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  冬の寒さが徐々に揺るぎ始める2月の終わり頃、
  可憐と咲耶は枯れ葉のつもった道を歩いていた…
  その後ろを四葉がコソコソとついていっていた。
「ついに明日ね…」
「明日………」
  心なしか二人の会話にあまり覇気がない。
  ずっと俯き気味に歩いている。
「(い、いったいどうしたんデスか!? お二人ともとっても落ち込んでます!!)」
  あまり良く聞こえない会話からでも二人が落ち込んでいる様子がわかる。
  それを心配した四葉は二人の後をつけ続けている。
「なんだか…時間が経つのは早いなぁ、て感じよね」
「…咲耶ちゃん…なんだか……ですね」
「……悪かったわね」
  すこし会話をすると、また同じように沈黙がおとずれる。
  先程から同じことの繰り返しが続いている。
  つまり…咲耶はずっとため息をついている。
「(時間…明日…? ……まさか、あの二人の様子からして…何かの期限が迫ってるのデスか?)」
「何で…お兄様の…なのに私たちがこんな…のかしら…?」
「う〜ん……何で、ですかね…?」
「(兄チャマのなのに私たちがこんな…? どういう意味デスか?)」


卒業 〜やまとなでしこ奮闘中〜

作者:啓-kei-さん


「それで…相談にきたのですか?」
「そうなのデス!」
  結局、二人が公園のベンチに座ったまま動きがないので、
  いつもこの近くを帰っている春歌を捜して、今までの経緯を聞かせたところだった。
  と言っても、経緯も何も二人がずっと黙っていただけなので、
  とりわけ話すことなどなかったのだが…。
「それにしても…何で花穂チャマがいるのデスか?」
「え!? 何で!? いたらダメなのっ?」
「クフフ…」
「な、何その笑いは…」
「知ってますよ花穂チャマ。今、ダイエット中なんですよねぇ?」
「あ、あぅ…なんでそれを!?」
「ってことで、この話の続きはあそこのカフェーでしましょう!」
「あ、お店の前に何か書いてありますね…?」
「今日から一週間パフェがお安くなっているのデス!」
「あら、花穂ちゃんどうかしましたの?」
「あの…せっかくだけど花穂は別に…ここでもいいかなぁ、って…」
「駄目デス」
  四葉は花穂の腕をとって、歩き始めた。
  その後を春歌がついて行った。
  花穂の引きずられる音を残して…。


「それで…相談とはなんですか?」
「実は…兄チャマのなのに咲耶チャマと可憐チャマが酷い目にあうそうなのデス…」
「え…? そ、それはどういう意味ですか?」
  三人はカフェに入り先程の話の続きをしていた。
  四葉と春歌は話し合ってる間、パフェをつついていた。
  その間、花穂は一人、顔をふしながらも上目づかいで二人のパフェをチラチラ見ていた。
「兄君さまが…お二人に何かなさったのですか…?」
「それはわかりません…。でも何かが明日起こるそうなのデス」
「つまり……お二人が兄君さまの尻拭いをすると…? 兄君さまがそんなことを…」
「尻拭い? 兄チャマのお尻を○×#$%」
  春歌は四葉の暴言を未然に防いだ。
  春歌は顔を赤らめながらパフェを一口ふくみ、つづけた。
「兄君さまの失敗をお二人がフォローをする…そういう意味ですよ…」
「兄チャマの失敗…? そ、それはぜひチェキしなくてわっ!!」
「しかし…そんなに簡単に兄君さまが失敗など……それに可憐ちゃんたちに迷惑をかけるなんて…」
「それは…そうデスね……まぁだからこそチェキしたいのデスが」
  四葉と春歌はそれぞれ色々な推測をしながら、
  それぞれのパフェを食べていた。
  花穂は水の入っていたグラスの中の氷を食べていた。
「ぽぽぽ…」
「な、何を想像してるのデスか、その笑いは…?」
「はっ!? わ…わたくしとしたことが…」
「真面目に考えてください!」
「も、申し訳ございません…」
「まったく…」
  春歌はばつが悪そうにパフェを食べた。
  つられて四葉もパフェを食べた。
  花穂は最後の氷を口に入れて寂しそうにグラスをつついていた。
「でも…こうやって考えてるだけでは、やっぱりわかりませんわ。情報が全くありませんから…」
「そうデスねぇ…。四葉てきには…兄チャマは悪と密かに戦う戦士で、ついにその正体が悪の秘密結社にばれてしまったので二人で隠そうと…」
「密かに秘密結社と……とてもコソコソした戦いですね…。わたくしは…」
「いやらしい妄想をしてたんでしょう?」
「…………そうですね………って何を言わせるんですかっ!!」
「違いますか?」
「………少し(///)」
  春歌は顔を赤らめて四葉から視線をはずした。
  四葉は春歌の視線の先を追った。
  すると小学生くらいの小さな兄妹が手をつないで歩いていた。
「ま、まさか春歌チャマ…!?」
「なっ!? ち、違います…って何を弁解しているのですかわたくしは…」
「……兄チャマにとって妹は全員ロ…」
 バシッ!
「い、痛いデス…」
「よ、四葉ちゃんが変なことを言おうとするからですわ!」
「……リにみえるという妄想をしてたのでわ、って言おうとしてました」
「な、なんでそんなことをこんなところで言うのですかっ!?」
  春歌は不機嫌そうな顔をしながら、メニューリストを開いた。
「(ごほん)…つまり…そういう考えもあるかなぁってだけです!」
「どういうことデスかぁ?」
「もう知りません!!」
「ありゃりゃ…怒ってしまいました」
「………別に怒ってません」
「まぁそんなことよりも…あの二人の沈みようかあらして…切羽詰った状況と見ていいでしょう」
「そんなに険しい表情だったのですか?」
「もしかしたら…鞠絵チャマの様態が芳しくないとか!?」
「ま、鞠絵ちゃんがっ!?」
「ああ、でも突然鞠絵チャマが出てくるのはおかしいデスよね」
「で、ですね…。わたくし共は何も聞いておりませんものね…」
「あの……二人とも…」
「「はい?」」
  さっきから黙っていた花穂が申し訳なさそうに手を挙げた。
  口いっぱいにパフェをふくんだまま新しいものを注文しようとしていた二人は、
  いぶかしげな目を花穂にむけた。
「よく…そんなに食べられるね…」
「花穂ちゃんは食べませんの?」
「そういえばダイエット中でしたね花穂チャマ」
「……四葉ちゃん」
「はい?」
「もしかして…花穂のこと嫌い?」
「そんなことありませんよ!」
「そうですわ、花穂ちゃん」
「………もう帰ろうよ」
「あ、ちょっと待ってくださいっ!」
  席を立とうとする花穂に四葉は慌てて声をかけた。
  花穂が嫌そうに四葉に目を向ける。
「………な、何…?」
「あと一杯だけ!」
「ええっ!?」
「わたくしも」
「二人ともまだ食べるつもりなの!?」
「はい。食べられるうちに」
「食べておかないと」
「あ、あぅ…」
  当然のようにメニューを見る四葉と春歌を、
  花穂は頭をかかえながら、仕方なく席に座りなおした。


「二人ともひどい…」
「何がデスか?」
  花穂は、四葉と春歌がずっと話をしながらパフェを食べている間、
  結局二人は計4杯…つまりあの後2杯注文した、寂しく一人放置されていた。
「花穂がダイエットしてるって知ってるくせに…」
「食べればよろしかったのに」
「春歌ちゃんまでそんなこと言う…」
  少し涙目になりながら花穂は言った。
  その時、ふと四葉は気が付いた。
「そうか…そういうことデスか…!?」
「どうなさったのですか?」
「全ての謎が解けました!」
「えぇ!?」
  四葉は顎に手をあて少し顔を上に向け、
  探偵のようなポーズをとった。
  対照的に花穂は犯人のように下を向いている。
「兄チャマのことデスよ!」
「い、いったい何がわかったのですか?」
「実は兄チャマの周囲に問題があったのデス!」
「周囲…?」
「四葉たちはずっとこうして兄チャマのことを考えていました。しかし…それは間違っていたのデス!」
「……………」
「四葉たちが考えていた兄チャマのことの他に、外部の接触があるのデス。そしてそれに咲耶ちゃんや可憐ちゃんが巻き込まれた……つまり兄チャマは…誰かに襲われ怪我をしている、もしくわ誰かに脅されているのデス!!」
「なっ!? あ、兄君さまが!!?」
「そう、だから咲耶チャマたちはお金のことで悩んでいたのデス!!」
「ゆ、許せません…!! 脅しなどとは外道の所業!!」
「そうなのデス!」
「これは、兄君さまたちをお助けしないと!!」
  四葉と春歌は兄の危機と思い、怒り震えていた。
  春歌は先程から二人の気迫に押されて震えている花穂に向かって言った。
「花穂ちゃんも許せませんよねっ!?」
「えっ!? それは…許せないけど…」
「そうデスよね!」
「ふ、二人とも落ち着いて…」
「そうと決まれば、今すぐ兄君さまをお助けに参らなければ!」
「あっ! そう言えば、咲耶チャマと可憐チャマは寒い中、ずっとベンチに座ってました!!」
「ま、まさか…悪い人たちに脅されて…!?」
「ふ、二人ともどこからそんな発想が…」
「若い女性が二人で……そ、そんなハレンチなことわたくしが許しませんっ!!」
「は、春歌ちゃん!?」
  突然、鼻血を出しながら興奮している春歌に花穂はかなり動揺した。
「これは…必ず解決しなければなりません! 四葉たちだけで解決できるとは限りません…でもだからといって兄チャマたちを見捨てることは出来ません!! 四葉たちが頑張らないと…!」
「微力ながらわたくしもお手伝いしますわ!」
「そうと決まれば、さっそく作戦を練らなければ…」
「作戦は…わたくしたちの兄君さまへの想いを力にするのです!」
「グッドアイデアじゃないデスか!」
「え、これって何のドラマ…?」
「花穂チャマ……花穂チャマも兄チャマLOVE…デスよね?」
「…………な、何それ…?」
  四葉はそう言うと、花穂の手をとり、夕日の方向へ歩いていった。
  その後ろを春歌がついて行った。
  そして…
「……あの三人は…いったい何をしているんだ…?」
  三人が去ったあとを、千影はいぶかしげな目で見送っていた。



「兄チャマLOVEは一日にしてならずぅ!!」
「特訓ですわ〜!!」
「な、何でこうなってるのぉ〜〜…」










あとがき

どうも啓−kei−です。
突然ですが、案として卒業に関して二つのストーリーを書こう! と、思っていたのですが…
無理でした。自分のダメダメぶりを露呈することに…(涙)

ってことで、こんな中途半端なSSばかりな僕ですが、これはギャグです!
失笑を意図的に狙ったギャグです!
『失笑』って単語の使う場面が違う? ……鼻で笑ってください。

各々のキャラの性格や作者の感性にツッコミどころ満載ですが、感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。


啓-kei-さんへの感想はこのアドレスへ
fairytale@mx91.tiki.ne.jp

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