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それぞれの正月

作者:啓-kei-さん

12月31日 昼

(亜里亜宅)
  春歌と四葉は、明日の元旦の初詣について話し合うため、亜里亜の家に集まっていた。
「四葉のチェキによると、初詣とは『新年にはじめて社寺へお参りすること。はつまいり。〈(季)新年〉』だそうデス!」
  四葉は人差し指を意味もなく春歌に向けて、自信満々に言った。
  しかし、春歌は目をパチパチしながら、きょとんとしていた。
「あの…私も同じ意味を『広辞苑 第五版』で見つけましたわ」
「ギクッ!!?」
  四葉はなぜか体を大きくびくつかせて、2・3歩後ずさった。
  そんな二人のやり取りに、間の抜けた声を発する人がいた。
「こうしえん〜…?」
「兵庫県の高校球児の夢の地デスね!」
「四葉ちゃん、違いますから…」
「違いますかっ!?」
「あっ、いえ、あってますけど…」
  甲子園と広辞苑が違うことに対して、ツッコミをいれたい春歌だったが、
  四葉と亜里亜の変な盛り上がりに着いていけず、戸惑っていた。
「変な春歌チャマデスねぇ」
「亜里亜、こうしえん行きたいのぉ」
「よ〜し! 明日は皆で日本文化に従って甲子園にいきましょう!」
「おぉ〜…」
「だ、だから…」



(鞠絵の療養所)
「今日は大晦日ですね…」
  鞠絵は窓から外を眺めていた。
  隣にはミカエルが横になって尻尾をふっている。
「小さいころ、この日だけは、よく夜更かししてたんですよね…」
  ミカエルの顔を覗き込んで、鞠絵は笑みをこぼしながら言った。
「何だか、あの時の気持ちを思い出してきましたね」



(道)
  咲耶と花穂と衛と雛子は一緒に遊びに行った帰りだった。
「え…今日っていつまでも起きててもいいのっ?」
  花穂が大きな声をあげた。
「まぁ…一応ね」
  咲耶が少し考えるように言った。
「ダメだよ、早く寝ないとママに怒られちゃうんだよぉ」
  雛子が衛に向かって言った。
「今日は特別なんだよ」
  話題を切り出した衛が自信満々に言った。
「なんで! なんで!」
「えっと…それは…なんで?」
  雛子の当然の疑問に衛は言葉につまり、
  救いを求めるように咲耶をみた。
  その咲耶はやれやれという感じに息をついて話し始めた。
「確かに、年末で色んなテレビ番組もあるし、初日の出を見るために起きていたり、初詣で人が賑わうところもあるし、最後に羽目をはずしたり、そういうのもあるみたいだけど、別にムリに起きてなくてもいいのよ。別にそんな風習はなかったと思うし……。でも私はお肌に悪いから早めに寝るけどね」
「ってことだよ!」
  なぜか、咲耶の言葉を継いだ衛が偉そうに胸をはった。
「じゃあ雛、頑張って起きてる!」
「花穂も、花穂も起きてる!」
「皆、若いわね…」
「咲耶ちゃんが年寄り臭いんだよ…」



(ベティーズ)
  可憐と白雪はおせち料理の材料を買いに来ていた。
「これで全部ですか?」
「はいですの! 可憐ちゃん、どうもありがとうございます、ですの!」
「…私は?」
  と、二人の後ろから気のない声が聞こえてきた。
「鈴凛ちゃんはずっと「機械のパーツが〜」ってどこかに行ってましたの!」
「やっぱり…?」
  実は鈴凛も一緒に付いてきていたのだが、
  年末の安売りセールの価格に目を奪われた鈴凛は、
  買い物そっちのけで、一人別の買い物を楽しんでいたのだ。
「で、でも楽しみだな〜。おせち料理!」
「鈴凛ちゃんは少ししか食べさせてあげないんですのっ!」
「な、なんでよぉ!?」



(???)
「フム…この辺かな…」
  千影は一人、霊の一際集まってきている場所を探していた。
「今…精霊の流れがこちらに傾いているということは……ここで間違いないはずだ…」
  千影は、精霊の流れを感じながら、笑みを浮かべていた。




12月31日 夜

(亜里亜宅)
「亜里亜さま?」
  じいや(メイド)が亜里亜の部屋を訪れたとき、
  亜里亜はベッドの上で小さく寝息を立てていた。
  じいやは亜里亜の寝顔を見て微笑みながら、
「亜里亜さま…ちゃんと、お布団の中に入って寝ませんと、風邪をひいてしまいますよ」
  そう言いながら、じいやは亜里亜にそっと毛布をかけた。
「ふふ…ぐっすり寝ていますね。今日は四葉さまと春歌さまが遊びに来てくださったおかげで、お疲れのようですね…」



(四葉宅)
「クフフフフ…。これで準備はバッチリデス!」
  四葉は大きなカバンに衣服を詰め込めていた。
「これで甲子園への準備は完了デス!!」
  四葉は色紙を取り出し拳を握り締めて力強く言った。
「待ってるのよっ! 阪神タ○ガース!」



(春歌宅)
  春歌は一人、畳の上に座り悩んでいた。
「ど、どうしましょう! 違うと言うべきか、甲子園に行くべきか…!?」



(鞠絵の療養所)
「何だかワクワクしますね、ミカエル」
  鞠絵はそっとミカエルの頭に手をのせた。
  ミカエルは鞠絵の顔を覗き込んでいた。
「こんな時間まで起きているのも久しぶりですから」
  逆にミカエルの顔を覗き込んで、鞠絵は笑みをこぼしながら言った。
「明日は楽しみですね」
  そういった後、少し顔を伏せて、
「でも、夜更かししちゃうと、朝の検査のときの結果が悪くなるんですよね…」



(雛子宅)
「むにゃ…おにいたま…」

(花穂宅)
「花穂…まだ起きて…くぅ…」

(衛宅)
「……あにぃ……zzz」



(咲耶宅)
「結局、私って毎年起きてるのよね…」
  咲耶はテレビの前で一人ぼやいていた。
「あぁ、お肌が荒れるわぁ…」
  と、言いつつも咲耶はソバをすすっていた。
「あぁ、太るわぁ…」



(可憐宅)
「これでよしっと」
  可憐は自分の作るのを受け持ったおせち料理の仕込をしていた。
「ふふ…楽しみですね、明日」
  可憐は窓の外を見ながら、
「今年も一年が終わるんだなぁ」
  と、小さくつぶやいた。



(白雪宅)
「えっと、後はこれを作って…」
  白雪はおせち料理に囲まれて、慌しく、動き回っていた。
「い、忙しいですのっ! もう少し可憐ちゃんに頼めばよかったんですの…」



(鈴凛宅)
「ふ、ふふふ…」
  鈴凛は一人、ラボにこもって機械をいじっていた。
「あの金額でこのボリューム…」
  鈴凛は時々不気味にほくそ笑みながら、動かす手を止めなかった。



(千影宅)
「…フム……」
  千影は本を読んでいた。
「あの星の配置……フフ…興味深いね…」
  ふと、空を見上げてそう言い、すぐに本に目を落とした。
「新たな年に…皆に訪れる幸を…暗示してくれているようだね…」
  千影は急に窓に目を向けた。
「この浄化の鐘の音により…精霊の…力が増すようだね…」


 ご〜〜ん…
  ご〜〜〜ん…




1月1日 元旦
「って、まだこれだけしか集まってないの?」
  咲耶が声を荒げて言った。
「みたいです…ね」
  可憐は周りを見渡して、他の姉妹がいないことを確認した。
「せっかく姫がおせちを一生懸命つくったのにぃ…」
「いや、まだおせちは早いと思うよ…」
  白雪はおせち料理を残念そうに見ていた。
  そこに衛が鋭くツッコミをいれた。
「皆さん、お待たせしてすいません…」
「おはようございます!」
「あっ、鞠絵ちゃんに雛子ちゃん!」
  ミカエルを連れた鞠絵と手をつないだ雛子がやってきた。
「まだ…皆そろっていないんですか?」
「そうなんですの…」
  それから数分後
  ガラガラという音を立てながら、馬車が近づいてきた。
「皆さん、遅くなってすいません」
  じいやさんが頭を下げて遅くなったことを詫びた。
「さぁ、亜里亜さま」
  そういうと、亜里亜を馬車から降ろした。
「おはよぉございます…」
  亜里亜はまだ眠そうに目をこすっていた。
  その後ろから、なぜか春歌が降りてきた。
「言わないと…言わないとぉ…」
「何を…?」
  ブツブツとつぶやき続いていた春歌を、
  咲耶はそっと抱きかかえた。
  と、いうより、倒れ掛かってきた。
「じ、実は亜里亜さまをお連れして邸を出たあとに、フラフラと歩いておられる春歌さまを見つけまして…」
「ふらふらぁ〜」
「亜里亜ちゃんもある意味フラフラだよ…」
  そのとき、突然どこからか声がした。
「皆、おっはよ〜!」
「鈴凛ちゃん! 花穂ちゃん!」
  遠くから、鈴凛と花穂が手を振りながら近づいてきた。
「どうしたの、何かトラブル?」
  咲耶は鈴凛に遅刻の理由を尋ねた。
「う〜ん…私は結構早めに出たんだけど…これがね」
「チェキィ〜、甲子園が井○が○星が四葉をまっているのデスゥ〜!!」
  四葉は大きな荷物を持っていた。
  それを引きずっていたので、二人は遅くなったのだ。
「ずっとこればっかり言ってて…花穂何のことかわかんないんだよぉ…」
「○川と赤○って何?」
「さぁ?」
  雛子は鞠絵に聞いてみたが、鞠絵もわからなかった。
「皆…そろっているようだね…」
「あっ、千影ちゃんだ!」
「いつからそこにいたんですか…?」
  突然現れた千影に花穂と可憐が驚きを口にした。
「ところで千影ちゃん…調べてくれましたか?」
「あぁ…精霊の力が最も強い社寺を調べておいたよ…」
「言わないと…言わないと…」
「どうかしたんデスか、春歌チャマ?」
「そ、そういえばおせち料理楽しみだなぁ」
「鈴凛ちゃんには少ししかあげないんですの」
「わぁ〜、花穂、早くおせち食べたいなぁ」
「雛も雛も!」
「ところで…これで全員ですの?」
「まだ…、にいやがいないのぉ…」
「あっ!? そうだよ! まだあにぃがいないよ…」
「全くお兄様ったら、こんなに可愛い妹たちを待たせるなんて…」
「兄上様も色々と用事があるのではないですか?」
「フフ…兄くんも罪な人だ…」
「……お兄ちゃん…」

  そして…

「あっ! あそこ…!!」







あけましておめでとうございます










あとがき

どうも啓-kei-です。
突然ですが、大晦日って皆さん夜更かしを試みませんでしたか?
あれ…僕だけ? 僕の私見だらけのSS?

えっと…なんでしょう?
最後の空白はご想像にお任せします。
あと、文章がごちゃごちゃしててすいません。
これから精進します!

各々のキャラの性格や読みにくさにツッコミどころ満載ですが、感想・批判があれば何でもいいので送っていただければ嬉しい限りです。


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