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兄の鞠ゑな1日

作者:ATSさん


僕にはちょっと個性的な12人もの妹がいる。

今日も妹の一人である鞠絵のお見舞いのため療養所に行く日だ。

前回のお見舞いでは散々な目に会ったので、今回こそは兄として、妹と兄妹の仲を深めようと思う。

「ふぅ、鞠絵も暴走しなければとっても可愛いのにな・・・」

こんなことを考える辺り、やっぱり僕はシスコンなのだろう。

友人の数人にからかわれることもあったが、今ではみんなも事情を理解してくれている。

体が弱いため、家族と一緒に過ごせる時間が少ない少女。

そしてその少女が最も敬愛している、血の繋がったとても優しい実の兄。

「鞠絵のことは決して嫌いなわけじゃない。むしろ・・・好き・・・なのかも・・・」

鞠絵は僕との結婚願望があるみたいだ。

まあ、鞠絵は可愛いし、料理もできるし、洗濯や裁縫もできる。

きっと良いお嫁さんになるんだろうな・・・相手は僕以外の男だろうけど・・・・・・

だめだだめだ、せっかく鞠絵に会うっていうのに、こんな変なことを考えて落ち込むなんて馬鹿げてるな。

一呼吸置いて気持ちを整理し、鞠絵の病室のドアを軽くノック。

「鞠絵、僕だけど入っていいかい?」

今回は、ちゃんとドアを開ける前にお伺いを立ててみる。

なんてったって、前回みたいなモンは二度と見たくねぇし・・・

「はい、どうぞ兄上様」

よし、今回はOKだ・・・悪魔でも、出だしだけはな・・・

「さてと、鞠絵今日の調子はどうだい?」

「はい、とっても元気Death!今なら空だって飛べますぜ!」

親指立てて言い切る鞠絵、違うよ・・・絶対にキャラが違ってるよ!!

「鞠絵、もしかしてまたなにか新しいお薬飲んだ?」

「ふふふ・・・いえいえ、今日は兄上様が来てくださるので楽しみにしていたら昨日の晩はなかなか寝付けなくって、いつのまにか朝になっていて仕方なく起きて顔を洗いに行って朝食を食べてよくよく考えてみたら一昨日から待ち遠しくて一睡もしてない事が判明したりしてんなもん知るかとばかりに襲ってくる睡魔を撃退しながらどうやれば兄上様と添い遂げられるかを延々と考えてみたりして結局独立戦争引き起こして新憲法で兄妹婚を認めさせる案に落ち着いてみたりその第一歩としてミカエルを司令官として中東の原油を奪いに現在大軍を派遣して・・・」

も、もうこれ以上聞きたくないです!勘弁してください(泣)

「鞠絵!いくら3日間寝てないからって、ちょっとハイになりすぎだぞ(泣)」

「兄上様と一緒の時間を過ごすためなら、3日間くらい大丈夫Death!!」

「い、いや、僕のことはいいから少し寝なさい」

「そう!兄上様が添い寝をしてくれるのですね!!!」

やばいです、なんだか鞠絵の瞳が怪しく光っています。

今の鞠絵を例えるなら草食獣を狙う肉食恐竜です、T−レックスです。

「なんでそうなるんじゃぁぁぁぁぁ!!」

「グフフフフ、アニ上サマと一緒のベッドDE寝られるのDeathね!!」

もはやナチュラルハイな状態で言語中枢もおかしくなっています。

もしかしてこれで僕、THE ENDですか?

鞠絵にあんなことやこんなことされて、THE ENDですか?

僕、お婿に行けない体になっちゃうのですか?

「兄上様ぁぁぁぁ!!好きじゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

ガバッと僕に襲い掛かって来る鞠絵を何とか避けて距離を取る。

「ま、鞠絵、落ち着こう、まずは落ち着いて話し合おうじゃないか!」

「うるせぇ!さっさとわたくしの物になりやがれ!!」

違うよ、絶対にこれ鞠絵じゃねぇよ!!

鞠絵はもっと"おしとやか"で"慎ましく"て、"守ってあげたくなる"タイプじゃなかったのか!?

「兄上様、ごちゃごちゃ言ってないでわたくしの物にならないと」

「な、ならないと?」

「殺っちゃいますよ?(はぁと)」

鞠絵、顔を赤らめて微笑みながら『殺っちゃいますよ?(はぁと)』はないだろ。

「兄上様、わたくしの添い寝をするのがそんなに嫌なんですか?」

すると突然、鞠絵が瞳に涙を浮かべながら聞いてきた。

上目遣いで瞳に涙を浮かべて恐る恐る聞いてくるその表情はとても可愛い!

「ち、ちが、そうじゃなくて、その、僕と鞠絵は兄妹で」

と、なんとか、うろたえつつも少しでも逃げ切れる確立を高める。

気付かれないようにさりげなく、少しずつ、少しずつドアの方に戦線を移動してゆく。

よし、あと数歩移動すれば、戦線から離脱できる!!

僕の本能(兄統合作戦本部)が告げている、『一旦退却し、艦列を立て直すが上策』と。

あと4歩、3歩、2歩・・・くっ!いきなり鞠絵の目つきが変わった!!

「兄上様、もし、この部屋から逃げ出したらどうなるか分かりますか?」

「い、いや、分からないなぁ、ハハハ・・・(むしろ分かりたくないっス!)」

「わたくし、兄上様を捕獲するために、療養所の他のみなさんにご迷惑をかけたくないんです」

「ほ、捕獲!?」

「兄上様、この施設内には罠(トラップ)を仕掛けて置きましたので」

「も、もとかして・・・落とし穴とか?」

「いいえ、お知り合いに教わった幼稚な罠ですよ」

「ちなみにそのお知り合いって何をやってた人だい?」

「ちょっとベトナムの方で米国を相手にゲリラやってたみたいです」

なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!するとアレですか!?

ベトコン仕込みの凶悪なトラップですか!?スパイクボールですか!?ピットトラップですか!?

当時、近代兵器を持たないベトナム軍は数多くの凶悪な罠で米国の精鋭を数多く屠ったらしい。

「元とはいえ、ゲ、ゲリラさんですか(汗)」

「ええ、対象が兄上様なので殺傷能力は低めに設定してありますけど」

「ど、どのくらいだい?」

「ちょこっと生死の境をさ迷うくらいです」

鞠絵、生死の境をさ迷うのが『ちょこっと』なのかい・・・・・・

なんだか僕、鞠絵の兄やってるの嫌になってきちゃったよ・・・・・・

今度本気でリクルートしようかな・・・・・・

・・・・・・どうせ鞠絵の裏工作で無駄になるんだろうな。

「なあ鞠絵、ちょっと聞いてもいいかい?」

「はいどうぞ、兄上様」

「僕が今後の就職について考えている間に、なんで僕は縄で縛られてるの!?」

「だって、これから兄上様と一緒のベットで寝るからです」

「でもこれだと寝辛いんだけど」

「兄上様、どんまい!(はぁと)」

「ちょ、ちょっと、ま、鞠絵、ちょっと待って!待ってくれ!」

「では、ふつつかものですがよろしくお願いします(はぁと)」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「兄上様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(はぁと)」


その後、間一髪で縛られたまま窓ガラスを割って施設から脱出した僕は家に逃げ帰ることができた。

そしてもう二度と一人で鞠絵のお見舞いには行くまいと心に固く誓いました。


今日はとっても鞠ゑな1日でした。


あとがき
とりあえず書いてみた鞠絵シリーズ第弐段です。
今回はガンダムもマサルも入っていないので、元ネタ分からなくても大丈夫です。
さて、こんな鞠絵でもぜんぜんOKな兄上様、出来れば感想下さいです。
こんな鞠絵は絶対許せない兄上様も、ついでに感想下さい(オイ、ついでかよ!
それではみなさん、感想&苦情お待ちしています!

平成14年5月4日 作者ATS


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haraatsu@mail.goo.ne.jp

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