈夫みたいだな」
「姫、今日のためにたくさんお弁当作ってきたんですよ」
「わーい嬉しいなぁ」
「…………………」
「…………………」
「………さよなら鈴凛ちゃん(色んな意味で)」



#30,崖を登ろう

「ロッククライミング?」
「そう。明日皆でいこうよ!」
「それは、金曜の午後に軽快に風を切りながら海岸線を走ってる今、思いついたのか?
 わざわざ学校帰りに無理やり連れ出された後の台詞としては中々いい考えだな」
「でしょ? 今日はランニングがメインであにぃと二人きりで来たけど、
 たまには皆で崖登るのも悪くないよね?」
「…………別に構わないけど………いいのか?」
「…大丈夫だよ、あの二人以外には3日前に言ってるから」
「あぁ、つまりまた俺だけ仲間はずれだったって事ね。
 そしてナイス判断だ、衛」
「当たり前だよ。ボクもこれから準備するから」
「また何の準備もなしかい! しかも何で余裕こいて海岸線走ってんだよ!!
 しかももう晩じゃん!」
「それじゃボクこれから準備するから、あにぃまた明日ね!」
「そんな屈託のない(てか悪びれる様子もない)笑顔で手を振りながら勝手に一人で帰んなよ…。
 はぁ、仕方ない全員イベントなら参加しないとダメなんだろうな。
 …………いや、それより…あの二人は大丈夫なんだろうか?」


#おまけ

「あ、あの…鈴凛ちゃん。
 可憐が悪かったですからもう部屋から出てきてください…。
 あの時の可憐はどうかしてたんです。だから……」
「……………」



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