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ちいさなうそ

作者:九郎さん


夕ご飯を食べて、お風呂に入って、
今、花穂はお兄ちゃまと居間のおこたにいます。
湯のみに、急須からお茶をそそいで、そして、籠いっぱい
にあるみかんを剥いて、お兄ちゃまに出します。
「ありがとう、花穂。」
お兄ちゃまはにっこり微笑んで、そして
”花穂はいいこだね”って、花穂の頭を撫でてくれるの。
えへへ。
「お兄ちゃま、みかん、おいしいね。」
「ああ。」
二人で仲良くみかんを頬張っていると、
「克也君、ちょっといいかしら?」
「う〜い。」
お兄ちゃまはお母さんに呼ばれて、おこたから離れて、キッチンの方へと向かいました。
花穂はここぞとばかりに、おこたで横になります。

お兄ちゃま、お兄ちゃまは花穂のこと、いつも”いい子だね”って言ってくれるけど、
本当はね、悪い子なの。
大好きなお兄ちゃまに嘘をついていることがあるんだ。
それはね。
あっ、お兄ちゃまが戻ってきた。
「やれやれ、義理母さんは・・・、ん? 花穂。」
お兄ちゃまがこっちに近づいてくる、床が鳴る音が聞こえます。
「なんだよ、寝ちゃったのか? おい、花穂、起きろよ。 こんなところで寝ると風邪引くぞ。」
そう言いながら、お兄ちゃまは花穂の肩を揺らします。
けれど、花穂は起きないの。
だってだって、ね。
小さい頃からこういう時、お兄ちゃまはいつも、花穂のこと抱っこしてくれて、ベットまで運んでくれるんだぁ。
花穂、お兄ちゃまに抱っこされるの、すっごく好きなの。
だから、こうして、寝たふりをしてるんだぁ。
これが、花穂がお兄ちゃまに嘘をついていること。
お兄ちゃま、本当のこと、知ったら、怒るかなぁ?
「ったく、しょうがねぇなぁ。」
やったぁ!、お兄ちゃまがこの台詞を言う時は、かならず抱っこしてくれるの。
トタ、トタ、トタ。
あれ?
あれれ?
お兄ちゃまが花穂の側から離れていく足音がする。
花穂はそっと、目を開けて見ると、お兄ちゃまの姿はそこにありませんでした。
花穂、もう小さくないから、やっぱり・・・してくれないのかなぁ?

あっ、
お兄ちゃまが戻ってきた。
花穂はあわてて”ぎゅ”って目を閉じます。
お兄ちゃまは、花穂をおこたから出して、”よいしょ”って言って、抱っこしてくれました。
わぁ!
花穂ね、その時、そっと、お兄ちゃまの服の袖を掴むの。
「まったく、図体はでかくなった割には、寝顔だけは変わらないな。」
やだ、もう,お兄ちゃまったら。
きっと花穂の寝顔をじっと見てるだろうな。
恥かしいよぉ。

トン、トンとゆっくり、ゆっくりと階段を上がる、お兄ちゃまの足音が聞こえます。
そして、ギイッと花穂の部屋のドアが開く音がして。
廊下の明かりが少し、部屋に差込んだ時、花穂はお兄ちゃまに気がつかれないように、
うっすら瞳を開けました。
服しか見えなかったけど、お兄ちゃまはパジャマ姿でした。
そっか、だからだね。
さっきいなくなったのは、お着替えしに行ってたんだ。
お兄ちゃまは、そっと、花穂をベットに寝かせて、お布団をかけてくれます。
「オヤスミ、花穂。」
そう、お兄ちゃまが言うと、花穂は、握っていた手に力をいれます。
すると、花穂から離れようとするお兄ちゃまの動きが止まるの。
「・・・・・、花穂、離せよ、って、寝てるから聞こえない・・・か。」
ふふふ、きっとお兄ちゃま、いつもみたいに頭をかいて、ちょっと困ったお顔してるね。
お兄ちゃまは、お布団を広げて、入ってきてくれました。
これで朝まで一緒だね、お兄ちゃま。
「ったく、これじゃ、ガキの頃と変わらんじゃないか。」
あ。
花穂、大きくなってもこんな嘘ついちゃってるから、お兄ちゃま怒っちゃったかな?

でも、今日のお兄ちゃまはいつもと違いました。
お兄ちゃまは花穂をそっと、お布団のなかで抱きしめて、
花穂の頭と、頬を撫でてます。
そして、
「おやすみ、花穂。 愛してるよ。」
ドッキーン!
花穂の心臓、飛び出るぐらいドキドキって言ってる。
や、やだお兄ちゃまったら。
急にそんな・・・。

もう、お兄ちゃまのばか〜。
花穂、ドキドキして眠れなくなっちゃったよぉ!


あとがきみたいなもの

咲耶ちゃん以外妹SS第3弾です。 チアして応援していない。
どじっ娘でない。 花をめでていない。 おのずと花穂ちゃんを
イメージするものをいっさい使っていないSSとなってしまいました(笑)
ちゃんと花穂ちゃんらしさが出ていればいいのですが、管理人かつ、
花穂ちゃんのお兄ちゃまであるカッツォさんの評価が一番怖いっス(爆)

ご意見、ご感想お待ちしております。 
それでは、次妹SSでお会いしましょう!



九郎さんへの感想はこのアドレスへ
crow-fst@mx2.tees.ne.jp

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